やはりこの世界は間違っている。   作:フラットテスト

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真戸さん、亜門さんとの捜査をしなくなった辺りの話です。


番外編
番外:尾武士


「平塚上等、このオブシの元になった喰種っていつ手に入れたんですか?」

俺は前から気になっていた事を聞いた。これだけの便利なギミックを持っていながらもBレートである理由も知りたい。

「オブシはな、私の左手を奪いやがった喰種なんだよ」

まるでその左手がまだ、痛んでいるかのように顔を顰めた後、平塚上等はオブシの事を語ってくれた。

 

✕ ✕ ✕

 

あれは、私が一等捜査官だった頃だ。私の所属していた区では、奇妙な事件が起きていたのだ。喰種捜査官を狙って襲う、それ自体は珍しい事でもない。家族や友人を殺された喰種もいるだろう。また、自分の力を誇示する事によって区の中での存在感を増し喰種間の権力を握るなんて事もある。

その喰種も後者に近かったのだが、毎度毎度攻撃を仕掛けてくる癖に寸止めしかしない。そして、こちらがクインケを発動すれば逃げていく。

その刀のような尾赫やその、がっしりとした体格から当初からは、尾武士と呼ばれていたが、人を殺す勇気も無く、加えてすぐ逃げるので次第にヘタレという名でよばれるようになった。

いくらヘタレの喰種だからって、人を喰わない喰種は居ない。そして、奴の駆逐は我が班に任された。

「はぁ、ヘタレなんて、ハズレ引かされるとかツイてないですね、班長」

「寸止めではあるが殺す実力は十分にある。Bレートではあるが油断するなよ、平塚。油断は禁物だぞ、まだ若いと思っていてもどんどん結婚から遠ざかってしまうぞ」

「ええ、分かってますよ。って後半関係ないでしょ!」

「はっはっは」

あの時の私はそこそこの年齢で昇進していた事もあって、油断していたのだ。結婚の事じゃないぞ。というか、結婚しない捜査官も多いからな?

尾武士自体は、遭遇は難しい訳ではないため、いかに逃げ道を塞ぐのかが肝であるとして、作戦を立てた。

その作戦は単純に路地裏を通る際、本隊とは反対から別の捜査官がこっそり近付くというものだった。こんなのは仮の案で、どうせ掛からないと思っていた。

しかし、奴は引っかかり見事挟み撃ちに成功してしまった。

「引っかかりましたね、班長」

「ああ、正直予想外だ」

私達はクインケを構える。

「これより、Bレート尾武士を駆逐する」

「ヤバっこれ我ヤバくない?ねぇ」

なんか喰種が言っているが、気にすることもあるまい。

そして、班長は尾赫に有効な、羽赫のクインケを放った。避けた様子も無く。こんなに簡単に終わるものなのかと、誰もが思った。

しかし、奴は全ての羽赫を赫子で防ぎきった。

「尾赫の癖に硬すぎるだぉ」

そして、班長の首が舞う。奴が殺しを始めた。

「はっはっはっ。そんな攻撃じゃ我を倒せんよ」

そうして乱戦が始まった。レートを上げるべきであったが誰もが必死でそこまで手が回らない。奴は強かった。

「そんな、あぶねっ攻撃じゃ痛ってぇ、当たるのね」

そして、無駄にうるさかった。

「黙れこの糞喰種が!」

私も全力で応戦する。どちらも傷だらけでそろそろ決着が決まるという時、私は飛び込んだ。

ここで決めなければこちらが全滅だ。そして、切り込んだ。しかし、奴の赫子の方が速く、私の眼前まで来た。もう殺されると思い、死んでも殺してやる、と降る力を更に込める。すると、奴は何故か左に赫子を逸らし、私のクインケは奴の首を切った。私は意味が分からなかった。そのうち左手が切れている事を仲間に指摘され、気付いた。止血された後、気付いたら病院にいた。気を失っていたのだろう。

その後、私はどうするか聞かれたので臨時講師として休日にやっていた、アカデミーの教官をやることにした。オブシの討伐により私は上等捜査官となった。書類上はレートBだが、操作資料からそれ以上という判断だそうだ。私は喰種捜査官で無ければ教師になってみたかったからだ。そこでやる気の無さそうだが、面白い生徒に出会ったのだよ。

 

✕ ✕ ✕

 

平塚上等の話は俺に微笑みかけた事で終わった。

「なあ比企谷、なんで尾武士は私を殺さなかったと思う」

この質問の正しい答えはきっとその喰種本人しか知りえないのだろう。

「平塚上等の顔を見て惚れたんじゃないですかね」

そう言うと頭を小突かれる。

「上司を揶揄うな、馬鹿者」

そんな話をした後も俺達は大したことない。話をしていて、そのうち解散となった。

 

✕ ✕ ✕

 

「八幡っ!次回作の素晴らしい設定を思いついたぞ!」

「うるせぇ、どうせ駄作だろ。俺のサイドエフェクトが、そう言ってる」

「お主、つまらない嘘つくな。今回は傑作だぞ!」

どうせ今回もパクリとか色んな作品の要素ごちゃ混ぜにした話だろう。

「主人公は孤高の武士でな、だが心優し過ぎて人を殺せないのだ。だが、追い詰められた彼は人を殺しその後も殺しに走る。しかし、敵の中にいた女性の美しい巨乳な武士に惚れ殺しを留まるのだ」

やっぱどっかにありそうなんだよな。

「で、その展開に持っていく経緯は?」

すると材木座は馬鹿にしたように笑う。

「はっ、我は設定だと言ったであろう。細かい事は後回しだ!」

「それ永遠に後回しにするやつだろ。設定だけで終わりそうだな」

なんであんなに偉そうにできるんだ、コイツ。

「大ヒット間違いなしだな。遂に我の時代だ!ではな、八幡、我が同志よ。サラダバー」

聞いてねぇのかよ。材木座はナルトのような走り方で出口へ向かう。遅せぇよ。そして、足音がうるせぇ。片手を上げ部屋を出ていき、部屋の扉が閉められる。

その音で俺は目が覚めた。さっきまでのは夢だったようだ。俺はあんな場所に行った事がないし、あんな奴に会ったこともない。だが、とてもあの夢は心地良かったと言えるだろう。

「風で閉まったのか」

閉まったのは俺の部屋の扉のようだ。小町を起こしてしまっていないかしんぱいだ。時計を見るとまだ午前四時前だ。まだ眠れる。俺は再び眠りについた。さっきまで見ていた夢は頭の中からすっかりと消えていた。

次の日、俺は案の定寝坊し、平塚上等に殴られた。小町になんで起こしてくれなかったか聞くと、夜中に起こした罰だそうだ。そして、俺は今日も働いた。喰種を殺す為に。




オブシ=材木座というのは、前から考えていました。この後はReの部分を書きますが、八幡以外の視点も書こうと思っています。
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