サインちょうだい!   作:ryanzi

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オリ主くんは場合によっては死ぬこともあります


広江ちはるの場合

・・・御用だよ。まさか本当にやるだなんて思わなかった。

久兵衛との交渉が成立するなんて・・・。

これで日本だけじゃなく地球文明が救われた?

やっぱり、こんなの間違ってる!

確かに久兵衛の目的は別の手段で達成されたよ。

でも、それで別の宇宙が消えちゃんだよ!?

・・・両文明の存続のためなら悪魔にもなる覚悟がある?

ううん、君は悪魔じゃない。ただの、人殺しだよ。

宇宙社会学の公理を忘れたのかって?忘れてないよ!

君が村の子供たちに読み聞かせてくれた本に書いてあったでしょ!

・・・もう一度言うよ。御用だよ。皆から裁きを受けてもらうよ。

君がしたのは、私達に対する最悪の侮辱だよ。

 

 

最初に彼に会ったのは霧峰村だった。

この人はどうやってか村にやってきた。

そして、村の子供たちに三体を読み聞かせていた。

もちろん、小説の内容をそのまま読むんじゃなくて、簡単にしていた。

それでも難しかった。でも、娯楽もないので皆が楽しんでいた。

村の大人たちの一部はあまり快く思っていなかったようだけど。

わたしも気づけば聞き入っていた。

生存の危機に瀕した宇宙人が地球に攻めてくるという内容。

一見すると単純だけど、よくよく聞いてみるとスケールが大きかった。

VRゲームに歴史上の人物が歴史考証を無視して登場したり、

宇宙人が陽子ぐらいのコンピュータで地球の科学の発展を止めたり、

ろくでもないけど憎めない主人公がとんでもない方法で宇宙人と交渉したり、

ついには宇宙の終わりまで突っ切るお話だった。

物語の終わり近づくと、皆が静かになっていた。

読み聞かせが終わると、静かに配布会が始まった。

一つの娯楽が幕を閉じた。それでも、皆は満足していた。

次に彼に会ったのは、水徳寺だった。

彼は何やらぶつぶつとお願い事を言っていた。

 

「地球文明とキュゥべえの文明を救う方法」

 

とか言っていた。それは三体第一部のあるシーンをわたしに想起させた。

最初はどういう意味かわからなかった。でも、不安になった。

その後も色々な場所で会うことがあった。彼はいつも三体を布教してた。

でも、会うたびにどこか暗い感じが漂っていた。

それで不安になりいろはさんとも相談した。いろはさんも彼の異変に気付いていた。

それでも、彼に聞こうとすると、三体を渡されてうやむやにされるらしい。

それで私は彼を尾行してみた。彼は常に上の空だった。

上の空とはいえ、気づかれてはいた。いつの間にか一緒に遊ぶようにもなってしまった。

でも、ある日、彼はいつもより早く外に出た。

彼は水徳寺にある墓場に行くと、久兵衛を呼び出した。

これもまた、三体第二部のクライマックスを想起させた。

 

「地球文明とキュゥべえの両方が助かる手段がある」

 

彼はそう言うと、ある方法を提案した。

それはあまりに残酷な方法だった。

彼は別の宇宙からのエネルギーの吸収をキュゥべえに勧めた。

久兵衛もしばらく考えて、それに同意した。

彼は魔法少女の魔女化の防止などいくつかのことを依頼した。

久兵衛もそれに同意して、それから立ち去った。

これで全てが終わったのだ。私達は救われた。

その代わりに、別の宇宙が犠牲になることが決まった。

わたしは彼を捕らえて、いろはさんに引き渡した。

 

数日後

 

裁判が始まった。多くの魔法少女が複雑な気持ちだった。

キュゥべえがソウルジェムの穢れを溜まらないようにしてくれた。

さらに、魔女になっていた魔法少女が元に戻った。

それは全て彼のおかげだった。でも、その代償は別の宇宙の死だ。

意外なことに、彼は自分の有罪を主張した。

 

「地球文明を守ろうとした罪」

 

結局、その主張が逆に彼の重罪を決定づけた。

彼は人殺しですらなかった。文明の細胞と化してしまったのだ。

もう、彼に私達は人間として見えていないのだろう。

ただ、文明を維持するための細胞にしか見えていないのだ。

私を含めた時女一族は最初から彼の極刑を主張していた。

それは上からの指示もあった。上の人たちは彼を快く思っていなかった。

この世界に存在していなかったとはいえ、三体は中国の小説だ。

憎むべき隣国の小説を吹聴したうえ、新しい魔法少女の供給も望めなくなった。

でも、彼の主張で他の時女一族の子たちも心から彼の極刑を望んだ。

彼には既に日本というのは文明の一細胞にしか見えてないのがわかったからだ。

彼の極刑を主張したのは神浜マギアユニオンと時女一族とネオ・マギウスだった。

棄権したのはピュエラケアとFOLKLORE OF 0という聞いたことも無い組織。

驚くことに、彼の極刑に反対したのはPROMISED BLOODだった。

 

「別に・・・。ただ、全員意見が同じっていうのはダメでしょ?」

 

それが紅晴結菜の主張だった。

おそらく、ユニオンが無罪を主張していたら、有罪を主張していただろう。

ただ、それだけの話だ。結局、彼の極刑は避けられないものとなった。

 

 

これで本当に満足なの?

極刑がどんなものかわかってるの?

君の人格全部壊されちゃうんだよ!?

こんなの・・・ひどいよ!

多分、君を転生させた神様にも修復ができない思う。

いえ、むしろ修復できないほどに君の心を壊そうとするはず。

今ならどこにだって逃げれるよ?

・・・そう。やっぱりそうだよね。

君はいつもそんな人だったよね。ううん、大丈夫。

じゃあ、さよなら。もう二度と会えないと思うけど。

・・・一つだけ、頼みがあるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちはるさん、三体を渡してください」

 

いろはがわたしにクロスボウを向ける。

背後には時女一族の子たちがいる。

 

「・・・やだよ。今のわたしは彼だけのヒーローなんだから」

 

「自分のやっていることがわかっているんですか・・・?」

 

彼に極刑が下されてから、各地で三体狩りが始まった。

あちこちに配布されていた三体が燃やされたのだ。

ただ、彼がこの世にいたという証拠を無くすためだけに。

彼の家も燃やされた。彼が描いていた絵馬も燃やされた。

全てが燃やされていった。彼が触れたものは、全てが。

今、この世に残っているのはわたしの持っている三体と・・・

 

「弱い者いじめは感心しないわねえ・・・」

 

「・・・結菜さん!」

 

・・・どういうわけかPROMISED BLOODが助けに来てくれた。

そういえば、二木市は三体狩りに参加してないと聞いたことがある。

今まで逃げ回っていて、行く余裕がなかったのだが。

気がつけば、時女一族の子たちはPROMISED BLOODに追い払われていた。

 

「さて、どうするの?」

 

「・・・次、会った時は覚悟してください」

 

そう言うといろはも逃げていった。

 

「さて、とんでもないことしてるわね・・・」

 

「・・・わたしをどうするつもり?」

 

「どうもしないわ。ただ、このまま逃げてるのも大変でしょ?」

 

こうしてわたしは結菜さんに守られながら、二木市に向かった。

 

「・・・風の噂で聞いたんだけど、三体以外にも持ってるんだってねえ?」

 

「・・・隠しても意味はありませんね」

 

私は懐から一枚の紙を取り出した。

『婚姻届』と呼ばれる紙だ。

 

「・・・確かに、このきた・・・ユニークな字はアイツの字ね」

 

「今、汚いと言おうとしなかった?」

 

これが彼がこの世界に生きていたもう一つの証拠。

 

「私とひかるが証人になってあげてもいいのよ」

 

「・・・いえ、大丈夫です」

 

証人なんていらない。

ただ、二人が一瞬の間、愛し合っていたというだけでいい。

 

私はいつまでも君のヒーローだよ?

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