揺らめく炎の奥で、瓦解した建物の中で倒れている少女を見て私は膝から崩れ落ちた。
(あぁ……なんで………
どうして…こんなことに……)
薄れゆく意識の中で、今目の前で起こった事を悔恨する。
受け入れられる事の出来ない現実を、逃れられない喪失感を、そして何よりも…。
「いや……なんで……私は……そんなはずじゃ……いやぁぁぁぁあぁぁ!!」
2018/10/23 1:57 東京
「はぁ……はぁ……はぁ………。今のは……夢?どうして……」
悪夢に魘されその中で叫んだ女性は、自らの慟哭が反響する部屋の中で目を覚ました。
忘れようとしてた…いえ忘れたはずだった…封印した私の記憶
「それが、今になって…何故…?」
必死に思考を巡らしても、そんなきっかけが見つかるはずもなく、酷い寝汗とたった今見た夢を洗い流すようにシャワーを浴びる。
ショートカットに切り揃えたブロンドの髪から、滴る雫を眺めていたその女性はシャワールームの鏡にふと視線を向ける。
『どうして……?』
聞き慣れない声が頭に反響したのと同時だっただろう、鏡の奥には長く伸ばしたブロンドの髪の奥から翠の瞳が、その瞳を覆う火傷の跡が恨めしそうにこちらを見ている。
『どうして、私を忘れて生きるの?』
「!?……」
その瞬間、見えた景色がぐにゃりと歪むような感覚を覚えた。
誰かに見られているような嫌悪感、一人正体もわからない暗闇に閉じ込められるような絶望感、あるいは心臓を押しつぶされたような圧迫感。
歪んだ視界の中で頭に声が響く
『貴女だけなんて…許さない…』
瞬きする、その瞬間鏡の奥の人物は消え去り
そこに写っているのはひどく怯えた表情をした私自身の姿だった。
「なんだったのよ…今の……」
ふと我に返ってそう呟くと、シャワーを止めバスルームから出る。
バスローブを羽織ってスマートフォンに視線を落とすと、時間は2時半を回っていた。
嫌な感覚が抜けて眠れそうにないと思い、スマートフォンを少し触るとある事に気がつき、スマホを操作する。
「突然ごめんなさいね、ちょっと……その…今からいいかしら?少し、会って話したくて……」
時間の遅さ故の申し訳なさと、少しだけ躊躇いを含んだその口調を他所に通話相手は軽快に応じる
「今から?別になんの問題もないぜ、私とお前の仲だからな!
丁度今仕事も終わった所だし、それなら迎えに来てもらってもいいか?」
口調は少し男性的だが、声の主は紛れもなく女性のものだった
相手の感情を読み取り、意図して軽快に応えたとも取れる返答、だが電話をかけた女性にとってそれは彼女のいつもの返答だとわかる
「わかったわ、今から着替えてそっちに向かうから……だいたい20分くらいかしら?3時頃には迎えにいけると思うわ」
「オッケーだ、そしたらそれまでは適当に待っておくぜ
それじゃ、また後でな」
「えぇ、また…って…もう、本当にあいつは人の話を最後まで聞かないんだから……」
電話をかけた女性の返答を待たずに通話相手は一方的に電話を切ってしまった
しかし、そういったある種の気遣いの無さに救われている自分がいる事に少し苦笑いを浮かべた