2018/11/9 18時13分 東京都秋葉原
「かなり色んなカードがあるんだな」
ショーケースに並んであるカードを見ながら、理紗はボソリと呟く
「なんとなく見たことのあるやつもあるが……この青眼の白龍とか、あとはこのブラック・マジシャン・ガール?とかも
へー、白いのや上下で色が分かれてるのとかもあるんだな……ちなみに有栖はこういうの知ってるのか?」
理沙から唐突に話題を振られて一瞬つまる、頭の中でどう答えるか逡巡する
「え?えっと…ごめんなさい、私もあまりこういうのは詳しくなくて……」
と答えているとショップの中で対戦をしている二人の男性の声が有栖には聞こえ、有栖はそちらに視線を移す
「俺は手札に存在するBF-極北のブリザードを召喚する!
そして、場にある黒い旋風の効果が誘発してチェーン1、極北のブリザードの効果をチェーン2で起動!
極北のブリザードの効果を発動し…」
ターンプレイヤーである男性がカードの効果を言い終わる前に、非ターンプレイヤーの声が割り込む
「ならば、極北のブリザードの効果に対してフィールドのシューティングクェーサードラゴンの効果発動、極北のブリザードの効果を無効にして破壊する、そして破壊された事で黒い旋風の効果もたち消える!」
(バカね、シューティングクェーサードラゴンはモンスター、魔法、罠の発動に対してチェーンされるもの
極北のブリザードの効果をチェーン1で黒い旋風の効果を誘発させればどちらの効果も通せたのに)
「有栖、何見てんだ?」
ショーケースを見るのに飽きたのか、それとも有栖が自分の後をついてきていない事に気づいたからなのか理沙が近寄ってきた
「あ、理沙……あっちでそのカードで対戦してる人がいたから、どうやってやってるのかなって…」
と、カードゲームを対戦できるスペースを見ながら有栖が言うと
ほんの少し、したり顔で理沙が食いついてきた
「ふーん……有栖もやってみるか?なんか貸し出しのデッキとかもここ、あるみたいだぜ
私も話の種になるし、ちょっとくらいやっておきたいんだよね」
「えっと……え?ちょっと…理沙…?」
返す言葉を言う前に有栖の手にはそのお店の貸し出し用のデッキが握らされていた
一体いつの間に用意したのだろうか、戸惑っている有栖を他所に理沙はスペースに用意されている椅子に腰掛けた
「あぁ、もう…私何も知らないからね?」
そう言いながら理紗の対面に座る
「えっと、まずはこのデッキをシャッフルしてカードを5枚引くのな…」
たどたどしくデッキをシャッフルする理沙に対して、何も知らないといった有栖は滑らかな動きでカードをシャッフルしていく
「えっと、有栖…本当にはじめてか?」
その動きを見て、理沙が有栖に問いかけると有栖は澄ました顔で言葉を返す
「昔、カジノでディーラーをね」
ほんの些細な嘘にチクリと胸が痛む
しかし、理沙に自身の過去を知られる事になるくらいなら安いものだと思ったのかその顔に悪びれる様子は一切出さなかった
「なるほど、それなら納得だぜ
じゃあやってみるか、えっとルールは……」
2回ほど店員の方からルールの手ほどきを受けながらプレイを初めていく
まずはデッキからカードを引いて、モンスターカードを場に出して、魔法や罠を場に伏せる
そして手番を相手に渡す
「はーい、そしたら手番はこちらで……」
そういって有栖はデッキに手を伸ばす
しかし、カードを引こうとするも、その手はまるで氷のように動かない
ただ、カードを引こうとするだけでゾクリとした恐怖感が有栖を襲う
『ユルサナイ…』
以前バスルームで聞いた声の主と同じものであろう声が頭の中で響く
しかし、あの時よりもはっきりと恨みを持った声に有栖の思考はショートする
時間にすればほんの数瞬、だが確かに有栖がデッキに伸ばした手が止まるのを理沙は見逃さなかった、そして不審に思い声をかける
「有栖…?どうしたんだ?」
離れかけた思考は理沙から発せられた言葉によって戻ってくる
「あ、いえ…なんでもないわ、ごめんなさいね」
ハッと我に返り、デッキからカードを引くと理沙と同じようにカードを場に出す
2018/11/9 19時22分 東京都秋葉原
「ねぇ理沙、時間大丈夫?」
2度ほど通しで対戦をしただろうか、時計を見た有栖が、今度は逆に心配そうに声をかける
「あぁ、今何時だ……っとそろそろ行かないと間に合わないなサンキュー」
理沙も時計を確認するとすぐさま身支度を整える、その様子を見て有栖は続けた
「今から向かうなら、車をで行くより電車の方が確実に早いわよ?」
「ん、あー、そうだな……じゃあ電車で行くか」
少し考えて、残念そうにそう答える
理由は明白、そして有栖はすぐにそれを感じ取った
「はぁ、全く…次は高いわよ?」
理紗の言わんとする事に渋々と同意すると理紗の、顔には少しだけ笑みが戻る
二人は借りていたデッキをショップに返却すると、秋葉原から理沙の職場へ向かった
2018/11/9 19時37分 東京都新宿
「悪いな、有栖…わざわざここまでついてきて貰って」
少し申し訳なさそうに謝る理沙に対して、有栖が答える
「別にいいわよ、この前は私が付き合ってもらったし…今日はそのお礼とでも思っていて頂戴
ほら、遅刻しちゃうわよ」
そういうと理沙を促して、有栖自身も帰路につこうとする
「はぁ、わざわざ車取りに秋葉原までとんぼ返りとは……我ながら人が良すぎるわ……キャッ!」
ほんの少し悪態を付きながら路地から大通りに出る
その刹那、有栖は何者かにぶつかり少しよろけた
「あの、ごめんなさい私ちゃんと前を見てなくて…あのお怪我は……」
自分からぶつかりってしまった事を謝罪しようとするも、その言葉は途中で途切れた
ぶつかってしまった相手から目を離す事が出来ない
長いウェーブがかったブロンドの髪と有栖と同じ翠色の瞳がぶつかってきた有栖を見た
「こちらこそごめんなさいね、貴女こそ大丈夫?」