2018/11/9 19時41分 東京都新宿
「あら?どうかしたのかしら?
さっきから私の顔をそんなに見つめて…」
有栖にぶつかった女性は、優しく微笑みかけた
しかし有栖はその顔に更に動揺の色を隠せなくなる
感情が制御出来ていない
『怖い…逃げた出したい…動けない…』
歯がカチカチと音を立てて震え、一歩後ずさろうとするも、バランスを崩しそのまま地面に倒れる
「ちょ、ちょっと貴女、大丈夫!?」
その女性は有栖に心配そうに駆け寄って声をかけるが有栖は壊れた人形のように「ごめんなさい」と同じ言葉を繰り返し意識が完全に飛んでしまっているようにも感じた
感情が意識を飛ばしたのだろうと、咄嗟に判断した女性は有栖の顔に手を伸ばす
その瞬間だった
女性の脳裏に鮮明な映像が流れ込んでくる
焼け落ち、倒壊した建物とパニックになって逃げ惑う人々
そしてその中で一人立ち尽くす少女と4つの巨大な、西洋のドラゴンを思わせる影
「!?……なんなの…?今の…」
少し目眩を覚え女性は目頭に指を当て、何かを逡巡する
「それに、この子は一体……」
自分と似た髪と瞳、自分よりも少し幼い印象を感じさせる、目の前で震える彼女
他人の空似で済ませるには、黒髪かつ黒または茶色の瞳を持つ人間の多い日本では少し難しいだろう
「とにかく、このままじゃ埓が明かないわね…」
そういって手に下げたハンドバッグからスマートフォンを取り出し、細い指が軽快なリズムでキーを叩く
2018/11/9 19時47分 東京都青山
「あら?夢菜ちゃんから?はいはーい、どうしたの?」
プラチナブロンドの髪を長く伸ばし、その一部をサイドテールにして纏めているその女性はスマートフォンの着信がなると、軽い調子でその電話を取る
「神華さん。その、ちょっとお願いがあって………」
同日 20時13分
「夢菜ちゃん、おかえりなさー…え……?有栖……ちゃん…?」
夢菜と呼ばれた女性が有栖を連れて自宅へ招くと中から出てきた女性は驚いた顔を浮かべる
「神華さん…お知り合いですか?」
有栖の手を引いていた夢菜が、その返答に逆に驚きの声を上げた
神華と呼ばれた女性はその問には答えず、何かを悟った表情をして続けた
「とりあえず、中へお入りなさい」
モデルルームのように整理され、生活に必要な家具以外が一切ないようにすら感じる様は
本当にここに人が住んでいるのかという錯覚すら覚える
神華はダイニングテーブルに備えてあるソファに有栖を座らせキッチンへとむかった
すると、背中から声がかかる
「神華さんは座っていてください、そちらは私が」
振り向くと夢菜が左手を胸に当てて立っていた
「そう、それならお願いしようかしら」
瞳を閉じて神華は夢菜に言葉を返すと有栖の対面に座る
有栖は未だに状況が飲み込めずカタカタと震えているようにも感じた
それを見た神華は少し顔を曇らせる
「久しぶりね、本当に…何から話したらいいかしら……」