硝子の魔女   作:黒皮の手帳

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青髪メイドの福音 旧

 

 

 

 

―――あぁ、またダメだった。

 

「レムゥゥ、レムヴゥゥ!!!!!」

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 

血塗られた丘、狂信者の隠れ蓑。

ここはきっとゲームでいう隠しボスのステージだった。

 

鎖で縛られた俺はただ叫ぶことしか出来ず、レムが……こんな俺でも「好きだと」慕ってくれる彼女が傷ついていく様をただ見ている事しか出来ない。

 

何と滑稽なのだろう。

 

何と怠惰なのだろう。

 

ナツキ・スバルは掠れる声を轟かせ血涙を流す。

 

「おお、何と……なんとなんとなんと!貴方はこんなにも魔女に愛されていうのに、あのような匹夫に愛を囁くと言うのですか!?

あぁ、ぁぁ……ァアアアアアァ!!!!!

脳が震えるゥゥゥゥ!!!!!?」

 

青白い神父は喜色に顔を歪めて自らの爪を噛み潰した。

 

 

ドスリと見えない何かがナツキ・スバルの腹部を侵食して駆けずり回る。

 

「痛いぎぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

全身から火が出るような痛みであり、脳が蕩けるまでの濃密な死の記憶が走馬灯のように頭を過る。

それは神父からの懲罰であり私刑であり、断罪だった。

 

「スバル君!?」

 

レムの声が微かに聞こえる。

 

(…良かった。レムはまだ生きてる)

 

彼が見つめた先では四肢の骨をねじ曲げられ瞳の一つを押し潰されながも強い意思を感じる表情で此方へと這いずる青髪メイドの姿があった。

痛覚に泣き叫ぶナツキ・スバルはどこか冷静な思考でレムの生存を喜ぶ。

 

「怠惰なる権能“見えざる手”ッッ!!!これほどまで私がッ自ら端正を施しているとのに!未だあのような小娘に見蕩れるいるというのデスね!

勤勉デス……しかしながら許されざる行為だぁ!」

 

ナツキ・スバルは涙を浮かべて濁る視界の中で、無数の黒い腕が振り下ろされる瞬間を見た。

これを受ければ自分は死ぬだろう。彼は本能で悟り、同時に愚かしい(ゆめ)を見る。

 

「愛してる」

レムだけを見て、レムの為だけに愛を囁いた。

 

きっと極限状態にあったスバルにはレムのことが別の誰か(最愛の人)に見えていたのだろう。

そしてこんな所に彼女がいるわけない、あそこにいたのはレムである筈だ。

感情ではなく理性が判断し……それでも、と言いきったのだ。

 

どうせ二人とも死ぬ。

ならば最後ぐらい夢を見ていい筈だ。俺も彼女も好きな人を最後に収めながら死んで行けばいい。

 

 

 

 

「スバル君……?」

 

レムの視界の先にあるナツキ・スバルが肉塊に変わる。

 

「……どう、して?」

 

彼女は光のない瞳に一滴の滴を浮かべてその目蓋を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

彼女が目覚めた時、そこはロズワール邸の寝室だった。

 

「――これは?」

 

そしてむせ返るような魔女の匂いと見覚えのない黒塗りの本が彼女の手元には残されていた。




……続く
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