咲-Saki- 天元の雀士   作:古葉鍵

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改稿版 新規投稿のお知らせ + オマケ

ブックマークを消さず、長らくお待ち下さった方にお知らせです。

 

旧版を残しておいた方が良いという判断につき、改稿版を新規投稿しました。

新しい話はそちらの改稿が終わってからになります。

期待させて申し訳ありません。

 

とりあえずいきなり全部改稿して投稿は無理なので、少しずつ進めていきます。

別に書いている新作との並行なので作業速度は遅いです。

恐れ入りますがのんびりお待ちいただければ幸いです。

 

2020/11/10 古葉鍵

 

 

咲-Saki- 天元の雀士 (改稿版) URL ↓

 

https://syosetu.org/novel/242259/

 

 

 

 

以下文字数下限エラー受けたので文字埋め

 

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だけだと怒られそうなので、数年前に書いた書きかけの新作部分を

先にちょっと公開(改稿も推敲もしてません)

 

 

 

 

View point:原村和

 

 

森深い景色が緩やかに流れてゆく。

耳を澄ませば、ブロロロロ……というエンジンの駆動音と、ピーッヒョロロロロ……というトンビの鳴き声が不協和音となって聞こえてくる。

県予選も間近に迫った土曜日の午前。私たち清澄高校麻雀部は市営バスに揺られて校内合宿所へと向かっていた。

 

「ハイ、アナタん。あーーんーー」

「のをっ!」

 

ぼけっと外の景色を眺めている私のすぐ後ろ、バスの最後部座席で優希が隣に座っている須賀君にちょっかいを出している。

具体的に何をしているかは振り向かないとわからないが、見ずとも声だけでなんとなく想像できた。

 

「アナタじゃねえ!」

「いやぁん、おこっちゃやぁよ。あ・な・たっ♪」

「だから違うっちゅーとろーが!」

 

まったく、どこにいてもこの二人は騒がしい。車内に私たちしか乗客がいないとはいえ、公共の場でくらい大人しくできないものだろうか。

気持ちが沈んでいるせいか、思考がささくれだっているのが自分でも解った。

いつもなら気分を明るくしてくれる優希の快活な声も、今の私には物思いを妨げる騒音でしかない。

 

「お前ら、子供じゃないんだからバスの中では静かにしなさい」

 

私の胸中を察したかのようなタイミングで、隣に座っている白兎さんが呆れた口調で優希たちを嗜めた。

ただの偶然だろうけど、思いを共有してくれたようで少し嬉しい。

本来なら部長が注意すべき事だ。しかし部長は放任主義というか、細かいことにはあまり口を出さないので、自然と副部長的な立場の白兎さんが注意役、まとめ役を務めるようになった。

とはいえ、学年が同じせいか優希や須賀君が素直に従うことは少なく、今回もまたそうなった。

 

「俺のは不可抗力だ!」

「白兎は相変わらずお堅いじぇ。旅行の醍醐味ってものがわかってないじょ!」

「30分程度のバス移動で何を味わおうってんだお前は」

 

白兎さんはバス真中の通路から後ろを覗き込むようにして振り向き、抗弁する優希にぴしゃりと突っ込んだ。

 

「浮き立つ気持ちはわかるが、はしゃぐなら合宿所についてからにしとけ」

「うーっ、しょうがない、今回は白兎の顔を立ててやるじょ!」

 

我が道を突っ走るタイプの優希だが、決して我儘でも分からず屋でもない。

理を説いて諭せばこうして受け入れてくれる素直な子だ。

思考を遮る人の声が絶えたことで、私は再び物思いに没頭し始める。

頭に思い浮かぶのは、先日お父さんと交わした会話の記憶。

麻雀部での合宿の許可を得る為、お父さんに話を切り出したときのこと。

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

 

『麻雀の合宿か……。東京の進学校を蹴って、こんな田舎の高校に残ってまですることが、それかね』

 

車を運転中のお父さんが、後部座席に座っている私へそう訊ねてきた。

老成した大人の威厳を感じさせる、低く落ち着いた声。

しかし口調には呆れたような不満が滲んでいて、遠回しに責められているのだと解る。

お父さんは実直かつ厳格な人で、私の生活や教育にも厳しく当たってきた。そのことに不満はないし、むしろ感謝している。

父親としても、一人の人間としても立派で尊敬できる人だけれど、やや独善的で私の気持ちや価値観を無視するようなところがあり、それが唯一の不満だった。

 

「友達が……一緒なんです」

 

お父さんには私が学歴より麻雀という趣味を優先して高校を選んだと思われているけど、それは違う。

ただ麻雀がしたいだけなら、別に東京の進学校に行ってもよかった。

実際、白糸台高校という学力でも麻雀でもトップクラスの学校から奨学生待遇で勧誘を受けていたのだから。

保護者であるお父さんも無論そのことは知っている。けれど、白糸台高校が進学校だと知ってはいても、麻雀部が強いところだという認識は恐らくないだろう。

スカウトの理由が麻雀によるものなのに、お父さんはその事実を見てくれようとしなかった。

でも、それは別にいい。

所詮趣味は趣味だから。お父さんに反発してまで意固地に理解を求めようとは思わない。

ただ、せめて。

私が何を大事に思っているか、それだけは知っておいて欲しかった。

 

「中学からの子かね」

「はい……。それと、高校でも……だから……」

 

バックミラーで見られてたわけでもないのに、なぜかお父さんに厳しい眼差しを向けられている気がして、いたたまれなくなった私は思わず顔を横に背けながら答えた。

きちんと想いを説明したいのに、しどろもどろで上手く言えない自分がもどかしかった。

 

「麻雀なんて、運で決まる不毛なゲーム。わざわざ合宿で練習して大会だなんて、馬鹿馬鹿しい」

「っ……」

 

侮蔑を込めたお父さんの台詞に体が硬直した。

まさかそこまで言うなんて……!

お父さんが進学先に不満を持ち、麻雀を良く思ってないのは解っていたけど。それでも今の発言は耐え難いほどに酷すぎた。

お父さんには反発したくないのに、感情の天秤は怒りへと傾いていく。気を抜けば口ごたえしてしまいそうな自分を抑える為、膝の上に置いた手を強く握り込んだ。

――あの人なら、白兎さんなら、こんな無神経で一方的な言い方はしない……!

年齢も立場も全然違うのに、なぜかお父さんと白兎さんを較べている自分に気付き、はっとする。

もしかして今私は……白兎さんがお父さんだったら良かったなんて……考えていた?

その疑問に、私が白兎さんに対して抱いている感情の本質が透けて見えたような気がした。

怒りの感情が困惑に取って代わられ、私は思わずぶんぶんと首を左右に振って疑問を心から追い出す。

突然不審な行動を取った私へ、お父さんがバックミラー越しに訝しげな視線を向けてくる。

 

「どうした……?」

「い、いえ、何でもありません」

 

羞恥から少し上擦った声で答えてしまった私は、気持ちを落ち着けるために胸に手を当て、ふぅ、と深く息を吐いた。

感情の揺れが水平に戻った胸中で、お父さんに何を言うべきか思案する。

いくらお父さんとはいえ、先ほどの台詞は正直許しがたい。けれど、発言の撤回や麻雀への理解を求めても仕方がない。言い方はともかく、お父さんの言い分や認識にも一理あるから。

少しでも理がある以上、弁護士をしているお父さんに口で抗うのは無理だし説得も恐らく通じない。

そもそも、お父さんへの口ごたえは許されないことだという意識が私にはある。だからできるだけ穏便に、反発してると思われないよう意見するしかない。

 

「お父さんの言いたいことはわかります。それでも、もし……練習して強くなって、高校でも全国優勝できたなら……そのときは、ずっとここに残ってもいいでしょうか?」

 

控えめな口調で希望を伝える私を、お父さんが鋭い眼差しで観察している。全国優勝という高い条件を持ち出した私の覚悟を見定めようとしているのかもしれない。

言うだけの自信はある。でも、今のところ宮永さんに一歩及ばない私が、個人戦で確実に全国優勝できるなどと考えてはいない。

けれど、全国優勝なら別。

決して個人戦優勝を諦めたわけでも、他力本願で望むつもりもない。ただ、麻雀部の皆となら全国でも戦える、負ける気がしないだけ。

そして何より、私には、私たちには、最高の指導者(白兎さん)がいるのだから――同世代の誰にも、負けてなどやるものか。

睨んでいるという印象をもたれない程度に、真剣で強い眼差しをバックミラーへと向ける。

 

「……できたら、考えよう」

 

運転中に私の方ばかり見ているわけにもいかず、正面に視線を戻したお父さんは、数秒ほど逡巡してからそう答えた。

約束する、とは言ってくれなかった。

それでもいい。

いくら麻雀には興味がないお父さんでも、インターハイ全国優勝というキャリアは無視しないだろうという確信がある。

清澄高校とて東京の有名進学校ほどではなくとも、決して偏差値が低いわけではない。むしろ地元ではかなり高い部類に入る。

その事実と、全国優勝によって麻雀をお遊びでやってるわけじゃないと証明できれば、お父さんを説得することは十分可能だと見込んでる。

だから必ず――

優勝して、清澄に残る。3年間あの高校で過ごす自由を勝ち取ってみせる。もう二度と、初恋の人(白兎さん)と別れたりはしない――。

 

 

 

 

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