ペベレル三兄弟とジョニー・ベイリーの新たなる物語 作:凧の糸
「おい、あのハリー・ポッターがスリザリンの継承者だってよ。流石例のあの人を倒しただけあるなぁ」
校内はこの噂で持ちきりだった。
ある日、クソッタレロックハートは決闘クラブを開き、スネイプ先生がエクスペリアームスー武器よ去れ、で自信満々のロックハートのツラをひん曲げてやったのには胸が空き、隣のロンと思わずハイタッチをしてしまった。
先生たちの後にはハリーとスリザリンのドラコ・マルフォイが決闘を始めた。
お互いに呪文の掛け合いで一進一退。互いの腕は拮抗しており、吹き飛ばし、吹き飛ばされるが、業を煮やしたマルフォイは虎の子を出してきた。
「サーペンソーティア!ー蛇よ出よ」
毒蛇がぬるりと緩慢に鎌首をもたげた。
高等な呪文を使った上に、恐ろしい毒蛇が現れて周囲はザワザワとする。いかなハリー・ポッターとは言えど、蛇には勝てるかが怪しかった。
実際、スネイプ先生でさえ「どれ、ポッター。私が追い払ってやろう」と言っている。
「…………」
シューシューと、ハリーの口から空気の漏れるような音が発声される。
蛇は術者であるマルフォイではなく、ハリーの意に従う様に動き出す。
「パーセルマウスだ……」
スリザリンの継承者。その条件にはパーセルタング、つまり蛇語を話せる人間が必要だ。遺伝する能力である蛇語はハリー・ポッターがサラザール・スリザリンの末裔である事を意味する。
マグル生まれの者がハリーに対して怯える様になり、ハリーが嫌いなスリザリン生や他寮の生徒たちは、それをネタにしてハリーに嫌がらせを仕掛けた。
「ハリーにゴーントの血が入っていたか……」
イグノタスはかなり動揺しているみたいだが、努めてそれを隠していた。
「いや、それは無い」
カドマスがキッパリと否定した。
「パーセルタングは親から子供に受け継がれていく力。聞くところによるとヴォルデモートとかいう若造はそうらしい。奴はおそらくゴーントの末裔。だが、ゴーントの過剰な純血主義で多くが生き残っているとは思えん」
カドマスは現代の書物も片っ端から漁っているので、さまざまな事に詳しかった。遺伝学という学問によると、血が濃くなり過ぎると色々と生殖や精神に異常をきたすらしい。事実、ゴーントの血筋の者は情緒不安定な者が他の純血の一族に比べて多すぎたそうで揉め事がペベレル家ともあったそうだ。
「正直、他の家に淘汰されているとばかり思っていた」がカドマスの言。
「じゃあ、何でハリーは蛇語を喋れるの?」
「ううむ。お前たちは思い浮かぶか?」
「分からない。そういう呪いを受けているのかも?」
「ワシは完全に専門外だな」
謎は余計にこんがらがっていくだけで、知らぬ間に俺は眠りについていた。
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「暇だな……」
「うん」
ワシ、アンチオク・ペベレルはとにかく暇だった。弟のカドマスは図書館に篭っているし、イグノタスは自身の子孫が気になる様だった。
「そうだ、決闘を教えてやろう」
思いつく娯楽はこれくらいしか無い。
「アンチオクって強いの? 吟遊詩人ビードルの物語だとあんまり書かれて無いけど」
彼の強さをよりにもよってジョニーは知らなかった。それもそのはず、決闘なんて見せた事は一度も無い。よく考えれば当たり前の事だった。
「そりゃ、最強の杖を作ったんだからな。それなりに立ち回れるぞ、こないだみたいな決闘はぬるい。昔の決闘はかなり何でもありだったからな」
「ふーん」
「決闘クラブで腕を良く磨いていたものだ。お前も無言呪文くらい使えないと話にならんぞ?」
「えぇ……相当レベルの高い技術だよ?」
「あんなの、当たり前だ。小便臭えガキでも出来る。コツさえ掴めばな」
「っ……なんか興味出てきたかも」
「そうか!ではな……」
小便臭いガキでも出来ると言われてしまえばやるしか無い。11歳にも譲れないモノが一つや二つはあるのだ。
「はっ!!」
「違う、杖は円を描く様にだ。魔法を循環するイメージが良いぞ」
「それっ!」
「おお! いいぞ、その調子だ」
無言呪文もそこそこ上手くなった。アンチオクは次の段階に進むと言ったが、何より大切な事があると言う。
「体力は大事だぞ。研究にも体力は必要であるし、魔法だって避けられる」
「ホントに避けれるの?」
「死の呪いなんか、簡単に避けれる。わかりやすく言えば……そうだ!ピストルと同じだな。物凄く早くて当たったら死ぬ。その代わりに大体真っ直ぐ進むだろう?」
「う、うん?」
「本当に危険なのは舐めてかかって相手の呪文が直撃したり、周囲の環境を利用されて詰みの状況に持っていかれることだな。ああ、罠にかけるのが上手い奴がいてな。ドロホフ……だったか? 杖の材料探しでモスクワに行った時に会ったが強かったな……まあ、俺が最終的に勝ったがね」
ジョニーはドロホフという名前にはとても聞き覚えがあった。日刊預言者新聞にも出ていた。ただし、悪いニュースで。
「そいつの子孫多分死喰い人だな……」
「あのハゲの部下なのか?」
「うーん、口が悪い」
ヴォ……例のあの人でも流石にそれは暴言だろう。気にしていたらかわいそうだ。
その頃、グリフィンドール女子寮ーー
「うん? 何か変な気分だ……」
「どうしたの、トム?」
「ごめん、気のせいだと思う」
黒い日記の上の文字は僅かながらに震えていた。
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「ハリー、大丈夫?」
「う、うん……骨が戻るのも結構辛いけどね」
「いや、よかったな。あんまり大怪我なくて」
ジニーにハリーのお見舞いに行こうと誘われてここまで来たのだ。ハリーが何故ここのベッドを使っているかと言うと彼の身に降りかかった不幸を説明しなければならない。
ハリーは一年生から特例でクディッチのシーカーになった才能あふれる選手である。
クディッチを知らない人なんてイギリス魔法界にはおそらく居ないだろう。人々を熱狂の渦に引き込むスポーツがクディッチだ。シーカーはゲームの勝敗を決めると言っても過言ではない重要な役割を持つのだが、ハリーはなぜかクディッチでのオジャマアイテムの一つ、ブラッジャーにやたらと付き纏われていた。
ブラッジャーとは選手に勢いよくぶつかってくる硬い鉄の球。棍棒を持って打ち返すビーターが普通対応するのだが、近くに寄ってくるホウキに乗る者を無差別に攻撃するブラッジャーがハリーよりも近距離のビーターを無視するのだから何かがおかしかった。
結果、ブラッジャーが直撃して、ハリーは腕の骨がポッキリと折れてしまった。
骨が折れても割とどうにかなるものだが、ロックハートが颯爽と現れて骨を治す魔法を掛けた……筈だった。
「ぐううっ……」
ハリーの腕は支えを失った様にへにゃりとぶよぶよの皮と筋肉だけになってしまった。
「まあ! なんて事を!!」
マクゴナガル先生はカンカンだった。骨を治さずに消してしまったから、ハリーはマダム・ポンフリーのところで骨を生やす羽目になった。これが痛く、辛いらしい。ロックハートの著作を読んでファンになったコリンでさえもロックハートへの反感は益々高まった。
「にしても弱目に祟り目だね。継承者扱いされて、こんな事もさ……」
「そうだね……」
「帰りましょう、ジョニー。マダム・ポンフリーが目くじら立ててる」
「それじゃ、気をつけて」
「さようなら、ハリー」
「バイバイ、二人とも」
保健室を後にした。
廊下でハリーの他にも誰もいない事だし、俺にはジニーに言いたいことがあった。
「おい、おい。ジニー。」
「え……? 何?」
「お前、クマ出来てないか? ハリーの隣に眠りたいのか知らないけど、足元も少しふらついてないか?」
「いいや、だいじょうぶ。大丈夫だから……」
「……」
ジニーは女子寮へ帰って行く。やはりどこか不安定な足取りだ。
「……怪しいな」
「ジョニー、彼女から目を離すんじゃあないぞ」
「いつか取り返しが付かなくなるかもしれない」
あの三人と出会ってから身についた不思議な予感は、明確に警鐘を鳴らしていた。
ホグワーツは、今日も雨が降っている。
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「なあ、コリン。どんだけハリーの写真撮ってんの?」
「そりゃ、もう沢山さ」
「フィルム足りるの?」
「それくらい考えて使ってるよ。足りなくなったらフィルムは送ってもらうこともあるな」
「へえ、すご……コリン」
「ん? なんだいその顔」
「凄く……悪い予感がする……」
「ははは! 確かに僕は非魔法族だけど、こんな時に秘密の部屋の怪物は襲ってこないでしょ」
白昼堂々と襲ってくる闇の魔法生物なんて変に決まってる。
「まあ、それもそうだが、とにかく走ろう」
「え! ちょ、おわっ!!」
俺はコリンを無理矢理引っ張って、走り始める。
「や、やめてよ!」
「うるせぇ! 黙って走りやがれ!!」
「へ!?」
コリンが混乱の極み。だが、そんなことを気にしているほど余裕もない。大きくて黒い気配はするりと忍び寄ってくる。
「絶対に後ろ向くなよ、死ぬぞ」
「う、え? 分かったッ!」
ようやく飲み込めた状況。がむしゃらに走り続けると気配は諦めたのか去っていった。
「はあ、はあ、はあ……ど、どうして……あんなに焦ってたの?」
「ま、予感。良くないモノが近づいてた。」
「ホントかい? なんだかゾッとしてきたよ……」
「スリザリンの継承者とか、血文字でマグルが狙われるらしいからな。嫌な予感がしたら直ぐに逃げるに越したことはないぜ……」
安堵感からか二人で同時に大きな溜息をついた。それがあんまりにも面白かったもので、二人で大笑いした。
「僕、なんだか疲れたな。先に戻ってるけどジョニーはどうするの?」
「ちょっと行ってくる」
「うん、気をつけてね」
「そっちこそな」
「楽しかったわい、ジョニー。」
アンチオクはホグワーツ見学と称してあちこちに入り込んでいるし、カドマスやイグノタスもそれぞれでバラバラに動いていた。俺に自主性を持たせるためだそうだ。
「アンチオク、ちょっといいか?」
「ん? 何だなんだ? このアンチオク・ペベレルに聞ける範囲で聞くが良い」
「こっち来てくれ、見せたいモノがある」
「おうおう、何だ」
先程の嫌な予感の場所に行く。見ただけでは普通の廊下だ。
「ここで、嫌な予感がしたんだが何か分かるか?」
ゴーストだが、ゴーストではない彼らは人生経験も豊富で何か知っているかと思った。
「うーん、わからんが……闇に属する生物、おそらく秘密の部屋の怪物のような魔力が残留しているのぉ。こういうのはカドマスの方が詳しいぞ。」
「という事なんだけど……」
「ふむ、時間をくれ」
カドマスの姿はさながらシャーロック・ホームズ。隅々を調べていき、数時間後に彼はやって戻ってきた。
「闇の生物、しかもスリザリンとくれば大体分かる。だが、これで確証が持てた」
「何がいるんだ?」
「蛇の王、人睨みであらゆる生物を絶命させる。ーーバジリスクだ」
「なんと、バジリスクとは……」
「バジリスクって物凄く強いヘビなんだっけ?」
「ああ、バジリスクは鶏の卵をヒキガエルの腹の下で孵化させると生まれる闇の生物で、寿命が驚くほど長い上に身体は巨大だ。なによりもバジリスクの目を見た者は避けられぬ死を与えられる。まあ、避けられたとして鋭い牙から逃れられるか疑問ではあるがな。」
「スリザリンが作ったのか? 危険すぎるだろ……」
「いや、スリザリンではない。腐ったハーポというギリシャの闇の魔法使いが記録上、一番最初に産み出した魔法生物だ。ハーポは他にも凶悪な呪いなんかも考案していた気がするな……」
「バジリスクはレア素材だ。杖の素材にしてやろうとしたが、高すぎるし、やっと買えたモノも偽物だった時があるな」
「みんなに言った方が良いのかな?」
「……お前に任せる」
「これはワシも同意見、おそらくイグノタスもだろう」
「……ダンブルドアに伝えてみるか」
イギリス魔法界一信頼出来ると言われる我が校の校長にそれとなく言うことにした。
「百味ビーンズ」
「ハエ型ヌガー」
「かぼちゃジュース」
上級生、いや、フレッドとジョージから校長室に入るにはお菓子の名前が必要と聞き出した。運良く三回で上手くいったが、本当に良かった。
「おや、君は……」
「ジョニー・ベイリーです。ダンブルドア校長」
「おお、ベイリー家の者か。それで、何かようかね。ジョニー?」
秘密の部屋の怪物はバジリスクであると伝えておいた。
「……こちらで何とかしておこう。さあさ、もう遅い。寝る時間じゃ」
「待て! ベイリー!!」
「!?」
絵の中の老人が怒鳴りつけてきた。
「……フィニアス、何の要件かな。もう遅い時間なのじゃ、大声を出さんでもよかろう」
「いいや、そこのに言っておかねばならん! 貴様らは逃げ切れた訳ではない、目を逸らしているだけだ!! 許さん、あの時の事を決して許さんぞ……」
言いたいことを言って、彼は帰っていった。
「だ、誰ですかあの人……」
「彼は、フィニアス・ナイジェラス・ブラック。かつてのホグワーツの校長じゃ。先程の彼の発言をそう気に止めることはない。先祖からの因縁など良くあることだからの」
「そ、そうですか……おやすみなさい、ダンブルドア校長」
「おやすみ、ジョニー」
俺は校長室を後にした。
「お帰り、ジョニー。どうだった?」
「どうにかしてくれるってさ」
「そうか、もう寝ろ。目がパチパチしてる」
「ん、おやすみ」
翌日、俺は予期せぬニュースを聞く。
「嘘だろ……コリン」
保健室へ飛んできた。マダム・ポンフリーに怒られるのも気にならないくらいに俺は焦っていた。
「石だ……」
コリンはどうやら継承者の餌食になってしまったらしい。悪運の強いことにカメラ越しで見ていたらしく、レンズやフィルムがボロボロになる代わりに石化してしまった。
この数日後にハーマイオニーも同じように石化してしまった。石化を治すマンドレイク薬の調合にはまだ時間がかかるようだった。
「ぶっ殺してやる……」
静かなる殺意が俺の中を渦巻いていた。
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おまけーーヘルガとルドウイーク
「私ね、今度結婚するから!」
「……へ?」
「だからね、結婚だよ。私だってもう歳だから。子供だってほしいし」
「へ、そ、そうなんだ……」
眩しい太陽である彼女は穴熊のような僕には永遠に届かないことくらい知っていた。
初めて会ったのはーー
「私、ヘルガっていうの。よろしくね、ルドって呼んでいい?」
身体が弱かった私は、体調が優れていた日に外へ出て散歩をしていた。そんな時に彼女、ヘルガ・ハッフルパフに出会った。明るくて、お日様の匂いがして、優しくて、とても綺麗な彼女は皆の人気者。
こうやって晴れの日に二人だけで会える日が何日も続いた。
ヘルガの話は面白く、上手で引き込まれる語り。
もう、私は彼女という太陽が無くては暗闇すら歩けない。太陽はあまねく照らす。私もそれ以外の者も。私、私だけをヘルガには照らして欲しかった。
彼女の暖かさが私にだけ向いてくれないかと願ったが、ヘルガには絶対に言えない。彼女に見放されたくなくて、彼女に出来るだけ私だけ見ていて欲しくて家業の腕をひたすらに磨いたらそれなりになった。
「凄い! ルドは手先が器用ね。私じゃ負けちゃうかも」
彼女に初めての贈り物をした。褒められた。天にも登る気持ちとは、まさにこの事だった。
彼女の友人とも仲良くなり、皆が大人になった。
彼女は突然旅に出た。彼女は太陽。この村では狭すぎたのかもしれない。これからも彼女が多くを照らすと思うと鬱になりそうになった。
「行ってきます」
とだけ書き置きを残して、彼女は羽根のように飛び去った。
「ヘルガ……会いたいよ……」
仕事の装飾品にすら手が付かない。それでもできた酷い作品を金持ちは「素晴らしい」「この世にまだとない一品」と美辞麗句を並び立てる。彼女がいない世界は灰色と黒で満ちている。私は心が冷え切った。暖めて欲しいとどれだけ願っても叶わない。
ヘルガのために造った木彫りや彼女の美しさを他人に知らしめるための装飾を作ったが、彼女という炎がなければ所詮ゴミ同然。悲しみで全てを捨ててしまった。
ある日、突然にヘルガは帰ってきた、三人の友人を連れて。
三人とは非常に仲良くなった。特にサラザールとは装飾に使う材料で融通してもらった事もある。彼は私が作る作品を特に気に入っていた。
彼ら四人がホグワーツという城を彼らは建設したらしいと風の噂で聞いた。
そんな中、太陽に厚い雲が覆う。
『ヘルガの結婚』
雨が降り続いていた日に届いた一報。
「ヘルガ……ヘルガ……」
部屋に篭って絶食していた。身を焦がすほどの狂おしい痛みが涙を滴らせる。
「ヘルガに……カップを、世界一おいしいお茶を世界一のカップに入れよう……」
ヘルガとのティータイムは至福の時間だ。楽園と言ってもいい。彼女がティータイムで使ってくれる事で私の事を永遠に覚えていてくれる。サラザールやゴドリック、ロウェナの力も借りて完成されたカップを渡した。
「結婚おめでとう。ヘルガ。私の気持ちだ」
彼女の夫の分も作っておいた。カップには幸運をもたらす力が込められた。幸運が彼らを導いてくれると信じたかった。
あれから何年も経つ。ヘルガは遠い場所で頑張っている。物を教えるのが昔から上手だった彼女にはピッタリだろう。
そして、私もようやく結婚した。
結婚する際にグリーングラスの娘が泣きついて鬱陶しかったが、今では彼女も一児の母だというのだから不思議な話だ。私がヘルガをキッパリと諦めたように彼女も成長したのだろう。
「おい、ルドウイーク。完成したと聞いたが?」
「来たか、サラザール。はい、これだ」
「……相変わらず素晴らしい出来だぁ。金はいつものでいいか」
「ん、今後ともひいきに。ヘルガのカップの次くらいには丁寧に作った」
「フッ、ありがたい。貴様の物は全てが良い出来。ヘルガのカップの次なら最高に決まっている」
「……みんな元気か?」
「相変わらずホグワーツは回っている。ただ、少しだけ口惜しいところもあるが何とかするつもりだ。……おっと、そろそろ時間だな」
俺が雑に作った時計を彼は愛用してくれていた。
「バジリスクの抜け殻を頼むぞ」
「分かっとるわ」
ロケットを受け取ってホクホクのサラザールは姿くらましで帰った。
ーー現代
「これなに?」
「これじゃないぞ、ジョニー。これ以上の天才は現れないと称されるルドウイーク・ベイリー、ベイリー家の先祖だよ。彼はハッフルパフのカップやスリザリンのロケットを作った偉大な方で、かつての家の繁栄の基礎を打ち立てたんだ」
「ふーん、すごいんだね」
「さあ、今日もレッスンだ。ルドウイークを越えるためにも基礎はしっかりとな」
「はーい」
ルドウイークの子孫は今日も生きて、彼の技術の一部を継承している。彼が適当に作った作品はどれもが恐ろしく高い技術で製作されていて、とある歴史学者は『彼が未来からやって来たと考えた方がよほど理屈に合う』と評する者もいる。
一説には、スリザリンのロケットやハッフルパフのカップも彼が作ったと言われており、彼の産み出した作品群は未だに多くの人の心を引き寄せてやまないのである。
驚くべき事に、
ただ、言えることは彼が
ルドウイーク・ベイリーが魅惑万能薬を嗅いだ時の匂い
ヘルガ・ハッフルパフの匂い、ヘルガの料理などヘルガ関係全般、自身の妻の匂い、自身の子供が作った人形の匂い。