ペベレル三兄弟とジョニー・ベイリーの新たなる物語 作:凧の糸
それでは、どうぞ
ーーイグノタスのメモ
・ロックハートの狂信的なファン
ロックハートの過激なファン。ロックハートの為と称して気に入らない相手に暴力や魔法を使ったりする。ジョニーに危害が及ぶ可能性もあるので、気をつける。
「では、皆さん。変身術の教科書の85ページを開いて下さい」
マクゴナガル先生は変身術の教師だ。彼女の授業はわかりやすく、一定の人気が存在している。副校長の彼女が尊敬を集める理由は授業が分かりやすい、クディッチ狂いなどの様々ある。
尊敬される一因には、イギリスでも数人ほどしか登録されていない
動物もどき《アニメーガス》は非常に高等な変身術だ。通常、変身術には杖を使い、呪文を唱えて、ある物を別の物に変身させる。
もし、知能が存在するものを無生物に変えてしまえば意識はなくなり、他人に魔法を解いてもらう必要が出てくる。人が変身呪文で犬に変身した場合は犬並みの知能になり、人間の記憶を忘れてしまい非常にピンチに陥ってしまう。
しかし、
悪人が使えば如何様にも悪事を働けるため、魔法省は習得者へ届け出の義務と厳重な監視を行なっている。この高等技術をきちんと届け出ている上に完全にマスターしている彼女が尊敬されるのも自明の理だ。
「こうやって、こうか……」
ブツブツと呟きながら、授業そっちのけで練習をしているジョニーにはマクゴナガル先生でなくとも注意はする。
普段は周りが注意を促す。減点を喰らう可能性だって十分にあるからだ。しかし、近くのジニーは授業を受けてはいるものの虚ろであり、ジョニーや他の人に関心がないように思えた。同じテーブルのメンバーもジョニーの鬼気迫る表情にすっかり怯えてしまって口を出せなかった。
「ベイリー、何をしているのです?」
「うーん、違うな……」
余程集中力が高いのか近くのマクゴナガル先生にも気づかない。テーブルメンバーで、ハッフルパフのケリー・パトリシアはマクゴナガル先生の表情で美しい顔が益々蒼白になり、彼女の友人は可愛そうに思った。
周りの生徒もだんだんとマクゴナガルが話しかけても気にしない変人ジョニーに一時的な娯楽を求めて覗き見をしている。
「ミスター・ベイリー? どういうつもりですか?」
「あっ、マクゴナガル先生……」
「グリフィンドールから10点減点。最近の貴方の態度には目に余るものがありますよ」
「すいません……」
「では、教科書を開きなさい」
「はい……」
一部のスリザリン生が、減点にガッツポーズをしていた。勿論見逃されるはずもなく、3点減点を喰らい、グリフィンドールの生徒は陰でクスリと嗤った。
ーー闇の魔術に対する防衛術の授業
「じゃあ……ジョニー!『バンパイアとバッチリ船旅』の二百ページを開いて読んでくれ。」
「……」
「おやおや、ジョニー。しっかりと授業を受けようじゃないか。確かに私の著作に目を奪われるのは仕方のないことだ。しかし、話を聞いてくれないと。こちらも授業をしているのでね。さあ、読んでくれ」
「……では」
とても気怠そうに、緩慢なリズムで読み出した。カタツムリでももう少しマシな速さが出ると思うだろうな。
「はい、ありがとう! ちょっと独特なリズムだったけどね、私は好きだよ。さあ、それでは……」
またロックハートが何かを喋り始めたが、いつものつまらない授業も殊更つまらなく感じてしまった。ノートに描かれた羽根ペンの筆跡はとても形を成していない。長い授業が終わり、のそのそと次の授業へと動き出した。
人気のない廊下では足音がよく響く。
「おい、何の用事だ? アンタらと関わった事は無いはずだが」
様々な寮の女生徒だ。仲の悪い四寮がこうも集まっているのには驚かされる。なんとなくだが、彼女たちがどういった集まりで、何故ここにいるのかも分かった。
「……ロックハート様の授業でよくもあんな無様な真似ができるわね?あり得ない、有り得ないわ…… そうよね、みんな?」
「そうよ!なんなのよ貴方! カッコいいつもりかしら、ロックハート様に逆らう事が。だとしたら辞めたほうがいいわ、とっても気持ち悪いから」
次々に同調の声を上げる。彼女たちの主張はこうだ。俺がアンチ・ロックハートを掲げていて、そのために彼の崇高なる授業を邪魔している、と。調子に乗っている彼女たちには心底嫌な気待ちにさせられた。確かにロックハートは嫌いだが、彼女らが言うそれは非常に大げさだった。マーリンも髭を引きちぎるんじゃないかと思うほどだ。
あんまりにも饒舌なので不思議に思ったが、その事についても自分たちから進んで話してくれた。
「お前らなんてみんなで掛かれば! ロックハート様のために全てが許される。許される。許されるわ!!」
たまにボロボロの生徒を見かけることがあったが、そういう理由だったようだ。実行犯達の目の前で納得はしたくなかった。
盲信している彼女たちはじりじりと俺に近寄ってくる。たとえ一撃一撃が弱くてもこれだけの人数がいればただでは済まないだろう。
『潰れろ、ゴミが』
呪文を唱えると、無数の杖先が輝き、魔法を吹き出そうとする。俺はアンチオクとの練習を走馬灯の如く思い出していた。
「いいか、人間は無意識に支配されている。生きること全てが、だ。呪文、呪いを杖を介して使う際、杖の方向から必ず魔法は噴射する。避けるのも簡単だ。杖の方向を見れば大体何とかなる。」
「チクショウッ!!」
その教えに従って、杖が集中している方とは違う方向に跳んだ。
「うおっ!! グッ…………」
いくつかは避けられたが、命中した魔法は俺の体をグオンと吹き飛ばした。
「いってぇ……」
背中を打った。恐らく青痣ができている。さっさとどうにかしなければ確実に俺はボコボコにされ、青痣だけでは済まなくなるのは確実だと言える。
「綺麗な杖ね……お古の私の杖と変えてあげようか?」
舐め回すように杖を睨め付け、腹立たしいほどに優雅な足取りで距離をとった。ニヤニヤと最悪の視線が地べたに転がっている俺に向けられ、彼女たちは魔法を放とうとした。
「ルーモス・マキシマッ!!!」
俺は目を腕で隠して思い切り、今出せる全力をもって唱えた。杖先の閃光は爆発的に広がって、手当たり次第に目を眩ませる。
「きゃあああッ!!」
杖を握り締めているのにそれらしい反応もせず油断し、俺から反撃されると思わずに呑気に構えていた彼女たちは獲物を嬲ろうするちょっとの時間が命取りになった。
今だ!とチャンスを逃さず、俺はその場を全力で後にする。
タッタッタッと鳴る必死の足音とドクドクと速い鼓動がやけに耳に響いてしょうがなかった。
彼女たちから十分に距離をとってから振り返ると未だに呻いていて、ざまあみろと思った。
「はぁ……危なかった……」
床にへたり込んで危機から脱したことにひたすら安堵していた。イギリス魔法界でグリンゴッツより安全と言われるホグワーツで生徒から襲われるとは夢にも思うまい。
道徳教育について魔法省はカリキュラムを見直すべきでは無いのかと真剣に思う。まともなら死喰い人はもっと少ないし、あんな狂信者どもが生まれる機会も多少はマシになるだろうと予感できた。
とにかく、次の授業へ行くことよりも自分が助かった安堵感にひたすら酔いしれていた。
「遅刻だ。グリフィンドール、5点減点」
スネイプ先生は予想通り容赦無かった。
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昼飯の時間、ハリーやロン、ロンの友人のシェーマス・フィネガンと食べていると、シェーマスが面白い話がある、と言って切り出した。
「なあなあ、知ってるか? 保健室に女子生徒が大量に突っ込まれた話。っと、ああ、秘密の部屋の件とは何も関係ないぜ?」
ハリーとロンが飛び出しそうになったので、慌ててシェーマスはその事を付け足した。
「でも、何で?」
秘密の部屋関連でしか最近は保健室に運ばれることなんてないだろうし、魔法薬の実験の事だったらわざわざこんな大袈裟に言う必要は無い。
「それがな……おっと、この話はマジで内緒に頼む。俺が危ねぇからな」
「勿体ぶらないで早く」
「それはなーー」
シェーマスが何か言おうとしたその時。
「ジョニー・ベイリー。来なさい!」
話はものの見事に中断された。おまけに周りが一斉に俺の方を向く。
「うわ、おい、ジョニーヤバくないか?」
ロンの親友で、俺も親しくなったシェーマス・フィネガンはマクゴナガル先生の怒り具合に自分ごとではないにしろ冷や汗をかいている。彼女が怒ること自体は偶にあるが、ここまでの怒りようは相当のやらかし、もしかしたら退学かもしれない。
「まあ……行ってくる」
心当たりは無い……わけではないが、とにかくマクゴナガル先生の下へ向かった。
足取りはとても重い。コリンたちは恐らく助かるにしても、継承者とやらをぶっ飛ばしたい気持ちに収まりはつかない。そのために授業がついつい疎かになることがままあったが……
マクゴナガル先生の部屋だ。少しだけ声が漏れている。
コンコンコン。
「失礼します」
早く終われ、そう願って扉を開けると、あの時の女のグループが人数はかなり減ってはいたものの、憎々しい目つきで俺を睨みつけている。
「彼女たちから話を聞きましたよ…… 一体どういうことですか!! 彼女たちに対して乱暴を働いたり、魔法を使うなんて…… 場合によっては退学もあり得るのですよ!!」
「は?」
反抗したいだとかそんなガキみたいなチャチな感情では無く、困惑からその言葉が出てしまった。
「ま、待ってくださいよ! 確かに俺は魔法を使った。でも、攻撃魔法じゃないし、ましてや呪いでもない。しかも、暴力なんて……ホントのマジで言ってます?」
「……」
マクゴナガル先生はその細腕からは想像出来ないくらいの馬鹿力で俺の首根っこを掴み、ドスドスと歩き始めた。
「おわっ! ちょ、待っ」
マクゴナガル先生は無言の威圧を放ったまま、俺とともに保健室に入った。
「ベイリー、これを見て何も思いませんか?」
静かなる怒りはホグワーツを爆発してしまうのではないかと懸念するくらい。俺はベッドに横たわる女子生徒、昼頃に襲ってきた奴らを一部を見た。包帯塗れ、割と軽傷者もいたりするが、何故か手に布を当てているものもいる。頭を打って寝込んでいる者だっているそうだ。
「おいおい、冗談きついぜ……」
綺麗に青痣をこしらえていらっしゃる。もちろん俺は暴力は払っていない。使ったのはルーモスー光よ、だけ。俺は人格分裂が起きた事はないし、生憎もう一人のボクにも心当たりは無い。
「俺は暴力を振るってません。なんなら
「あと、彼女達の馬鹿げた主張とやらを教えてください」
そう付け加えた。
「アンタは私たちをぶん殴ったじゃない!! 私なんか……こんなに顔が……ウッ、グスっ……」
ちょうど、マダム・ポンフリーが帰ってきた。
「ここは保健室ですよ!」
マクゴナガル先生と俺は追い出された。
「マクゴナガル先生、人間を殴ったらどうなるか……知ってますか?」
申し訳ないがイラッと来たので語気は自然と強まった。
「怪我するんですよ、何かしらをしない限りね。だけど、俺の拳は魔法薬を使ったとしても綺麗すぎるし、彼女らをよく見てもらえば分かると思いますけど、殴った時の角度も多分違います、俺は彼女らよりも背が高いです」
「何よりも彼女らの一部が包帯巻いてませんでした?」
俺はマクゴナガル先生から解放された。
ーーグリフィンドール談話室
「おい! 退学か?それとも地下牢掃除か?」
シェーマスだ。
「俺は平気だ。ロックハートのファンどもが気に入らない俺をボコボコにしそうとしたんで逃げたら、俺を退学にするためにとんでもねえ手を使ってきやがった」
「あ! 大丈夫かい、ジョニー?」
「マクゴナガル先生にしょっ引かれて行ったから何事かと思ったよ」
「少しだけやられた。危なかったよ、もう少しで退学になるかもだった。あと、俺の女子人気がガタ落ちだ」
「ん? じゃあシェーマスが昼に言ってたアレは……」
ロンは察して青い顔になる。
「いやー本当にアレは不味かった。直撃してたら今頃ベッドでおねんねじゃあ済まなかったね」
「ロックハートのファン、過激過ぎない? ハーマイオニー大丈夫かな……」
「ま、まあ……大丈夫かなぁ?」
その後のことで言えるのは、多くの女子生徒が地下牢掃除に強制的に従事させられたことと、俺が女子からちょっと嫌われちゃったくらい。
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「はっ、くそ、上手くいかねえ……」
知り合いが二人もやられて黙っていられるほど俺は精神が出来てはいなかった。偶然発見した『必要の部屋』は訓練にもうってつけで、周りを気にせずに集中できた。
「おい、……おい!」
「な、なんだよ……」
アンチオクが珍しく大声を出した。
「休め、お前の今の調子じゃあ少しも上達せん。頭に血が上り過ぎだ」
「でも!」
「でももへちまもない! お前は授業に集中出来てないではないか。たしかに友人の仇を取ろうとするのは美しい友情だ。だが、お前は根を詰めすぎだ。冷静でないと上手くいくもんもいかん。そろそろ夕食だ、まずは食べてからにしなさい」
「……分かったよ」
「よろしい」
食事を見てから思った。俺は思ったよりもお腹が空いていて、皿を手に取るスピードもいつもより速いことに。
「でもやっぱり、朝食を三回食うべきだな」
ホグワーツの朝食はなぜか物凄く力が入っている。夕食が美味しいのも尚のことだが、朝食の旨さには敵わなかった。
「ふぁ〜あ…… 眠いな……」
「思ったよりも疲れてるみたいだね。見てないけど、余程頑張ったと見た。エネルギーを充填したほうが、伸びはいいと思うよ」
「イグノタス、わかってるっての」
「はは! そう言って、あくびしてるよ?」
「げ……」
噛み殺したつもりだったが、バレているみたいだ。
「降参だ。寝る」
「それがいいよ」
俺はベッドにいち早く入った。なんだかいつもより気持ちの良さを感じた。そして、だんだんといしきが……zzz
「うん、悔しいが気分がいいな」
目覚めはバッチリ。あちこちがスッキリした。
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「うわー、次なんだったっけ?」
「薬草学。うっかり過ぎない?最近」
「アンドレがいて助かるわ」
「いくら僕がいても、この調子は良くないよ……」
「おっと! すいませーー」
ぶつかりそうになった、彼女の目から視線を離す事が出来なかった。
頭が沸騰しそうなくらいにおかしな気持ち。心臓の鼓動が馬鹿みたいに速まっていく。
「グリフィンドールとハッフルパフの生徒か……邪魔よ」
横にいる奴が何か言っている。そいつはどうでもいい。それより隣の彼女だ。
「あの……貴方の……名前は?」
「……ダフネ。ダフネ・グリーングラスよ」
とても嫌そうな顔でそう答えた。
「……美しい」
自分でも驚くくらいに熱の上がった声だった。
「「「「え?」」」」
彼が発した言葉に一同は耳を疑った。
「俺と、付き合いませんかーー」
脊髄から言葉が紡がれているのだろう。理性はどうやら言う事を聞かない。
「う、嘘でしょ……」
「俺は本気です。からかいや冗談じゃない。一目惚れです」
キャーキャーここで騒げるのが彼女らの強みだろう。当の本人は困惑しっぱなしだが。
「後で……返事します……」
「お願いします」
「おい、行こうぜ、アンドレ」
ようやく理性が手綱を取り戻した。顔が真っ赤なのは魔法で誤魔化す。
「あ、ああ? うん」
すっかり固まっていたアンドレを連れて次の教室へ行った。やはり、授業でも何処か上の空だった。
「お前、スリザリンのグリーングラスに告白したって嘘だろ? ジョーク上手いな」
「事実だ。俺は彼女に惚れた」
「ハ! ジョニースゲーな! クールな変人ちゃんが蛇女に手ェ出したぞぉ!!!」
「……変な気分だ」
彼女に惚れた、と自分で言った割には何故そんな事を言ったのかが分からない。確かに彼女を俺は愛しているが、彼女のことなんてほとんど知らない。
なるほど、二律背反とはこの感情なのだ。
彼女に対する思いはますます募っていくばかりなのに、背後から無表情で氷のような俺がこちらを覗いている。
「はぁ……どうなってんだ?」
暴走する感情は止めどなく溢れてきて心を乱す。あまりにも複雑過ぎるそれを処理するのには経験と時間が圧倒的に足りなかった。今もこうしている間に足が寮の入り口を向こうとしている。
「ああ……どうしてだ?」
このままえんえんと同じ思考を繰り返して、結局眠る事が出来なかった。
「なぁ……ジョニーのあの熱の上げようは、ちょっとおかしくないか?」
「確かにな……でも、ダフネ・グリーングラスの様子からして、
「うーん、これは……面倒くさいかもしれないね、兄さん」
息を潜める三人の額には深い皺が寄っていた。
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俺の身体は泥の中にいるように、とてもとても重苦しい。真っ白の視界がだんだんと晴れていくとそこには1組の男女がいる。どうやら男性に女性が詰め寄っているようだ。
「どうして……私が嫌いなの!? ルド!!」
「は?……何だ、グリーングラスか。何のようだ?この間君の父上に頼まれた物はとっくに渡しているぞ」
「違う! 私以外と結婚するなんて、どういうつもりよ!!」
「何を言っているんだ? そもそもこの結婚もほぼ義務に近いが、私が選んだ相手だ。君にとやかく言われる筋合いなんてないが」
「嘘だッッ!!!! ルドはそんな事言わないッ!!!」
「……君が何と思おうが君の勝手だがね、それを私に押し付けないでくれ。そもそも君とは親しくないだろう」
「一目惚れよ!! 貴方が好きなのに……」
その時、ポン!と音がして一人の紳士が現れた。ジョニーは知ることはないが、彼はグリーングラス家当主だ。
「……娘がすまない」
「はぁ……お願いしますよ。貴方とは仲良くしておきたい」
この光景は、何なのだろう。俺の家とグリーングラス家の先祖が何か喋っている。女の人からはそこ知れぬ悲しみと絶望が伝わってくる。紳士からは安堵と何かが入り混じった複雑な感情。ルドと呼ばれている男からはただ無関心のみが響いてくる。
一本の美しい花は、無残に枯れてしまった。
「ョニー……ジョ……ジョニー!!!」
「んあ?」
目の前にはアンドレが居た。訳が分からない。
「ここ……食堂か……」
知らない間に食堂に座っていて、朝食も持ってきていたらしい。アンドレもいるが、俺にはさっぱり記憶が欠けている。
「全く……食べながら寝るなんてさ」
「いや……すまない」
「それにしても告白するなんて凄いねぇ。すっかり噂になってるよ」
何やかんや話していると、噂の彼女だ。
「いいかしら、そこの二人」
「あ」
ダフネがこちらのテーブルにやって来た。
「お返事なのだけれど……もう少し、待っていただけるかしら」
「……いいですよ、貴方のお好きなタイミングで」
「私からはそれだけ。それじゃ」
椿の花がゆっくり、ゆっくりと咲こうとしていた。
椿の花言葉:控えめな愛、恋しく思う
過去から続く因縁は、決して彼の子孫を逃すことは無い。これもまた、彼女の愛のカタチなのかも知れないと考えた方が……幸せなのだろうか?