ペベレル三兄弟とジョニー・ベイリーの新たなる物語 作:凧の糸
今回くらいで秘密の部屋編は終了。次回からは……
それではどうぞ
「おい、ロン、ハリー。どこいくんだよ」
夜中は基本的に外出禁止である。天文学の場合は例外であるそうだけれど、管理人のフィルチや先生に見つかればロクな目に合わないのはフレッドとジョージのいたずら兄弟から教わっていた。なかなか寝付けずにいたが、ハリーとロンのゴソゴソという物音でいよいよ目が覚めてしまった。
何故あの三兄弟がこの状況で口を挟まないのにはそれなりの理由が存在する。実はあんな一年中ウロウロしたいる三兄弟にも定期的に休眠期間のようなものが存在するのだ。霊体を稼働させるための代償と三人は言っていて、その期間中には三兄弟は姿を現す事ができないらしい。静かなのも偶には良いもんだ。
頼りになる三人がいないのは心細かったが、俺は面白そうな冒険に是非とも参加したかった。
「俺も混ぜてくれ」
「ジョニー、遊びじゃないんだぞ」
「危ないんだからな」
その言葉こそ自分たちに向かって言うべきなんじゃ無いかと思った。
「新手のジョークだろ? どうせ秘密の部屋関連なら人手はいるはずだ」
「……まあ、そうだけど」
「秘密の部屋にいるのはバジリスクか?」
ちょっと揺さぶってみる。
「な!何でそのこと……」
「ロン、静かに……」
「ごめんって……」
「ハーマイオニーがバジリスクについて調べたのか?」
申し訳ないが、二人がこういったことを調べるとは思えない。彼女なら何かヒントを残しているだろう。
「そうだよ。石にされる前に調べたみたい。僕らなりにも調べてね、『嘆きのマートル』は50年前に死んだらしいから何か関係があるのかと思って。あと、ハグリッドの無実を早く証明したいし」
「嘆きのマートル?」
「女子トイレのゴーストだよ。入ってくる人にギャーギャーうるさいからあんまりそこのトイレは使われないんだってハーマイオニーが言ってた」
「よく女子トイレに入れたな……」
「あ、別に変な意味じゃないよ。クリスマス休暇の時にちょっと色々とね。おかげでマルフォイが継承者じゃないって知れた」
「……? じゃあ、一体誰なんだ?」
「分からない。とにかく、今度マートルに会ってみる。そうしたらきっと大きなヒントになるはずだし」
実は、数日ほど前に50年前の事件の犯人としてホグワーツから追い出されたハグリッドは今回も犯人と疑われてアズカバン送りになってしまった。
更に数日後、なんとダンブルドア校長が停職を食らった。秘密の部屋の継承者騒動で散々荒れているこの学校からイギリス魔法界一強い彼を排除するのは愚の骨頂としか言えない。けど、それが上の決定なのだからどうすることも出来ない。グリフィンドールは歯がみし、スリザリンは大手を振って拍手した。
ホグワーツは、危機に陥っている。
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ーー三階女子トイレ
「ねえ、マートル。いるかい?」
マートルは気難しい性格らしいが、ハリーの事は気に入っているらしい。呼びかけるとすぐは出てきた。
「ハァイ、ハリー、今日はおまけが二人も来てるけど……あのハーマイオニーとかいう女は?」
「今日は来れないよ。それよりも聞きたいことがあるんだけど」
「いいわよ、ハリーならね」
ロンが言ってたハリーに惚れてるは嘘じゃないみたい。しかも、二人とも雰囲気がそっくりだし。
「なら、君が死んだ時の様子を教えてくれないか? 重要な手がかりなんだ」
「……いいけど」
顔をしかめるかと思ったが、そういう訳でも無かった。思えばゴーストの感覚は殆ど首なしニックを筆頭に、人間とはかなり異なる事を俺は思い出した。だって、彼らは自分の死んだ日を祝うことすらあるのだから。
ゴーストのことはともかく、内容はこうだ。
・女子トイレにこもった時に何かの音がして、冷やかしかと思ったら死んだ。
・確実に即死した。
・ここのトイレには何かが蠢いている
「やっぱり、バジリスクだ! 秘密の部屋の怪物はバジリスクなんだ!!」
「マクゴナガル先生に伝えよう!」
「実は以前にダンブルドアに伝えた」と言おうとしたその時。
「生徒は全員寮に待機、教授は2階廊下へ集合!」
マクゴナガル先生は魔法を使って校内中に響かせている。一大事のようで、先生の声が少しだけ震えている気がする。
「な、なんだ!?」
「とにかく、二階廊下に行こう」
ハリーの透明マントを三人で被り、廊下へと駆け出した。
ガヤガヤ、ガヤガヤと話し込んでいる険しい顔の先生たち。
「やはり……闇の魔術に対する防衛術の教授であり、数多くの闇の生物との戦闘経験がおありのロックハート先生が……」
俺にはロックハートの顔がみるみる青くなるのがよく分かった。
「うわ、いくらなんでも流石にロックハートがかわいそうに思えてきたよ」
バジリスク相手じゃあ無敵(笑)のロックハートも形なしみたいだ。
「ジニー・ウィーズリーが連れ去れるとは……狙われる事は無いと思っていましたが、恐ろしいですね……」
「え……」
これには俺やハリーも驚いたが、それ以上に兄であるロンは放心状態だ。
「それでは、解散」
マクゴナガル先生のその言葉すら、彼の耳には入ってこないようだった。
「ロン、ロックハートだ。ロックハートの所に行こう」
「……ああ」
ロックハートに怪物退治が任されたのだ。ジニーを助けるにはそれしかない。
「ロックハート先生、おられますか?」
「おや、ハリーにロンか。それにジョニーまで!まあ、仕方ないな。入りなさい」
「失礼します」
ロックハートの部屋は、流石週刊魔女のグッドチャーミングスマイル賞を5回連続で受賞した色男なだけあって洒落ている。服や飾りにライラック色がかなり使われており、彼の好みを窺わせた。
「本で数々の活躍を果たした貴方なら、秘密の部屋の怪物を倒すのに協力していただけますよね?」
「あ〜、そのことなんだが……」
自信家のロックハート大先生はおどおどとし、仕切に瞬きをしている。額からはたらりと汗を垂らした。
「実は……私がやったんじゃないんだ……」
「え?」
「私は……私は……何もしていない……ただ、他人から功績をいただいただけだ。このままじゃあ、秘密の部屋の怪物に殺されてしまう……」
「でも、アンタは逃げれない。どのみち行かなくちゃいけないし、ジニーを助けるのに人手だっているんだ。」
「……」
しばらく説得を続けるとロックハートも諦めがついたらしく、最低限の気力を取り繕ってから共に三階女子トイレにたどり着いた。
「ハリー、またおまけを連れてきてるの?」
「マートル、それは後だ。怪物はどこら辺を行き来してた?」
「その手洗い場」
マートルが指刺したのはただの手洗い場。とても怪物がうろうろ出来そうにないが……
ハリーはじっくりと手洗い場を調べ、何か見つけたようだ。
「これか……」
ハリーはよく分からない謎の言語、おそらくパーセルマウスでシューシュゥーと発音をした。試しに真似をしてスースーと音を出してみたが、うっかり舌を噛んでしまい、三人から不審がられた。
「なんだよ、舌噛んだだけだ」
「そうか……」
ゴゴゴゴ……
「うおっ!動いた……」
茶番はともかく、手洗い場が鈍い音を立てて、動き出した。やがて停止したが、そこにはあるはずのないぽっかりとした大穴が俺たちを待ち受けている。背筋が凍りそうな空気が穴から漏れ出していた。
「うわ……なんだこれ」
臭気も漂ってくる。何か腐ったみたいな臭いだ。
「……これに入るのか」
思わず俺たちはゴクリ、と唾を呑み込んだ。しかし、この大穴に入らなければジニーは助けられないし、犠牲者は増える一方になる。
「な、なぁ……やっぱりやめないかね? 君らだって命は惜しいだろうし、私も命がいくつあっても足りないし、こんなーー」
「うるさい」
気が立っていたロンは妹を助けようとせず、自分の保身ばかり考えるこの教授が心底頭にきたらしい。
どすんと突き飛ばされたロックハートは真っ逆さまに落ちていく。
「ああああぁぁぁぁぁぁ…………」
そこそこの深さがあると身を張って検証したロックハート。
「……僕たちも降りよう」
ハリーが足を掛けたときに、思い出したかのように俺の方を向いた。
「待って、ジョニー、先生に秘密の部屋が開いた事を伝えてきてくれないか?」
「ま、待ってくれよ。俺だって役に立たない訳じゃない。バジリスクなんてバケモノに人手が多い方がーー」
「うん、でもね。万が一だよ。僕とロンで降りるから、出来るだけ早めに呼んできてくれない?」
ハリーの力強い意思のこもった目と言葉に、血の上った頭はすっかり冷却された。
「……分かった、後で揃って糖蜜パイでも食いに行こう」
「じゃ、頼むぜ」
そう言って、ハリーとロンは穴の中へと進んでいった。
「俺も役割を果たしますか……」
自身に魔法を掛けて、出来るだけ早くに着くようにと無我夢中で地面を蹴った。
「ベイリー、貴方は」
マクゴナガル先生の言葉を差し置いて、俺は叫ぶ。
「先生! 秘密の部屋がッ、開かれました!!」
その時、教員の間には緊張が走った。
「ベイリー、状況説明なさい」
俺は洗いざらい話した。途中で睨まれたりしたが、そんなの関係ない。
「なるほど……では、貴方は寮に帰りなさい。仕方ないので今なら不問にしましょう」
「では、吾輩が……」
スネイプ先生たちで組まれたチームは3階女子トイレへと向かって行った。
「戻るか……」
俺ができるのは、四人の無事を祈るのみだった。
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「お前もよぉやったのお」
「良かったな。全員ゴーストの仲間入りを避けれたなんて、まさに奇跡的だ」
「あのね、勇気と無謀は履き違えるものではないよ」
アンチオクからは称賛を、カドマスからは皮肉を、イグノタスからは忠告だった。
「まあ良いじゃあねえか。こうして糖蜜パイ食えてるんだからよ」
ハリー、ロン、俺の三人でパイを頬に溜め込んでいた。ホグワーツの屋敷しもべ妖精に作って貰った特製パイ。熱々で口をやけどしそうだ。
「いやー、やっぱりうまいね。美味い」
ねっとりした砂糖の甘みにサクサクのパイ生地が美味い。
「にしてもロックハートの呪文が逆噴射するなんてね。危なかったな」
「まあ、バジリスクに比べたらなんて事ないよ」
ハリーはあの後一人でバジリスクと決闘したらしい。ジニーが操られた影響で倒れ込んだ上に、ロックハートは壊れているロンの杖を使った結果、オブリビエイトー忘れよ、が自分に当たってしまった事でぶっ倒れたそうだ。
ロンが二人を見ておくためにもハリー一人で、トム・リドル、ヴォルデモートの若かりし頃としもべのバジリスクと戦うことになった。
バジリスクも蛇なのでハリーのパーセルタングで操れるかと思ったら、トムの方が上手でどうにもならなかったらしい。
必死に逃げまわるが、濡れた床に滑ったハリー。絶体絶命のそのときにダンブルドアが飼い慣らした不死鳥、フォークスがどこからか飛んできた。
何故か組分け帽子を携えたフォークスはバジリスクを撹乱した。
その恐ろしい視線が飛んできても、フォークスには通用しない。その恐ろしい牙も華麗に回避してみせた。ガツンと両目玉を突いて死の視線も使えなくするという一騎当千の活躍だ。
持ち直したハリーは逃げまわった。紙一重で突撃を避け、機転をきかせて視界を失ったバジリスクを翻弄する。
やがて、ハリーの元に落とした組分け帽子をハリーが取ったときにハリーはダンブルドア校長の言葉を思い出し、バジリスクに立ち向かおうとする勇気を振り絞った。
そうすると、ズルリと帽子から一本の美しい剣。グリフィンドールの剣が出てきたんだと。
偉大なる創始者の剣はバジリスクの頭を口からズブリと一刺し。苦しみ、のたうちまわったバジリスクはそのままバタリと死んだ。
しかし、ハリーだって致命傷だ。死中に活とは正に事ことだが、バジリスクの牙を右腕に受けたのだ、バジリスクはハリーを道連れにあの世へ送ろうとした。
だが、そうは問屋が卸さない。再びフォークスが飛んできて、ハリーの傷にポタリ、ポタリと涙を落とした。
すると、どうだろう。傷があっという間に治っていくではないか。不死鳥の涙には癒しの力があり、バジリスクの猛毒すら解毒してしまうのだ。
「なんか、いい具合にまとめたね」
べとべとの口元でそう言ったハリー。向こうからコツコツと足音が聞こえてきた。
「貴方たち……何してるのよ?」
「あ、ハーマイオニーか。見ての通り糖蜜パイ食べてる」
「はぁ……」
ハーマイオニーはすっかり呆れ返っている。
「いらないの?」
ロンがそう言った。後一皿分は残っている。
「……一つ貰うわ。あと、食べたらしっかり歯磨きをしなさい」
ハーマイオニーは小言を言いながらもパイを口にした。
「!!」
どうやら、ハーマイオニーも俺たちと同じように旨さに言葉が出なかったみたいだ。
「おいしいわ……」
親が歯医者のグレンジャー家ではあまりお菓子を食べないそうだ。彼女にとって糖蜜パイは刺激的過ぎたのかも知れない。
「そういえば、ダフネとはどうなったのよ」
思い出したかのようにハーマイオニーは俺がちょっぴり傷つくことを言った。
「あ、それ僕らも気になってたんだ」
「うんうん」
「あー、フられちゃったんだよね……『ごめんなさい』って……」
「……」
「うん、そのー、ドンマイ。まだ一年生だぜ?」
糖蜜パイに塩気って混ざってたかな?
ーー少し前
騒動もようやく収まり、ハグリッドは無事釈放、ダンブルドアも復帰する前の日。
ダフネ・グリーングラスは俺の前に現れた。
「ちょっと、いいかしら」
久しく訪れていなかった胸の高鳴りと、ドロドロとしたナニかが心に流れ込んできた。
「あ、ああ。勿論」
その日はちょうど日が出ていて暖かい庭先だった。真っ直ぐの綺麗な髪は太陽光を反射して、俺の目を惹きつけた。
「……ごめんなさい。そもそも貴方の事を殆ど知らないし……グリフィンドールじゃないの。」
「これから知っていけば良いさ。でも、寮くらいでなんだよ」
「貴方……バカなの?」
「今は少々ネジが外れてるんだ、気分が上がってね」
「はぁ……」
彼女はこめかみを抑えてダメだこりゃと首を振った。
「分かってるよ。でもさぁ、君のこと諦められそうにない。提案なんだが、まずは友達からでどうか?」
「……まあ、それくらいなら」
「やった!」
「ってな感じで、友達から始まった」
「……なんか、別人ね」
ハーマイオニーはひどく驚いているようだった。ハリーとロンは以前に目撃したことがあるのでそこまでの反応だが。
「不思議な話なんだが、ダフネを見るとこう、何というか血が熱くなる感覚と無性にドキドキしてくるんだ。で、しばらくすると収まってどうしてああなったんだろうって思うんだよ。マジであの時の俺は俺じゃないんだ」
「へぇーお熱いねぇ」
「ロン!」
「そんなにカッカカッカすんなよ。ママ並だぜ、ハーマイオニー」
二人が争い出した。ハリーはといえば糖蜜パイにかじりついて、こちらに気づきもしない。
「あっ、マズイって!」
残ったパイは皿から放物線を描いてロンとハーマイオニーに飛んでいく。
「「あ」」
ベチョリ
二人の頭はすっかりべとべとのぐちゃぐちゃに。砂糖の匂いがふわりと香ってきた。
「ワーオ……」
静かな空気が流れた。俺とハリーは中々に面白い光景から目を逸らす。そうしないと爆笑しそうで危なかったからだ。
「あーあ。取り敢えず風呂に行こうよ」
ロンが最初に口を開いた。前にいたずら双子から似たようなイタズラを仕掛けられた時に思い知っている彼は、糖蜜パイのねっとり加減は早めに落とさないと落ちなくなることをよーく知っていた。
「言いたいことは山ほどあるけど、一時休戦ね」
「うえ、べとべとだよ……」
二人仲良く駆け足で風呂場へと走っていった。
「取り敢えず、皿を持って行こう」
厨房に皿を返しに行った。お礼を言ったらたいそう喜んでいたのがとても印象的だった。
「ねぇ、ジョニー」
「ん、なんだ」
「屋敷しもべ妖精ってみんなあんな感じなの?」
「んー、どうだろう。金持ち貴族の家とかじゃないとこないらしいし。尽くすのが生きがいなことくらいは知ってるけど」
「そっか」
「屋敷しもべは色々特殊な魔法が使えるからなぁ、姿くらましホイホイ使ってるのすごいよ」
「ああ……よく知ってる」
「?」
ハリーの目がとても遠く、疲れたような目をしていた。変なの、と思いつつ二人してグリフィンドールの談話室に戻る。冷えた廊下のおかげであの暖かい暖炉がすっかり待ち遠しく思えた。
グリフィンドールとスリザリンの仲の悪さって相当のものですよね。やっぱり創始者のせいなのか?