《AURCS ONLINE》 −OVERLAPPING WORLD LINES-   作:或売奴千刺

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※チュートリアルにあるカメラ操作ターゲッティングはVRMMOという設定上消滅しました。


チュートリアル/ 技能確認

 

 

何処かの街並みがぼんやりと浮かび溶けるように消えてゆく。

断片的な映像は素早く何度も現れ消えていった。

やがて視界は暗転し意識が肉体に宿ったように感じた。

今まで平行感覚がなくただ中にふわりと浮かんでいた体はアバターに入れられたのか皮膚から指の先まで完全に同化したと認識した。

いつもこの段階で気持ちが悪くなりやすいが今回はそこまでではなかったようだ。

 

 

「先程の転倒で、頭を打ってしまったようだが大丈夫か?」

 

不意にかけられた声に意識が覚醒した。

ゆっくりと瞼を開け声の主を見据える。

しかしそれよりもこの壮大な景色につい感嘆の声がもれた。

 

「おぉ……」

 

目の前に聳えるのは立派な城壁と重厚な門、あたりに広がるのは山々とどこまでも続く平野。そしてその先にうっすらと見える海。青い空から照りさす太陽と青々とした木々。

足元を見てみれば多種多様な草花が咲きほこる。

現実世界ならば雑草などわざわざ見ることはないだろうが、これが人間が作った世界だと知ってみるとこういう小さなものにも感動を覚える。

山から吹き降りてきた風が草や木をなびかせ青々とした匂いを鼻腔に運んだ。

現実世界なのではないかと思ってしまいそうなくらいの完成度ながら、しかしこの世界が現実ではないと脳の奥に届く牧歌的なBGMと視界に映るUIがそれを証明していた。

 

「えっと……本当に大丈夫か?」

 

あまりにもこちらが黙っていたためか先程の声の主である女性が心配そうに顔を歪めてこちらを見ていた。

原作のチュートリアルにこんなセリフはなかったはずだが。

そこまで考えてそういえばこのゲームは原作シナリオが崩壊しない程度に自由に会話ができるAIがNPCと搭載されていたことを思い出した。

つまりは人間と同じとまではいかないが、NPCといえど彼女彼らにも一応感情や思考があるのだ。このキャラクターがチュートリアル限定であってもずっと黙っているのはよろしくない。

ええっと、声の出し方は……。

 

「あー、あ、ぁ」

 

「どうした?本当に調子が悪いのか?今日は休んで明日にしてもいいぞ。別に急ぎじゃないからな」

 

やばい、NPCの裁量によってチュートリアルが終わりそうだ。女性キャラクターはゆっくりと近づいてきて今なお地べたに座り込んでいる俺に手を差し伸べてくれた。何処かぶっきら棒な喋り方をするキャラであるが悪くない性格だ。寧ろ身近にいる人の誰よりも優しい。

 

「いや、大丈夫だ……です」

 

大丈夫だといつもの口調で返してしまったがよくよく考えてみなくとも安易な考えから女性アバターを選んだのだった。

思考するということは男のような喋り型をしていたら不信感を抱いたりするのだろうか。

差し伸ばされた手を握って立ち上がると顔から緊張を緩ませバシバシと背中を叩いてきた。熱血系の体育教師みたいだ。

立ち上がってみると少し設定したアバターの身長が低かったかもしれない。

目の前の女性キャラクターの顔をジッと見ていると顔を背けてぽりぽりと頬をかいた。

しかしこうまで人間っぽいとコミュ症なプレイヤーには厳しいのではないだろうか。

 

「な、何をジッと見ている……私をみても何も面白くないぞ」

 

何だこれ……ツンデレ?

本当にこのキャラってこんな属性のキャラなのか?

 

「ああソナタは美しい。まるで月の女神のようだ」

 

「は?へ?……め、めがみ?何のことだがわからないがコレは褒められているのだろうか」

 

ツンデレなセリフが飛び出たので古臭い時代に粋なセリフと言われたものを吐いてみたが伝わらなかった。

照れているのかそれとも世界観的に神や女神が存在しなかったのか。それはおいおいシナリオを進めていけばわかるだろう。

 

「いやしかし、冗談を言えるようだと大丈夫なようだな、安心したよ。私の頭の上にシナリオを進める"メインクエストアイコン"が出ているのがわかるか?」

 

さっきまでこの世界の人間として話していた相手がシナリオやらアイコンやらメタを言い出したので頭を傾げたがそういえばコレがチュートリアルであったことを思い出した。

 

ジッと頭の上を見てみると黄色く縁取られた!マークが現れた。

その下には???と表示されている。

 

「"水色の矢印のガイドアロー"に従うとメインクエストアイコンを辿れるぞ」

 

今度は身体の周りに光が集まり腹回りに浮き輪のような輪が現れた。

その場で回ってみても輪の頂点についた矢印は黄色い!マークの方を向いていた。

 

「そうだ、それから私の方に歩いてみてきてくれ」

 

名前がわからない女性キャラクターに向かって歩いていく。とは言っても先程向こうから近づいてきていた為そんなに歩くことはなかった。

 

「歩行に問題はなさそうだな。先ほど地震が起きて足場が崩れた時、自ら転倒してまで庇ってくれたので助かった。恩にきる」

 

主人公……めっちゃいいやつ!そんな記憶ないけど。めっちゃいいやつ!(二回言ってみた)

 

「そういえばまだ顔色が悪いが体調は大丈夫か?……ううむ、でも君は常にその顔色だからな、でどうなんだ?私の名前わかるか?」

 

「ええと……(名前、わからん!)」

 

「はぁ……忘れたのか?嘘だろう!?そんなに深刻だったのか」

 

主人公の設定がえらいことになってない?記憶喪失?

 

「あー、レイナだ。改めてよろしく頼むよ」

 

女性キャラクターの頭の上にあった⁇?が同僚レイナに変わった。

同僚、ということは主人公の設定は彼女と同じ仕事をしているのか。

 

「ところで明日の仕事は君とペアだと聞いた。君は十分に戦えるだろうが…………、念のため戦闘手順の確認をしたい。いいかな?」

 

戦闘ね、まあアクションゲームで主人公が一般なのにいきなりモンスターと戦えるのはチュートリアルと言えどおかしいもんな。

 

 

自転車のベルのような音がして目の前にクエストウィンドウが表示された。

急にベルのような音がしたのでビクッとしたがわかりやすさで言えばいいのか?

 

ーーーーーーーーーーーーーー

《チュートリアル-技能確認》

依頼確認

明日は同僚のレイナと仕事がある。

己の戦闘技能を彼女に示してみよう。

 

※"オピオン"を2体討伐してみよう

報酬 0ルギア 経験値440exp

 

<OK>

ーーーーーーーーーーーーーー

 

へぇ、NOはないのか。

目の前に表示されたクエストウィンドウは羊皮紙のような材質の紙にクエスト内容が謎の文字の上から日本で書かれていた。謎の文字はこの世界の文字という設定だろうな。

しかしちょっとみづらいな。今はチュートリアルだからいいがシナリオを進めていくとこの向こうが見えないクエストウィンドウが邪魔になってくるだろう。コレは報告して改善して貰いたい。

 

<OK>←

 

《MAIN QUFST START》

 

「そうだな……では丁度この辺りにいる"オピオン"を倒してみてくれないか?」

 

「わかりま、いや。わかった」

 

同僚なんだから敬語じゃなくてもいいだろう。

 

「オピオンはどれだかわかるか?」

 

「わからない」

 

「そうか……なら"!"のアイコンがついたモンスターを探すんだ」

 

顔を動かして辺りを見てみると玉ねぎ型のモンスターの上に"!"マークが表示されていた。

玉ねぎ……オニオン……オピオンか。

 

「見つけたか?なら近づいて攻撃してみてくれ」

 

攻撃してみてくれと言われてもどうすればいいんだろうか。

何か武器は持ってないだろうかと探すと、いつのまにか背中に括り付けてあることに気づき引き抜いて持ち上げてみる。

しかし剣も触ったこともないふったこともないが上手く攻撃出来るだろうか。

試しに振り下ろしてみると重心がずれて転倒した。その勢いでオピオンを一匹圧殺した。

 

違う倒したけどこうじゃない。

他のVRMMOではいつもメイスをふるっているから勝手が違うな、しかも体重移動や重心にアシストが乗ってないな、これは難しいぞ。

 

「少し見えづらいか?視点を合わせて見ることでピントを合わせることができるぞ」

 

アドバイスを聞いて今度はジッと見つめてみる。

遠くがボケる代わりにオピオンに視点があった。さっきより距離がわかるような感じがした。

 

剣を杖のようにして立ち上がり今度は二体目を地面を抉るように下から掬うように斬りつけた。

長剣が重かったのもあるし、剣を振るう体勢になっていなかったのもあるのか後ろによたよたと下がったが今度は転倒することはなかった。

しかしオピオンはまだ生き残っておりぴょんぴょんとその場で跳ねていた。

今度は転ばないように腰を落として足を大きく開きながら踏み込むように長剣を叩きつけた。

 

「はぁはぁ……これなんていう鬼畜?」

システム的に息はきれぬが精神的には疲れた。汗が垂れてきたような気がして額を拭うが実際には乾いていた。

 

「ん?終わったか。いい腕前だ!こちらを向いて一度こちらへ戻ってきてくれ」

 

こういうゲームだと武器を自動で戻すモーションや武器が元の位置に戻ったりするものだがそうでもないらしい。

まだスキル確認をしてないし、おそらくこの後も戦闘を通したチュートリアルがあるだろうから剣は背中に戻さずに引きずっていくことにした。

 

「どうだ?訛ってなかったか?」

 

思いっきり鈍ってました。下手くそですみません……。

 

「仕事ではもう少し強い相手が出てくる可能性がある。スキルを使うのが有効だろう」

 

まじかよ、体で押し潰したりスキル無しで叩き切ったりしたんだが。最初から教えてくれても良くない?……いいよね。

 

「まあ、その倒せてはいたし君の技能に問題はなさそうだな……一応お手本というか私も一つ斬って見ようとしよう」

 

そういうとレイナは離れた地点にいるオピオンに向かってすり足のような動きで高速で近づき腰に挿してあった刀を抜き目にも止まらぬ剣技で斬ってみせた。剣が見えることはなくただ切った斬撃が目に見えるばかりであっという間に10体のオピオンを片付けると刀を納めた。

 

「ふっ……私も問題はなかった。少し安心した。君と組むのも久々だから。

腕は衰えていないらしい」

 

明らかな差を見せつけられて技能確認のクエストをクリアした。

 

 




このまま続くとチュートリアルだけで10話超えるな……(やっべぇ).

クローズβ編が終わったらオープンβ編に入りますがどの職業を選択してほしいですか?

  • ソードマン 物理近接脳筋
  • スカウト 遠距離系万能職
  • クレリック 火力皆無支援職
  • マジシャン 逃げ足最速魔法職
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