オラリオに婆娑羅者がスローライフを求めてやってくるのは間違っているだろうか? 作:RJG(@д@)
第1話
「不覚…」
小人族の少女──ササ・トーヨーは、全てが集まる街・オラリオの路地で呻いた。モスグリーンの貫頭衣に、ボロい胴丸に草鞋。というチグハグな出で立ちで倒れている。そう、ササはいわゆる行き倒れであった。
「路銀落とすなん、て」
空腹で回らぬ頭で財布を落とした地点を諳んじてみるも、ぐうぐう騒ぐ腹の虫に邪魔される。
「……蟻さ、ん」
そう言えば『こちら』の故郷でもイナゴを食べていた。蜂もご馳走だ。……突っ伏している自分の目の前をぞろぞろと通過していく、蟻の行列をじぃ、と見詰める。
徐に蟻を1匹抓み口へと──
「待て待て。腹を壊してしまうぞ!」
「あぅ」
すんでのところで通り掛かった長身の男性に制止された。蟻は逃げていった。
「……だぁれ?」
「私はこの近くに住まう者だ。どうやら腹を空かせてるらしいな……これを食べるといい。揚げたてだぞ」
男性は抱えていた紙袋の中から揚げ物を取り出し、ハンカチに包んで渡した。
ぐう~ぅッ!
催促するように高らかになる腹の虫。
「ありが、と。いただきま、す」
ぱく、もぐもぐ。大口を開けて齧り付き、暫し響く咀嚼音。
「美味し、い!」
「口合ったようで何よりだ。それはこの街の名物でな。『ジャガ丸くん』というものだ」
「ジャガ丸く、ん……!」
眠たそうと言われるササの両目がキラキラと輝き、やや見開かれる。空腹に放り込まれたジャガ丸くんの味と質量に幸せな気分になりながら、都合四つ平らげた。
「ご馳走さまでし、た」
「うむ、お粗末さまだ」
「……お金、ない」
「よいよい」
「で、も……うーん。うん」
「どうした? 本当に構わぬのだぞ」
「うん。体で払う」
ひそひそひそひそひそひそ!
物陰でササと男性のやり取りを見ていた複数の人影がざわつき、緊張が走る。
『おい、ついに幼女まで誑かしたぞ、ミアハの奴!』『おまわりさん、あいつです!』『イエス、ロリータ。ノー、タッチ!』『あばばばば』『クッソ、裏山けしからん!』『なにあの幼女(天使)、お持ち帰りしたい、はぁはぁ』『おま、おまわりさーん! こいつもです!』
『俺が、ガネーシャだ!』
小声で騒ぐ野次馬に気付くことなく、ササと男性──ミアハの会話は続く。
「ふむ。手伝いしたい、と?」
「ん」
「本当に気にせずともよいのだが……よし、ならばこのジャガ丸くんの袋を運んでもらえるか? 少々買い過ぎてしまってな」
「ん」
「重くないか?」
「ん、へーき。どこにはこ、ぶ?」
「私はミアハと言ってな。この路地の奥にある【青の薬舗】で医薬品を売っているのだ。そこまで頼めるか?」
「ササはササ。任せ、て」
「おおそうか、よい名だ」
これがミアハとササの出会い。