「百鬼ー、これも頼むわー。」
「食材投げないでくださいよ大将。」
投げられた野菜を片手間に微塵切りにする。
「流石に早いな。」
「俺はフードプロセッサーじゃないんですよ。」
「すまんな。お前に頼むと早いからな。」
「調子いいんだから…」
まあ拾ってもらったことには感謝している。この体質が発現してからというもの近づく物体すべて切り刻んでいたからな…
「たいしょーやってるー?」
「おう、いらっしゃい!」
「いらっしゃい。」
「今日は百鬼の兄ちゃんも表にいんのか。珍しいな。」
「今回はたまたまですね。接客するのはいくら何でも危ないですから」
「苦労してんねえ…とりあえず注文いいかい?」
「はい。」
「野菜炒め定食よろしく。百鬼の兄ちゃんが切ってくれ。」
「了解です。」
あの常連さんはいつもこうだ。どういうわけか俺の斬撃で切った方がうまいらしい。
さて仕事だ。といってもトントンなんて良い音を鳴らして切るわけではなくどちらかというとスパスパと純粋に
「大将!材料刻み終わりましたよ!」
「おう!いつものとこ置いといてくれ!」
使い古したコンロの脇に刻んだ材料を積んでいく。それを大将が掴んで炒める。いつもの光景だ。
「よし!できた!」
「お、流石に早いね。」
「一番時間かかるの百鬼に任せてるからな!」
「俺はそれしかできませんからね。」
ごく最近までまともに物をつかむことすら危うかったのだ。まだ流石にそれ以外の仕事はできない。
「ふみまへーん、ゴックン、おかわりおねがいしまーす」
「はーい。女将さん向こうのちょっと見づらい子おかわりだそうです」
「あら、今行ってくるね。」
「よろしくお願いします。」
「女将さんいつもありがとー。ちょっと弱くなってるとはいえ空間曲がって見えてるのに」
「いいのよ、いろんな体質があるもの。百鬼ちゃんだってそうなんだし今更よ。」
女将さん…俺一応大人の男なんです…百鬼ちゃんはやめてください…
いくらそう思ってても口には出せない。一回言いかけたら半泣きになってしまった。
「百鬼!次の材料頼む!」
「すいません大将!すぐに!」
いつもの光景、日常。俺は一回失ってしまった。故にこそやはり大将や女将さんには頭が上がらない。
まあ、取り戻せたのにはおせっかいな
「大将!次の材料あがりました!」
もう少し役に立てるように練習しよう。
頑張ってな。百鬼青年。大将に恩を返すために。
百鬼:体の周囲に斬撃が発生する。意識的に強弱を切り替えることは出来るがどう頑張っても止めることは出来ない。
この周囲というのは意識すれば発生する場所を集中させたり体からの距離を変更することが可能。百鬼さん最近気づいたみたいだけど。
別に大将は恩を売ったつもりはない。面白そうなやつが歩いてたから自分の店で働かせようと思っただけ。私欲。
次回はおせっかいなアイツが出てきます。