神さまばっかの世紀末な世界に、俺が望むこと   作:赤サク冷奴

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TS娘がラキスケに襲われるの好きぃ……


お約束の対象に、TS娘が含まれていいものなのか

 

「「…………」」

 

 ソーマとしばらく抱き合っていたのだが、まあ、特に何かせずにずっとそのままでいるのは、段々と恥ずかしくなってくるものでして。

 

 現在、居た堪れなくなった俺とソーマがそっぽ向いて無言になっているという状態が30分くらい続いている所だ。

 

 ……コミュ力無さ過ぎぃ!

 

「いよーっす。お、シアンもう起きてたんだ──って、何このお通夜ムード」

 

 お、おお……コウタよ。居た堪れなくなって双方話し掛けられないという負の連鎖から解き放ってくれてありがとう。

 さすが、GEギャグ時空に住まう者の一人だ。

 

「ん……すごい、恥ずかしかった」

「えっ」

 

 肩を竦めつつ、わざとらしく頬を赤らめてみれば、ズズズと、無表情でソーマへ眼球をギョロりと移動させた。

 

「……いや、そのだな。やってきたのはアイツからでな……俺はその……不可抗力だ」

「コイツら病室で一体ナニをおっぱじめてやがった……ッ!」

 

 や。そっちの意味じゃないっす。

 

「こう……抱き合った」

「やっぱりソッチの意味じゃん!?」

「誤解を招くような発言はやめてくれ……普通にハグしあっただけだ」

 

 ソーマがげっそりとした様子で弁解するが、コウタは信じていないようであからさまに胡乱な目を向けている。

 

「ハグしあったって、一体どういう状況になったらするんだ……でも、確かに仲はいいし、そういうのは普通に有り得る……?」

 

 どんだけ疑っているんだ、コウタは……俺も悪ふざけが過ぎたとは思うが、そこまでソーマの信用って無いか?

 

「……いやまあ、いいけどさ。シアンは体調大丈夫なのかよ?」

 

 突然、そう訊かれるが、まだ身体能力の変化とかは分からない。

 分かるのは、せいぜいオラクル残量が少ないという事くらいか。

 

 ベッドから出て立ち上がってみる。

 

 ……なるほど、サッパリ分からん。

 

「……ちょっと、身体を動かしてみないと」

「いやいや、治りたての身体で動くのは……あれ、この常識ってアラガミにも通用する?」

「……疲れないし、筋肉量も変化しない」

 

 精神的な疲れはあるが、基本的にブラックな労働環境に耐えうる仕様である。

 なんて慈悲のない身体なんだろうか。

 

「んーと、まあなんにせよ、それじゃあ相手がいた方が分かりやすいよな? ついさっき、丁度よく俺の同期の奴が帰ったとこなんだ。いま、エントランスに呼んどくよ」

 

 懐から電話を取り出すと、ポチポチとメールを送り始めた。

 

 相手かぁ……コウタと同期だとしたら────はい?

 

 ちょっと待った。

 コウタの同期とな?

 

「……今の時期からして、来れそうなのはアイツか」

「……あいつ?」

「フッ……会えば分かるさ」

 

 俺が知る限りでは、コウタの同期は二人しかいない。

 

 一人は、新たなアラガミの発見や世界各地にサテライトを建てるため奔走している。

 一方で、もう一人……今何をしているのか全く知らない人がいる。

 

「おっし。じゃあ、早速着替えちゃって。あいつが待ちくたびれる前にな?」

 

 コウタに背中を押されながらそう急かされて、病室から自室に戻ってきた。

 

 基本、寝に来るぐらいしか利用しないこの自室は実に変わり映えしない。

 部屋を与えられた時と何の変化も無いし、これからもきっと変わらないのだろう。

 

 そんな部屋にある、備え付けのクローゼット。無論、物はない。

 僅かな間しか着ていなかっただろう病衣を綺麗に畳むと、一つだけ掛かっていた、平常時に着用するクレイドルの制服を取って着込み、アリサ仕様のチャックを閉め……

 

「むっ……」

 

 少し胸を押さえつけて……よし、閉まった。

 

 危ない。もう少し胸があったらアリサになってしまうところだった。

 

「……むぅ、少しキツい」

 

 なんともまあ窮屈なもので……蒸れてきたら、痒くなりそうだ。

 

 今し方まで忘れていたが、この制服の大きさが身体の成長に伴って合わなくなってきていたのだった。

 女性型アラガミの捕食の弊害だ。背が高くなるのは良いが、胸も大きくなる。

 尻の大きさは分からないけど。

 

 そういえば、サイズでもう一つ思い出したのだが。

 

 やたらと、俺に合うように作られている節のあるこの制服。

 ソーマ曰く、俺が極東に来る前からあったらしい。

 

 しかし、今更ながら思えば、あんなに体のサイズにピッタリだったというのが不思議なものだ。

 一体全体、どうやって用意したのだろうか。

 

 もしかしてあのスターゲイザーが、前々から俺が来ることを予想していたとか。

 

「……そんな訳ないか」

 

 そんな未来予測じみた事が出来るのは、この世界でただ一人……ラケル先生くらいなもんだ。

 

 胸が押し付けられるという不快感を感じつつ、腹部のボタンを留め、スカートを穿き、病室のサンダルからニーハイとロングブーツに履き替える。

 更に腕に付けるソックス的なアレとヘアピンを着ければ……

 

「……フェンリル極東支部、独立支援部隊クレイドル所属、シアン・シックザール准尉、着任した」

 

 鏡の前で敬礼すれば、気分もすっかりフェンリルの軍人に戻った気がした。

 

「……よしっ」

 

 準備万端、活気横溢。いざ、約束の地に往かん────!!

 

 

 

 

 

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

「おっ、君がシアン……で良いんだよな?」

 

 意気揚々とエントランスに降りた俺を待っていたのは、ソーマとコウタ……そして、今はいない防衛班のタツミとほとんど同じ声をした、白いクレイドルの制服に身を包んだ茶髪の男(・・・・)

 

 いや、茶髪とも言えないような明るい色なのだが、それは置いておいて、だ。

 

「初めまして。僕は極東支部クレイドル所属、神薙ユウだ。よろしくな」

 

 ……GE無印、バースト、リザレクション、その他小説版、漫画版では主人公を務め、アプリ版のレゾナントオプスにも登場する最強の神機使い。

 

 それが、故郷たるこの極東支部に帰ってきて、俺の前に悠然と待ち構えていた。

 

「……フェンリル極東支部、クレイドル所属のシアン・シックザール准尉。……こちらこそ、宜しく」

「うん、あのソーマの妹さんだと聞いてる。会えて嬉しいよ」

 

 キラリと輝く眩しいイケメンオーラに当てられてなのか、妙に手を前にかざしたくなってくるな……

 

 ユウから滲み出る眩しいオーラを我慢して、握手を交わす。

 

 ……いや、呑気に握手しているんじゃない俺よ。

 

 さっき、もう一人何やってるのか知らない人がいる〜的なことを考えていたばかりなのに、もののの見事に予想が外れてよく知っている方が出てきてしまったんだが。

 

 ユウくん暇なんですか? あなたここに居ちゃダメでしょ?

 

「それじゃあ、話しながら歩こうか」

 

 失礼なことを考えている俺の心も知らず、キラッキラした笑顔を向けるユウが俺の隣に並んで、恐ろしいほど近い距離感で話し始めた。

 

 アリサ、隠れて俺達のこと見てないかな……大丈夫かな?

 

 

 

 

「……僕がここに来たのは、とあるアラガミを追っているからなんだ」

 

 神機保管庫までのほど近い道のりで、ユウが真っ先に語ったのは、そんな経緯。

 

 とあるアラガミを追っているというのは、ハルみたいに復讐とか仇討ちという理由では無い。

 クレイドルは、人類の未来を切り拓く為に、希少な素材やアラガミを追い求め、世界中を奔走しているのだ。

 

 GE2の後日談的なストーリー、キュウビ編でも、ユウと同じ台詞をリンドウが言っている。

 

 もしや、このタイミングでキュウビか……? などと考えていると、その期待は思いがけない方向で裏切られることになる。

 

 

「……〝黒き暴君〟」

 

「……!?」

 

 

 その単語に思わずビクリとして足が止まると、隣のユウに目が行く。

 先程までの柔和な表情を引き締めており、どこか忌々しげに虚空を見つめていた。

 

「イタリア支部で再発見された、超弩級と言われたアラガミの一体でさ。僕はあいつを一回取り逃してから、ずっと行方を追っていたんだ。そして……君の前に現れた」

 

 わざわざ、生まれ故郷から極東に戻ってくるとか……傍迷惑な話だ。

 海外産のくせにユウと渡り合えるという、謎の能力の高さも問題かもしれない。

 

「……ユウが取り逃がすほどの相手。道理で、かなり強いとは思った」

「それは買い被りすぎだよ。……でも、何にしても、僕のせいで大怪我をさせてしまった。本当に済まない……僕の、責任だ」

 

 そう言って、茶髪が勢いよくファサッと振り下ろされ、腰が直角に曲げて、それはもう盛大に謝ってきた。

 

 ……ちょっと待った。なんで、俺謝られてるんだ?

 

 ユウが取り逃がしたアラガミが、たまたま極東に来て、たまたま近場に来て、単身で突撃したら見事返り討ちにあっただけなんだが。

 これ、100パー俺が悪いだろ。

 

「……謝られる謂れは無い。力量を見誤った私の自業自得」

「いや、そんなこと言ったら僕の方こそ」

「……そんなことは無い」

「いやいや……」

「…………」

「…………」

 

 やがて無言になって、いつの間にか互いに睨み合いの応酬になっていた。

 分かってはいたけど、変なところで頑固だなぁ。

 

 こういう相手にとって、最も手っ取り早い方法は何なのか。

 似たような性格の幼馴染が傍にいた俺はよく知っている。

 

 ニヒルな笑みを浮かべて、掌から神機を作り出して、切っ先をユウに向けながらとある提案をしてみる。

 

「……今回の件の責任問題は、神機で語り合うことにする」

「……その勝負、受けて立つよ、シアン」

「ちょっ、二人とも、もっとこう、平和的な解決手段とかは……?」

「「コウタは黙って(くれ)」」

「アッハイ、すみません……」

 

 男と男の語り合いに情け容赦は無用である。

 

 それに、平和的な解決手段だと全然納得し難いのだ。……特にジャンケンとか。

 あれ、自分が負けると何故だか腑に落ちないんだよな。

 

「……じゃあ、僕が勝ったら僕の責任。シアンが勝てば、シアンの責任だ。どうかな?」

「……それで決まり」

「コイツら争いの動機が訳わかんねえ……!?」

 

 コウタの発言は華麗にスルーする。まさか、ごもっともです……とか言えないし。

 そしてソーマはやれやれだぜみたいに肩を竦めるな。二人して可哀想な子みたいな扱いされるのは嫌だ。

 

 気が付くと着いていた神機保管庫で、ユウが、自身の神機……アリサと対照的な青色の刀身、クレメンサーの神機の柄を掴み、爽やかな笑顔と共に、同じく神機の切っ先を向けてきて……

 

「君に、神機使いの戦い方というのを教えてあげようか」

「……そう。私が磨いてきた生き抜く術を見て、それが本当に言えるのか……試してあげる」

 

 はい、死亡フラグキタコレ。

 

 試してあげるとか言っておいて軽く捻られる未来が見える。

 

 このクール口調のまま売り言葉に買い言葉になると、碌な事にならないというのをようやく学んだよ……

 

 内心で頭を抱えたまま神機保管庫の奥を歩いていくと、重厚な赤い扉の前に到着した。

 鍵は空いているので、扉を押すと、差し込んでくる暖色系の照明の色が視界を覆う。

 

 そこに広がるのは、傷だらけの壁と高台、そして高いところには観察ができるよう部屋と窓が設置されている。

 

 ゴッドイーターの適合試験会場としても使われる極東支部の訓練場に、最初の検査以来、少しぶりに訪れた。

 

 上の窓の部屋にはソーマとコウタが居り、そこから観戦してくれるそうだ。

 

 訓練場の中央に立つと、俺とユウが向かい合う。

 お互いに、ロングブレードの神機。

 

「……どうかな。始められそう?」

「……問題無い。それと、先行は譲る」

 

 ……先行を譲ったのは、下手に俺から攻撃を仕掛けてカウンターされるのが怖いからである。

 断じて、掛かってこいとか、そんなカッコつけの為に言った訳では無いと明言しておこう。

 

 神機を中段に構え、ユウの出方を見る。

 

「それじゃあお言葉に甘えて────シッ!」

 

 初手はステップからの、プレデタースタイル『シュトルム』。

 俺もこのような状況の時はよく使う常套手段だ。

 

 しかし、こちらまで届かない。だがユウは咄嗟に神機を横に振りかぶると、捕食口を横に広げたスタイルで薙ぎ払ってくるのを、間一髪の跳躍で上へ逃げて躱した。

 

 プレデタースタイル『太刀牙』。

 本来よりも圧倒的に短い溜め時間と長いリーチで放たれているのを見て、こいつマジかよ……とドン引きしたのは仕方ない事だと思う。

 

 ……やっぱりただのチートキャラだな。

 

 スチャッと着地すると、ユウは「おおー……」なんて感心したような声を漏らして、神機の構えを解いた。

 

「まるで慣れたような対応だったって事は、シアンも使うんだな、シュトルム」

「……速い、長い、溜まるの三点セット。便利だから使うに決まってる」

「へぇ〜。実はこんなプレデタースタイルの使い方するの、僕しか居なかったけど……もしかして、教える事なんて無いかな?」

 

 ゲームで決められたキャラクターの動きという固定観念に囚われている以上、こうやって実戦の他人の動きから学ぶことが多い。

 おそらく、ユウは俺の逆で、プレデタースタイルを単なる捕食の手段とは考えていないのだろう。

 

「……今度は、私から行く」

 

 腕に、懐から取り出した注射器を打って、強制的にバースト状態になると、ゆっくりと歩み寄る。

 

 ユウも、今打った注射器が強制解放剤だと分かったのか、ジリジリとにじり寄るような足さばきで近づいてきていた。

 

 そんな受けの姿勢を保つユウの意表を突くべく、足に力を込めて地面を力を集中させる。

 そこから、勢いのあるステップをすると、それと共に湧き上がるオラクルが、刀身に蒼き燐光となって現出する。

 

 すれ違いざま、横に一閃。抜き身のまま放たれた居合の様な攻撃。

 

 ──ロングブレード・ステップ□攻撃BA『刹那の斬光』

 

 勿論、直撃はさせていない。いきなりBAは反則過ぎるから、あくまでも注意喚起みたいなものだ。

 そして、発生するオラクルの斬撃のみがユウを襲う。

 

 ……だが、やはり彼は主人公と言うべきか。

 

 ──キィンッッ!!

 

 一度盾を展開させれば、そんな甲高い音が響く。

 あろう事か、様々な方位から来る斬撃を、全て受け止めたのだ。

 

「……今の攻撃、一体何をしたんだ?」

 

 受け止めた当の本人は、盾を閉じると困惑した顔でそう訊ねて来た。

 

 まだブラッドアーツの類いの技を見たことが無かったらしい。

 

「……これは、バーストアーツ。他人にお披露目したのは初めて」

「……強い意志の力があったのは、そういう訳か。参ったな……これは勝算が狂った」

 

 いやそんな訳が無いだろ、と心から突っ込ませてもらおう。

 ユウにとってこれくらい問題外だろうに。

 

「だから、もっと本気を出してみようかな──ッ!!」

「っ!?」

 

 限りなく低空で、斜め上の跳躍。そこから、神機を一回転させ、勢いがついたまま俺に叩きつけんと迫る。

 

 だが、所詮は縦の振り下ろし。それをひょいと避けると、相手に大きな隙が出来た。

 そこへすかさず、ステップ、そして、回転するように斜めから斬り上げると、オラクルエネルギーが旋風のごとく吹き荒れた。

 

 ──ロングブレード・ステップ□攻撃BA『旋風ノ太刀』

 

 体の動きから考えても、回避不可能の一撃。

 ユウと俺の目線が刹那の間に交錯する中、神機の刃が、確実にユウの首を捉えた。

 

 

 

「──うぐぁっ……!?」

 

 ……筈だった。

 

 今のは絶対に当たったと思っていたが、その寸前、ピカッと閃光が視界を埋めつくした。

 現在進行形で俺の体は宙を舞っていて、チラリと確認出来たユウの姿は、大きく後ろに一回転するバックステップをしていた。

 

 ……まーた、こういう展開だよ。

 

 最近、俺より強いアラガミが居なくて調子に乗っていたからか、メテオを乱用し過ぎたからか……どちらにせよ、好き勝手やってきたツケが回ってきたのかもしれない。

 

「ぐっ……!?」

 

 そのまま、訓練場の壁に激突しながら考えていたら、先程起きた現象についてようやく納得がいった。

 

 先程の閃光は、恐らく……いや、確実にインパルスエッジを使った時のもの。

 ユウは、インパルスエッジを真近で炸裂させることで、カウンターと離脱を同時にやってのけたのだ。

 俺よりもよっぽど活用していると見える。

 

「……さて、これはどうするかな?」

 

 ハッとして前を向き直すと、アサルトの銃口が俺をバッチリと捉えていた。

 

「チィ……!」

 

 脚を咄嗟に動かし、優しげな表情のまま容赦なく乱射される連射弾の嵐から逃げる。

 

 負けじと、神機の持ち方を変えてスナイパー(・・・・・)を構えると、五発、天井近くまでに斜めに発射される弾丸を放つ。

 そして、球体と空中に滞留したソレから、更に弾丸が発射される……ユウに狙いを澄まして。

 

 所謂、『脳天直撃弾』と呼ばれる、先人達が遺したバレットの一つだ。

 

 五発の火の弾丸は高速でユウへ着弾しようとするが、それをステップやジャンプで躱していく。

 

 ……だが、それでいい。狙撃弾だろうと回避されるのは分かっていた。

 

 アサルトの狙いが、僅かに俺より外れる。そのタイミングにつけ込んで、近くの壁までジャンプし、その壁を勢いよく蹴った。

 

 向かうは、ユウ一直線。ユウは驚きつつもアサルトを構えたが、それも無駄だ。

 

 この勢いならば、俺にはこれが使える。

 

 神機を横に構えて、盾を展開して突進するアクション──『ダイブ』だ。

 

「なっ……!?」

 

 アサルトの弾丸は跳ね返されていくが、俺の勢いは止まらない。

 

 そして、もう一手を左手に仕組み、片手で神機を支えると、ユウの前に被さるように迫る神機の盾を閉じる。

 それと同時に、盾で隠していたそのもう一手をユウに叩きつけた……!

 

 ──ゴォッ!

 

 重低音の金属音……ユウは予想でもしていのか、ロングブレードの刀身で、一手である左の神機の攻撃を受け止めた。

 

「……やる」

「そっちこそ、まるで三年前の僕を思い出すよ……っ!」

 

 ユウが神機を押し返し、横に薙いだのを右の刀身で受け止めた、左の神機ですかさず首を狙うが、体を反らし少し距離を取られた。

 

 俺の二刀流を見てだろうか、少しノスタルジーに浸っているらしいユウが、息をゆっくりと吐き出し、駆け出す。

 

「それが君の本気かな……まだまだ、負けてられないね!」

 

 右の神機とユウの神機がけたたましい音を響かせて、次いで角度を変えて凄まじい速度で襲い来る二連撃目を両手の神機で防いで押し返す。

 

 ガラ空きになった体に、脚のバネを利用した突撃と、中央から交差するように扇形に切り裂く両神機の攻撃。

 まるでソー◯スキルでも使っているのかと言いたいが、十分に有用なこれを、ユウは弾かれた反動を無理やり抑えて盾を展開し、防がれる。

 

 だが、ジャスガとは言えこれを盾で防ぐのは愚策だ。次の相手の手が読めなくなる。

 そこで俺は注射器を出し脚に素早く注入。減ったバーストを回復させてから、ユウが盾を解除しようとする瞬間を狙い、真横にステップで懐に入り込み、翠玉色のオラクルを両刃に、そしてそれを上段から振り下ろした。

 

 ──バイティングエッジ・双刃形態ステップ△BA『双刃衝破』

 

 真横から、しかもロングブレードでかなりのリーチとなったバーストアーツは、ユウの頭の直上に迫り……

 

「こんっ、のぉ!!」

 

 ……そしてやはり、これも退けた。

 

 ギチギチと、ユウの神機が悲鳴を上げる。

 ジャストガードせずにそのまま方向転換しただけの防御では、ましてやバーストアーツの攻撃を無傷で防げる訳もなく。

 

「ガッ──!?」

 

 盾に二つの傷が刻まれながら、地面に倒れて、大きく転がっていく。

 

 確実な勝利宣言が出来るかと思っていたのに、ダメージのみに留めているのが驚きだ。

 

 その後、横に転がりながらも片手を使って支えにし、飛び上がってから地面に立ち直すと、一度深く深呼吸して、好戦的な笑みで神機を両手で前に構える。

 

「正直、予想外だったよ……君は、その技の有り無しに関わらずとても強いんだな。よっぽど戦い慣れてるし、盾の突撃なんて思い付きもしなかった」

 

 ダイブに関しては、ただ真似しただけに過ぎないが……

 

 と、悠長に考えている暇もなく、圧倒的な脚力で迫ってきて、変則的な斬りかかりで翻弄してくる。

 

 キンッキンッという剣戟の音が鳴るが、こちらは二刀で戦っているというのに、ユウは一刀で全ての攻撃に対応している。

 

 そこで、唐突に左手でコンボ捕食の『疾風』を突き出してみるも、即座にガードされてしまったり、カウンターの捕食『ディオネア』を使ってみても、攻撃して反撃した時にはその場から離れられてしまう。

 ユウ相手にはプレデタースタイルは通用しないというのがハッキリ分かった。

 

「たぁっ!」

 

 ユウの『ゼクスホルン』をガードすると、捕食の当たり判定だけは残り、捕食の動作によって後方に下がった瞬間を突く。

 

 左手の神機を高く上に投げ捨てると、両手でゼロスタンスを取ってから、銃身を向け、インパルスエッジを放つ。

 そうすると、ユウの姿は間髪を入れずに、太い閃光によって消え失せた。

 

 ──ロングブレード・インパルスエッジBA『シャイニングレイ』

 

 空に投げた神機がグサリと地面に刺さる前にインパルスエッジを止めると、黒い影が勢いよく跳ね上がり、俺の直上に到達して、勢いよく迫る捕食口を認識した。

 

「お返しだ……っ!」

 

 あのインパルスエッジを盾でガードしながら近付いていたのか、IEの終わりと同時にプレデタースタイル、『獄爪』を使っての攻撃だ。

 

 左の神機を抜くが、ガードは間に合わないのでそのまま神機ごと食らわせると、噛み砕かれて、そのまま着々と同時にユウがバースト状態になった。

 

 勝てるとは思ってないけど、やっぱり化け物だなぁ……

 

「……バーストアーツを相手にここまで戦えるユウも大概。ブラッド隊のジュリウスでも、今のは受けきれていたか怪しい」

「あの技を使う部隊だっけか……でも正直、感応種と渡り合えるのは羨ましい。僕だと、せいぜい足止め程度が精一杯でさ」

 

 いや、足止めが出来ている時点でかなりおかしい。

 感応種と普通の神機使いが対峙すれば、神機が完全に停止して、普段の力を振るうことさえままならなくなるというのに。

 

 一旦ユウとの距離を離して、壊れた分も含めて手元の神機を作り替えていく。

 

 ……これで、決着を付けるのだ。

 

 俺が思念を送り込むと、白く、流れるようにクリスタルのような俺の神機の刀身はみるみるうちに縮み、その姿を短刀へと変える。

 

 完全に変わると、追加の強制解放剤を打ち、突っ込む。

 

「──ッ速い!?」

 

 元よりの俊敏力を活かし、重心の偏りも重量も無くなった正確な突きは、ユウの盾によって防がれる。

 かなり速く攻撃しているが、ユウもバースト状態にあるので対等に打ち合えている。

 

 しかし、このままユウのバーストが切れたらそこで終わりだ。

 まあ個人的に、相手のバースト切れを待たずに決着をつけたいから、何か決め手が欲しい。

 

 どう追い込むかを練っていると、銃口からインパルスエッジが放たれる兆候。横っ跳びに回避し、バランスを崩さないよう左手をつき、右手の神機をアサルトにして連射弾をぶち込む。

 

 ユウはインパルスエッジの反動で疾走しつつ、幾つか躱し切れない弾丸を剣で叩き切る荒業をやってのけると、こちらに向かって来ていて……

 

 俺は上に飛び上がると、右の神機を前に構えつつ後ろに引いて、エネルギーを溜めに溜めると、赤い閃光と共に斜めに下降して貫く『ランページコメット』を放った。

 

 勿論、こんな技は基本的にアラガミにしか通用しない直線的かつ分かりやすい技だ。

 なので、着地と同時に攻撃してくるであろうユウを狙い、インパルスエッジで吹き飛ばして、首に神機を突き立てるという寸法である。

 

 ……さて、目の前のユウはと言うと。

 

「……掛かってこい」

 

 その一言を言い放つと、神機をポイッと投げ捨てて、素手でチョイチョイと挑発してくるではないか。

 

 ……え? 馬鹿なの? 死ぬの?

 

 しかし、相手はバリバリ直線上にいて、普通に貫かれてしまう。

 

 BAの特性として、一度発動してしまうと解除できない。

 いや、どっかの仮想世界、S◯Oのソー◯スキルみたく、行動が強制的にコントロールされてしまう訳ではないし融通も利くが、このBAは違う。

 一度構えを取って、進む方向へ降下すると逸れることは出来ない制約があるからだ。

 

 となると、神機を捨てた理由は……まさか!

 

 その考えに至った瞬間、ユウの顔がニヤリと笑った。

 

 体を掴まれて、視界が逆さまになる。

 

 ……体術だ。

 恐らく、柔道か、合気道とかそういうのだろう。

 

 一体どこで習ったのかは分からないが、このままやられる訳にいかない。

 立ち所に左の神機を持ち替え、ブラストの銃口を向けたら、火Lの爆発を用いたロケット弾を至近距離で射出する。

 

「ぐあっ!?」

「あぐっ……!」

 

 識別なんてされてないので、自爆で巻き込むことになりながら一緒に地面を転がっていく。

 ご丁寧にも、ユウは俺の手を掴んでいるので離れることは出来なかったようだ。

 

 やがて、壁に激突して……

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぁ……っ!」

 

 ……ビリッとした、脳天まで貫くような刺激が体を突き抜けていった。

 

 

 えっ……? ちょっ、何だ、コレ……マズい……!

 

 こ、こいつ……ま、まさかっ!

 

「この感触……」

「ぁぅ……んくぅ……っ!?」

「──へっ!?」

 

 こいつ、お、おお俺の胸を直で……!

 

 くっそ……! こいつ、ラッキースケベかよっ!

 

 しかも、たった数回揉まれた程度でこんなとか敏感過ぎだろ……顔は上気しているんだろうなぁ……

 って、あぁぁ嫌だ嫌だ……なんで揉まれただけで興奮してんだよ……恥ずかしすぎるだろ、これ……!

 

 鑑みるに、俺はすっかり人外ながらも女の子になっていたらしい。

 分かりたくなかったよ、こんな現実……!

 

 一頻り心で思いの丈を叫ぶと、荒い呼吸のままどうにか頭を冷静にして、状況をよく見てみる。

 

 目の前に、驚いたユウの顔。チャックが壊れてしまったのか服がはだけ、その右手はしっかりと、たわわになってしまった胸を鷲掴みにしている。左手は壁ドンみたいに俺の顔の横あたりにある。

 スカートが翻って、足が地面について膝が立ってしまっているからか、パンツが丸見えに。その股の間にユウの片膝が突いていた。

 

 ……ゴッドイーターはいつからエロゲになったんだ。

 

 しかもこの構図、なんか見覚えあると思ったら俺妹だぁ……!

 

 まさかラッキースケベを逆体験してしまう羽目になるとは思わなかったが、ユウはコミカライズの〝the summer wars〟で色々やらかしている。

 性別が女性な以上、体質的にこうなったのは仕方ないのかもしれない。

 

 それはそうとして、これをどうやって対処しよう──

 

 

「──ユウっ! 帰って来たなら私に連絡をしてくださ……い……?」

 

「「……あっ」」

 

 

 ……そう、考えていた時、それは起きたのだった。

 

 壁にぶつかったと言ったが、あれは嘘だ。

 正確には、扉である。

 

 外から引くタイプの扉を開けたその人物にとって、真っ先に目につくのは、正に目の前でラッキースケベ状態になって固まっている俺とユウ。

 

「…………ア、アリサ」

「ユウ……何をやってるんですか、これは?」

 

 煌めく銀髪が特徴的な美少女。そしてよく見える下乳……だが顔は、般若も泣いて逃げ出すような目の笑ってない笑みであり、ゴゴゴ……という音さえ聞こえてきそうな迫力だ。

 

「いや、これは事故なんだ! 本当に、一緒に吹き飛ばされたらこんな事に……」

「……へぇ、そうなんですか」

「わ、分かってくれたか──」

「じゃあ、なんでまだシアンちゃんの胸を掴んだままにしてるんですか?」

 

 ハッと、こちらに振り返って、自分の右手が未だに胸を掴んでいることに今初めて気がついたらしい。

 頑なに離さないから、こいつマジかよ……と軽く引いていたんだが。

 

「……あっ。いや、これも違うんだ!」

「何が違うんですか?」

 

 浮気現場を見られた夫みたいに動揺するユウと、目が笑ってない笑顔で追及し続ける鬼嫁アリサ。

 

「純真無垢でいたいけな子にこんな真似をして、許されると思ってるんですか? シアンちゃんですよ?  まだ、とても賢いだけで、そういう知識なんて持ってないのに……」

 

 ここにコウタが居たら、「いや、全然そんなことないから。抱くとか意味わかってるくらいめっちゃ耳年増だから!」とツッコんだだろうが、生憎と上にいる。

 

「私だけじゃ飽き足らず、シアンちゃんに手を出すなんて超ドン引きです……!」

「違う、誤解なんだ! 俺は、ちゃんとアリサの事が────」

「……ふぇっ?」

 

 ユウがそう言いかけて、時が固まる。

 

 しまった! とばかりに口を手で塞いだユウと、ポンッと顔を真っ赤にして狼狽えるアリサ。

 二人による桃色空間が形成されつつあった。

 

「あ、あの……ユウ……?」

「その……だな」

 

 ……えっと。ひとまず俺を挟んでやらないで下さないな。

 

 そんな恨みがましい目線を二人に向けても、見事にスルーされる。悲しい……

 

 ユウが立ち上がった隙に、さりげなく俺も立ち上がって、ススッとその場から離れて様子を見る。

 

「また、長いこと留守にして、ごめん……それで、アリサとずっと離れたままになって、そしたら、遠征先でもずっとアリサのこと考えてて……俺、気付いたんだ」

「ユウ……」

「……アリサ」

 

 腰を手で支えるようにし、頬に手を添えるという、イケメンな立ち振る舞いを見せると、一気に顔と顔の距離が縮まっていき……

 

「俺は、アリサのことが好き──」

 

 

 

 

 

「──おいアリサ、少しコイツを借りていくぞ。なに、ちょっとシバく……ゴホン説教をするだけだ。しばらく帰ってこれないだろうが察せ」

「……えっ!?」

 

 いきなり現れたソーマは、さっきのアリサより怖い無表情かつひどく暗い声をユウの上から被せて、すっかり告白ムードだった空間をぶち壊し、突然邪魔されて呆然とするユウの手を引っ張り通路の奥へと連れ込んで行った。

 

 えっ、今の流れで普通割り込んでくるか!?

 

 俺も唖然としながら二人の後ろ姿を眺めていると、大声が聞こえてきた。

 

「ウチの妹にした事、どう落とし前付けてくれんだ、ア゛ァ゛?」

「あ、これ終わった……」

 

 なるほど。理解した。

 シスコン拗らせた義兄による怒りのオーバーリミットだった。

 

 うん、まあそれなら仕方ない。俺も妹にそんなことされたら相手をぶち殺すだけじゃ済まないだろうし……分かるけどさ、その気持ち。

 

「こんなのって、あんまりです……」

「……ドンマイ、アリサ」

 

 ……人生、そんな時もあるよ。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

「やあ、ユウ君。久し振りだね」

「お久しぶりです、博士。ご壮健そうで何より」

「こんなまたとない機会が来ていては、まだまだ老いていられないさ」

 

 支部長室。

 そこでは、リンドウとサクヤを除く元第一部隊の面々が揃い踏みとなっていた。

 

 俺は壊れてしまった服の代わりに、アリサの服を借りることになってしまった結果、下乳第二号となっている。解せぬ。

 

「ユウ君とシアン君の戦いは、しかとこの目で見させて貰ったが……つくづく予想外だ。インパルスエッジを回避や移動、反撃に用いるとは……私では考え付かない使用法だったね。いやー、対人訓練というのも、案外良い経験になりそうだとは思わないかな?」

「……それなら、ユウの相手は女性以外の方がいいだろうな。シアンみたいな事があったら、コイツの命がないだろう」

「あ、アハハ……」

 

 さっきまで、ソーマに命があぶないレベルのシバきを受けていたユウの顔が青ざめて、苦笑いする。

 ソーマによって〆られた直後のユウはまるで生気のない幽鬼だったので、一体何をされたのか地味に気になる所だ。

 

「それはさておき。……ユウ君はこの極東に、第二のアラガミの少女が出現し、それがシアン君であると言うのは認識してるかな?」

「はい。でも、かなりシオとは違うみたいですね」

 

 まあ、あそこまで好奇心旺盛じゃないし。

 人の記憶を持ってたら、理知っぽく見えるだろう。

 

「そもそも、彼女はシオとは似て非なる存在なのさ。現時点で、種として定着したアルダノーヴァ、アリウスノーヴァに続いてノヴァのオラクル細胞群を持っているアラガミだからね」

「「「ノヴァ!?」」」

 

 ……わぁお。それは初耳だ。

 

 つまり、俺は立ち位置的に第三のノヴァになり得る、という訳か。

 

「……前にも見せただろう。コイツのオラクル細胞を用いた装甲が、神機を弾いたあの実験だ。あの堅牢さは、ノヴァの細胞が無ければ幾ら長い年月生きていようとあそこまで際限なく強化されてしまうことはない。推測するに、第二のノヴァのオラクル細胞が変異し、何らかのキッカケでヒト型を成すようになった……それが、シアンというアラガミの正体、と言ったところか」

 

 なるほど。

 ソーマの言う、その何らかのキッカケというのが、俺がこの世界に来れた訳なのだろう。

 

「と言っても、これは特に懸念すべき事ではないだろう。この子は特異点になる可能性を秘めているけど、我々が出会う以前から人として完成している……これは、私がかつて提唱した、アラガミとの共存……終末捕食の留保の、その最たる例になったという訳なんだ」

「おおう……シアン、スゲー立場になってんじゃんか、お前」

「ただ、彼女はノヴァとしても完成に近いから、やろうと思えば終末捕食を起こせてしまうのさ。もし機嫌を損ねたら……もれなく人類存亡の危機だよ?」

 

 サカキ博士がニヤァと口角を上げれば、途端に静寂に包まれる支部長室。

 

 三人の視線がこっちを向いたので、どこかの殺人鬼みたく握り拳を作って、親指でスイッチをカチッと押す動作をしてみると、「ヒェッ……!」って驚いてくれた。

 別に爆弾にしたり、時を消し飛ばす訳じゃないけどね。

 

「取り敢えず、これが新たにシアン君について判明した事実になる。それと、もう一つ……ユウ君が追っていたアラガミ、アーテル・カリギュラがこの極東地域で観測されているから、見つけたら連絡、交戦を避けるようにしてほしい。……いいね?」

「「はい!」」

「よし。じゃあ、また新たな発見があれば、今回みたいに招集をかけるから、宜しく頼むよ」

 

 そう締めくくって、解散の運びとなった。

 

 最後の、黒き暴君に対しての注意喚起は……やはり元第一部隊でさえ勝算が無いと言っているようなものだ。

 瞬間移動じみた速度で攻撃してくるとなれば、そりゃあそうだとは思うが。

 

 博士に見送られつつ、ソーマを除いた元のメンバーで支部長室を出た。

 

「あ、こんばんは!」

 

 エレベーターに乗ろうと歩いていたら、前にいたアリサが横の休憩スペースにいた人物に声をかけたので、そちらをひょっこりと覗いてみる。

 

「博士に呼び出しでもされたんですか? 副隊長さん」

「はい、そんなところですね。……あっ」

 

 ジロリと覗いていたからか、俺の存在が目に入ったらしく、そんな間の抜けた声が盛れる。

 それと同時に、エレベーターが到着した。

 

「よーっす、副隊長。もし博士が変な依頼してきたら遠慮なく相談してくれよな。……また、初恋ジュースみたいなゲテモノが生み出されたら嫌だろ?」

「確かに……是非そうさせてもらいます」

 

 かつて意地張って飲んでしまった初恋ジュースの味でも思い出したのか、苦い顔でコウタに頷き返した。

 俺はあの後、殺人鬼みたいな目をしたシエルにコテンパンにされた思い出しかない……うう、背筋が凍るっ!

 

「君が例の副隊長か……初めまして。僕は神薙ユウだ。君の事は色々な人から話を聞いてるよ。よろしくね!」

「貴方が噂の……はい、神威ヒロと言います。これから宜しくお願いしますね」

「そんな畏まらなくていいって。多分、君は将来僕に並ぶくらいになるだろうし」

「そ、そうですかね……?」

「僕の勘は結構当たるんだ。……っと、それじゃあ、また」

 

 三人が続々と入っていくと、コウタが手を振って呼びかけてきた。

 

「おーい、乗らないのか?」

「……ん。ちょっと用事。先行ってて」

 

 コウタの「おっけー!」という軽いノリで閉じるボタンを押されてエレベーターは下降する。

 そして、急遽できた用事……ヒロと向き合った。

 

 何だか、少しバツが悪そうな表情をしている。

 

 時間を見る限りでは、あの黒いカリギュラとの戦闘からまだ半日ぐらいしか経っていないのだ。

 サカキ博士あたりから事情を伝えられたのだろう。驚きというより、申し訳なさそうな、複雑な表情を見せた。

 

「……大丈夫? 怪我してない?」

「うん、まあ、大丈夫。攻撃を当てたら、勝手に逃げていったし。……それよりも」

 

 顔をむんずと近づけて、冷ややかな目を向けてくる。

 

「……コア、再生出来るとか聞いてなかったよ」

「う……心配掛けたなら、謝る……」

「しかも、最後に遺言みたいに言ってさ……」

「あ、あれは……巻き込んじゃって……倒しきれなくて、ごめんって、言いたかっただけ……」

「……ハルオミさんも、シアンのことで塞ぎ込んでるんだよ」

 

 う、うぐぅ……だって、二人来るとか聞いてなかったし、そもそも知らせないでってヒバリに言っておいた筈だし。

 しかもコア破壊される直前に来るとか、タイミング悪いって……

 

 と、己の不運を嘆いていたら、ヒロのさっきの言葉が頭の中に残る。

 

 ……あれ、なんでハルさんが塞ぎ込んでいるんだろ。

 

 俺も現に生きている訳でして。

 ハルさんのメンタルはオリハルコン並だから、復活したら喜んで飛んできそうなもんだが……

 

 訝しげに睨んでくるヒロを放置して、思考を深めると……ガバッとヒロの肩を掴んだ。

 

「うわっ、い、いきなり何を……」

「……ハルオミに、生きてること伝えた……?」

「へ? いや…………あっ」

 

 ポカンと口を開けて、俺を凝視し、鬼気迫る顔で静かに叫んだ。

 

「……極東帰ってから、俺まだハルオミさんに会ってなかった……っ!!」

「……バカヒロ」

 

 「うおおおー!!」とエレベーターに駆け込むヒロをさりげなく罵倒してから、エレベーターに一緒に乗り込んだ。

 

 


おまけ

 

「……君達さ。やっていい事と悪い事の限度ってあるよね?」

「あっ、そのですねリッカさん……」

「ほら、ユウ君の神機なんて、こんなにボロボロになっちゃってる……一目見ただけで、インパルスエッジの無茶な使用で砲身の金属疲労による破損と接合部のオラクル細胞の(ほつ)れ、正面からレーザーでも撃たれたみたいな装甲部のオラクル細胞の断裂に、攻撃を刀身で受けたのか棟の部分に歪みが生じてるのくらいは分かったよ。それに、頭……グリップも無理な衝撃で駄目になってるみたい……いつかのハンニバルの時よりも酷い、文句無しのオーバーホール案件だよ、これ」

「……あの、リッカ、それ、殆ど私が原因で……」

「ねぇ、これ誰が修理するか知ってるかな、ユウ君?」

「……リッカさん、ですよね」

「そう。それに、最前線だから、極東の整備士ってかなり人数が足りないんだ。感応種のせいで不調をきたしたり、壊されちゃった神機を連日深夜まで整備してるのに、対人戦で壊れちゃった神機を直して下さいって何なのかな? そもそも、神機は人と戦う為にあるものじゃない。アラガミを倒す武器だよ? それで、勝手に何やってるの?」

「「はい……申し訳ございません……」」

「それと、それを黙認したサカキ博士も同罪だからね」

「す、すまない……ちょっと、興味があってね」

「興味より人の苦労を考えてよ、大人でしょ?」

「あ、その、本当にすまない……」

 

「……やっべぇ、リッカさん絶対怒らせないようにしような、マジで」

「ここまで怒ったのって、ユウが勝手にリンドウさんの神機を持った時以来な気がします……」

「整備士は俺達の命を手網を握ってるようなもんだ。無為に怒らせて整備がままならなくて、戦闘中にぶっ壊れても文句は言えねぇ。シアンの奴にも、神機を持ったら言い聞かせないとな……」

「「何そのお父さん思考……!?」」

 

 

 

 

ロミオPの処遇について

  • いつも通り、逝くなぁぁぁ!される。
  • シアンちゃんに救出される。
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