作者も博士も、一体どこへ向かおうとしているんだろう……
「よし。こんなものか……シアン、素材は回収できたか?」
「ん。……超楽勝だった」
あの日から、一週間ほど経過していた。
ソーマと一緒に、世にも奇妙なアラガミの一体である、グボログボロ黄金種の調査を行った。
金属を捕食傾向とするのか、体内に希少金属を抱えているというこのアラガミ。
しかしどういう訳か、通常種よりも非常に脆く、そして弱いのだ。
フェンリル本部の学会でも、『グボロ・グボロ黄金種は何故脆いのか』というのが度々議論されている。
……メタな事を言ってしまえば、ゲームの都合で存在するモンスターに現実じみた理由付けは無いのだから、答えが出ないのも仕方ないが。
少しばかり話が逸れたが、今回の作戦では、ソーマに他のグボロを押さえてもらって俺が黄金種を相手取った。
出会い頭にロングブレードで斬り飛ばしたら、思いのほか柔らかくて真っ二つになってしまった。
ゲームでグボロ・グボロ黄金種が初めて出たのが難易度3あたりの筈だし、過剰戦力だったのだろう。
あまり結合崩壊出来なかったのが残念だったが、さっさとコアと周辺素材を回収して帰投地点で合流したのが今の状況だ。
ソーマに、グボログボロ黄金種のコアや素材が入ったアタッシュケースを渡すと、ヒバリちゃんがヘリを呼んでくれたので、特に何事もなく帰投ポイントでヘリに乗り込み、極東支部へと帰る……
今のところ毎日、ソーマとこんな感じに過ごしていて、今や俺の日常となりつつある。
ヘリに乗りこんで十分くらいが経つと、唐突に、
「最近、ブラッドと仲が良いそうだな」
と聞かれて、ソーマをしげしげと見つめる。
一体誰から聞いたのか。
それに気付いてか、ソーマが申し訳なさそうに頭を搔いた。
「ああ……サカキのおっさんが話していてな。ただ少し、気になっただけだ」
だろうと思った。
あのマッドな糸目メガネは人のプライバシーなんて知らないかのようにポンポン話すのだ。
まったく、そんなだから信用が無いんだよ……
「そういや、お前にも試験的にP66偏食因子が投与されていたな。〝喚起〟とかいう感応能力に影響を受けて、血の力に目覚める可能性もあるだろう。積極的な交流をしておいて損は無いかもな」
「……別に、そう言う意図ではない。ただ、気になっただけ」
そう言うと、何が嬉しいのか口角を上げて、俺の頭を何回も往復するように撫で始めた。
ふぐぉぉぉ、男のナデナデになんか癒されてる自分が怖い……っ!
「……普段は他人と関わろうとしないのに、興味を持っただけで十分な進歩だ。もっと親しいヤツ以外と話してみろ。面白いことが見えてくることもあるからな」
「……ん、分かった」
べ、別に好きで無口無関心を貫いてる訳じゃないんだからねっ、なんて言い訳を頭に浮かべつつ、発着場に着いたヘリを降りる。
エントランスまで階段を降りると、ソーマがエレベーターの前で立ち止まった。
「これから、不足してるもんの補給の為におっさんに用があるんだが……お前も付いてくるか?」
「行く」
いや勿論、とばかりの即答をしていた。
野郎には一度痛い目に遭わせなきゃならない。
「おっさんも歳だ。程々にしてやれよ……」
俺の内心を悟ってか、宥めてくるソーマを無視し、博士へのありったけの殺意を滾らせる。
あの顔、何度見ても腹が立つ。ゲームの時はわりと好きなキャラだったのに……現実は非情だ。
エレベーターで地下の役員区画まで下がり廊下に出ると、部屋の前に佇む一人の青年が見えた。
「……ヒロ?」
「? あれ、シアンだ」
お互いの存在を認知した。
どうやら、ヒロは待ちぼうけを食らっているらしい。
「ん? サカキのおっさんは来客中か?」
「あ、はい。そうです」
「……サカキのおっさんに何の用だ?」
「ええと、ラケル博士の付き添いで来ているので」
「あのおっさん、フライアまで巻き込むつもりか……」
一時的にはウマが合いそうではある。
ラケル先生は博士とはかけ離れた方向にぶっ飛んでいるので、本当に一時的だろうが。
「……前にサカキ博士と一緒にいた研究者の人、ですよね」
「まぁ、まだ見習いだけどな……」
そこで、壁にもたれかかって目を瞑り始めた。
ソーマがそうなったからか、ヒロがこちらに近づいてきて、こしょりと耳打ちをしてきた。
「確か、ソーマさん……だっけ?」
「……ん。私のお父さんで、お兄ちゃん」
「お父さんでお兄ちゃんって、なんだそれ」
グフッと、ソーマが
馬鹿野郎お前、声が大きいから聞こえてるじゃねぇか!と内心の罵倒をしてみる。時々ヒロは天然になるのが厄介だ。
「……ソーマは私の引き取り手で、シックザール姓を貰ってる養子の扱い。でも、お兄ちゃんみたいにしてくれる」
「なるほどなぁ……」
それから数分、お互いに出てくるのを待っていると、扉がスィーっと横に開いて、電動の車椅子に座る、喪服にしか見えない服を来た痩身の薄幸そうな女性が出てきた。
そして……目が合う。
「……っ!?」
呼吸が止まった。
突然、キュウッと、ありもしない心臓が締め付けられる感覚に陥る。
圧倒的な存在感。ラスボスの風格を漂わせ、黒いレースから見える蒼穹の瞳からは、何の感情さえ感じ取れなくて、儚さよりも有り余る不気味さがあった。
そして極めつけに、ラケルの裡から聞こえてくるものが、自然と自分の身体が竦み上がらせて、ついには、本能的にソーマの後ろに逃げてしまった。
……アラガミの、自我
(
(喰らう事こそ、須らく、生きとし生けるものの務めなり)
(天地を、輪廻転生の円環へ、誘え)
(敷衍せし森羅万象の理は、真なる神に帰結すべし)
(我らの
(なれば見出さん。全てを喰らう、
(弱肉強食の収斂、終末の捕食をこの世に、現せ)
なんなんだ、あの怪物は。
恐怖を抱かずにはいられなかった。
カリギュラとの戦いのときでさえ感じていない、自分自身の生存本能から来る死への恐怖だ。
沢山のアラガミの自我を抱えて、どうして正気を保っていられるのだろうか。
人並みの思考が出来ている事が、不思議でならない。
彼女の裡に秘めるそれは、ソーマが深層意識で抱える善良なアラガミとは全く異なる、純粋な捕食の衝動。
荒ぶる神は、それを途切れさせる事無く、言い聞かせるように何度も、終末捕食を解き放てと、全てを喰らう者を見出せと言う。
本質的に狂ってなお、何故やり遂げようとするのか。
人を捨てて人の生を得たというのに、それさえ棒に振って神託を果たそうとするのか。
「──それは、あの人が壊れてもなお、心を蝕まれているから。内の荒ぶる神を知って、その優しさ故にヒトであることを諦めた彼女にとって、自分を照らしていた
……全ての動きが止まった、色褪せた世界。
大人びていたが、聞き覚えのある声。
誰かに投げ掛けた訳でもない問いは、まるで最初からそこに居たように返ってきた。
頭の中からその少女の声は響いてこなかったが、耳を通して聴こえてきたという実感があった。
時の流れが止まったかのように思えるこの世界を作り出す彼女の声は、一体どこから……
ふと前を見れば、ソーマとラケルの間に、誰かが一人、こちらから顔が見えないが、忽然と立っていた。
それは色褪せた世界で、俺以外に色を持って、動く者だった。
羽を生やしているように見える、フリル付きのドレス。そこから見えるスラリとしたおみ足は、生きていると感じさせないほどに純白で、一目で彼女が人ではないと分かる。
俺は、そんな彼女をよく知っている。
どうしてここに居るのか……それは分からないが、確固たる事実として、彼女は今もそこに立っていた。
「こういうとき、なんて言うだったかー? うーんと……おお、そーだ! シュラバ、だな! あのまぜまぜなナカマがげんいんかー。ソーマとちがって、いやーなアラガミがいるからなー。カワイソウなナカマだなー」
ラケルの周りをぐるぐると周り、時折品定めする視線で見つめたり、頬っぺをぷにぷにと突いている。
かと思えば、ラケルの視線の先にいるソーマを見て、興奮したように近づいた。
「おー、ソーマ! ひさしぶりだなー! げんきかー? ブサイクないもーとがめいわくしたときから、ずっと会えなくて、シオ、さびしかったぞ!」
不細工な妹が迷惑をしたと聞いて、内心首を捻る。
時系列的に考えても、シオとソーマが最後に会ったのはリザレクションのシナリオの時だから、第二のノヴァ、アリウス・ノーヴァのことを言っているのだろうか。
ああやって婉曲した表現で言われると、理解まで時間がかかる。
「……むっ」
精神的にはもう成熟しているはずだし、俺と話す時は大人びた口調にして欲しいのだが……
「……きこえてるぞー。シオにはココロのこえ、きこえるんだぞー」
「うわっ……!?」
気が付くと、彼女──シオは俺より少し小さな背をぐぐっと伸ばして、顔と顔がくっつきそうな距離まで突き出し、ジトーっと金色の瞳を向けている。
と、するならば、シオは何かしらの目的を持ってこの喋り方を続けていることになる。でなければ、態々面倒なやり取りなんてしない。
それなら、シオに無理強いするのは得策じゃないだろう。
そう結論付けると、シオのジト目は元気いっぱい、純真無垢な瞳に変わった。俺の予想は、どうやら正解のようだ。
「おおー! シアンは話がわかるなー。シオはずっと、みんなについていたい……だから、シオはシオのままがイチバン、なんだぞ」
「……ん。それなら、仕方ない」
性格や口調が多少変わったところで、シオが戻ってきたら元第一部隊のメンバーによって否応なしに一緒にもみくちゃにされる未来が見えるけどな。
そう、ふと漏れ出た心の声を聞いてか、シオが上機嫌そうに俺の周りを回ってスキップをし始めた。
だが、ただクルクルと回っているという訳では無いようだ。
「…………あのまぜまぜ、ラケルっていうのか?」
ひとしきり観察を終えたシオの問い掛けに頷くと、ピタリとスキップをやめて、興味の方向をラケルへ固定した。
ここに来てから、ラケルを見るシオの姿はいつも悲しみに溢れている。
ラケルは、そんな目線を向けられる人間では無いはずだ。
ゴッドイーター2で起こる事柄の殆どに関わっている。
マグノリア・コンパスでは子供に非道な偏食因子投与実験を行い、神機兵を停止させロミオを殺し、ジュリウスを利用して終末捕食を起こさせた……まだ他にもあるが、憤慨こそ持てど、憐憫の目で見るようなことは無いはずだ。
心の声が聞こえるシオには、俺の言葉が聞こえただろう。
それでも、彼女はその目で見るのを止めなかった。
「……ココロを、ずっと食べてる。ラケルのココロの、たくさんのアラガミ、のこさず食べないと、ココロがぱっくり、ぜんぶなくなっちゃう。でも、ラケルはやさしいから、ずーっと食べられてる。シアンは、それでいいのか?」
シオの声音は、どうも俺を試しているように聞こえた。
ラケルが優しいというのは、俺には分からない。もしかすると、ラケルがアラガミの自我に心を喰われる前の、本来あるべき姿だったのか。
それはもう、シオ以外には誰にも分からない。
だが、考えてもみてほしい。勝手に事件を引き起こして、勝手に死ぬ……ラケルが変心したからとはいえ、そんなことが許されていいのだろうか。
善悪なんて関係ない。
だから、シオの意志には少し反するかもしれない。
全ての黒幕なのだから、刑務所で罪を償うべきなのだ。
自分勝手に死んで逃げるなんて、狡いの一言に尽きる。
今のところ、ラケル先生を根本的に救う方法は考えられそうにないが……何か策を弄してでも、生かさせなければならない。
死んでいい人間なんてのは、誰一人として存在しないのだ。
「それが、シアンの考えか?」
「……そんなところ。誰も、殺しちゃいけない」
その意志を固めていると、そう伝えれば、シオは少しだけ困ったように頭を搔くと、不敵な笑みを浮かべて、ビシッと人差し指を俺に突きつけた。
「ふっふっふー、よく言った〜! シオからひとつ、イモウトに〝あどばいす〟してやろう!」
「……アドバイス?」
「いいかー、よくきけよー。リンドウのこどもに、〝約束〟のしかたをおしえてもらうんだぞ。ラケルと強い〝約束〟を結べれば、ラケルを助けられる。シオが言うんだから、まちがいはない!」
──〝約束〟
これが一体何を指すのかは分からないが、シオがわざわざ来たのは、この足掛かりを俺に伝えるためだったのか。
フフンと、自慢げに腰に手を当てるシオに近づいて、頭を撫でてやる。
「……ありがとう、シオ。えらい、えらい」
「おおー! えらいかー!? ……でも、イモウトにされるのは、ちょっとフクザツだぞ」
そういう感性はあるのか。
お兄さんちょっとビックリです。
「アネがイモウトのあたまをなでるって、書いてあったんだよなー。だから、なでさせろシアン!」
「……どうしてそうなる」
腕を伸ばして無理矢理頭を撫でてこようとするので、仕方ないと諦めた俺は膝を折って屈み、シオの気が済むまで大人しく撫でられることにした。
これまでずっと、シオは撫でられる側だったから、誰かを撫でてみたいと思ってきただろう。
「お〜、これがなでるってやつか。やってみると、キブンがいいな〜」
一、二往復では飽き足らず、シオは何度も繰り返し俺の頭を撫でる。
その後、案の定と言うべきか、俺が十分ぐらい撫で続けられていると、シオは漸く満足した。
誰かを撫でるのはシオにとって経験のない事だった事もあり、本人からすれば楽しかったのだと思う。または、俺の髪を触るのがよほど気持ちよかったのか。
まあ理由なんてどっちでもいい。とにかく喜んでもらえたようで何よりだ。
満足そうなシオだったが、急に表情を曇らせると、天井を見上げた。
「……きょうは、これでおわかれ。かえらないと、ダメだからな」
「……そう」
口振りからして、多分、それは天井ではなく、空……その先にある月を見ていた。
「……またいっしょに、うたが聴きたいな」
誰と? と聞くのは無粋だろう。
いくら精神的な距離が近いと思っていたとしても、物理的な距離というのは現実として叩きつけられる。
歌を聴くのだって、一緒に居なければ成立しない。
約38万キロメートル。
月と地球の距離と言われているが、アラガミの出現により航空宇宙産業が廃れ、宇宙進出の為の手段を失って久しい現在においては、それがどんなに隔絶しているのか、最早計り知れない。
でも、シオがそう願うのなら。
少なくとも俺は、諦めるという言葉を真っ向から否定しよう。
「……きっと、近いうちに連れ戻す」
「シアン?」
「……私は、受けた恩はキッチリ返す女。二度の恩は、絶対に忘れないから」
「……そっかぁ、ふふっ! そうやって無茶するの、まるでユウみたい……だな!」
後付けにしか聞こえない〝だな〟のある、らしくない喋り方で、そう返してきた。
っていうか、俺はユウほど無茶してない。あんなハードワーカーになれる訳がないだろうに。
心の中でそう呟いたからか、シオが眉を顰めた。
更に、咳払いまでする。
「……んんっ、どうかしたかー?」
「……今更取り繕ったところで、バレてるんだし──」
「んんっ!! ……どうかしたかー、シアン?」
「…………」
わざとらしく誤魔化すシオを見てしまっては、もう何も言うまい。
「……シアンのいじわる。シオはプンプンにおこったぞ。もう帰ってやるからな」
ムスッとしながら、シオの体が光の粒子となっていく。
「……せっかくだから、最後に一つだけ」
呼びかけられた時には、一文字に結ばれていた口が、柔和な笑みに伴って緩んでいた。
「ソーマとラケル。二人のこと、お願いしてもいい?」
シオがラケルにこだわる理由が、何となく分かった気がする。
シオにとって、ソーマもラケルも、同じなんだ。
元々シオからお願いされれば何でもやるつもりだったが、そう言われてしまっては、尚のこと断れない。
「……当然。〝ナカマ〟を救わない道理はない」
「……ふふっ、ありがとね。シアン」
言い切った俺に、シオは安堵の笑みを浮かべて、残っていた首から上を、光の粒子へと散らした。
極限まで引き伸ばされた時の流れが急激に加速を始めれば、世界が色を取り戻し、止まっていたストーリーも動き出す。
しばし、交錯する視線。
それは相手の方から外されることとなる。
「……お知り合い?」
そう、小首を傾げながらヒロに尋ねるラケルを見ても、身の毛のよだつ様な虞れを感じなかった。多少の恐怖はまだあるが……確実にシオとの対話のお蔭だ。
助けなければいけない人に、彼女が入り込んだ。
それだけで見え方が違ってくる。
「いや、今さっき、な」
「はい。そうなんです」
ふー……と、気づかれないよう深呼吸して、顔をちょこんと出すと、ラケルの姿を視界の真ん中でしっかりと捉える。
「貴方……シックザール前支部長の……?」
「ん……ああ、ソーマ・シックザール。ヨハネス・フォン・シックザールの息子だ」
ヨハネスさんと言えば、最近中の人がCTUや魔術師殺しから転職して、アメリカ大統領とか中国拳法をやってたような……
って違う。現実逃避してどうするんだ。しゃんとしろ、俺。
「……ご挨拶が遅れて申し訳ありません。貴方のお父様にお世話になったラケル・クラウディウスと申します。是非、一度お会いしてお礼を申し上げたいと……」
「ああ、礼なら直接、本人にお願いしたいな。いずれ、あの世で直接会える……」
ソーマの皮肉った物言いに、ヒロが目をギョッとさせてソーマを見てから、俺の方へジロリと目を眇める。
いや、そんな目をされても……
「フッ、すまない……冗談だ」
いいぞもっとやれ。ソーマのジョークは怖いものが多いし、もっとやってやれ。
そんなジョークを聞いて、ラケルはフフッと口を隠しながら微笑を湛えると、
「ずいぶんとキツい冗談をおっしゃる方ですね……もしかして、それが原因で……」
一拍溜めて、顔を上げて……
「お相手に月まで逃げられてしまったのですか?」
……そう、爆弾発言をぶちかました。
このイベント。無論ゲームにもあるのだが、前作をやっている人ならば『どうしてラケル知ってんの?』となる、ラケルの異常性が垣間見える瞬間だ。
月に行ってしまったシオの真相を知るのは、元第一部隊とサカキ博士のみ。
それ以外に、生き証人は居ないはずなのに。
タチの悪いジョーク返しに、多少は驚きつつもソーマは鼻で笑った。
「……生憎と、見合いの相手ならお姫様以外にももう一人居てな。出来るなら、月のお姫様にも帰ってきて欲しいもんだが」
「……うふふ、天人を越えて、月まで行けると良いのですが……貴方のお父様が、既に月への舟をお使いになられたようで……ですので私からは、今回のお相手が長続きすることを、心からお祈り申し上げましょう」
見合い、月、お姫様、天人……かぐや姫か。分かりにくい喩えだな。
しかも、アーク計画で使われたロケットの事まで話している。
俺がいるだけで、ソーマのラケルに対しての好感度の落ち込みようが酷いぞ、これ。
「やっぱり、あんたはどうも他人な気がしないな……俺と同じで、混ざって壊れた匂いがする」
「……いや、アレはソーマとは明確に違う。ソーマは壊れてなんか、ないから」
咄嗟に、そう言ってしまった。
でも仕方ないじゃん。人の皮を被ったバケモノがラケルなのだから、つまりソーマの方が天使なのだ。
勇気を出してソーマの前に出て、ラケルと遂に対面する。
俺が出てくるのを、ラケルは微笑みで返した。
どうにも、俺にはその微笑みがニチャァという気味の悪い悪魔の笑みに見えてしまうが。
「……人生まで引き換えにして、神を内に取り込んだ気分はどう?」
「存外、悪くはないものですよ。……さて、お噂はかねがね、伺っております。シアン・シックザール准尉」
皮肉ってそう言えば、態々一礼をして応えたラケルに、俺もこれはこれはと恭しく一礼して応える。
「……ご丁寧にどうも、ラケル博士。それはそうと、人形を弄んで、家族を困らせているという噂を耳にした。……真実かは定かではないけれど、あまり感心できた事じゃない行為だと思う」
「……フフッ、心外ですわ。そのように、大事な家族に無体を強いているなどと言われるのは。きっとそれは、私の遊びに付き合ってくれてるだけですもの。それに、貰ったお人形で遊ぶ事は、果たして悪いことでしょうか? ……あくまでも噂の範疇で、ですが」
キョトンと小首を傾げられるが、こんなお腹真っ黒な奴がやっても、可愛いどころか、何か隠しているんだなと思ってしまう。
しかも、一番最後に、噂を強調しているあたり、そういう体にしておきたいのか……
はぁ……なんでこんなヤバいの助けようと思っちゃうかなぁ、シオは。
「……私より、よっぽど神様向き」
「まあ、ご本人に言って頂けるなんて、光栄ですわ……そろそろ失礼致します。さ、参りましょう」
お辞儀しつつ去っていくラケルをジト目で睨み付ける。
ゾワリとする雰囲気と、内に秘めるそれらの存在、喪服の様な黒服も相まって、終始嫌悪感を抱かざるを得なかった。シオの言葉が無ければ、嫌すぎて逃げ出していたかもしれない。
もしも俺が、ラケルこそが全ての黒幕でラスボスであると知らなくとも、あの拭いきれない不気味さには不信感を募らせたに違いない。
アラガミとして、人として、あの有り様は常軌を逸しているとしか言い様がないのだ。
「……絶 対 に 逃 が し ま せ ん か ら ね ?」
何か、ゾワリとした気配をラケルから感じて振り返るも、後ろ姿のまま、車椅子はただ進んでいくのが見えただけ。
気の所為とも思えないが……今はまだ何もしてこない筈だ。計画が順調な以上、イレギュラーを生じさせる訳にもいかないだろうし。
ただ、ついラケルの〝人形遊び〟について口走ったのは失態だった。
計画で最も邪魔な存在が、俺だと気付かれてしまったのだ。
人間の所業ではない!さんが人形遊びの犠牲になったことも、姉にまで影響を及ぼしていることも、全部知っている存在。そこから、マグノリア・コンパスでやってきたことも知っていると分かってしまっただろう。
きっと、「ふはっ、この間抜けめ」と内心で気色悪い笑みで俺を嘲ているだろうラケルの後に、ヒロも続く。
横を通り過ぎようとすると、ソーマは突然ヒロに話しかけた。
「お前からは、俺のダチによく似た匂いがする。いい神機使いになってくれ、じゃあな」
「ん……じゃ、また」
「あ、え……はい」
肩に手を置かれて、呆気に取られるヒロを後目に、支部長の前に着く。
支部長室のインターホンを押す……前に、ソーマがこちらに振り向いた。
「……大丈夫か?」
「……!? な、何のこと……?」
ビクッと肩を跳ねて、わざとらしくはぐらかすと、ソーマは軽々と踏み込んできて、手を引き、壊れ物を扱うように優しく抱き締めていた。
不思議と感じる高揚感と、抱きしめられているという状況への羞恥に、顔が火照る。
そんな俺の心も知らずに、頭には掌が乗っけられて、髪を梳くように撫でられる。
「……あんまり、気負い過ぎるな。ラケルとどんな関わりがあるのかは知らないが、一人で悩んでも解決できないモンってのは必ずある。俺のダチ……ユウが教えてくれたことだ。お前に、俺みたいな過ちは繰り返させたくない……今はまだ、分からないだろうがな」
それを言い終えると、ソーマはすぐに体を離してしまった。
「あ……」
どこか惜しむような呆けた声が、するりと自然に発せられる。
途端に、自分を包むものは寒くなってしまっていた。
冷房が効いているから、余計に。
それに、感じていたのは、身体の暑さだけでは無いのだろう。
自分でも、こんな反応をするなんて思わなかった。
それが、家族からの親愛に由来する愛情か、あるいは……
「……どうした? そんなボーっとして」
「……別に」
唇を反らすと胡乱げな目で見られるも、放っておいて平気だと思ったのかインターフォンを押した。
……この野郎。
「おっさん、俺だ。不足している物資がある」
『ん? おおっ、ソーマかい? 丁度良かった。朗報と、それに付随する凶報があってね、さあ入ってきてくれ』
それに付随する凶報ってなんだ……と思っていると、扉が開かれて、中へと招かれる。
ラケル先生と挨拶していただけあって、書類が散乱していることは無いようだ。
今はクレイドルの仕事で出張中の鬼教官ツバキさんがおらず、博士を制御できる人間がリッカちゃんぐらいしかいない。誰か管理してあげる人を用意しなくては、博士のQOLは直ちに低下するだろう。
……そんなことは今どうでもいいか。
「いやあ、ラケル博士との会談は実に有意義だった……が、それよりも優先すべき事項が出来た。本部の方で色々やってくれている神機開発の権威、犬飼アキヒコ博士から今し方連絡が届いてね。どうやら、P41偏食因子の解析の結果、他の偏食因子とは異なる性質が幾つも発見されたそうでね。これが本部に知れたら激震が走るだろう」
博士が言うに、P41偏食因子の特異な性質は大まかに分けて、四つあるそうだ。
・P66型の血の力と酷似した偏食場パルスの確認
・感応能力が遠隔に伝達し、他のオラクル細胞などと共鳴する
・人間を決して捕食しない(あらゆる人間と適合し得る可能性)
・偏食因子の体内生成(遺伝子に作用し、偏食因子を生成する新たな器官の成長)
マウスやサルを用いた実験、簡易的な神機の製作を主に行ったらしいが、これらの現象が確認されたのだとか。
「おい、待て……〝人間を決して捕食しない〟ってのと、〝偏食因子の体内生成〟って、まさか」
「……まだ、臨床試験には至っていないそうだけど、どうやら、フェンリルの支配体制を揺るがしかねない、重大な爆弾を抱えてしまったらしい」
これが何を意味するのかを、その答えはただ一つ。
──〝全人類のゴッドイーター化〟
ここに行き着いてしまう。
通常、偏食因子を一度投与されると、偏食因子無しに生きていくことが出来なくなる。例を挙げると、偏食因子が不足すれば、体内のオラクル細胞や神機に捕食されてしまうし、偏食因子が多ければ、偏食因子の力で身体がオラクル細胞に変異してアラガミ化してしまう。
つまり、全人類をゴッドイーター化すると、偏食因子が足りなくなってしまうのだ。
だが、そもそも偏食因子の投与が要らないのならば。
新たな偏食因子を必要としないのに、副次的な効果として身体能力の増加などの効果が得られるのだ。
「加えて、リッカ君が開発中のシアン君の神機……便宜上、『第四世代神機』と呼称しているそれは、人を捕食することが無いために、適合率の差はあれども、誰であれ絶対に適合してしまう。……存在が知られれば、シアン君の身が危ぶまれるだろう」
……えっ。
「……第四世代神機は、シアンのコアを改良したアーティフィシャルCNSが使われている。P41偏食因子の存在が本部に知れたら、捕縛の後に装置やら薬剤で力を出させないまま、神機製作の為のコアやオラクル細胞を生産する為だけの存在になるだろうな」
……マジか。
そんな収穫物ルートみたいになるのは嫌だ。
折角新しい偏食因子が出来たというのに、お蔵入りというのは勿体無い。
フェンリルによって、実に数十種類もの偏食因子が発見されているが、その殆どが人体に適用できずに研究が打ち切られているという。
俺から取り出した偏食因子は、博士の言うことが本当なら色々使えるのに……何かいい活用法はないものか。
「……まだ、世界ではヒト型アラガミという存在が認められていない。何せ、一部しか知り得ていない未知の存在だ。上層部の中にはアーク計画の真相を知る者もいるが、お堅い他のご老人は捕縛命令を出すだろう。そうなっては、もう我々でもどうしようも無いけれど……」
……けれど、何だろう。
次の返答を待っていると、サカキ博士は、ニヤリと、これまた厭らしい笑みを浮かべる。
「使われている偏食因子を偽れば、不安なんて一欠片も無いと思わないかい?」
言われてみれば、それでもいけるような気がする。
ソーマだって、大っぴらにはP73偏食因子が使われたゴッドイーターとは知られていないし、嘘を貫いても問題なさそうだ。
しかし、その隠し通している本人のソーマは呆れ顔で溜息を吐いた。
「あるに決まってるだろうが……」
「まあまあ、そう堅いことを言わないでくれよ、ソーマ。この偏食因子は、過去に類を見ない特徴を持っているだろう? 隠し通せるはずだよ……密告者が出ない限りはね?」
密告者か。
サカキ博士やソーマに俺、神機開発をしているリッカと、向こうにいる博士とやらしか居ないのなら、密告者が出る可能性は考えにくいが。
「そういう訳だから、ちょっと自分で実験してみることにするよ」
「……は?」
隣を見れば、ソーマが珍しく、ポカンとした表情を浮かべていた。
……えっ、なにそれ、どういう展開?
俺とソーマが困惑しながらもやって来たのは、訓練場。
しかし、俺とソーマが立つ場所は、訓練場の床では無い。
下には、先程セッティングしてきたばかりの機材の数々……ベッドに、極東仕様の適合試験装置、各測定用のコンピュータなどが置かれている。
いつもなら、高いところの窓からサカキ博士が見ているのに、俺とソーマが訓練場のサカキ博士を見下ろすという真逆の構図になっていた。
珍しいのは、あのサカキ博士が和洋折衷な大正の装いではなく、病衣を着ている事だ。いつもはあんなに厚く服を着ているのが、服一枚になってしまっていて、ヒョロりとした印象が窺える。
全くもってビックリだが、ゲームでない以上はこういう状況も有り得るのだと納得する。
「……本当にやる気か? あまり危険性は考えにくいが……人でなくなるんだぞ?」
『勿論だとも。科学者は、いつの世も自らをも犠牲にするものさ。実証には直接人間へ投与できるという実績が無くてはならないから、丁度いいだろう? ……それに、私もまだまだ死に切れなくてね』
「たかだかアラフィフが何言ってんだ……」
ペイラー・榊、五十一歳。
五十どころか、三十代と言っても通じそうな若々しさがある。
GEの作画の問題か何なのか……皺一つないその顔は、歳をとってしまった全ての女性が欲しい体質だ。
かく言う俺はアラガミなので、一切歳を取らないのだが。
「……はぁ。現時刻、一三◯◯をもって、P41偏食因子投与実験を行う」
ソーマの重苦しい溜息と共に、実験は開始された。
内容は簡単。偏食因子を投与し、一時間の経過後、身体能力の強化が認められれば実験は成功となる。
サカキ博士が、適合試験の際に使う装置に近いそれに右腕を置けば、その腕を上から挟み込んで蓋が閉じた。
セッティングの完了を確認すると、モニターに映る計器やらパラメータに目を向ける。
「P41偏食因子、第一次投与開始」
「……心拍数、血中偏食因子濃度、正常値」
「身体の順応度、上昇確認」
「……異常なオラクル化、確認できず」
実は何回かだけ博士の研究を手伝った事がある経験から、計器などの値を確認してオペレーションをできるようになっていた。
この世界に来てまでわざわざ勉強に努めていた結果だ。まさか科学者になろうとは思っていなかったが……
隣にいるソーマも、科学者の端くれ……実質的に俺の兄弟子であり、こういう実験には慣れているからこそ、今回の実験が実現している。
兄妹の共同作業というわけだ。
「第二次投与、開始」
「……血中偏食因子濃度、基準値に到達」
「投与フェーズ終了。これより、経過フェーズへ入る」
解放された博士は、中央に置かれたベッドに寝転がった。
経過フェーズは一時間行われる。偏食因子が体に馴染むには、おおよそこの位の時間が必要となる。
実験である以上、一時間の間は辛抱強く計器をチェックしなければならないが。
「……暇」
「科学者としちゃ、その発言は失格だが……まあ、分からんでもない」
ポツリと出た言葉に苦笑され、思わずクスッとしてしまいながらも、サカキ博士の様子を見守り続けた。
「……一時間経過。身体の順応度は99%。違和感は無いか?」
『問題無い、寧ろ
「ああ」
『それじゃあ、行くよー?』
軽い準備運動をしてから、サカキ博士はクラウチングスタートを決めて颯爽と駆け出した。
それから、五十一歳とは思えないはしゃぎっぷりを見せた。グルグルと円形の訓練場を、人間では有り得ない速度で走り回り、いつどこで覚えたのか、体操の床でも見ているかのような華麗なフォームで宙を舞い、ゴッドイーター特有の跳躍能力で高台へ掴まり、見事登りきったところで動きを止めた。
見れば、それだけ動いたのに疲れさえ感じていないふうに、一息付いて額を拭う。
『これがゴッドイーターが見る世界か……まるで風になった気分だよ』
「よくもまあ、自分の身体能力に振り回されなかったな」
『それはほら、昔取った杵柄とやらでね。若い頃は、これでも体育は毎年5を取っていたよ。研究職ながら、運動は得意だったのさ。どうだい? 意外だったろう?』
「意外どころか、イメージぶち壊しにも程があるぞ、おっさん……」
体育5って……それなりに運動が得意な俺でさえ、体育の成績は4が精一杯だったというのに、なんて化け物だ。
「これで、偏食因子の定着は確認出来たな……現時刻、一四◯二をもって実験を終了する」
博士に驚きつつも、ソーマの締め括りに応じると、機材を片付けるために観察室から出て下に降りた。
◯ ✖️ △ ◆
一連の作業を終えて、ソーマと共にサカキ博士がいるラボに向かう。
到着する頃には、博士は普段の和洋折衷服に着替えていて、忙しなくキーボードをカタカタ叩いていた。
偏食因子を投与されてから、サカキ博士から放たれる雰囲気は丸々変わってしまっている。
俺の偏食因子が影響しているのか……自分に似た偏食場となっている博士に家族の安心感を感じてしまい、逆に怖く思える。
こんなのが家族なんて嫌だ。
「ふーむ。ここに来るまで推定700と30秒だと思っていたけど、それより少し早かったみたいだ……それにしても、感覚で人が来るというのが分かるのは、便利だけどもサプライズには欠けるとは思わないかい?」
「フッ……それなら、自分がサプライズする方になればいいだろう」
「じゃあ今度、ヒロ君で試してみよう。彼は良い反応をしてくれるから、見ていて楽しいんだ」
ソーマがこちらをチラりと見た。どうやら、「お前の友達がおっさんの毒牙にかかるが良いのか?」と言ってきているが、こちらもアイコンタクトと表情で、「むしろ毒牙にかかって驚く様が見たい」と
きっと今この場にいないヒロへの憐れみだろう。
「いやあ、長く付き合わせて済まなかったね。不足していた物資は、ケースごと右手にある机に置いておいた。もう行っても構わないよ」
「……実験の協力の手間賃としておこう」
「是非とも、そうして貰えると助かるよ」
キーボードの手を止める様子なくそう言われてソファ近くの机を見れば、確かにケースが置かれている。
ソーマはそれをさっと肩に担いでラボを出ていった。行動が早すぎる……
ソーマを追おうとして、あっと思いとどまった。言い忘れそうになっていた事を思い出したのだ。
丁度いいタイミングだ。置き土産に一つ、プレゼントを進呈しよう。
「……美少女アラガミっ娘の血肉を取り入れて満足? 変態博士」
ガタッと、椅子から落ちた。
振り返ってから発せられた声には、自分でもビックリするくらい底冷えするような殺気が多分に含まれていた。
それは、きっと誰であっても同じ反応を齎しただろう。
ずり落ちた眼鏡をくいっと掛け直しながら、手を伸ばして引き留めようとするのを、華麗にスルーする。
「ち、ちょっと待ってほしい、私がどうしてそんな謗りを受けなくてはなら──!?」
失礼しますと博士に一言だけ残してドアを閉めた。
理不尽な理由付けでも、可哀想だなんてこれっぽっちも思わないのは、博士だからか……
「絶対、隠れて何かやってそうだし……」
と、思うのも博士だからだろう。多分。
おまけ
「……なぁ、トウカ」
「は、はい!?」
アナグラのエントランスに、ギルとトウカの姿があった。
遠慮がちに話しかけたギルに、ビックリして過剰に反応するトウカ。しばらくの無言が続くと、「あー……」と、やはりに気まずい距離感を感じて、頭を搔いた。
「神機の整備士をやってるって言っていたのを思い出してな。それで、少し相談があるんだが……」
「──神機の事ですか!?」
「うおっ!?」
二人の間に漂っていた微妙な空気は、トウカが急激に物理的距離を縮めた事により、一瞬にして消え去った。
ギルも思わず驚いて、一歩下がるが、それに合わせてトウカは近づく。
一体何が起こったのか。妙にハイテンションになって、顔と顔がくっつきそうなほど距離を詰めて来るトウカに、ギルは体を仰け反らせながら、訳が分からずに内心ビビりまくっていた。
(ちょっ、お前、近過ぎだっ!)
生まれてこの方、主にハルのせいで女子とあまり交流の無かったギルに対して新しく入ってきた後輩の女子がグイグイと詰め寄られれば、結果はこの通り。
ギルバート・マクレイン、22歳。
5歳も年下の後輩にさえ、耐性は無いようだ。
「神機にっ、興味がおありですかっ」
「ま、待った、トウカ、近い……!」
更に詰め寄られて両手を握られたギルは今、もしバランスを崩せばブリッジする羽目になるほど仰け反らしていた。
(あ……良い匂いが……って、俺は何を!?)
女子特有の匂い、加えて身体的接触。年下の猛攻にギルはタジタジになり、顔を真っ赤にして沸騰していた。
「ええ、ええ! そうでしょうとも! 神機使いたるもの、自分の手足になる神機について知見を深める事が如何に重要なのかを理解して下さったんですね!?」
「ちがっ、まっ待て、俺は単に神機のチューニングを……!」
「チューニングですかっ!? では整備室をお借りしないといけませんね! 一から十まで、ポール型神機の整備についてご説明します! 素材はこちらで用意しておきますので付いてきて下さいギル! さあ、共に神機道を歩んでいきましょう!」
「だ、誰かぁぁ……!」
そのまま、ギルはトウカに引っ張られて、神機保管庫に消えていった。
ギルとトウカの物語は、まだ始まったばかり……
ギル主♀︎もっと流行れ
ロミオPの処遇について
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いつも通り、逝くなぁぁぁ!される。
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シアンちゃんに救出される。