神さまばっかの世紀末な世界に、俺が望むこと   作:赤サク冷奴

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幼馴染と子供の頃に「結婚しよ!」と約束して叶った人を尊敬します。


子供の頃に結んだ婚約は、吹けば飛ぶくらい儚いのに……

 

 サカキ博士がアクロバティックになり、神機を持てるようになってしまった翌日。

 俺はベテラン区画と呼ばれる階層にある部屋を訪れた。

 

 理由はただ一つ……シオの言葉の実行、その為に。

 

『はーい、どちら様〜?』

 

 インターフォンから聞こえる凛とした女性の声に答える。

 

「ん……私、シアン」

『あら、シアンちゃん! 今開けるわね!』

 

 扉から勢いよく飛び出した若々しい女性……雨宮サクヤ(旧姓:橘)は、あの横乳を曝け出す、トウキチロウ……?氏渾身の一作を着ていた。

 

 子供を産んだはずなのに、体型が維持されているのは一体どういう訳なのか。

 母親ポジションである香月ヨシノも、へそ見せスタイルの服を着ているし、ゴッドイーターはもしかしてそういう体質……?

 

 だとしたら、女性はこぞって偏食因子を投与したいと集まりそうだ。

 

「ちょっとぶりねー? デートは成功したのかしら?」

 

 その言葉に、へ?と思わず困惑してしまった。

 それに釣られてか、サクヤが、え?と首を傾げた。

 

 俺が四肢をぶった斬られて、間一髪救出されたのを知らないのだろうか。

 

 アラガミとの逢い引きという意味なら、これ以上にないほど成功しているが……流石にそんな事をわざわざ訊くようなイタズラっ子な女性じゃない。

 ……じゃないよね?

 

「……黒いカリギュラの話は聞いてる?」

「黒いカリギュラ? それって、超弩級を追っていた時の……」

 

 ……なるほど。どうやら、サクヤの所まで連絡が行っていないらしい。

 

「……件のデート中、それに襲われた。私が太刀打ちできないほど、強いアラガミ」

「えっ!? だ、大丈夫だったの?」

「……問題ない」

 

 一度仮死状態になってますけどね! と、内心ヤケクソ気味に言ったのを包み隠して。

 本当に、アレは許せない。いつか絶対に復讐してやる。

 

 まあ、そんな自己満足のための復讐心は置いといて。

 

「……今日の要件は、一つ。レンに会わせて欲しい」

 

 そう言うと、サクヤはまたキョトンとした。

 

 思考が回ったのか、数秒後、今までの優しげな雰囲気からは考えられないくらい深刻な表情になっていた。

 

 雨宮レン。

 彼は、未だ世界で数少ない〝ゴッドイーターチルドレン〟という、生まれながらに偏食因子を宿すゴッドイーターの子供の一人だ。

 

 ナナもそのゴッドイーターチルドレンであり、生まれた時から血の力、〝誘引〟に近い性質の能力を持っていた。

 

 レンの場合では、幼い体に見合わないほど高い知能を獲得している。

 

 ……いや、正しくは獲得したのではない。引き継いだのだ、〝レン〟という名の人物の記憶を。

 

 サクヤも、あまりに手が掛からない子過ぎて、甘えてこないと嘆いていたらしいが、ゴッドイーターチルドレンはこのように普通とは違う特殊な力を持つ。

 

 それくらいの事は、サカキ博士から聞かされていると思う。

 

「……理由、聞いてもいいかしら?」

 

 極めて冷静かつ、淡々とした口調で俺に尋ねる。

 それが、逆に怖く感じてしまうが……それに気後れするつもりはない。

 

「それは、レンがとある秘密を抱えているから」

 

 シオから教えてもらった、〝約束〟という力。

 これを使うには、リンドウの息子……すなわち、レンに話を聞かなければならないのだとか。

 

 だが、これを話してもらうにあたって、サクヤが問題だった。レンとコンタクトを取るにはサクヤを通さなくてはならないからだ。

 

 何故息子に会わなくてはならないのか。その事情の説明の為にも、レンの秘密をサクヤに明かさなくてはならない。

 

「……それを聞いて、サクヤがどう思うか、私には分からない。場合によっては、恐怖するかもしれない」

 

 ──それでも、聞きたい?

 

 最後だけ口にはせず、目線を上げて、サクヤの瞳を真っ直ぐに見るに留めた。

 

 俺からできる、精一杯の持ち掛け。

 聞くか聞くまいか、真実を知らないのを良しとするか、真実を知って傷心するか。

 

 サクヤは微動だにせず、ジッと見つめ返している。

 

 傍から見れば、喧嘩しているように見えるかも知れない。

 でも、違う。これは、一種の意思確認なのだ。

 

 ……本当にいいのか? 後悔しないのか? と。

 

 だが、そんな引き留めの言葉を歯牙にもかけず、彼女は勇ましく笑った。

 

「決まってるじゃない。私はあの子の母親よ? たとえ何があっても、レンは私達の子供……これだけは絶対に変わらないもの」

 

 サクヤの中で、それは分かりきった事であり……

 

 つまり俺の過剰な心配は、杞憂だったという事だ。

 

「……ん。なら、中に入ってから。レンが全て、話してくれる」

 

 そもそもの目的はレンの正体の暴露じゃないが、ここはまあ、乗りかかった船という奴である。

 

 部屋にお邪魔させてもらうと、彼の姿は呆気なく見つかった。

 ソファに座っていたレンは唐突の訪問をしてきた俺を見て少し目を見開く。

 

「……シアンお姉ちゃん?」

「……レン。貴方のこと、正体を明かしてもいい?」

「……どうしてかな?」

 

 スッと、幼いながら理知的な瞳を窄めて、言葉の真意を尋ねてきた。

 

 後ろにはサクヤさんもいる。

 あんまり無為に時間を使って、ヒソヒソ話すのも面倒だし……と考えた俺は、スバっと核心に切り込んだ。

 

「……〝約束〟、聞き覚えは?」

 

 単刀直入過ぎるその言葉に、レンの片眉がぴくっと跳ね上がって、訳知り顔に口角を上げた。

 

「おっと……まさか、そういう訳か。んー、それなら仕方ないかな」

 

 なんで仕方ないのか、説明も無しにニヤニヤと微笑んでいる。

 サカキ博士のニヤニヤと変わらない、含みのあるイヤな笑みだ。

 

「……ただし、貸し一つ」

「……!?」

 

 俺の横を通り過ぎていく瞬間、そんな物騒な言葉が聞こえた。

 

 うへぇと、内心唸らずにはいられない。どうしてこんな腹黒……いや、いたずらっ子になってしまったのか。

 バースト時代の、思いやりのあるミステリアス少年キャラが好きだったのになあ……と、軽く落胆していれば、会話が始まった。

 

 

「ママも何となく気付いているとは思いますが、僕はあのレンです」

 

 

「……うん? そんなの当たり前じゃないの」

 

「……え?」

「……?」

 

 驚愕を顔全面に貼り付けているレンに、何を言っているのかしらん?と、キョトンとしていらっしゃるサクヤ。

 

 なんだか、この後の展開が読めてきたような……

 

「え、だ、だって、レンですよ? あなたの子供が、レンになっているんですよ?」

「もう、だから何言ってるのよ。レンは最初からレンでしょ? それ以外に何があるのよ」

 

 違う、そうじゃないサクヤさん。

 つまり、レンの中にレンがいるって事で……ああもうっ、俺ですらややこしくなってきたぞ、これ。

 

 全部、リンドウさんが息子に相棒の名前を付けちゃったのが悪い。

 

 全然分かっていない様子のサクヤに、レンは再度説明を試みる。

 

「あー、ほら、パパ……リンドウの神機にいた人格のレンって人分かりますよね? そのレンが、ママが産んだ子供、レンの中に入っているんです。ドゥーユーアンダスタン?」

「ええと、レンがレンの中に……? ちょっと待って、頭が混乱してきたわ」

「つまり、神機の中にいたレンなんですよ、今ママと話しているのは」

「な、何となく理解出来た……のかしら」

「一旦整理しますよ? まず、リンドウの神機のコアに、レンという人格があって……」

 

 ……5分後。

 

「……という訳です」

「ようやく理解出来たわ! 子育てしてて、お母さんちょっとボケちゃったみたい。話でしか知らなかったけれど、まさか息子になっちゃうなんて、凄いこともあるものね!」

 

 サクヤさんは、どうやら凄いこと、として認識したようだ。

 息子が転生者……神機の人格だと告白されたのに、この人芯が強すぎないだろうか。

 

「す、凄いこと……? えっと、あの、自分で言うのもなんですが、実質ママの息子の身体を奪ったんですよ? もっとこう、『近寄らないで! この悪魔!』的な反応になるかと」

「えぇー? 夫の恩人にそんなマネできる訳ないでしょう? それにね。レンはれっきとした私達の息子だから、可愛がりはしても怖がるなんてするはずないもの」

 

 ほらねぇ〜、とばかりにレンの髪をわしゃわしゃと撫でる。

 

 子育て生活が、彼女を随分と丸くしてしまったらしい。天然な親バカみたいになっている。

 

「えっと……リンドウは、この事を聞いて大丈夫ですかね」

「きっと手放しで喜ぶわ! 『おー! そうだったのかよ相棒! ったく、そういうのは早く教えてくれって。俺とお前の仲だろ〜?』って感じね〜」

「……確かに、言いそう」

 

 リンドウの声真似をしてるサクヤさん可愛い。

 

「だから、安心してちょうだい。気負う必要はどこにも無いのよ?」

「ママ……」

 

 ……親子の愛情というのは、いつの時代も素晴らしいと思う。

 

 自分は義理の両親に育てられてきたが、そんな自分にもくれる無償の愛情というのは、掛け値なしに自分を作り上げてくれた要因だと思っている。

 

「……これからも、無駄に聡い息子を可愛がってください」

「無駄じゃないわよ〜! でも欲を言えば、もっと甘えてきていいのにー!って思ってるけれど……ね? 年相応の可愛らしさを見せてくれたら、ママ嬉しいなぁ〜」

「ま、ママぁ……」

「ふふっ、おいでーレン!」

 

 むぎゅぅと、レンがたわわな双丘の内に抱き込まれて、あっぷあっぷしている。

 

 良いね……愛情って素晴らしい。

 

 でも、レンくんさ。

 一分だけでいいから、そこお兄さんと代わってくれない?

 

 

 

 

「……さて、じゃあ〝約束〟について話そうか」

「あ、それがシアンちゃんの要件なのね?」

「……これを話してもらうために、サクヤにレンの真実を知る必要があった」

「あ、これって私も聞いて大丈夫な感じなのかしら?」

「問題ありませんよ。秘密にする必要もありませんし、ゆくゆくはサカキ博士に解明してもらいたいことでもありますから」

 

 レンと俺は、L字のソファに座って対面していた。

 

 未だに双丘に頭を挟み込んでいて、何ともうらやま……けしからん体勢で話している。

 俺もまだまだ、サクヤさんの大きさには及びそうにないです……いや、追い付かなくていいけどね?

 

「〝約束〟ってのはね。まだ僕がリンドウの神機だった頃、僕とリンドウの間に発生した力のことさ」

「……力?」

「そう。いつかの日に、リンドウがウロヴォロスに対して単身で勝てたのは、何も彼の高い適合率だけじゃない。僕とリンドウが、〝約束〟の力を使ったからなんだ」

 

 レンの話していることは、何となく聞き覚えがある。

 

 二人との間に発生する力……感応能力……強化……?

 

 まさか……そうであるなら、シオが対ラケル決戦兵器として薦めた理由も解る。

 

「……それって、一定時間しか使えない?」

「そうだね。発動すると、神機のオラクル流入量が上昇して、より斬りやすく、そして疲れなくなる。その間は、なんだかリンドウと一体になった感じがするんだ。でも、効果がなくなってもしばらくすれば使えるようになるし、何度でも〝約束〟は交わせるよ」

 

 レンの証言を纏めると、

 

・レンとリンドウの間で発生

・一定時間の効果

・攻撃力上昇

・スタミナ永続化

・チャージ時間あり

・何度でも発動可能

 

 ……いや、纏めるまでもないな。

 

「──〝エンゲージ〟。それが、〝約束〟という現象の正体」

「エンゲージ……?」

 

 GE3の新システム……エンゲージ。

 

 AGE──対抗適応型ゴッドイーターという、P73偏食因子に、レトロオラクル細胞の研究により生み出された対抗適応因子を合わせた偏食因子を用いることで完成した、新世代の神機使いとの間に発生するという感応現象の一種……という設定だ。

 

 AGEとの間であれば、通常の神機使いでも、同じAGE同士でも発動が可能で、エンゲージを発動すれば、相手の持つエンゲージ効果と自分のエンゲージ効果、二つとも共有して効果を得られるのだ。

 バーストレベルも共有出来るので、受け渡しバーストの真似事も出来たりする。

 

 ……それが、どうしてAGEでもないリンドウさんとレンの間で起きるのか全く分からないが。

 

 ゲーム内では、サカキ博士とリッカちゃんが研究していたことになっているから、レンの言うように、サカキ博士に研究してもらった方がいいだろう。

 

 それはそうと。

 

「……やり方って、何……?」

「……その口振りからして、君は出来るって確信があるみたいだね?」

「……もちろん。だって、リンドウを助けた子がそう言っていたから」

「……へえ。そうなんだ」

 

『君、人じゃなさそうだけど、もしかしてリンドウ……お父さんを助けてくれたってアラガミかな?』

 

 初めて会ったあの日に、真っ先に聞いてきた事への答えだ。

 

 見当違いだったか……とレンが少し残念そうにしていると、それよりも、大きく目を見開いて驚いている人物が、その上に。

 

「えっ、ええっ!? シアンちゃん、シオちゃんと話したことあるの!?」

「……つい昨日、話したばかり」

「ウソっ!?」

 

 そんな反応になるよな……

 

 あれから3年、ずっと音沙汰が無いのだから、不安で仕方なかっただろう。

 

「どうやって話したの!?」

「……感応能力的なもの」

「元気にしてる!?」

「……結構元気そう」

「成長した!?」

「……内面は。体は変わってない」

「今連絡取れる!?」

「……あっちから掛けてこないと無理」

「そんなぁ……」

 

 矢継ぎ早に降ってくる質問に澱みなく答えていくと、最後の質問の答えを聞いてしょんぼりしてしまった。

 

 俺はシオほど強力な感応能力はない。

 言うなれば、相手はこちらの電話番号を知ってるのに、自分は相手の電話番号を知らないし知ることも出来ないというようなものだ。

 

 しかも、見える世界の色が褪せて完全に時間と隔離されるので、その会話を聞けるのは俺とシオだけ。

 GEBでユウが二刀流する時に、レンがユウに話し掛けている時のと同じような現象に陥り、本当に周りからは聞こえも見えもしない。

 

「シオって言うんだね……戦友の命の恩人だし、いつかお礼を言っておきたいよ」

「……そのうち、私が頑張って連れ帰ってみるから、安心していい」

 

 まあ、どうやって連れ帰るかは別の話だが。

 

 って、また話が逸れてしまった。

 

「……それで、どうやってやればいい?」

「それなら、手っ取り早い方法があるよ」

 

 しゅるりと、サクヤの胸と腕の中から抜け出すと、トコトコ俺の目の前に歩いてきて、手を握った。

 

 ……記憶が流れ込む。

 

 

『……ったく、ウチの支部長さんは人遣いが荒いったら』

 

 目の前に屹立する、山の如き巨躯。

 

『今日のデートは、ちょいと予定が狂いそうだ……あ〜、ビールが恋しいぜ』

 

 燻らせていた煙草を、地面に落として、火を消す。

 

 点々とした複眼がこちらを見ている。

 

『……いっちょ、頑張るとしますかねぇ。悪ぃな、相棒……今日も無理させちまうな』

 

 リンドウは、自分を見詰めると、コアをそっと撫ぜた。

 

『そんな事は無いよ。思う存分にやるといいさ……いつものようにね』

 

 心を通わせる。リンドウにとっては何気ないことで、自分はただ、それに合わせるだけ。

 

 この時が、僕にとって一番リンドウと分かり合える。

 

 だから、僕は〝約束〟を交わす。

 僕は、君ともっと近くで戦いたいんだ────

 

 

 ……レンの事が、この短い記憶の間だけだが手に取るように分かった。

 

 〝約束〟の交わし方も、〝約束〟の温かさも……やってみた訳ではないのに、シオにバーストアーツを教わった時のように、妙に出来ると確信していた。

 

「絆があるなら、君にも出来るはずだよ」

「……そう?」

「……うん、そうだよ。僕がこんなに親しく話すのは、ユウやアキ、リンドウくらいだよ。どことなくでも、僕に親近感を湧かせるくらいだ。〝約束〟の力を、十全に扱うことが出来ると思うよ」

 

 まだ、手を握りこんだままのレンが、そう太鼓判を押した。

 それなら、尚更問題無いだろう。

 

「……ありがとう」

「お礼なら、さっき十分に受け取ったって。それよりも、ほら……」

 

 レンのポケットを指差すと、突然、腰の携帯がプルルルと震え出した。

 誰から……と画面を確認すると、[ヒバリ]と書かれている。即座に通話ボタンを押した。

 

「……はい」

『シアンさんに新たな任務がアサインされています。至急、エントランスに集合してください』

「……了解」

 

 まるで、示し合わせたかのようなタイミングだった。

 ジロリ、とレンを見遣ると、人差し指を口に置いて、ニヤッと笑った。

 

「さっき言った貸し、覚えておいてね?」

「…………」

 

 レンへ向けるジト目が強くなった気がして、溜息を吐いてから、席を立って、扉を開いた。

 超能力か、そう仕向けたのかは分からないが……レンは恐ろしいって、はっきり分かんだね。

 

「ん……邪魔した」

「あら、任務に行くのね? ケガしないように気を付けてらっしゃい!」

「……ん」

 

 サクヤさんに見送られつつ、部屋を後にする。

 

 レンとサクヤさんが仲良くなったのは嬉しいことだが、〝貸し〟を使って何をされるのか……

 

 背筋がゾワッとして、チラチラと後ろにあるサクヤの部屋を気にしつつ、エレベーターに逃げ込む。

 

 ホッと一息吐くと、目の前に見覚えのあるニット帽が……

 

「ん? おおっ、シアンじゃん! これから任務?」

「ん……そんなところ」

「そういえば、一緒に任務に行くのは初めてだよな? よろしくな!」

 

 我らがロミオさんだ。

 相変わらず無邪気で可愛い笑顔を向けてくる。

 

 あれから、ロミオは格段に動きが良くなったと聞くので、ストーリーのままに進行していると見ている。

 

 となると、近い内にフライアに一度帰って、それから、極東支部に赤い雨が降ってくる。

 もうそんな時期が来てしまうのだ。

 

 ……ロミオの犠牲は阻止しなければならない。

 これだけは、何があろうと絶対に譲れないのだ。

 

 自然と拳が握られると、ロミオが首を傾げて、

 

「……暗い顔してるけど、何かあった? 俺が相談に乗ってやろっか?」

 

 と、心配そうに腰をかがめてそう言ってきた。

 

 ……こいつ、俺の無表情を見破りやがったな。

 

 流石、〝対話〟に特化したコミュ力お化けだ。

 今後はロミオの前で悟られないようにしなければ。

 

 伊達に数ヶ月もの間無口無表情で過ごしていない。仮面被りは俺の得意分野なのだ。

 

 少しだけ目を細め、よく見ても差があまり感じられない程度に口角を上げてみる。

 

「ん……大丈夫。心配するほどのものじゃない」

「そうか? 何かあったら、遠慮なく俺に相談しろよな! シアンには、いろいろ助けてもらったし、俺にも何かさせてくれよ?」

「……その時は、必ず」

 

 ロミオさんマジイケメン……現第一部隊隊長が霞んで見える。

 

 そうこう言っている内に、エントランスに着いた。

 

 一緒に降りてカウンターまで行くと、一人はもう集まっているのが見えた。

 

「あ、ヒロじゃん! もしかして三人で同じ任務?」

「そうみたいだな……いや、あと一人来る」

 

 あと一人? と誰もが首を傾げていると、2階の方から、声が聞こえてきた。

 

「ごめん! 少し遅れた!」

 

 階段をスタスタと降りてくるのは、茶髪碧眼のキラッキラしたイケメン。

 

 クレイドルの白い隊服が良く似合う、極東の顔。

 

「あー、やっぱり僕で最後になっちゃったな……」

「いえいえ! 数秒程度の誤差ですから、そんなに気を落とさないで下さい、ユウさん!」

「あはは、ありがとうね、ヒバリさん……」

 

 神薙ユウ。

 ついこの間に、模擬戦をしたばかりだが、あちこち仕事に行くので、中々姿を見せることは無い。

 

 アリサが『帰ってきても全然会えないじゃないですかぁ!!』とプンスカしているくらい仕事ばっかしているので、博士に上訴して、アリサとの時間を作ってやって欲しいと頼み込んだ筈だが……さては研究に没頭して忘れているな。

 丈夫になったことだし、後で首を絞めてやろう。

 

「シアンちゃんと、ヒロ君、そして……ええと?」

「あ、俺、ロミオって言います! 神薙ユウさんですよね!」

「え、えと、そうだけど」

「俺、極東来たら一度はユウさんと握手したかったんです!」

「僕と? ま、まあ、こんな手で良ければ全然いいよ」

「ありがとうございます! もう一生洗いません!」

「いや、それはやめて……?」

 

 ロミオが、推しのアイドルとプライベートで遭遇してテンパってるファンみたいになっている。

 確かに、神機使いの間では超有名人だから、そういう風な反応になるんだろう。

 

 そういう訳で、ブラッド隊員二人、クレイドル隊員二人の異色チームが誕生した。

 

「では、今回の任務について説明しますね」

 

 今回のステージは、〝黎明の亡都〟で、出現アラガミは、イェン・ツィー、カバラ・カバラ、コンゴウ堕天、荷電性ボルグカムラン。

 

「数こそ多いですが、イェン・ツィー、カバラ・カバラ以外の二個体は三分遅れで同時に出現すると見られます。全てのアラガミの共通の弱点が火属性なので、それぞれ分断しつつ交戦し、辛抱強く持ち堪えるのが望ましいですね」

「火属性かぁ……なんかパーツあったっけなぁ」

「それじゃあ、僕はアヴェンジャーを持っていこうかな」

「無属性しかないから、バレットを変えていくしかないか……」

 

 三人がうんうんと考え込んでいる。

 

 俺も、早く神機欲しいなぁ……

 

「よし、それじゃあ5分後に出撃ゲートに集合でいいかな?」

「「はい!」」

「……ん」

 

 特にやることの無い俺は、五分間の待ちぼうけを食らった。

 

 リッカさん、大変なのは分かってるけど、早くしてぇ……っ!

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 ヘリに乗り、十分ほど。

 

 黎明の亡都の高台に集まった俺たちは、眼下の陸地で優雅に歩いているイェン・ツィーに目を向けていた。

 

『現在、戦域はカバラ・カバラの偏食場により強制活性化、フルバースト状態になっています』

 

 カバラ・カバラは発見されてそう時間が経っていない新種なのだが、他の感応種と違い生態が全く解明されていない。

 どうして周囲のオラクルを活性化させるのかだとか、無意味に戦域に現れたり、特に何もしなかったりと、何がしたいのか目的も掴めそうにない……と、ソーマが話していた。

 

 グボロ種はどうしてこうも変な扱いを受けているのか……

 

「カバラはポイントDか……先に相手の活性化を解きたいので、俺とユウさんでカバラと接敵し、強制活性化状態を解除させましょう。シアンとロミオは、俺達がカバラを倒すまでイェン・ツィーを抑えつけてくれ」

 

 ヒロの立案した作戦は、実に合理的だった。

 やはりゲームと違って、味方が特性を理解して作戦通り動いてくれるというのは、本当にやりやすい。

 

「おうよ! 任せとけ!」

「了解。感応種との本格的な戦いは初めてだから、色々教えてくれると助かるよ」

「ん……」

「じゃあ、出ます!」

『はい! くれぐれも、油断はしないでくださいね!』

 

 4人が同時に、高台から飛び降りた。

 

 こうも何回も飛び降りていると、最初の頃はあった高いところからの恐怖というのが無くなってくる。

 

 スチャッと音を立てずに落下すると、俺とロミオがイェン・ツィーに一直線に、ヒロとユウが斜めに逸れて、図書館の方へ移動していく。

 

 イェン・ツィーがこちらに気付いて、振り向いた。

 

「ホワァァァァン────!!」

 

『大気中のオラクルが凝集、アラガミが形成されます』

 

 紫色の光を伴い、オウガテイルの感応種……チョウワンが形成された。

 

「うわっ、五体も出やがった!」

『ロミオさん! 偏食場パルスがそちらに集中しています、集中攻撃に注意してください!』

「げえっ!? マジかよ……!」

 

 早速飛び掛ってくるチョウワンにタワーシールドを展開するロミオをチラりと見てから、両手のバイティングエッジを構える。

 

 走り出すと共に、近くのチョウワン一体に飛びかかり、コアごと刃で穿いて消滅させる。

 続いて、視線を右に向けると、チョウワンの尾弾の構えが。片手の神機の盾で全弾を押し切ると、頭ごと撥ねて、コアに容赦なく突き立てる。

 

「うわっ、すっげぇ……」

「……感心してる暇はない。後ろに一体」

「え?」

 

 ロミオの背後から、エリック上田!と叫びたくなる構図で飛び掛かるチョウワンに、右の神機を持ち替えて、スナイパーの狙撃弾を一発。

 

「あ、ごめんっ!」

「……注意して」

 

 そういえば、ロミオには二刀流スタイルは見せていないのか。

 そりゃあ、気になるか。

 

 そんなことを考えつつ、イェン・ツィーが羽根を幾つも飛ばして攻撃をしてきた。

 それをダイブの要領で、盾を展開しつつ突進して防ぎきると、イェン・ツィーの翼に一閃を見舞う。

 

「む……硬い」

 

 斬撃には脆いはずの羽根の部分の手応えは、ザクッではなくサクッという感じだ。

 ビックリして、その場から飛び退いてしまった。

 

 最近は美味しいムツミちゃんのご飯ばかりで、あまりコアを捕食していないから、体が弱っているのかもしれない。

 

「おりゃぁっ!!」

 

 イェン・ツィーの横っ腹に、ロミオのフルスイングが突き刺さり、大きく吹き飛ばされた。

 すかさず、追撃に出ると、翼をはためかせて受身を取り、掌に氷を生成し始めた。

 

「……そうはさせない」

 

 右手の神機持ち替えて、スナイパーにし、照準を合わせると、狙撃弾で氷ごと撃ち抜く。

 破壊されたことに狼狽えたイェン・ツィーに、〝シュトルム〟で急迫し、食らいついた左をそのままに、右の神機を上半身をと斜めに袈裟斬り、逆手持ちしてもう一撃を食らわす。更に左の噛み付いた神機でもう一度齧り付き、そして捕食口の前面に発生したブースターで加速、後ろにバックステップする。

 

 ──プレデタースタイル〝ゼクスホルン〟

 

 捕食後の隙をカバーしてくれる、使い勝手の良いプレデタースタイルだ。

 

「ホワァァァンッ!!!」

『感応種、新たなアラガミを形成、シアンさんに偏食場パルスを集中させています!』

 

 五体まとめて生成され、それらの視線がこちらを向く。

 

 あわや、襲いかかる……という寸前で、その一部のチョウワン共が火の爆発弾によって吹き飛ばされ、イェン・ツィーへの道が開ける。

 後ろを見れば、ロミオがブラストを構えてこちらに接近しつつあった。

 

「雑魚処理は、俺の得意分野だっての!」

 

 ロミオが俺の真上を跳び越えて、空中でチャージクラッシュを溜めると、チョウワンの他にイェン・ツィーまで巻き込み、叩きつけた。

 

 その瞬間、イェン・ツィーの頭の一部がえぐり取られる。

 

『アラガミ、結合崩壊により活性化!』

「あ、やべっ、捕食しておかないと」

 

 結合崩壊に反応する暇もなかったのか、カバラの強制バーストによって生まれたバーストレベル3を切らすまいとすぐ近くのダウンしているチョウワンをクイック捕食。

 

 バーストの心掛けをキチンとしているあたり、俺の訓練の成果が生きているようだ……逞しくなったようで何よりです。 

 

 チョウワンが一匹残っているが、それは一旦放置してイェン・ツィーに目線を向ける。

 

 すると、奴は上に飛び上がり、空中で滞空しつつ狙いを定めた。

 

 狙いは……ロミオだ!

 

 直ぐに後ろを見ると、ロミオは最後に残っていたチョウワンにかまけて、イェン・ツィーの攻撃対象になっているとは気付いていない。

 

 ……これはマズい。

 

 俺がロミオの方に駆け出したと同時に、イェン・ツィーも高高度からの急滑空を開始した。

 

「──ロミオっ!」

「え? う、うわぁっ!?」

 

 咄嗟にロミオを突き飛ばし、残った片手でガードを試みる。

 

 ……しかし、すんでのところで、イェン・ツィーの翼が、装甲の間に入り込み、ガードが果たされることは無かった。

 

 猛烈な痛みが、胸から腹にかけて走る。

 フラリと足がもつれかけるが、どうにか踏ん張って、肉を切らせて骨を断つ……ガラ空きの頭と上半身に、両手の神機を突き刺す。

 

「ホァァァッ!! ホワァァァッッ!!!」

 

 叫び声を上げて暴れるイェン・ツィーから神機を無理矢理引っこ抜き、その場から一歩引くと、ロミオが入れ替わるように前に出た。

 

「トラップ……設置っ!」

『アラガミ、ホールド状態!』

 

 イェン・ツィーの足元に投げ込まれたホールドトラップが作動し、イェン・ツィーの行動を封じ込めた。

 

「ッ……シアン、ごめん! 一旦下がってて!」

「……分かった」

 

 油断したのはいけなかったが、ロミオの咄嗟の判断は素晴らしい。

 焦りは感じていたものの、機転を利かせて、俺に構わず足止めを狙った。

 

 かく言う俺は、まだ入隊して五ヶ月経ったくらいなのだが……

 

 ポケットから取り出した回復錠改を噛み砕き、飲み干す。

 

 胸の傷が癒えていくのを確認しつつ、ホールド状態のイェン・ツィーへ駆け込み、両手を巧みに動かして、同じ箇所を集中的に攻撃する。

 

 やはり、思うようには斬れない。

 弱点の肉質なら、もう翼は結合崩壊どころか、断ち切れてもいい頃なのに。

 

「……解除されたか」

 

 その瞬間、イェン・ツィーがしゃがみ込んだ。

 

「!? マズぅっ!?」

 

 ロミオも気付いたらしい。

 これは範囲攻撃の予備動作だ。

 

 二人して装甲を展開すると、相手は溜め込んだ力を解放し、遠心力も用いた腕の二回転の攻撃を容赦なく神機に叩きつけた。

 

 ゲームと違って、無敵時間が無くて攻撃は見た目通りの回数だ。

 キュウビのレーザー攻撃なんかを食らったら、もう目も当てられない。

 

『ッ、予測より早いです! 大型アラガミ、一分ほどで作戦エリアに侵入します! ポイント情報送ります、どうぞ!』

 

 咄嗟に端末で位置を確認すると、ポイントB……つまり俺達が今いるエリアの方に、ボルグ・カムラン堕天が出現するようだ。

 

「……傍迷惑な」

 

 悪態を吐きながら、あの攻撃でヒビが入った装甲を修復していると、ロミオがこちらに駆け寄ってきた。

 

「これ、まとめて相手取れるかな……」

「……イェン・ツィーがいる以上、かなり厳しいかも」

 

 チョウワンがかなり厄介だ。群れをなされて攻撃を仕掛けられると、大型の討伐の際に鬱陶しいし、回復を邪魔される場合もある。

 

『そっちに俺が行こうか? ユウさん一人でも、カバラ・カバラは問題無さそうだ』

「……ん〜、ちょっと待って」

『え?』

 

 こちらの戦況がよろしくない事に、ヒロが駆けつけてくれるかと提案してくれたが、まだその時ではない。

 

 ヒロが来る前に……一つ、試しておきたいのだ。

 

「……ロミオ、息を合わせて」

「お、おう……? なんかよく分かんないけど、分かった!」

 

 深呼吸を一つ。

 ロミオの偏食場を感じ取り、それを自分の偏食場と同調させる……

 

『!? こ、これは……ロミオさんとシアンさんの偏食場パルスが、徐々に融合……いえ、シンクロしていきます!』

 

 ヒバリの反応からしても、上手くいっていると見ていいだろう。

 

 だから、後はロミオ……お前が感じ取ればいい。

 

「……ロミオ、それを受け容れて」

「な、なんか……暖かいものに包まれてる感じ……ってか、受け容れるって何!?」

 

 いや、そんな曖昧な。

 意志の力なんてフワッとしたものに、やり方をどうすればいいと言われても。

 

 ……分かりやすく言えば、こうだろうか。

 

「……要するに、私を信じて、って意味」

「う、う〜ん? まあ、信じればいいんだな! それなら、俺ほど得意なヤツはいないぜ!」

 

 分かっているのかいないのかは釈然としないが、そう啖呵を切っただけはあった。

 俺が発していた感応波が、遂にロミオと完全に結び付いた。

 

『同調率、100%!』

 

 

 

 

 

ジュリウス、シエル、ロミオ、アリサ、ソーマ

ジュリウス、シエル、ロミオ、アリサ、ソーマ

「えっ!? ちょっ、何だコレ!?」

 

 ロミオが、自分の周りに突然発生した、円環状の光の糸を見て慌てている。

 その糸は俺の周りにも浮かんでおり、俺とロミオの間には、繋ぐように一本の糸が結ばれていた。

 

 これはエンゲージが問題なく機能している証……メタなことを言えばエフェクトなので、慌てる必要はない。

 

「……落ち着いて。大丈夫、いつも通り、やってみればいい」

「いや、なんかビックリして……ってぇ!? まえ、前ぇ!」

 

 ロミオに呼ばれてみれば、イェン・ツィーは滑空攻撃を仕掛けている。

 

 だが……効果は一通り把握した。

 早速、実践編と洒落こもうじゃないか。

 

「ロミオ、盾を構えて」

「い、言われなくてもしなきゃマズいでしょ!」

 

 俺も事前に構え、二人してイェン・ツィーの滑空攻撃に備えた。

 

 キィンッ!!

 

 そう、気味の良いガード音が聞こえて衝撃もやってこない。

 ロミオも、唖然としているほど驚くべき事だった。

 

 ──ガードは必ずジャストガード判定となる

 

 これが、俺のエンゲージの効果だった。

 ゲームで出たなら、結構なバランスブレイカーとなったに違いない。

 

「……え? 今のって、ジャストガード?」

「……今なら、どんな時でもそうなる」

「す、スゲー! これなら、二人だけで余裕で勝てそうだな!」

「……慢心、ダメ」

「あ、そっすか……」

 

 盛り上がりたいのはやまやまだが、それはイェン・ツィーを倒してからにしたい。

 俺だって、自分のエンゲージの内容を知って庭を駆け回りたいくらいだ。ロミオも我慢してくれ。

 

「……行く」

「挟み撃ちにしてやる!」

 

 左右に逸れると、神機の形状を変化させ……ブラストで三発、斜め上に飛んでいく弾丸を発射する。

 

 空中に放たれた弾丸らは、空で球状のオラクルとなって停滞すると、イェン・ツィーに降り注ぐ。

 当たった瞬間、オラクルが敵に貼り付くと小規模ながら爆発を起こし、よろめいた。

 

 距離はまだ離れている。このまま二刀でもいいが、接近できずにどちらかにターゲットが偏って、敵の位置が動くのは得策じゃない。

 一秒にも満たない時間で考えをまとめると、左の神機を地面に刺した。

 

 そのまま右の神機を両手で握ると、俺はステップを踏み込み、長刀を横に振り抜く。

 BA(バーストアーツ)、『刹那の斬光』が発動したことによって、青い燐光が舞い散って、神速の如き一閃がイェン・ツィーの翼を襲った。

 

 手応えはまるで風を斬るかのようで、一切の突っ掛かりを感じないまま一閃の終点に辿り着いていた。

 

『両腕羽が結合崩壊! ダウンしました!』

 

 ボトリ、と地面にイェン・ツィーの右翼が落下した。

 

 両腕羽は、肉質的にも、切断一辺倒な長刀に断ち切れるものではない。

 なので、バスターブレードで叩き斬るのが最も効果的だったりするのだが、今回の場合それは例外となる。

 

 ──場の全てのアラガミの肉質を一段階軟化させる

 

 俺が、奴の両腕羽を斬り飛ばすことが出来た、最大の理由。

 

 それは規格外の能力を持った、ロミオのエンゲージによるものだったのだ。

 

 それによって、両腕羽……翼への切断攻撃が明確な弱点となったから、破壊が容易になったのだ。

 

「俺のチャージクラッシュを、喰らいやがれぇっ!!」

 

 と、ロミオが叫んでいるが、まだチャージクラッシュの射程圏外だ。

 いや、普通にバレットとかで応戦する距離でそれって……

 

 目を覆いたくなるような痴態を晒そうとしているが、ロミオもそれが分からないほど阿呆ではない。

 

 だと言うのに、この時、咄嗟にその考えが頭に浮かばなかったのが、何より自分がロミオを信じきれていなかったことへの証左なのかもしれない。

 

 突然、強大な意志の力が、エンゲージを通じて俺へと流れ込んで来たのだ。

 

 

 ……それは、純然たる血の輝きを伴って。

 

 ……それは、審判のガベルがを打ち鳴らされるように。

 

 

 そして紛れもない、ロミオ自身の意志の力によって。

 

「うおおおおおっ!!」

 

 気合と共に、溜め込んだチャージクラッシュを下から振り上げて(・・・・・)放つと、紅色の刃が地面を走り、蹲るイェン・ツィーの上半身を大きく仰け反らせ、転倒させた。

 

 

 

 ──バスターブレード・チャージクラッシュBA(ブラッドアーツ)『CC・アービター』

 

 

 

「……えっ、うそん」

 

 気の抜ける声と共に、俺の口は塞がらなくなった。

 

 

 

 




『恋風の想い』──ガードを強制的にジャストガード判定にする

こいかぜ的なアレ。前と同じく椎名さんシリーズです。
次は未完成の歴史か、無印のおなじみ72さんの曲になるか……

『エンターテイナーの矜恃』──エリア内の全てのアラガミの肉質を一段階軟化させる

血の力からして、こんな効果になりそう。
ロミオPが更に優秀になられて……

P.S.エンゲージの特殊タグの提案を頂いたので、挿入してみました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです! ありがとうございました!

ロミオPの処遇について

  • いつも通り、逝くなぁぁぁ!される。
  • シアンちゃんに救出される。

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