神さまばっかの世紀末な世界に、俺が望むこと   作:赤サク冷奴

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エクスプロージョンッ


中二病でも神がしたい!

 

side──

 

 

 その時、僕は今に至る経緯の記憶が思い出せなかった。

 

 何故なのかは分からない。両親と銀行に入ったところから、パタリと思い出せない。

 

 しかも、知らない部屋のベッドで寝ていたのだ。

 

 鏡の前に立つ自分は、覚えている限りの自分から成長していて、戸惑いが隠せなかった。

 

 リビングらしき所に向かうと、顔見知りなだけだったはずの伯父と伯母が、あたかも自分たちが本当の両親かのように振舞い、従姉と実の妹らしき人物が二階から降りてきて、慣れたようにおはようと告げた。

 妹はまだ一歳だったのに、目の前で「お兄ちゃん?」などとのたまう妹とやらは普通に言葉を発していて、思わず自分が絶句した。

 

 自分の体が成長していたから、当然なのかもしれないが……僕には訳が分からなかった。

 両親はそんな僕を見て、性格が明るくなったとか言い、近くに住む、同じく成長していた幼なじみは逆に、元に戻ったと喜んでいた。

 

 理解なんてとてもじゃないが追いつかない。

 

 僕の体は誰かに操られていたのだろうか。

 それが、何で今になって戻ったのか。

 

 (あららぎ)犬夜という人間が、この頃から、自分でもどうしようもなく分からなくなった。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 シアンとロミオがイェン・ツィーと格闘していた一方で、作戦通りに、ヒロとユウはカバラ・カバラを相手取っていた。

 

 ……なのだが。

 

(やっべぇ、ユウさん、もしかしなくても化け物の類い?)

 

 ヒロは盛大に顔を引き攣らせて、ユウの戦いぶりを見ていた。

 

「せぁっ……!!」

『カバラ・カバラ、結合崩壊!』

 

 空中を一回転してロングブレードを振り回すと、無惨にもカバラの砲塔はもぎ取られ、無くなっていた。

 見れば、神機の捕食形態がもぐもぐと口を動かしている。砲塔は既に神機の中だったようだ。

 

(いやいやいや、今の一瞬でどうやって捕食したんだよ……シアン以上の化け物だって)

 

 ヒロはもう、ユウの強さについて考えるのをやめた。

 

 初めてヒロがユウと会った際、『多分、君は将来僕に並ぶくらいになるだろうしね』と言っていたが、目の前の戦闘を見て、ヒロは確信した。

 

 すなわち、ムリだと。

 

「う、うぉぉおおお!」

 

 やけっぱちに突撃すると、カバラの背後に回り、短いステップを3回。

 そして、4回目のステップに入ると、紫の光が刀身に収束し、それを滑り込むように振り上げる。

 

 そうして放たれた『秘剣・昇り飛竜』は、カバラの尾ビレを正確に捉えた。

 

「グワァァッ!!」

 

 弱点特攻の効果で、ただでさえ威力の高い攻撃が、二倍になって反映されれば一溜りもない。

 

 だが、膝がガクッとくずおれた。

 

 派生系の、いわゆる〝黒BA〟と称されるブラッドアーツや、類似した効果のバーストアーツは、全て代償を伴う。

 ヴァリアントサイズのBA(バーストアーツ)『ヘルオアへブン』や黒BA『エクスキューション』は、タイミング良く引かなければ発動せず、発動しても体力を奪われ、ショートブレードのBA(バーストアーツ)『ランページコメット』や黒BA『アストラルダイブ』は、空中での溜め時間に加え、弱点に当ててクリティカルが発生しなかった場合、スタミナがゼロになり、急激に疲れが出てしまう。

 

 ハンマーの黒BA『奥義・竜巻殺法』は……皆まで言う必要はないだろう。

 

 この『秘剣・昇り飛竜』は、発動に計4回の踏み込みが必要で、当たろうが当たらなかろうが、スタミナを五割持っていく。

 過度に使えば、極度の疲労の中で戦う羽目になるので、決して、ヒロのようにやけっぱちで放ってはいけない代物だ。ご利用は計画的に。

 

『敵、ダウン! バイタルも低下しています!』

 

 しかし、ヒロの健闘もあって、カバラは前のめりに倒れ込んで、ダウンしている。

 

 すると、ヒロに向かってユウからのアイコンタクトが飛んできた。

 

 一気に畳み掛ける……その意を悟ったヒロは、ユウが戦える空間を作るために横に避け、BAを発動する。

 

 変則的なゼロスタンスの構え……剣道の中断の構えから、ゆっくりと上段に移行する。

 

 刹那、ヒラリと、空から舞い落ちる一片の花弁を幻視すると、それは何の狂いもなく、中央で二つに分かたれた。

 

 ──ロングブレード・ゼロスタンス□攻撃BA『落花ノ太刀・紅』

 

 風を切る音さえ感じさせないような、全身の筋肉を余すことなく利して、発せられる瞬閃。

 舞う花弁一片とて吹き飛ばさず、空気の抵抗が極限まで消失した唐竹割りは、肉眼ではその剣筋を捉えることは出来ない。 

 

「グアァァァ……!!」

 

 カバラの尾ビレを瞬く間に二つに裂けて、黄緑色の肉が姿を現す。

 

 ヒロが更にもう一撃を加えると、脆くなった結合が完全に崩壊した。

 

『アラガミ、結合崩壊!』

「じゃあ、僕も頑張ろうかな!」

 

 離れて様子を見ていたユウが、ステップから〝シュトルム〟を発動し、突進しながらカバラに噛み付くと、捕食形態をしまいつつ斬り上げ、軽々と振り回す。

 ヒロも『朧月』で威力の強化された連撃を繰り出して、手傷を増やしていく。

 

『ッ、予測より早いです! 大型アラガミ、一分ほどで作戦エリアに侵入します! ポイント情報送ります、どうぞ!』

 

 もうそろそろトドメかと、ヒロが『斬鉄』を発動したその時だった。

 

『……傍迷惑な』

『これ、まとめて相手取れるかな……』

『……イェン・ツィーがいる以上、かなり厳しいかも』

 

 大型種ならば、つまりボルグ・カムラン堕天。

 

 ヒロからすれば、片手間で処理できるほど楽な相手ではない。

 

「そっちに俺が行こうか? ユウさん一人でも、カバラ・カバラは問題無さそうだ」

 

 もうダウンは解除されていたが、所詮はグボロ種。単調な攻撃の繰り返しなので、ユウは苦もなく躱し、刃を頭に突き立てた。

 倒されるのも時間の問題だろう。

 

 しかし、シアンから帰ってきたのは予想外の言葉だった。

 

『……ん〜、ちょっと待って』

「え?」

 

 何をちょっと待つのか……そんな疑問は、直ぐに晴れることとなる。

 

 

 ──ドクンッ

 

 

 幾度となく体感してきた、強い意志の力。

 

 胎動する、血の衝動。

 

「まさか……ロミオ先輩が」

 

 そうは考えてみるも、少し違和感があった。

 ロミオと思わしき意志には、何かもう一つ……暖かい意志が混ぜこぜになっていたのだ。

 

 誰かが寄り添うような、そんな莫大な意志のエネルギーが、ヒロを突き抜けた。

 

『!? こ、これは……ロミオさんとシアンさんの偏食場パルスが、徐々に融合……いえ、シンクロしていきます!』

「……だから、少し待てってことか」

 

 ヒバリさんの通信で、ヒロは確信に至った。

 

 シアンだけが持つ未知の力……ナナとシアンが一緒にアナグラを出たあの日に、ヒロはブラッドとはまた違う、彼女の強い意志の力を感じたことがあった。

 

 シアンだけが持つ、ブラッドアーツや血の力と似て非なるもの。

 ロミオに力を分け与えている存在は、それに違いない。

 

「すいませんユウさん、カバラをお願いしてもいいですか?」

「うん、全然構わない! 気にせず二人の救援に向かうんだ!」

「助かります!」 

 

 ユウさんに甘え過ぎになっているなぁと、気まずそうに頭を搔く。

 理解があって、ついつい寄り掛かりたくなってしまう人柄にヒロは弱い。

 因みに、ハルさんなどもその一例に挙がる。

 

 その場をユウに任せ、大図書館の中を突っ切っていく。

 

「どうなる事やら……」

 

 少し不安に思いつつも走り抜けて、だんだん光が見えてきた。

 曲がれば後は一直線で、奥の広場にはイェン・ツィーと、それに対峙するように並び立つ二人の姿が。

 

「……要するに、私を信じて、って意味」

「う、う〜ん? まあ、信じればいいんだな! それなら、俺ほど得意なヤツはいないぜ!」

 

 ヒロが広場に出ると、二人が頷き合って手を繋いだ。

 

『同調率、100%!』

 

 過去に類を見ないほどの強力な感応波が二人から発せられる。

 ジュリウスの血の力を以てしても、この二人の感応現象を上回ることはないだろう。両者の間に結ばれた『約束』の力は、それほどに強力なものだった。

 

 強力なのは波の強さだけではなく、効果も段違いなのだが。

 

 ジャストガードの強制発動……ヒロが即座に知り得たのはこれだけだったが、この能力は破格の一言に尽きる。

 ガードしたとしても盾ごと破壊される可能性だってあるのだから、絶対的な防御に等しいジャストガードを常に発動できるのは、相当な安心感を生む。

 

 横から迫ってくるチョウワンを切り裂き、銃形態で構えた。

 

『ボルグ・カムラン堕天! 作戦区域に侵入しました!』

 

 広場、南東方向にある高台に姿を見せた、金色の騎士甲冑。

 雄叫びを上げ、移動を開始した。

 

「来た……!」

 

 ヒロの目的は、カムランを出来るだけ遠ざけつつ、二人の様子を見守ること。

 

 ちょっと待ってと言っていたのは、邪魔をするなという事だろう。

 シアン自身あまり使ったことの無い力なら、それを試したくなるのも分かる。

 

 だが、ヒロはどうにも気に食わなかった。何で教えてくれなかったのかと。

 身勝手にも、隠し事をされるのが嫌だったと言うべきか……ヒロには不思議な感覚だった。

 

 段々とイライラしてきて、一旦思考を切り替える。まずは目先の問題に対処しなければならない。

 

 獣道を移動中のカムランに向かってアサルトの砲身が火を噴くと、ヒロ愛用、アサルト用ロケット弾が一直線に向かって盾に着弾、大爆破を引き起こす。

 

 爆発の衝撃と弱点属性によるダメージでよろめくと、四本の脚を屈め、何度も大きく跳躍し、ヒロの目の前にまで迫ってくる。

 

「キシャァアアアッ!!」

 

 カムランの三段突き。それをステップで距離を詰めることで回避、そのままカムランの真下を走り抜き、背部の尾に向かって神機を払った。

 

 ロングブレードを担いできた以上、近接では殆どの部位に切断属性の効かないカムランの唯一の弱点となる。

 

 また尾を狙うべく跳躍すると、カムランは四本の脚を器用に使って一瞬でこちらに向いた。当然、尾との距離が離されるが、ヒロとっては全くの問題外の行動だった。

 

「セェアッ!!」

 

 ヒロは、滞空状態にあった自分の身体を神機ごと縦に回転させながら、己の血の力を解放させる。

 

 そうすれば、雷がカムランの頭上を駆け抜けた。

 

 ヒロの姿は掻き消え、かと思えば、カムランの尾に刃の縦一文字を刻み付けて、背中に降りてから、地面へと着地。

 

 あっという間の攻撃で、これを認識出来るアラガミはほぼ存在しない。

 なぜなら……

 

 ──ロングブレード・空中△攻撃BA(ブラッドアーツ)『韋駄天』

 

 走りに於いて、並ぶ者無き神の名を冠するブラッドアーツを、どうして視認できようか。

 

「キシャァァアアアア!!」

『ボルグ・カムラン、活性化!』

 

 カムランの怒りに満ちた雄叫びが木霊する。いつの間にか自分の身体を深く傷つけられ、激情を隠せない様子だった。

 と言っても、ヒロにはお構い無しだ。『ドライブツイスター』を発動して、体全体を捻り、勢いそのままに斬り上げた。

 

『ボルグ・カムラン、結合崩壊!』

 

 結合崩壊により、カムランが隙を見せた。

 ヒロは懐のスタングレネードを取ってカムランの背中に投げると、それは上手いこと炸裂し、カムランが間近で閃光を食らう羽目になる。

 

「……さて、二人はどうしてるかなっと……」

 

 しばしの猶予。その間だけだが、二人の勇姿を見届けようと、シアンとロミオが交戦している場所にチラリと目を向ければ、

 

「俺のチャージクラッシュを、喰らいやがれぇっ!」

 

 少し離れたこの場所でも聞こえてくる程、気迫に満ち満ちた掛け声。

 溢れんばかりの強大な意志の力。

 

 それは、まるで血の力の兆候のようで……

 

 

 

『あーダメダメ! 腕の力だけで振り回すなって!』

 

 頭がチクリと痛む。

 

 ロミオがチャージクラッシュを構える姿が、ある日の訓練場の姿と重なっていた。

 

 何気ない訓練風景。

 その日は、ヒロがバスターブレードに付け替えており、ロミオは、バスターを野球のバットでも振るように振り回していた。

 

『バスターは腰からこう……こう! 身体の捻れるところを捻って、上半身の力を全部乗せるっ! コレ大事な!』

 

 バスターブレードは、ブレードの中でも重量級だ。

 ロングを多用するヒロには未知の感覚で、武器を振ろうと思うと、自分が振り回されてしまう。

 

 そんなバスターブレードの指導に買って出たのが、ロミオだった。

 彼の指導は的確で、ヒロも段々とコツを掴み始めていたある日。

 

 一通りの振り方の指導を終えると、いつもなら訓練場から出るのに、その日はまだ何か一つ、教えたいようだった。

 

『っし! じゃあ俺のお気に入りの技を教えてやっからバスター構えろ!』

 

 チャージクラッシュの構え。同じくヒロもチャージクラッシュを開始するが、ロミオは、

 

『そうそう、で、チャージが溜まったらあとはアラガミを下から思いっきり……!』

 

 

 

「うおおおおおっ!!」

 

 あの時と同じように、下から振り上げるチャージクラッシュを放った。

 

 自分のお気に入りと称されたその技は、意志の力によって『CC・アービター』──審判者の名を冠する新たな技へ昇華された。

 

 振り上げと共に地面を走った紅刃が直撃し、仰向けに倒れるイェン・ツィー。

 

 ヒロはそれを、この世のものとは思えないものを見る顔で、ただ茫洋と見つめていた。

 

(……ブラッドアーツ? ロミオ先輩が、ブラッドアーツ? え?)

 

 この男、全くもって現実を理解しようとしていない。頭の中はすっかり混乱していて、まるで、もうちょっと後に覚醒するものだと思っていたような驚きぶりだった。

 

 ヒロの視界には、倒れ込んだイェン・ツィーに、ロミオとシアンがあらゆる攻撃を畳み掛けている。

 

 よく見れば、シアンまでブラッドアーツの様な技を繰り出している。あの感応現象は、ブラッドアーツでも覚醒させるのだろうか……

 

「キシャアアアアッ!!」

「──あっ」

 

 熟考の最中、ボルグ・カムランの怒りの突きが、ヒロの身体を抉り、衝撃が襲う。

 

「ぐぁっ!?」

 

 ヒロの不注意ゆえの負傷だった。軽傷ではあるが、雷による火傷も伴って凄まじい痛みと、地面を跳ねながら転がっていく痛みに顔を歪ませながら、神機を地面に突き刺して衝撃を殺し、回復錠を飲み干す。

 

『イェン・ツィー、カバラ・カバラ、共に沈黙!』

『よっしゃあ!』

『ふぅ……感応種って、意外と硬いんだなぁ』

 

 その間に、ユウがカバラを、二人がイェン・ツィーを倒し終えた。この時点で、作戦開始から3分を越したところであり、何ら問題無いどころか、早すぎる時間だった。

 

『中型種、作戦エリアに侵入しました! 侵入地点のデータを送ります!』

 

 そして、最後の標的であるコンゴウ堕天は予定通りの侵入。

 

『僕もそっちに行くよ』

『……ヒロと合流する。ユウは、ロミオと一緒にコンゴウを』

『俺がユウさんと!? マジで!?』

『それじゃあ頑張ろうね、ロミオ』

『は、はい!』

 

 コンゴウが現れる地点は、ボルグ・カムランが出現した位置と同じ、ポイントB南部の獣道。

 

『広さから考えて、そうだね……僕とロミオは、コンゴウをポイントCに誘い込む。シアンとヒロは、ポイントBの広い土地で戦ってほしい』

『ん……恩に着る』

「助かります、ユウさん」

 

 それで一旦の通信を終え、自分目掛けて走るカムランを目の前に捉える。

 

(もうすぐバーストが切れる……アレ(・・)を使うか)

 

 強制解放剤という手もあるが、生憎と、今回のミッションで持ち合わせていなかった。

 突き刺した神機を引き抜き、それをゼロスタンスの構えのように地面と並行に持つと、ステップを踏み込んだ。

 

 その瞬間、ヒロの神機がプレデターフォームに移行。しかし、その形は見慣れた口ではない。二つの突起が生え、オラクルがその突起から噴き出した。

 その推進力で急加速して飛び出すと、カムランの硬い脚に齧りつき、喰らう。

 

 ──プレデタースタイル、『シュトルム』

 

 ユウやシアンの愛用するスタイルである『シュトルム』を、ヒロは極東での鍛錬の末に、完全に使いこなすことが出来ていた。

 

(凄いな……捕食が楽だ)

 

 バーストを回復させ、ついでにゼロスタンスからのインパルスエッジで牽制して距離をとる。

 

 と、そこへ、白い影が空を切った。

 

「……ていっ」

 

 気抜けする声。少女らしい可愛らしさも含んでいて、余計に緊張感が無くなりそうだが、ヒロからすれば顔が引き攣ってしまう。

 

 ……カムランの頭に飛び乗ったと思えば、蹴りを入れて、口を強引に開いて、その中にブラストを突っ込んだのだから。

 

 後ろ姿ゆえにヒロは確認出来なかったが、恐らく、シアンの目は今、死神にも等しい冷めた目をしているのだろうと、心の中で想像してしまった。

 

 心做しか、カムランの頭達が、「ちょ、ちょっと待ってくれない……?」とばかりに首を振っている様な気もする。

 

 しかし、慈悲は無い。

 

「……死ね」

「キ、キシュアァアアアアアアッッ」

 

 シアンの無情な死刑宣告が、実際の行動となって実行された。

 

 さながら、口腔爆破と言った所だろう。哀れにも口の中という弱点に弱点属性の炎の爆発を撃ち込まれてしまったカムランが、手脚をバタバタと荒ぶらせて地面に転がる。実にコミカルな動きだが、これにはヒロも哀れまずにはいられない。

 

「……チッ、しぶとい」

 

 対して、殺せなかったのにご不満なシアンが、悪態を吐いて、神機を近接形態に持ち替える。

 

 段々、発言がソーマに似始めているのは気の所為か……

 

「……どうする? 尻尾、ヒロがやる?」

「──っへ!? ……あぁ! いや、尻尾は頼んだ。俺は盾を破壊するから」

「? そう……」

 

 挙動不審になったヒロにキョトンとしつつも、シアンが指示に従う。

 

(……あ、危ない。俺とアラガミとの対応のギャップが凄いな……一瞬別人かと思った)

 

 でも、戦闘で性格変わるような奴じゃなかった気が……いやでも、最初の頃はこんな感じだったっけな……?と、曖昧な記憶を頼りに少し前のシアンを思い出すが、さっぱり分からず、取り敢えず眼前に迫る敵に目を向けた。

 

「……シッ!」

 

 シアンの二振りの神機が横に一閃、カムランの結合崩壊した尾にさらなるダメージを与えていく。

 

 カムランの尾がシアンを突き刺すべくうねる。雷を纏いリーチが伸びているが、それを難なく身の翻しで躱し、BA(バーストアーツ)『セラフィックエッジ』の黄金の軌道が描かれる。

 何気に、ヒロにとってはバーストアーツ初公開だ。

 

 カッコいいなぁ、なんて漏らしつつも、銃形態に切り替えてアサルトの連射弾を撃ち込み、オラクルを稼いでいく。

 時折、BB(ブラッドバレット)連鎖複製の三点バーストが飛んでいって、着実に盾へダメージを与えているので、牽制にしてはダメージ量はかなりのものとなっている。

 

 だが、ヒロの本命は別にある。

 近接形態に切り替えると、地を駆け、カムランへ肉薄した。

 

 カムランはすっかり自らの頭上を軽快に舞うシアンに気を取られて、ヒロの事などアウトオブ眼中のようだ。尾を振り回すも、シアンが咄嗟に飛び上がって、真ん中の頭に左手の神機をめり込ませた。

 

 その時、両者の目が合った。

 

 時の流れが遅くなったように感じる中で、シアンは口を開いた。

 

「……力を、貸して」

 

 何の事、と尋ねるほどヒロは野暮ではない。

 

「……ああ、貸すよ」

 

 挑戦的な笑みでの即答に、シアンの表情が和らぐ。

 

『シアンさんとヒロさんの偏食場パルスが同調! 神機、活性化します!』

 

 

 

 

 

ジュリウス、シエル、ロミオ、アリサ、ソーマ

ジュリウス、シエル、ロミオ、アリサ、ソーマ

 その直後に、ヒロは未知の力が湧き出て、形容し難い謎の一体感と高揚感に包まれた。

 

 〝喚起〟の能力がエンゲージを助けているのか、お互いが同調し合い、一瞬でエンゲージ状態へ到達した。

 

(これがシアンか……意外とあったかいな)

 

 温もりに身を委ねながらも地面を蹴り上げる。

 空中でゼロスタンスの構え……いや、格納されたままの銃身を向けて、血の輝きと共に引き金を引いた。インパルスエッジ──BA『IE・轟爆』だ。

 

 しかしそれは、先程のものとは比較にならない。勿論ブラッドアーツだからというのもあるが、ヒロは驚いていた。

 

(なんだ……これ)

 

 このブラッドアーツを使えるヒロだから分かる異常。大爆発と共に、カムランの悲鳴が響き渡る。

 

『ボルグ・カムラン、結合崩壊! ダウン!』

 

 続けざまに、ゼロスタンスから『神風ノ太刀・鉄』を発動した。

 

 一歩の踏み込みで、神速の一閃を叩き込まれた。

 カムランの盾は結合崩壊から更に崩壊、盾が真っ二つに斬り裂かれ、追い討ちの斬撃が無数の傷を付ける。

 

 普段であれば、ここまでの高威力を叩き出すことは無い。

 その原因は言うまでもないだろうが……

 

 エンゲージ『血の盟約』──ブラッドアーツ・バーストアーツ、及びブラッドバレットの威力を30%上昇させる。

 

 これも破格の能力だ。どこかの未来(GE3)にいるジーク大泣き必至だろう。

 

 少し引き気味なヒロの様子を、シアンがじぃ〜と見詰めていた。

 

「……なるほど」

 

 シアンがそう呟くと、カムランの頭部から飛び降りて、後ろにバックステップ、からのステップで再度接近すると、シアンの神機が蒼く染まる。

 

 その両手の神機を背中にまで振りかざして、ステップの勢いに乗せて叩き付けた。

 

 ──バイティングエッジ・ステップ△BA『双刃衝破』

 

 カムランが狙われたのは、弱点の尾。

 ダウン中なのもあって、『双刃衝破』の威力も上がり、加えてヒロのエンゲージも合わさった結果、カムランの尾を見事に切断していた。

 

『結合崩壊! 敵オラクル反応は微弱です! これで決めて下さい!』

「……ん、ヒロ。トドメを」

 

 二人の後押しする声。

 

 それに応えるべく、脚を踏み込む。

 

(一、二、三!)

 

 三回の踏み込み、そして四回目の踏み込みでカムランの胴体に急迫し、紫の龍が立ち昇る。

 

 このミッション二回目の、『秘剣・昇り飛竜』。

 狙い澄まされた一撃は、カムランの胴体部を容易に右と左に分かつ。

 

『……アラガミ、沈黙しました』

 

 地面にへたりこんだカムランを、強い倦怠感を感じつつも素早く捕食形態で喰らい、コアを回収した。

 

 素材を確認すると、出る物は通常種とそれほど差は無かった。

 

「……そんなに良い物無かったな」

 

 一つぼやくと、身体に充溢していた力と心地良さがフッと抜けていった。エンゲージの解除だ。

 

 意外と短かった……と、ちょっと惜しくに思ってたりなかったり。

 

 戦闘が終わると、途端に静かになり、向かいの植物園のポイントから熾烈な戦闘音が反響して聞こえてくる。

 

 コンゴウの悲鳴ばかり聞こえてくるので、戦闘音というより、恐らくは蹂躙の音だろうが……

 

『コンゴウ堕天、オラクル反応消失。これにて任務完了です!』

 

 どうやら、本当に蹂躙だったらしく、ものの一分ほどで片付けられてしまった。

 ヒロもこれには、思わず苦笑いを浮かべる。

 

『やべぇよ……ユウさん強過ぎるよ!』

『いやいや、買い被り過ぎだって。ロミオも凄いバスターブレードの使い方するから、ビックリしたよ』

 

 ヒロからすれば、ユウの戦いぶりは一種の芸術だ。

 アラガミの行動を見きったように神がかった回避を繰り返し、的確に結合崩壊させていくと言われている程の手腕を持っている。

 

 ヒロもロミオと同様の感想だった事から、大抵の神機使いは「やべぇ」という気持ちが先行してしまうのかもしれない。

 

『帰投準備まで、もう少し掛かりそうです。警戒を怠らないで下さい』

『あはは……少し早すぎたかな?』

「……ユウはもう少し自重すべき」

『え、えぇ〜? 結構自重しているつもりなんだけどな……』

「……自惚れるな」

『なんで!?』

 

 そんな軽口がシアンとユウの間で叩き合われながら合流すると、4人でポイントBの回収地点で待機する事になった。

 

「なあなあシアン、あのスッゲーやつって何なの?」

 

 真っ先に、ロミオが興奮気味になってそう尋ねた。

 

 イェン・ツィー戦の後、シアンがすぐヒロの方に来た為に聞きそびれていたようで、腰を下ろした岩場から身を乗り出して、何がなんでも知りたい、という様子だ。

 

 それに、シアンが頷くと、ポツリと話し出した。

 

「……あれは、『エンゲージ』。私と、一部の人だけが使える感応能力」

 

 また、他人の偏食場と完全に結び付くことで、二人の間で感応現象を引き起こす事が出来る、起こされる感応現象は人によって異なる、シアンと一緒に戦わなければ発動しない……と、シアンが付け加える。

 

「じゃあ、エンゲージになると、どうしてブラッドアーツが使えるようになるんだ?」

 

 最大の疑問。ロミオがブラッドアーツを使う姿には、ヒロも度肝を抜かれたので印象が強く残っている。

 

「……どうしてだろ」

「分からないんだ……」

 

 キョトンと首を傾げるシアン。

 

 あの瞬間、ロミオのブラッドアーツが発動した理由は、実の所シアンにもよく分かっていなかったようだ。状況から推測するに、感応能力が一時的に高まった事で、潜在的な血の力の一部が覚醒状態になったのではないかと、シアンが仮の見解を示した。

 詳しい事は、サカキ博士に検査してもらわなくては分からないようだが。

 

「ってことは、シアンと一緒に居ればずっとブラッドアーツが使えるって事だろ!?」

「ちゃんと血の力を覚醒させましょうよ……?」

 

 念願のブラッドアーツが先行体験出来たのがよほど嬉しかったのか、目を輝かせてシアンのひっつき虫になろうとしている。しかし、ヒロ的にそれは許し難いらしい。

 

 まあ、許容できないのはヒロだけではないのだが……

 

「……ヒロの言う通り。何の為に訓練をしたのか……忘れたとは言わせない。私に甘えて付いてこようものなら、訓練で強制的に血の力を覚醒させてやる」

「!?」

 

 シアンは以前、ロミオに血の力についてこう語った。『……極限の中。自分の不利な状況で、何かを守りたい、勝ち取りたい、成し遂げたいという極限の意志の力』と。

 

 つまり、シアンはこう言っているのだ。

 

「……半殺し以上に叩きのめして、否が応でも覚醒出来る状況にする。覚醒出来なかったら骨の髄まで染み込むまで何度もやる。人の努力の為には協力を惜しまない」

「──すみませんでしたーっ!!」

 

 五体投地のDOGEZAが発動した。

 極東式の最上位の謝罪だが、ロミオは知っていたようだ。

 

 ある意味、確実に死なない状況で血の力を覚醒できるのかもしれないが、ロミオからすればそれは恐怖の対象になっていた。

 

「めっちゃ訓練厳しいのに、あれ以上やられたら……」

 

 ガクブルと身体を震わせ、顔を青褪めさせていく。

 それだけで、シアンの訓練の厳しさが察せられるというもの。いわゆるブートキャンプという奴だ。

 

 子鹿のように震えるロミオへ、助け舟が飛んだ。

 

「ロミオ先輩を苛めてると、ジュリウスが怒りそうだなぁ」

「……む」

 

 シアンがその一言を聞いて、口を噤んだ。

 

 〝ジュリウス〟の名前が出ると、シアンも引かざるを得ない。

 これは人柄どうこうという問題ではない。単に過度に警戒してしまうだけだったりするだけなのだが、この世界に降り立って、初めて出会った人間かつ明確な敵意を向けられた相手なので、恐怖の度合いがシアンの中でも並外れている。

 

 その事を、ヒロは何となく理解していた。

 

 ジュリウスは無口ではあるが、人当たりも良く、気遣いも上手い。

 だというのに、シアンの反応と言えば、初対面で挨拶を間違えていたり、ジュリウスと話す時には急に身構えて顔を強ばらせ、任務中、ブラッドアーツを発動でビクリと身体を跳ねさせる時も往々にしてある。

 

 最近では、ジュリウスは何かとロミオを気に掛けるようになったので、訓練だからとボロ雑巾にされたロミオを見て何と思うのか、想像に難くない。

 シアンにもれなく、いつぞやのシエル並のトラウマが植え付けられるだろう。

 

「今のジュリウス、皆が来る前からビックリするくらい変わってて……二人の時なんか任務のことで事務的に話すだけだったし」

「そうなんだ……あの隊長さん、いつも気さくに話し掛けてくれるし、僕よりも豊富に戦術を知ってて尊敬しちゃうなぁ」

「ユウさんが尊敬!? ジ、ジュリウスってやっぱスゲーんだ……」

 

 とは言え、ジュリウスと関わり合いを持てば、自然に収まるだろうとヒロ自身は考えているので、警戒はしていないが、最近のジュリウスの過保護っぷりは凄まじいので、忠告しておかなければシアンの身の方が危ぶまれる。

 

「と、とにかくロミオ先輩は、いわゆる大器晩成って事なんです。焦らずじっくり覚醒を目指しましょう」

「くっそー! あの技また使いてぇー!!」

 

 必殺技が使えるようになったのに、条件が限られているというのは半ば生殺しだ。

 

 だから、ロミオは現状を維持する気はさらさら無かった。

 シアンとのエンゲージでブラッドアーツが使えるようになったという事は、逆に言えば自分は血の力を覚醒させる直前の段階に来ているという事。

 

 ゴールは確実にそこにある。ロミオとしてはそれを知れただけでも儲けものだった。

 

 立ち上がり、意思の表明も込めて、天に拳を突き上げて喝を入れる。

 

「うっし! これからは心機一転、覚醒目指してがんば────」

 

 

『──えっ!? 回収班、応答して下さい!』

 

 

 安らぎの一時は、明らかに異常事態と取れるヒバリの狼狽の声によって終わりを迎えた。

 

 四人共に神機を一斉に手にし、その場に緊迫した空気が立ち込める。

 

「ヒバリさん、状況は?」

『……本任務の帰投を担う回収班の通信が途絶しました。直前の状況から、気づく余地無くアラガミの攻撃を受けたものと思われます……』

 

 それを聞き、ユウが眉を顰める。

 思考を巡らすと、いくつかの可能性が頭の中に浮かんできた。

 

「……空を飛ぶ大型の、ヨルムンガンド級なら存在に気付くはず……長距離のオラクル攻撃? いや、対アラガミ装甲だから、それでも直ぐに通信不可能に陥る事は無い。つまり、高速で空を……?」

『ッ!? 緊急事態です!』

 

 立て続けに、ヒバリが新たな異常事態の発生を告げた。

 

『強力な偏食場を持つ想定外のアラガミが、毎秒700メートルの速さで本作戦区域に向かっています! 侵入まで、あと十秒!』

「毎秒700メートル!? 音速超えてるじゃん!」

「……まさか!」

 

 ロミオが驚きの声を上げる中、ユウが思い当たる節でもあるかのように空に目を向けた。

 

「……奴め、ここに気付いたか」

 

 シアンも同様の反応を見せた事で、ヒロも、ユウやシアンの考えるそのまさかを察してしまった。

 

「な、何が来るんだよぉ!」

『いま偏食場パルスの波形パターンをデータベースと照合しています!』

 

 直後、音が消し飛んだ。

 

「うわっ!?」

「ヒロッ!」

 

 ロミオが咄嗟にバスターブレードを地面に突き立てると、もっとも前面で暴風を食らい吹き飛ばされたヒロの左手を掴む。

 

 シアンとユウも間一髪で神機を地面に深く突き刺して、どうにか地面に留まれていた。同時に発生した衝撃波で立っているのもやっとだが、何かが落ちたらしい土煙の舞うその場所からは一時たりとも目を離せない。

 

 赤く、炯々とした二つの眼光がこちらを覗いている。

 

 そして吹き上がる黒い炎。土煙が一瞬にして掻き消えて、その容貌が明らかとなった。

 

 黒い水晶の体表に黄金の意匠が鏤められ、円環の冠を戴くその姿は。

 

「……その(つら)、暫く見せないで欲しかった」

 

 

 

『──データベースと一致! 特別指定の禁忌種、アーテル・カリギュラです!』

 

 

 

 かの暴君はまたしても、何もかもを睥睨する眼差しと、畏敬の念を抱かせる圧倒的な偉容で、四人の前に立ちはだかった。

 

 

 

 


おまけ

 

 

 ある日のエントランスにて。

 

「……あの、シアンさん、ですよね?」

 

 唐突に、高橋さんボイスが後ろから聞こえてきた。

 

 振り返ると、茶髪のサイドテールの女の子。

 間違いなく、例のあの人だ。

 

「……何の用?」

「ええと、私は日霊トウカと言うのですが……」

 

 例のあの人、トウカは、先程からもじもじうずうずしている。

 

 ……本当に何の用事なのか。

 

「……用があるならさっさとして」

「わ、分かりました……単刀直入に言います」

 

 今度はプルプルと震えながら、顔を真っ赤に染め上げて言った。

 

「お願いします、神機を生やして下さい!」

 

 下さい、下さい…………!

 

 みたいに、アナグラに反響するほど大きな声で、トウカはそう言った。

 

「その為なら何でもします! なのでお願いします!」

 

 そして、まるで好きな女の子に告白する男の子みたいに、腰を九十度に曲げて、右手が真っ直ぐとこちらに出ている。

 付き合って下さい!と言わんばかりのポーズだ。

 

 理解できないまま十秒くらい経って、ふと周りを見てみると、後ろのラウンジの入口あたりには、意味深な表情を浮かべて何度も頷くハルさんと、ミッションから帰投したらしく、出撃ゲートで呆然と立ち尽くすソーマ。

 

「えっ、うそ、シアンが女の子に告白されてる……」

 

 エリナが盛大に勘違いしているが、直前の言葉は聞かなかったのだろうか。

 

 更にゾロゾロと集まってきて、勘違いをする人が増えてきた。

 

 しかし、トウカさんは直立不動。返事を聞くまでそのままのようだ。

 

 なので、ここはキッパリと言ってやるべきだろう。

 

「……無理」

「「「無理!?」」」

 

 ちょっと過剰反応し過ぎじゃないか、みんな。

 

 肝心のトウカは、顔をバッと上げて、絶望に顔を歪めている。

 

「そ、そんな殺生な! 私に死ねと!?」

 

 そんな事は一言も言ってないんだが……

 

「先っちょだけ! 先っちょだけでいいですから!」

「……それ元ネタ知ってる?」

 

 元ネタ通りの意味なら、俺は断固拒否させてもらいたい。

 

 しかし、ちゃんと理由も聞いておかないと、俺の方が理不尽な奴に見られてしまう。いい大人なのにムキになって渡さないのもアレだ。

 

「……まあ、用途による」

「はい! そうですね、まずは斬れ味、耐久力はもちろんの事、質感、味、匂い、後はじっくり観賞したり頬でスリスリしたりベッドに持ち込んで抱き枕にして、それから自慰も……」

 

 あーうん、自分で聞いてなんだが、もう黙ってほしい。

 それ以上は聞きたくない。

 

「……失せろ、変態」

「変態!? 言うに事欠いて、変態ですか!? 酷いです! シアンさんには軽蔑しました!」

「……ハッ」

「えっ」

 

 小さく鼻で笑ってやると、トウカは硬直した。

 

 よし、決めた。コイツの二つ名は今日から〝頭のおかしい神機狂〟だ。ついでにデータベースに載っけて広めてやる。

 

 俺の神機は絶対に渡してやるものか。絶対にどうしようもないことに使われる。

 ましてや、今晩のおかずにでもされたら一溜りもない。

 

 ガシッと掴んでこようとするトウカの手を振り払い、バックステップ。

 下に降りて、神機保管庫まで続く扉を開けた。

 

「……またどこかで。ペッタンコで頭のおかしい子」

「ぶっ飛ばしますよ!? って、待ってくださーいっ!!」

 

 トウカからどうにか逃げおおせながら、俺は切実に思った。

 

 ああ……どうせなら、綺麗な方のめぐ◯ん(エミリアたん)みたいな性格が良かったなぁ。

 

 

 

 

ロミオPの処遇について

  • いつも通り、逝くなぁぁぁ!される。
  • シアンちゃんに救出される。
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