神さまばっかの世紀末な世界に、俺が望むこと   作:赤サク冷奴

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処女作……なのかな? なろう歴四年、ハーメルン一年の読み専が筆をとってしまった結果出来てしまった。

語彙もまともに無い若輩者ですが、ほどほどに頑張るぞい……!



舞い降りた希望
世紀末な世界の神になった


 

 ゴッドイーター。

 

 それは、日本でもそれなりに名の知れたハンティングアクションゲーム。

 まあ、要は狩りゲーだ。

 

 流石にどっかのモ◯ハンよりは有名じゃないが……いや寧ろ昔は劣化モン◯ンとか揶揄されていたが、ブラッドアーツやプレデタースタイル、バーストアーツやダイブという要素の追加により、ハイスピードで爽快感のある仕上がりとなっている。

 

 小学校の頃にたまたま触れていたというだけだったが、何気にハマってしまい、全作やり込むくらい結構気に入ってる。

 今でも小学校の頃に無印ゴッドイーターをやった時のトラウマは忘れられないくらいに……

 スサノオとかピターとかセクメトとかの禁忌種、お前らだけは許さん。

 

「まあ、今更ゲーム(・・・)の事考えても仕方ない、か」

 

 目の前にいる緑色の甲殻蟲のアラガミ……ドレッドパイクの集団を見遣りながら、俺は先刻までの天国と地獄を思い出す。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 俺は、単なるゲームとラノベ好きな平々凡々の人間。本当に何の変哲もない、どこにでもいるような人間……の筈。

 ちょっとオタクなもので、三度の飯よりゲームかラノベかアニメといった日本のサブカルが大好きという、よくある人種だった。

 

 そんな俺は事故った。 トラックで、ズガァン!と一轢きで。

 

 自分の肉が抉れ、血が噴き出し肋骨が飛び出るグロテスクな光景を目の当たりにしながら、意識を落とした俺だったのだが……

 

 次の瞬間、俺は地面に立っていた。

 

 訳が分からないまま突っ立っているしか無かった。そもそも、死んだと思っていた直後なのだから、正常な思考が出来るはずもなく。

 

 視界に入る、獣の死骸を喰らう二足歩行の獣を、ジッと見つめることしか出来なかった。

 

 その獣らには見覚えがあった。二本の隆々とした脚を持ち、下顎から伸びる太い牙や、般若の面の様な尻尾を持つ、とてもじゃないが現実にはいないであろう生物。

 

 

 ──〝アラガミ〟

 

 

 それは、ゴッドイーターというゲームに存在する、モンスターの総称。通常兵器が全く意味を成さない、日本の八百万の神になぞらえて付けられた名前。

 

 そんな空想の存在が、画面を介さない視界に映っているのだから。

 

 本能から悟った。こいつは自分を殺せるのだと。

 

 しかし一方で、俺の頭は冷静にこの状況について考え始めていた。

 

(……マジかよ、これ)

 

 目の前にそれらがいる以上、この場所でひたすら考えている余裕は無い。

 とにかくその場から逃げることを選び、廃墟に身を隠した。

 

 ボロボロの石造りの廃墟で、ゆっくりと考察を深めていくと、俺の中で自ずと答えは導きだされる。

 

(ここはゲームの世界?)

 

 そんなぶっ飛んだ考えだが、ラノベを嗜む俺がそう想像するのは容易だった。

 

 必死で走って逃げていた時の街並みを思い出せば出すほど、その確証が高くなってくる。

 

 場所の名前はたしか、黎明の亡都。大きな図書館や植物園がある場所だ。

 もっともゲームでは一部しか探索できないので、建造物の作られ方を見て予想しただけだが。

 

 はぁ、と溜息を吐いて三角座りをすると、自分の脚を見て体の異変に気付いた。

 

「なん……だこれ?」

 

 この世界に初めて漏れたその声は、驚愕と困惑に満ちていた。

 たがそれも当然だ。血が巡っているか怪しい青白い肌。毛一つない細い脚。足先の爪は白く、それは手も同様なのだから。

 

 体にはヒラヒラとした布を纏っており、凡そ服と呼べるものではない。

 それを外してみると、しなやかな肢体が露わになった。女性の体で言うなら、まだまだ小学生くらいに幼いが、将来的に考えて未来のある素晴らしいものだった。

 

 ……そう、女性の体で言うなら。

 

「う、うそぉん……」

 

 身長もそこそこ低くなっており、胸に手を当てれば、小さいながら確かに感触を感じた。……解せぬ。

 

 認めたくない現実を一度に何回も直視する羽目になった俺は、ふて寝した。

 この世界に来てまで女性になるとか、精神崩壊案件間違い無し。まともに寝られるかも分からないが、俺は寝るからな。

 

 そっと目を閉じると、走って疲れていたのか、直ぐに眠りに誘われた。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 その翌日。

 

 俺は声まで女の子になっていたことが判明した。なのでその場で崩れ落ちて消沈気味です。

 もう何もしたくない。

 

 ……とは言うものの、ぐぅ〜、とやたら主張する煩い奴がいた。

 ここの所何も口にしていないのだから、腹が空くのも仕方の無いが、このご時世でどうやって食料確保をしろと。

 

 ゴッドイーターの世界……特に、人々の住まない外界では、ほとんど食料は無い。自生していたフルーツの木などは、アラガミに喰われてしまってもう無い。

 

 詰みだ。ここで人間が生きていく術は無いに等しい。そもそも肉体がこんなにも貧弱そうなんだから生きていけるはずもない。

 

「はぁ……レーションとか落ちてないかなぁ」

 

 劇中ではクソ不味いと専らの評判であるレーション。スタミナの回復に使えるくらいなら、食えるのだろうが……アラガミがある以上探索したら即喰われる予感がしていた。

 

 夢の転生を果たしたというのに、これはあんまりな結果だろう。

 

「人が来るのが先か、俺が死ぬのが先か……まあ、確実に後者だよなぁ」

 

 そう運良く、ゴッドイーターがここにやって来るとは思えない。

 

 なので、俺はアラガミのいなさそうなこの建物の屋内を調査することにした。しばらく身を隠すのに丁度いいだろう。

 歩いてみると、どうやらここは学校であったらしい痕跡が多々見受けられた。チョークで何か書かれかけの黒板と、乱暴に吹き飛ばされた机や椅子、穴が空いて痛々しい見た目の教室。

 多分、アラガミがこの地球に誕生した年のままで遺されているのだろう。

 

 身を隠しながらキョロキョロと周囲を確認して進んでいると、非常用倉庫と書かれた扉を見つけた。半開きになっているので、あまり中は期待出来ないだろうが、探ったら案外何かあるかもしれない。

 

 ドアに手を掛け中に入る。埃が積もっているが、御構いなしにダンボールなどを漁っていく。

 しかし、中は大体空だ。ここから逃げる時に人々が漁っていったのだろう。だが、角っこのダンボールの山を崩していると、一つのダンボールからカランと何か落ちた音がした。

 

 それを拾ってみると、思わず俺は口をポカンと開けてしまった。

 

(乾、パンだと……?)

 

 それも、賞味期限が2080年までという化け物みたいな乾パン。やたら頑丈に出来ていて、製造日は2050年らしい。

 

 現代日本から見てゴッドイーターの世界は近未来なのだが、その文明の殆どがアラガミによって滅ぼされた設定だ。技術進歩で、30年も持つ乾パンも作れたのだろう。

 まあ、賞味期限ってあんまり意味無かったりするんだが……

 

 力を入れて蓋を開け、カランコロンと出てきた乾パンを一口。

 

 ……美味い。小麦の風味と仄かな砂糖の味だ。

 

 作った会社は、半世紀以上前の俺の生きていた時代でも、乾パンで有名だった三◯製菓と書いてある。ならこの味も納得だ。

 

 そうしてダンボールを漁ること30分。掻き集められたのは、さっきのも合わせ乾パンが二つ。やたら長持ちするコンビーフが一つ。サ◯マドロッ◯スの缶が一つ。

 戦果は上々、といったところか。これだけあれば少しは持つ。

 

 そのまま元いた場所へ戻ると、壁にへたり込んで苦笑する。

 

「生きることから逃げるなって……ユウとかリンドウさんも、中々酷なことを言うよなぁ」

 

 世界最高の神殺すマンと、今の自分より最悪な境遇にいながら仲間を信じ続けたあの偉人級のゴッドイーターを思い浮かべつつ、乾パンを一つ摘んだ。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 翌日。

 

 極力体力を消費しないよう、その場から動かないことを決めた俺だが、ひょんなことで体の異常性に気付いた。

 

 あまりに暇だったのでドロップを一つ取り出して床に置き、デコピンの要領で弾き飛ばしたら、なんとドロップが粉々に砕け散り、その散弾が木の壁に穴を空けたのだ。

 

「…………」

 

 これには、絶句するしかない。

 

 全く、こんな女の子っぽい体にこんな力があるとか、まるでヒト型アラガミじゃ──

 

 ……待てよ。ヒト型アラガミ?

 

「……ははっ、いやまさか」

 

 股間を確認。アレが付いていないのは感覚で分かっていたが……認めたくないものだ。しっかり再現されてるなんて。

 

 ついでに、ちゃんと排泄器官もあるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 …………寝よ。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 アラガミとは、〝オラクル細胞〟と呼ばれる考えて喰らう単細胞が集合した群体が形を為しており、世界から駆逐することは不可能という恐ろしい生物だ。

 姿は千差万別であり、獣や虫、戦車や人を模したアラガミもいる。

 

 そんなアラガミという存在により人類は追いやられたが、ゴッドイーターと呼ばれる人々が生まれ、アラガミから人類を守る役割を担い始めた。彼らは自らの体にもオラクル細胞を取り込んで、神機というアラガミに対して最も有効的な兵器……いや、人類に扱えるようにしたアラガミを使って駆除している。

 

 ……とまあ、アラガミの天敵であるのだが、それは俺もゴッドイーター達に見つかったらマズいという事でもある。

 

 現在の俺の姿は、廃校内に僅かにあった鏡の破片で確認したところ、見た目は完全に単なるロリっ子だった。

 胸もツルペタストーンとしていて、前世で仲の良かった父方の親戚の娘さんみたいに純真無垢そうな7〜8才の美幼女。

 

 白人ですらこれは有り得ないというくらい白い肌と、後ろまで伸びた髪も白い事は確認済みだが……最たる特徴に、瞳は爛々とアメジスト色に輝いていた。

 

 ……いや、紫色の目の人って、居ることには居るんだっけか。

 

 それは良いとしても、あまりに幻想的な美幼女で、この世のものとは思えない妖艶さがある。ロリコンホイホイ間違い無しと言えるだろう。

 

 最後に、異常な膂力や思考力、反応速度だ。教室内でアクロバティック機動を軽々とやり遂げ、刹那の間に思考して自分のしたい動きを瞬時に行い、黒板に突っ込みそうになった時、咄嗟に体を捻らせて黒板を蹴りあげて着地出来た。

 

 既に、人の出来る範疇を超えた動作が可能という訳で。人間を辞めていた訳でして。

 

(……極東支部かネモス・ディアナに行こうって思ってたのに)

 

 今の俺は間違いなく、ヒト型アラガミだった。

 

 人とほぼ相同な器官を持ち合わせた、短期間のうちに人と同じ進化を辿ったアラガミ。初代ゴッドイーターや、続編3の作中のキーワードの一つとなっている。

 

 厄介なことになったものだ。おかげさまで、俺が逃げ隠れる候補地二つが意味を成さなくなったし……終いには鬱になるぞ、こんなん。

 

「っても、あんまりボケーッとしている時間も無いか……まずは現状認識から」

 

 人間……特にゴッドイーターとは遭遇しないこと。こんな見た目だが、間違いなく反応に出るので殺されるだろう。見つかったら逃げなくてはならない。

 

 次、アラガミ。こいつらは問答無用で俺を殺しにかかるだろうし、素早く逃げてしまおう。

 アレらは〝考えて喰らう〟生物。食べるものと食べないもの、好き嫌いを認識している。例えば、似た形や形質の同族は喰わない等があるが、残念なことに俺は全てのアラガミの獲物になり得るのだ。

 

「どうすっかねぇ〜……」

 

 ここで漸く回顧を終えて、冒頭のシーンに帰ってくるのだが。

 

 こいつらの目の前にいるまでの経緯を説明すると、部屋でゴロゴロしていたら、ウザったい耳障りな音が聞こえてきたので、原因を探しに校内の中をブラブラしていた、といった所だ。

 

 緑色で、二足歩行のカブトムシのような見た目をしたアラガミ、ドレッドパイク。そいつらは徒党を組んで廊下を占拠している。

 

 耳から聞こえてくる謎の音の発生源はやはりこいつらだった。

 ゴッドイーターの設定にあった、アラガミが発するとかいう偏食場パルスとかいう、アラガミだけが発するという信号を聞き取っているのだろうか。

 

 俺の居住空間にまで響いてきて、とてつもなく気が散るので片付けたいが、いざ対峙してみると大きさはそれなりで、背の縮んだ俺と並ぶ大きさ。

 ゲームだと雑魚アラガミだったが、この大きさはハッキリ言って恐怖である。

 

 でも、戦わなくてはならない。今こそ平穏を掴む時なのだ……!

 

「……いや待て、アラガミってステゴロで勝てるのか……?」

 

 作中で出てくるヒト型アラガミの少女、シオは自分のオラクル細胞でゴッドイーターの使う神機を模倣していて、3に出てきたフィムというヒト型アラガミは神機を借りている。

 

「……リンドウさんが拳一つでキュウビを怯ませてるから、原理的には不可能じゃない、よな?」

 

 手をブラブラさせて軽く準備運動。そのままこちらにジリジリとにじり寄ってくる標的を見据える。

 

 標的は四体。まあ、なるようになれ。

 

「そうら、いくぞ!」

「「「「キシシィィィィ!!」」」」

 

 腰を低く屈めて、足にグッと力を入れる。少し地面が陥没する感触がした気がするが、想定内だ。足のバネで瞬発力で跳躍した俺は、いつの間にか群れの中心にいて……

 

「とぅりゃっ!」

 

 何かのアニメで見た回し蹴りを無理やり再現して、それぞれの顔面に蹴撃を見舞う。

 これでダウンしているうちにトドメを……

 

「……んおお? え、もう死んだ?」

 

 廊下の壁にめり込む四体のドレッドさん。ちょっと足がピクピクしているくらいで、動きそうにない。

 めり込んでいるドレッドさんを引っぺがすと、象徴であるカブトムシみたいな角がグチャグチャになっていた。

 

 ……ヒト型アラガミ、強いなぁ。

 

 そんなこんなで四体引っぺがした俺は、目の前に並ぶ四つの、それはもうまぁるい〝コア〟を見ていた。

 

 〝コア〟というのは、アラガミの心臓であり、頭脳だ。オラクル細胞の司令官みたいな役割を担っており、対アラガミ兵器で、作中のメインウェポンたる神機にはこれを人工的に改良したコアを使っている。

 

 でだ。俺にとって無用の長物かと思われたコアだが、ゲーム本編では俺と同じヒト型アラガミ、シオが食べ物にしている事から、

 

 欠けたりひび割れているが、特に問題は無い……とは思うが。

 

(……食糧確保は急務だけど、いやまさか虫の心臓食うの? 透明なオーブだけど、食っちゃう? 結構お腹空いたなぁ……)

 

 

 

 ……お腹、おなか……ヘッタ……

 

 

 

 ……オナカ、ヘッタ、ヨ?

 

 

 

「──ハッ!?」

 

 今のは……? でもいや……

 

 なんと言えばいいのだろうか……感覚的には、変なのが混ざり込んで、何かが俺の思考を誘導しようとしていたような……

 

「……はぁ、訳わからん」

 

 ……言えるのは、このコアを食べろと本能から訴えかけているということ。

 

 アラガミに生まれた以上、まあこうするって心の何処かでわかってたけど、まさか食糧の尽きてない今日になるとは。

 

「……いただきます」

 

 四つ綺麗に平らげた。味はまずまずと言ったところ。不味くも美味しくもない大きな枝豆を食っているような気分だった。

 

 しかし、こんなでもアラガミの主食だ。四つだけで俺の腹は膨れたので、今日も寝る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………でも、あれは多分……あの子の……)

 

 

 

 

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 この世界に転生して恐らく五日目の今日。

 

 俺は、今日から小型アラガミを糧に生きる為、廃校から出ることにした。

 

 今回の標的は、戦闘技術の向上を図る目的も兼ねているので、オウガテイルというアラガミを狩ろうと考えている。

 オウガテイルは、この世界で最初にあった、やたら牙のデカい二足歩行で、モ◯ハンで例えるなら獣竜種だ……って、モ◯ハンで例えちゃ駄目か。バンナムに失礼だ。

 

 この世界で最もポピュラーなアラガミだが、油断すると上田*1さんみたいになる。

 

 すると、途中にあの耳障りな音──偏食場パルスと思われるその音が聞こえてきたので、発生源を辿っていく。

 

「っと……いたいた」

 

 咄嗟にビルに身を隠して顔だけ出す。

 

 見えたのは、目的のオウガテイル三体と、氷属性を持つオウガテイル堕天一体、ヴァジュラテイルというオウガテイルの亜種……その火属性が一体の計五体。

 

 作戦は瞬発力を活かして奇襲し、リーダー格のヴァジュラテイルをアッパーカットで吹き飛ばして、残りのアラガミを順当に消していくだけの脳筋プレイだ。

 

 では、戦闘開始……!

 

「……ふっ、それっ!」

 

 右足に力を溜め、しなやかな脚の筋肉をバネのように使い跳躍。地面スレスレの平行移動をしながらヴァジュラテイルの顎にアッパーカットを繰り出す。

 

 ……勢い余って首がもげているような気がするが、気にすることなく近くのオウガテイルに姿勢を低くしたステップで近づき、 頭蓋に肘鉄を垂直方向に叩き込む。オウガテイルが一体、背後から飛び掛かって来たと感じつつ、少し背を向けたまま裏拳で迎撃。ずっと視界に入れていた、目の前の一体とその隣に並び立つ堕天種が尻尾を構えて、太い針弾を射出してきた。

 

(……ってやばっ!?)

 

 上田された人がいるとは言え、たかがオウガテイル……と思っていたら、反応が遅れてしまった。

 

 ステップが上手くいかず、咄嗟に身体を捻って回避を試みようと思ったが、その体は間違いなく射線上にあった。

 

 ここはゲームでは無い。アラガミの威力というのをまだ完全に分かっていないから、極力怪我を避ける戦闘をしてきた俺にとって、怪我をすることは未知である。

 

 そして今、俺の左上腕と両足のふくらはぎに、オウガテイルの太い針が、深く突き刺さった。

 

「っぁ────────!!!!??」

 

 激痛が俺を苛み始め、温かい液体が腕や脚を伝っていく。

 

 ここまでの痛みを経験したのは、前世で轢かれて以来のことだ。しかし、あの時は途中から段々と感覚が薄れていったから良かったが、こうもハッキリとした痛みがしたのは初めて。

 

 

 痛みのあまり意識が揺らぐが、駄目だ。今意識を失えば、奴らに捕食されて死ぬ。

 

 貧弱なオタクで、平和というぬるま湯に浸かりっぱなしの日本男児なら、こんなのは恐怖して失神するレベルの出血量。というかそもそも、目の前にいるカミサマは、子供の背丈を持つ俺にとってあまりに強大な存在過ぎた。

 前世で言うなら、凶暴な虎二体が、噛み付いてきたのと同じような恐怖だ。

 

 それでも耐えられているのは、ひとえに俺も同じ神だからだろう。目の前の神に対して恐怖はあるが、それよりも生き残らねばという力がみなぎって、俺を現実へと縛り付けている。

 

「あ゛ぁアアアァァぁァぁああ゛ァぁぁァ──っ!!」

 

 痛みに堪え忍ぶ叫びと共に、身体に刺さった三本の針を勢いよく引き抜いた。

 

 さらにとめどなく流れ出す血液を気にも留めず、凄絶な痛みを抱えてただ愚直に走る。

 

 火事場の馬鹿力か、オウガテイルへと急接近した俺が放った右ストレートが、牙ごと顔面をグチャグチャに砕いて建物に突き飛ばせた。

 

 だが、その傍にもう一体がいる。そっちへと振り返ろうとしたが、オウガテイル堕天は尻尾を勢いよくしならせて、小柄な俺をゴミでも払うみたいに軽々と吹き飛ばして、地面を抉らせて顔面からスライディングした。

 

 ……あぁ、痛い。痛すぎる。

 

 傷口に容赦なく入り込む塵や砂が、ジクジクと痛みを加速させる。それでも、片腕を使って立ち上がり、グラグラする頭で目の前のオウガテイルを認識する。

 

 そいつは、既に俺の方へと寄っていて、その強靭な足で空へと跳んでいた。斜め上に視線を向けると、大きな顎が、ジ◯ーズのスケールで迫っていた。

 

 呆然と立ち尽くす俺に、何が出来るのか。回避するのも手だが、ここは一つ賭けをしてみようと思った。

 

 怪我をした左手を持ち上げると、そのオウガテイルの口へと持っていく。

 

 ……案の定、オウガテイル堕天は手に噛み付いた。

 

 この手は囮。痛みと引き換えに猶予を手にした俺は、右腕をそっと構えて……

 

「……ゴッド、ブローッ!」

 

 どこかの青いやつが放つ様な拳は硬い外皮を穿いて、俺の手が奴のコアを掴んだ。

 

 心なしか、そのオウガテイルの顔面が驚愕したかのように顎の力を抜くと、俺はニヤリと笑ってアラガミの心臓であるコアを引き抜いた。

 

「Oh my god……なんつって」

 

 霧散するオウガテイル堕天を横目にコアを口に放り込んで噛み砕くと、身体が活性化されて、少しずつ傷が再生していく。

 

 それを見て安心したのか、どっと精神的な疲れが押し寄せてきたので、建物の壁に座り込むと、空を見上げた。

 

 ……今更ながら、自分が人間じゃないことを実感したような気がした。この戦闘センスはまるで人間じゃない。前世では、俺はここまで運動神経良くなかった。走り高跳び100センチという、お察し下さいと言う他無い能力だったぐらいだし。

 

 多分だが、俺のオラクル細胞が学習して、生前で見たり学んだりした戦闘技術を継承しているからだと思う。

 決して、俺が格闘家だったとかじゃないのだ。中高通して柔道はまるで出来なかったのをよく覚えている。

 

 数十秒の休憩を終えると、既に傷が塞がっていたので飛び散らかった死体を掻き集めたのだが……それはもう見てられないグロさだった。

 

「酷い有様だなぁ」

 

 死屍累々、屍山血河とはまさにこの様相を言うのだろう。あちこちにアラガミの血液や肉片が落ちていて、中央には死体が積み重なっている。

 

 オラクル細胞が離散してしまう前に、アラガミの肉体からコアを剥ぎ取る。

 そうすれば、アラガミの肉体は空気に乗って霧散して跡形もなくなるので、一瞬にして血で汚れていた地面が綺麗になった。

 

「では、頂きます」

 

 近くの建造物に逃げ込むと、先に喰らってしまった物があるので、残り四つとなったコアを一心不乱に喰らっていく。

 

 ……味は、まあ辛うじて美味しいと言えるのか? 安っぽくて味がついてない生の牛バラ肉を食べているような? いや食べた事はないけど、そんな感じがする。

 

「ごちそうさまでした」

 

 うん。帰ったら口直しにコンビーフを食べよう。

 

 

 

 

*1
……え? 上田って誰?という人は是非調べてみよう。やたら髪をファサァとする華麗なお友達に出会えます。

恋愛要素未定だけど、あった方がいいかなぁ

  • 恋愛要素アリ(=精神的BLとなる)
  • (恋愛要素は)ないです
  • その他(√ラケル……なんつって)
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