神さまばっかの世紀末な世界に、俺が望むこと   作:赤サク冷奴

6 / 36
 主人公の能力総覧……?
・捕食
・コア再生能力
・バースト化
・神機生成(多量のオラクルを使用)
・偏食場の感知(オンオフ可能)
・女性を模したアラガミの捕食による成長

 能力を書き切れなかったので、一応纏めました。



人に襲われるのって、化け物と戦うより怖かったりする

 

 お月見を終えて、いつの間にか寝ていたらしい。起きると、既に日をひとつ跨いでいた。

 

 と言っても、早朝で正直寝ていたかった為、手頃な寺のお堂で寝ていると、偏食場の音と金属音で外が騒がしいのに気付いた。

 

「……なんだ?」

 

 仏壇からひょいと降りると、次は爆発音などが聞こえてくる。

 多分、神機使いとアラガミが交戦しているんだろう。極東だし。

 

 折角なので観戦でもするか、と音を頼りに塀の上を走っていると、交戦場所を見つけた。

 

 状況はどうやらゴッドイーターが優勢らしい。三人が、一体のグボロ・グボロ堕天を翻弄している。

 

 数分もすれば、グボロ・グボロ堕天がはたりと倒れて、息の根を止めた。流石は極東支部のゴッドイーターだ。

 

「楽勝だなぁ」

「そうか? 最近は赤い雨のせいで感応種とかいう面倒なのが出てきてさぁ。神機が使えなくなって撤退した苦い記憶があんだよ」

「あ、それ俺もあった! イェン・ツィーだっけ? あいつ面倒なんだよ〜。雑魚召喚してきてさ」

「うわマジかよ。神機使えないとかそれただのお荷物じゃん」

「「神機重いぞ〜?」」

「遭遇したくねぇー」

 

 男三人組は、最近発生している赤い雨や感応種について語っているようだ。

 

 赤い雨と言えば、俺はまだ遠目にしか赤乱雲を見ていない。

 耐性はあるとは思うが、感応種になるのはなんとなく嫌なので基本避けている。

 

『任務お疲れ様です。帰投準備まで、もう暫くお待ち下さい』

「あいよーヒバリちゃん」

「やっぱヒバリたん俺の天使」

「おいタイチ、お前それ言ってるとまたタツミにぶたれるぞ」

「もうぶたれ慣れたわ。というか昨日サテライトで会った時にはクロスカウンターが発生してたしな」

「お前さぁ、それまだタツミが極東支部にいた時にカウンター前で喧嘩して、ヒバリちゃんの笑顔が引き攣ってたの知ってる?」

『あ、あはは……』

 

 おー、無線まで聞こえるな。俺の耳は地獄耳になってる。

 生ヒバリちゃんの声、頂きました。

 

『!? ソウゴさん! 作戦エリアに複数のアラガミが侵入しました! 想定外の大型アラガミです!』

「詳細は?」

『第二種接触禁忌種、プリティヴィ・マータが三体かと思われます! 現状の戦力では、討伐は困難と思われます! 直ぐに帰投して下さい!』

 

 び、びくったぁー……てっきり、またバレたのかと思った。

 

 だけど、問題は俺ではなく、彼ら三人。

 三体のプリティヴィ・マータが、神機使い達を包囲するかのように迫ってきている。俺でも相手を躊躇う、絶体絶命の状況にあった。

 

 これ、三人無事に帰投出来るのか?

 

「ソウゴ……やべぇぞこいつぁ! 帰投ポイントから来やがる!」

「うわぁ……ヒューガ、ソウゴ、なんかこっちの方向からも来てんだけど」

「俺も捉えた。まずいな……三方向から包囲されてるってことらしい。ヒバリちゃん、救援早めに頼んだ」

『今、作戦区域に最も近い人達を向かわせました! どうにか持ちこたえて下さい!』

 

 三人とも第二世代神機の使い手か。これは心配しなくても、それぞれ一人で倒せるかな?

 

 

 

 そう思ってから2分後。

 俺は、目の前の惨状を見て、心から恐怖(・・)を覚えた。纒わり付くような、胸を抑え付けられる、二度と味わいたくないその恐怖が。

 

『タイチさんも戦闘不能に!? ソウゴさん!』

「ああ……孤立無援とは、随分と無茶言ってくれる」

 

 ……二人、リーダーと思われる男の後ろで戦闘不能状態になっていた。

 

 前方では、プリティヴィ・マータ三体が同時に氷の槍を作り出し、壁に背中を合わせたリーダーに放たんとしていた。恐らく、その余波で、後ろの彼らも、前のリーダーの男も……

 

 まだ、辛うじて息がある。しかし、苦しそうに呻いていて……

 

 

 

『……父さん、お前のこと、守りきったぜ……』

 

 

 ……あっ……あぁ……!

 

 ……やめろ、やめろ、俺は……頼む……それだけは……!

 

 

『私のところ早く来たら、天国で絶交だからねっ……』

 

 

 ごめんっ……俺は……俺は……っ!!

 

 

 

「ハッ……かかってこいよ、三下どもが」

 

 リーダーの男がそう挑発すると、プリティヴィ・マータから連続して氷の槍が襲いかかっていて。

 

 ……それを見た瞬間、身体はこれからやることを理解していた。頭の中が真っ白になりながらも、どうするべきかを分かっていた。

 

「──ぁああああッッ!!」

 

 声を張り上げながら突っ込んで、両手に生成した神機のシールドで全て受ける。

 

 自分の身体に、衝撃で骨にヒビが入ったりしていても、いくら傷付こうとそんなものは今の俺に関係ない。

 

 俺の前で死ぬなんて、絶対に許してたまるか。

 

「──っ! き、君は一体……」

 

 目の前にいる俺を見て、目をパチパチさせている。でも、そんな暇なんて無いだろう。

 俺は怒気を隠そうともせずに、後ろのリーダーに命令した。

 

「……早く、リンクエイド」

「あ、ああ! 承知した!」

 

 しゃがみ込んでリンクエイドをしているのを確認すると、目の前では一斉攻撃を防がれたことに憤ったのか、雄叫びをあげるマータ三姉妹。

 

 だが、その間に一匹の顔面に神機をぶっ刺す。顔面を中身ごと蹂躙して活動停止させるとそのままコアを喰らい、次のマータを狙う。

 

 そいつは俺からバックステップで距離をとり、氷の槍を飛ばしてくる。それを弾き返すと、今度は背後からもう一体が襲いかかってきたので、片足を軸に回転し、背後にヤクザキックで吹き飛ばす。

 

 引き続き眼前のマータに接近すると、雄叫びと共に吹雪と氷の柱を地面から発生させた。

 対処できなくて、脇腹が抉り取られる。痛い。

 痛いが、あの人達が死ぬ所を見せられるのと比べて、どちらが本当の恐怖なのだろうか。

 

「大丈夫か!?」

 

 リンクエイドを無事に終えたらしいリーダーが、蹴り飛ばしたマータの相手をしているらしく、俺からドボドボと溢れる血を見て心配している。

 

 だが問題無い。ハンニバルのコアを喰らい続けた俺の再生力はバケモノだ。吹雪の中捕食形態で奴を喰らいバーストすると、傷が一瞬にして再生する。

 そんな事より、二人が無事で本当に良かった……

 

 それを確認した瞬間、纒わり付く恐怖は驚くほどサッパリと消え去り、冷静な思考を取り戻す。

 

 ……よし、一丁前にやるか。

 

 そして捕食形態でない左腕の神機を奴の前足に向かって切りつけ、転倒させると頭に両手の神機を刺して殺す。

 

 片手間でコアを回収し、リーダーの救援に向かう。

 

 だが、少しここからでは距離があった。なので右の神機を振りかぶり、アラガミの膂力に任せた巨大な手裏剣として投擲した。

 

 それは、綺麗に縦方向に回転すると、グサリと左腕に突き刺さる。

 我ながらナイススローだ。

 

 神機が突き刺さって怯んだマータはその隙を突かれ、リーダーに攻撃を許し……

 

「これで終わりだ、猫畜生が!」

 

 最後、鎌の縦薙ぎで活動を停止させた。

 

 

 

 戦闘を終え、リンクエイドで復活したが気絶したままの仲間を両肩に背負うリーダーと相対した。

 

 彼は疲れ果てながらも、笑顔でサムズアップしてくる。

 

「助かった。君が来てくれなかったら、危うく俺の部隊が全滅するところだった……本当にありがとう」

「…………」

 

 この人、やっぱりゲームにはいなかった人だ。第何部隊なんだろう。

 

「俺はフェンリル極東支部第八部隊隊長、岡倉ソウゴだ。君は?」

 

 丁寧に教えてくれたのは良いのだが、逆に訊き返されてしまった。

 どうしよう、なんと答えるべきなのか。勢いで出てきてしまったが、本当にどうしたものか……

 

 答えあぐねて無言でいると、まだまだ若いリーダーは頭をかいて、目を明後日の方へ向けた。

 

「あー、無理に詮索はしないでおこう。腕輪が無いのに神機が使える理由とか、そもそも二本持っている理由とかは気になるが、俺らの命の恩人にそんな真似は出来ないからな」

 

 お、おお。なんと物分かりが良いのだろう。

 

 取り敢えず頷いておくと、リーダーはにっこりと笑ってから他の二人を抱えた。

 

「じゃあな。またどこかで」

「……ん、またね」

「!?」

 

 意趣返しに返事をし、三人分の神機と二人を抱えて歩くリーダーの人からサッと姿を消す。

 

 その後、リーダーは救援に来た部隊と合流して、ヘリで帰投していった。

 それを確認してから、俺は廃寺に戻った。

 

 ……極東って、すげぇなぁ。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 その後も、十回くらいあの廃寺で偶に危なそうなゴッドイーターを助けたりしていると、いつの間にか通り名がつけられていた。

 

 その名も、再来の白い少女。

 

 最初聞いた時は、再来って何だよ! って思ったが、よくよく考えてみると前に似たようなことをシオが……いや、正確にはシオでは無いのだが、人助けをしていた。

 

 それと盗み聞きしたのだが、俺のお蔭でこの鎮魂の廃寺での死亡率がゼロパーセントになっているそうだ。白い少女のお蔭で安心して狩れると専らの噂らしく、みんなこのフィールドのアラガミ討伐を選んでいるんだとか。

 

 ……道理で最近人が増えた訳だ。

 

 助ける回数も増えていて、相手が俺のことを聞く前にとっとと姿をくらませる事が多いのが現状だ。

 

「今日の戦果も上々、ってとこかな」

 

 今日はご飯用のクアドリガ堕天と、第二世代神機使いに絡んでいたイェン・ツィーをぶっ倒した。

 

 イェン・ツィーのコアが格別で、とろけるような霜降り肉を食べている気分だった。

 そしたら案の定、俺の体が成長しました。でも、肝心の背が成長せず、イェン・ツィーでも特徴的だった胸が少し膨らみました。……ガッデム!

 

 しかし、ゲームで出てこなかったゴッドイーター達を知れたのはとても楽しかったと言える。みんなそれぞれ個性的で面白く、何人も失うには惜しい人材だ。

 

「……それに、退屈しないし」

 

 俺はアラガミだ。基本的に食べることしか考えない生物だし、アラガミだから人間と混じって生活する訳にはいかない。

 だから、娯楽の少ない今この状況において、他人と関わり合えるのはとても良い。

 

(人生、何事も楽しんだもん勝ちだってな……)

 

 そう思いながら、今日も月を眺める。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 最近、ブラッドが極東支部に着いたという話を聞いた。というか、前回会敵した時にも聞いたブラッド特有の偏食場を聞き取ったのと、直接この鎮魂の廃寺で姿を見かけたので間違いないだろう。

 

 その時にジュリウス隊長が「まるでピクニックだな」と言っていて、思わずガッツポーズしていたり。

 生ピクニック隊長、頂きました。

 

 だが、それと同時に、あの褐色ツンデレことソーマ・シックザールや、下乳さんことアリサ・イリーニチナ・アミエーラ……アリサが辺りをうろつくようになった。もしかしたら噂を聞いて俺を捜索しに来た可能性が高い。

 

 しかし残念な事に俺はシオではない。つけ狙われるのもごめんなので、惜しみながらもこの鎮魂の廃寺を後にした。

 

 

 

 

 ……さて、打って変わってここは灼熱の大地。

 

 いや大地というか、地下なんだけど。

 

 フィールド、〝煉獄の地下街〟。しょっちゅうマグマがポコポコ言っている暑い場所だ。

 おい誰だ、今さっきハルオミさんのテーマとか言ったやつ。……はい。すみません自分です。

 

 セルフツッコミはさておき、アラガミとして、熱への耐久性をチェックする為にマグマに触れたら、体感温度がお風呂の40度くらいだったので、ここに来てからは入浴は欠かせない。

 でもドロドロしてるから、風呂というか泥に入っている気分かもしれない。泥風呂って美容にいいんだっけか……

 

「はぁ〜、生き返るわぁ〜……」

 

 マグマの道を進むと、浴槽のような深さの袋小路があるのを発見した俺は、ここを寝床にしている。

 

「グルルル、グルァ!」

 

 そんな俺の入浴タイムを邪魔しにきたのは、マグマ適応型グボロ・グボロ堕天。

 

「グルル……」

「あ、ちょっとお前!? オラクルの攻撃は痛いって!」

 

 マグマの弾丸をバビュンと砲塔から発射してきて、体が少し火傷を負った。

 こいつ許すまじ。まったりタイムの邪魔をした罪は思いぞ。

 

 右手に神機を作り出し、額の砲塔を切り落として結合崩壊。そして砲塔から神機をぶっ刺して脳天をぶち抜いた。

 

「今日の朝ご飯はグボロさん。では頂きます」

 

 捕食形態でパクリ。

 

 味は……焼きマグロというより焼きサーモン。中々に美味であった、マル。

 

「……さて、元気に散歩しますか」

 

 朝ごはんと朝風呂を済ませた俺は、今日も日課を始める。

 

 日課の散歩は、フィールドに落ちている回収素材を拾い食いする目的でしている。偶に他のアラガミと取り合いになって、俺が一方的にボコボコにしているので、そこでも拾い食いしている。

 

 凄く不摂生な生活を送っているが、全然調子は悪くならない。寧ろやる気が出てくるまである。

 

 プラスチックをチョコ感覚でバリバリ食ったり、金属をスルメイカみたいに味を楽しみつつ取り込んでいくのが最近のマイブームで、しかも味も色々違かったりして、今ならアラガミになって良かったと少しだけ思えるようになった。

 大学生だった頃は、親の仕送りがあるとはいえ、学校の費用もそれなりに負担せにゃならんし、講義は予習して復習しないとマジで分からないしなあ。まあ、食事はあいつと一緒に作ってたから、割と楽だったが……

 

 何にせよ、アラガミニート生活、最高です。

 

 

 

 

 ぶらぶら散歩中、どっかで覚えのある偏食場を感じたと思ったら、ブラッド隊の面々が近くで交戦していらっしゃった。

 

 ゆっくり気配を消して近づくと、ボルグ・カムランとそいつの堕天が主人公、シエル、ギルバート、ロミオ達と交戦中。これは見ものだな。

 

「おい。いけるか、副隊長」

「これは、ちょっと拙いかな……よし、俺とシエルが堕天を引きつけて戦うから、ロミオとギルは通常種を頼んだ」

「えー……まあ、ヒロがそう言うなら、仕方ないけどギルと共闘するか」

「おいロミオ! お前さっきから俺に弾がかすってるぞ!?」

「それはギルが射線上に来るからだ! 俺はわるくねぇ!」

「二人とも、副隊長の指示に従って下さい。このままではジリ貧ですよ」

「はいはい」

「……チッ」

 

 前回、廃寺で見た時はジュリウスと主人公とナナ、シエルというメンバー編成だったので、何気に生ギルと生ロミオは初めてだ。

 

 ……暇だし、ジュリウス居ないから少しちょっかいかけよっかな。

 

 そう思った俺は、ボルグ・カムラン堕天を引き付ける主人公とシエルの後を追った。

 

 誘導を終えた二人が、ボルグ・カムラン相手に圧倒する。

 

「狙い撃つ!」

「タァッ!」

 

 シエルの狙撃弾が弱点の頭に当たり、主人公のロングブレードが的確に敵の尾を斬り裂いた。

 

「ガァァァ……」

「このまま決めるぞ!」

「了解しました」

 

 敵が転倒し、今まさにその命が絶えようとしているその瞬間……

 

「っ!? 副隊長!」

「何っ!?」

 

 一筋の閃光が、主人公とシエルの間に迸る。

 

 ……まあ、俺なんだけどさ。

 

「……こいつは、あの時の!?」

「まさか、これが例の白い少女ですか?」

 

 瀕死のボルグ・カムランに神機を突き立てグサリと刺し殺すと、捕食形態でコアを抽出する。

 

「お前、何をしに来た?」

 

 ちょっかいかけに来ました……なんて言える筈もなく。

 

 そのまま十数秒の睨み合いが続くと、ロングブレードの神機を俺に向けた。

 

「……もういい。お前は今ここで──」

「……名前」

「「!?」」

 

 俺が喋ったことに、めっちゃ驚く二人。

 いやね、単に人前で話さないだけで話すんだよ、俺。

 

 そして、言いかけた事をもう一度言う。

 

「……名前、何?」

 

 俺の神機を、主人公へと向けた。

 

 そう。

 俺は、このゴッドイーター2で肝心の主人公の名前を知らなかったのだ。

 

 確か、ロミオがヒロと言っていたが、ついでなので名字も知りたい。

 

「……ヒロ。神威ヒロだ。だけどこう言うのって、普通は自分から名乗るのものじゃないか?」

 

 ほほう。初期設定の容姿だし、そうだろうなと予想してたけど、やっぱり漫画の名前だったか。

 

「……私に、名前はない。アラガミだから」

 

 ちなみに、前世の名前はアラガミになった時から忘れていた。家族構成も覚えているし、彼女が居たのも覚えているのに、何でか自分の名前がなぁ……

 あの吉良さんみたいな正論を言われたが……すみません。名無しの権兵衛なんですよ。

 

「……アラガミ?」

 

 シエルが訝しみながら、スナイパーの照準を俺に合わせ、片時も注意を怠らずに問いかけてきた。

 

「……サカキ博士から聞いてない?」

「っ!? お前、何故支部長の名を……」

「聞かされてない……もしかして、来てから時間、経ってなかった……?」

 

 あれはエイジス計画……もといアーク計画に関わる最高機密だ。

 特異点という特殊なコアを有し、人の心を持った人のアラガミの少女を。

 

「……なら、シオって誰かって、コウタさんやアリサちゃんに聞いてみるといい。ついでに、アーク計画のことも」

「シオと……アーク計画……?」

「副隊長、惑わされないで下さい。相手はアラガミです。私達人間の、敵です」

 

 シエルがこちらをジロリと睨みながら、主人公……ヒロを叱咤する。

 

「……うん、分かってるよ。──行くぞっ!」

 

 いきなりステップで駆け出してきた。普通の人間からしたら、縮地かよ!と思う速度。

 

 だが、アラガミとの死闘を繰り広げてきた俺なら、これくらいは普通に見切れる。

 

 俺とヒロが最接近するその瞬間、俺は真上に跳躍した。

 

「なっ!? 消え──」

「副隊長っ、上に!」

「ちぃっ!」

 

 右腕で振り下ろした神機は、即座に展開されたシールドによって弾かれる。

 

「……すごい」

「お前には言われたくないっ!」

 

 キュイーンッ!という独特の音が鳴ると、ブラッドアーツ……色からして『斬鉄』のような技が発動し、俺の神機を切り裂かんと刀身がぶつかり合う。

 

 そこに、超高速で飛ぶオラクル弾が迫ってきたので、左腕の神機で防御した。

 

「……私のことを忘れてもらっては困りますよ」

「……なら、こっちからもお返し」

 

 ぐにゃりと変形して銃の形となった左の神機の銃口から、六つの強力なホーミングのレーザーが放たれて行くと、その内二つがシエルを直撃する。

 

「あぁっ!?」

「シエルっ!」

 

 そう。最近、ついに俺は銃形態を作り出すことに成功した。

 

 スナイパー、アサルト、ブラスト、レイガン、ショットガンと形は変幻自在。バレットも変幻自在。

 今のは、高出力が売りのブラストから放たれたレーザーだ。

 

 ヒロがバックステップでシエルの方まで下がり、再度こちらに神機を向けなおす。

 

「くっ、ヒバリさん! 支部からの救援を頼めますか!」

『現在そちらに三人が向かっています! 直ぐにロミオさんとギルさんも到着するので、深追いはせず、防御に専念して下さい!』

「ええ、わかっ──ぐあっ!?」

「副隊ちょ──ゔっ!」

 

 会話中という隙を突いて、こちらから膂力をフル活用した超速ステップと、右の神機の横薙ぎでヒロを弾き飛ばして、左の神機の逆横薙ぎでシエルへ攻撃を当てるがジャストガードされてしまった。

 

「そこっ!」

「ぐっ」

 

 横薙ぎした事によりできた、攻撃後の大きな隙にシエルが突きを三回。左腕と脇腹が焼け付くような痛みを伴って斬り裂かれる。

 

 くっそぉ……神機はやっぱり、オラクル細胞の捕食に特化した構造だからか。ハンニバル対策もされてるらしいし、一応色んなアラガミの偏食因子も持っていてもダメージが多いな……

 

「ヒロ、お前大丈夫か!」

「ああ、なんとかな……」

「えっ、何だよあれ!? 人型のアラガミ!?」

 

 ギルがヒロを介抱し、ロミオがシエルの隣に並び立った。

 

「取り敢えず、やってやる!」

「ロミオさん! 無策に前に出てはっ──!?」

「うおおおっ!!」

 

 相変わらず、こんな所でも無鉄砲さを発揮するらしい。

 

 愚直に突っ込んで来て、俺に向かってバスターブレードを大振りしてくる。

 

 まあ、それじゃ当たらないよな。

 

「ぐふぁっ!?」

「……うん。えっと……もうちょっと考えない?」

 

 適当に腹へヤクザキックすると、一瞬でシエルのとこまで吹っ飛んで戻った。

 いっそ憐れなまであるぞ、ロミオ君。

 

「……あ、アラガミとはいえ可愛い美少女……精神的ダメージが……ぐふっ」

「ですから、言ったじゃないですか」

 

 シエルのジト目が飛ぶと、全員が銃形態に変形させた。

 

「人の見た目をしたアラガミか……同情でも誘って、殺すのに忌避感を持たせるってか? クソったれにも程があるぞ、おい」

 

 血の気の多いギルバートがそう挑発してくる。

 

 ……そうか。ギルの場合だと、ケイトとの事がトラウマになっているから、忌避感がどうこうと言っているわけか。

 

 だがしかーし、それは俺も同様である。

 

「……残念だけど、それは私にも言えること。ヒト型アラガミは、人を捕食対象にできない」

「そんなの、信じられる訳が無いだろ! ……今だ!」

 

 ヒロの指示で、四人による集中砲火が開始される。咄嗟に神機で防御するが、拙いと考えた俺は直ぐに移動による回避を始めた。

 

 良く使う右の神機を見てみると、長いこと使いすぎたか盾の部分が破損している。左の神機も早めに体の中へ収納して修復したほうが良さそうだ。

 

 そう思って右の神機を仕舞おうとすると、ステップで弾丸から逃げ切ろうとする俺へ、突如急カーブを描いて大きな神属性の弾丸が右の神機を完膚無きまでに粉々にしやがった。

 

「くぅっ……ヒロのエディット弾、強い」

 

 何がどうなってるのか、主人公ヒロだけバレットが不思議な挙動でこちらをホーミングしてくる。もう何発か被弾していて、一向に回復しない脇腹の傷もあって、回避する時に支障が出ているのだ。

 

 ギルのアサルト弾も断続的に強力な弾が来るし、シエルの狙撃弾で、今さっき腕に穴を空けられた。ロミオもロケット弾をここぞというタイミングで使って来て、爆風で吹き飛びそうな時を狙って他の奴らが畳み掛けて来る。

 

 ……四人相手だと勝てるビジョンが見えない。スタミナも限界に近くて超速ステップはそろそろ出来なくなるし、なによりこの傷じゃあ、長く持たない。

 

 撃退くらいしたかったが、無理だったか。

 

「……今日は引く。四人相手は、勝てる気がしない」

「じゃあ、大人しくやられたらどうだ?」

「……お断り。それっ!」

 

 俺はピンを抜いてそれを投げると、一目散に後ろの道へと駆け出した。

 

「ああっ! 待てえ!」

「ロミオ先輩!? 直ぐに後ろを! 後ろを向いて下さい!」

「え?  ──アッ、目がぁぁぁ!!」

 

 ボカァ!という破裂音と共に、閃光が炸裂する。

 そう。あれはアイテム『スタングレネード』だ。助けた神機使いの人からいくつかアイテムを貰っていて、その内でも高価なものだ。本来アラガミの足止めに使うものだが、俺は人間の足止めに使っちゃったのだ。

 

 小走りで休みつつ超速ステップ移動を繰り返して逃げていると、その途中、一人の神機使いの姿を見た。

 

 救援だろうか、そう思ってチラリと視線を向ける。

 

 

 

 

「シ、オ……?」

 

 

 

 

 そこには、彼が居た。本当に遠目からでしか見たことのない、彼を。

 

 

 その一瞬だけ、目が合い、僅か漏らした言葉が、鮮明に聞こえた。

 

 

「ソー、マ……」

 

 

 何故だか、自分まで懐かしい気持ちになってくる。

 

 でも、俺は振り返らない。少しでも遠くへ逃げるのだ。

 

 絶対に振り返らずに、逃走する。でも、俺がこの極東にいる以上は、絶対どこかのタイミングで会うことになるだろう。

 

 この方向だと、少し極東支部に近い所になるか……

 

(……それなら、観光ついでにエイジスにでも行くか)

 

 強者が巣くう島へと、迷わずに走っていった。

 

 

 

 

 だが、この時はまだ知らなかった。

 再会の時が、こんなにも近くなるとは。

 

 

 

 




本部には第十二部隊とかあるのに、最前線の部隊が少な過ぎる……少な過ぎるよね?

恋愛要素未定だけど、あった方がいいかなぁ

  • 恋愛要素アリ(=精神的BLとなる)
  • (恋愛要素は)ないです
  • その他(√ラケル……なんつって)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。