神さまばっかの世紀末な世界に、俺が望むこと   作:赤サク冷奴

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やっぱ(受験)つれーわ……


俺、令和以降の世代には分かなさそうなネタしか知らない……

 

 現在、俺はあの愚者の空母に来ている。

 

 ここに来たのは、ここから少し遠くの海に浮かぶエイジスに行く為だ。

 

「セイヤッ!!」

「グボゥゥ……」

 

 単体でいるせいで、何の脅威もない感応種カバラ・カバラを討伐して、そのコアを喰らう。

 

 ……おおっ!? マジかよ、この舌触りに甘い味……大トロの味じゃねぇか!

 

 意外な味に舌鼓を打ちつつ咀嚼していると、何やら橋の方向からやってくる影が……

 

「これは……グボロ・グボロ通常種、堕天種含め推定50体。道理で耳でワンワンする訳だ」

 

 カバラ・カバラを見つけたのも、この大量の偏食場につられた為。

 こいつが大量のグボロ達の首魁だったのだろうか。

 

 ずっと偏食場を聞いていると耳がおかしくなりそうなので能力をオフにしていたが、耳をそばだてよく聞き取れば、大体の数が分かる。

 

「今日は寿司パだな!」

 

 俺は、少し前にやろうとしたら出来たプレデタースタイルの……中でも『天ノ咢』を模倣すると、前方のグボロ・グボロに発動しながら、奴らの真上を跳躍。オラクル細胞が急速に活性化されるのを感じ取りながら、両手の神機を銃身形態に変形させた。

 

「とっておきをお見舞いしてやる」

 

 銃身パーツはブラスト。オラクルリザーブは、強いて言うなら500くらい貯まっている。

 何せ、俺はアラガミだ。俺自身がオラクルの貯蔵庫にして生成機関なのだから、これくらい貯まっていて当たり前……なのかな?

 

「──『RYU☆SEI』!」

 

 GE2シリーズでお世話になった、前世での俺の自作バレット『RYU☆SEI』。有名なバレットである『メテオ』を参考に少し改変を加えて、空から降り注ぐ三発の流星を敵に見舞うバレットだ。本来なら、変異チップで抗重力弾を付けたいところだが、残念ながらオラクルチップで作られていないので、見た目と込められた威力だけが同じ。

 

 え、見た目はいらないだろ?

 そんなもん男のロマンだよ。

 

 ──ドガドガァッ! ドガァドガァッ! ドガァッ! ドドドガァッ!!

 

 放たれた炎属性と氷属性の弾丸は、グボロ達の真上から降り注ぎ、ダメージ表記されているなら30000ほどの爆撃が、奴らの命を刈り取っていく。

 しかし、威力のバカ高さを過剰なOPで補って再現しているので、一発撃つ事に大体20ものオラクルリザーブが使われている感覚だ。

 あぁ、俺の一ヶ月分が……

 

 大きな犠牲の甲斐もあって、地面に着地する頃には50くらいはあったグボロ達は、瀕死のが数体になっており、そいつらを剣でサクッと討伐した。

 

 今回は、チャージ捕食のプレデタースタイル『ミズチ』や『太刀牙』で纏めて捕食して、頂きます。

 

「せいっ!」

 

 広範囲の捕食が、正確にコアを回収していき、俺の腹に収められていく。

 

 なんだろう、寿司の食べ放題で、口の中に刺身だけをやたらめったら溜め込んで一気に食べてる気分だ。

 大学生の俺からしたら、とんだ贅沢である。

 

 プレデタースタイルを駆使して、どうにか全54体もいたグボロを全て捕食すると……俺はその場に蹲った。

 

「……うっぷ。やべ、食い過ぎた」

 

 今、俺はとてつもない吐き気に襲われていた。

 多分、原因は食べ過ぎだろう……いや、そもそもアラガミにそういう感覚があって良いのだろうか。アラガミなら際限なく喰わないと進化することすらできないのに。

 

 まあなんにせよ、グボロのバーゲンセール、ごちそうさまでした。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 所変わって、俺は今、海を渡っていた。

 

 泳いで、ではない。

 なんと、波揺れる海の上で立っているのだ。

 

 ……いや、どういう原理だよ!?

 

 しかも、自由に歩けるし、走れるし。でも海の中には潜ろうと思えば潜れる。

 もしや、グボロを食べ過ぎたからか……?

 

 ともかく、色々ありながらも、エイジス島まで海を走破していった。

 思ったよりも海の中にアラガミの偏食場は感じられず、試しに潜ったらグボロ・グボロとウコンバサラに遭遇したくらい。こいつらはサクッと倒し、お腹一杯なのでコアを手に持って運んでいる。

 

 そんなこんなでエイジス島の付近にやって来た訳だが、改めて見ると圧倒される大きさだ。

 

 歩いていると、巨大な黒い枝のような物がエイジス島に散りばめられている。これらはオラクル細胞で出来ているらしい。

 

「……ノヴァ」

 

 ノヴァのオラクル細胞であるこの黒い枝。

 

 

『……ォ……マ……………カ……キ……』

 

 

 頭がズキズキと痛む。思い出せそうで、思い出せない……

 

 不意に目眩がしてそれに触れると、脳が焼け付くような痛みに襲われて……

 

『サ……ャ……アリ…………ゥタ』

 

 ……ふと、頬を冷たいものが伝って、海に落ちた。

 

「ぁ……あ……あぁ……!!」

 

 その時に、自覚した。自分が泣いているのだと。

 

 言い様のない深い悲しみ。虚無感。その他にも、色々な感情が胸の中を渦巻いていた。

 

『ァ……キ……ユ……ゥ……リン……ゥ……』

 

 でもそれが何なのかが分からない。

 あまりにもどかしい……この気持ちの正体が分からないことが。

 

 でも、やる事はただ一つ。この溢れる感情に溶け込む、ある意志に従うのだ。

 

 嗚咽を漏らしつつ手に触れている黒いのを引きちぎる。

 

 そして、感情の主と、俺の思考が今、一致した。

 

 

『「喰らえ、意のままに!」』

 

 

 手に持ったそれを、俺は力の限りに噛みちぎり、咀嚼すると……

 

「あぐっ……!?」

 

 記憶が雪崩のように流れ込んで、自分の視界が真っ白に染まった────

 

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

side??

 

 

 ……私は、ずっと孤独だった。今も、昔も。

 

 出来ることと言えば、ずっと(そら)を眺める事くらい。

 

 そんな一人ぼっちの私には、一時、沢山の仲間が一緒にいた。

 

 皆は、私に言葉を教えてくれた。楽しいことを教えてくれた。人と一緒にいることの素晴らしさを教えてくれた。

 

『腹……減ったな……』

『ハラ、ヘッタ、ナ……?』

『んー? お腹……すいた……だ……』

 

『ずっとお預けにしていてすまなかった。キミも、一緒に来てくれるね?』

 

『──ちゃん? こんにちは』

『んー? こんちにわー!』

『うん! えらいえらい!』

『ありさー、えらいってー!』

『えらいねー! ふふふっ』

 

『──、オッス!』

『おっす!』

『いいじゃんよー!』

『じゃんよー!』

『こんにゃろー!』

『にゃろー!』

『凄いぞ、──! これが藤木家に伝わる伝統的な挨拶なんだからな!』

『アイサツー!』

 

『はーい──ちゃん、服を着ましょうね〜?』

『キチキチ、チクチクやだー!!』

『うんうん、大丈夫、きっと直ぐに慣れ──』

『やだーーー!!!』

『えっ、──ちゃん!? 壁を壊しちゃ……ゲフッ、ゲフッ! 待って、逃げちゃダメよ!』

 

『フッ……ハッハッハ! テメエも少しは自分で考えやがれ。ま、お互い自分の事も分からねぇ出来損ないってことだな』

『おお、やっぱりいっしょか!』

『だから、一緒にするなと……』

『いっしょにジブンサガシだな!』

『や、やめろ……』

 

 私の、大切な仲間達。

 

 

『ありがとう、──……またな』

『私からも、ありがとう。またね!』

 

 

 皆は、私に教えてくれた。

 

 本当の、人間のカタチを。

 

 食べる事も。誰かの為に、生きる事も。誰かの為に、死ぬ事も。誰かを、許すことも。

 

 それが、どんなカタチをしてても……

 

 みんな、誰かと繋がってる。

 

 そんなみんなのカタチが好きだから、私はここにいる。

 

 例え離れてても、一緒だから。

 

 

『一人で勝手に決めやがって……』

 

 

 それが皆の為なら、私はいつだってこの命を捧げる。

 

 

『いいこにしていろよ?』

 

 

 いつでも、いい子にしてるよ。

 ずっと、私は待ってるよ。

 

 だから、絶対迎えに来てよね。

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

「っく、はあっ、はぁっ……」

 

 いつの間にか、現実へと帰ってきていた。

 

 記憶を吸収して脳を使ったからか吹き出た汗を拭うと、水面にへたりこんだ。涙ももう、流れていなかった。

 

 さっき頭に流れ込んできたあの記憶……あれは、完全にシオの記憶だった。

 

 瞬く間に、シオの視点で、シオの凡ゆる記憶が頭の中に詰め込まれたような感じだ。

 

 シオが生まれた時のこと。アラガミと戦い、そして、コアを食らう日々。リンドウとの出会い。第一部隊……隊長である神薙ユウと、副隊長霊代アキとの出会い。日本語の読み書きや、ソーマと一緒に曲を聴いた時。服を着るのを嫌がる時。アルダノーヴァに連れ去られ、その時にシックザール支部長がひそかに言っていたこと。

 

 そして……月での日々。

 

 ゲームでは語られなかった場面までも、全て知ることが出来た。

 

 ……前々から思ってはいたが、やはり自分はシオと深い関わりがあると見て間違いないだろう。最初期の捕食衝動も、単にアラガミの意識だけじゃなくて、断片的にシオの意識があった。

 

 全く、ここはゴッドイーター2だぞ? 舞台の錯誤にも程があるだろうに。

 

 どっと疲れが押し寄せてきて、立つのも億劫なので休憩を始めようとすると、やたらと耳障りな音が聞こえてきた。

 

「っと、この音は……」

 

 今、エイジスの方向から偏食場をキャッチした。

 だが、偏食場が大きい……今まで戦ってきた奴の中でもそうはいない大きさだ。

 

 接触禁忌種か、感応種か。それが何かは分からないが、やることはただ一つ。

 

「行ってみるしかない」

 

 水面を走り、エイジス島へと上陸した。

 

 

 

 

 エイジス島のど真ん中。いつものバトルフィールドに到着すると、そこには紅葉色のデカい山があった。

 

「アマテラスか……」

 

 第一種接触禁忌種、アマテラス。ウロヴォロス神属のめっちゃ体力高い奴である。

 

 何となくエイジス島に来たが、これは良い収穫だ。

 何せ相手は女神。身体の成長は確実と言っていい。

 

「バァァァァ!!!」

「うおっと、危ない」

 

 アマテラスが2連続で火の玉を投げつけてきたのを回避すると、脚を踏みしめ跳躍し、アマテラスへと肉薄する。

 

「ハッ!」

 

 神機で幾度も斬りつけるが、途端に触手が分裂して襲いかかり、そこから火柱が上がった。

 

 左脚を焼かれる痛みを堪えつつ、右脚で飛び上がって、両手の神機で同時に女神像へと振り下ろす。

 

「ブオオオオッ!!」

 

 女神像が結合崩壊し、雄叫びを上げるアマテラス。所謂、アラガミの活性化だ。

 

「喰らえっ!」

 

 両手の神機を使い、エア捕食のプレデタースタイル、レイヴンで捕食しバーストすると、後ろに後退してアラガミバレットを撃つ。

 

 そこに、アマテラスが触手の薙ぎ払いをしてきた。

 

「ぐぶっ……!?」

 

 あまりの速度に対応しきれず、そのまま壁に打ち付けられる。

 

 だが、それで終わる俺ではない。その触手に神機を突き刺し、触手が戻っていくのを利用して再びアマテラスの下へと加速すると、今度は角の部分に左の神機の刃を叩きつける。

 

 綺麗に横一文字に切ると、アマテラスが触手で防御しようとする。その触手を左の神機で切り、裂けるチーズみたいにしてから、右の神機を女神像へとぶっ刺して、全体重と力を乗せ女神像を真っ二つに切り裂いた。

 

「ブルァァァァッッ!?」

 

 アマテラスは、断末魔とともに、その場に倒れ伏した。

 

 ほっ、と一息つくと、アラガミなのに何故か掻く汗を拭う。

 

「っし、アマテラス一丁上がり〜」

 

 後は捕食して食うだけだが……どうにもこのエイジスに、奇妙な偏食場というか、気配がある。

 

 いや、現在進行形でそれが近付いているというべきか……

 

「っ!? 近い!」

 

 後ろに振り向くと、このフィールド、エイジスに入る用に用意された高台。その上に、人が立っていた。

 

 銀髪で鮮やかさの抜けた青い目、褐色の肌のその青年は、スタッ、とこちらに降りてきた。

 

 ソーマ・シックザール。全てのゴッドイーターのオリジナルにして、神機使い最強格の一人。

 えぇ……また会ったよ……嘘でしょ?

 

 ブラッドのメンバーより迫力有りすぎる。

 

 ……もしかして、殺される?

 

 ちょちょっ、待って待って、バスターブレード肩に背負いながらゆっくり来ないでくれ。

 怖いわ。お前だと余計怖い。

 

 挙動不審になりつつアマテラスの近くまで後退していると、ソーマさんのスッとした眼光が俺を貫いて、ヒッという声を漏らしそうになった。

 

「……お前、何を慌ててんだ?」

 

 アマテラスのコアをあげて逃げようか考えてるんです。だからジリジリ近づかないで!

 

「……喋れるだろ?」

 

 喋るのは良いんだけど、口調どうしようか。普通に女の子っぽく……喋れるもんかね。

 取り敢えず、視線が怖いからなんか喋らないと……!

 

「…………うん」

 

 よしよし、頑張って喋ろう。

 

「なぁ、お前って…………っ!? おい、後ろだ!!」

「へ?」

 

 凄く聞き覚えのあるフレーズを聞いて上を見そうになったが、咄嗟に後ろを向いて神機を投げつける。

 

 すると、後ろから俺を貫通せしめんと高速で迫る触手。それを横に回転しながら飛んでいった神機が切り裂く。

 

 そこに彼が接近して、バスターブレードを上から叩きつけ、今度こそアマテラスは絶命した。

 

「あ、危なかった……」

 

 投げつけた神機を回収し体の中に仕舞うと、そこにいる彼の存在を思い出してビクッとし、恐る恐る振り向いた。

 

「……(に、ニコッ)」

「……なんだその引き攣った笑みは」

 

 仕方ない。ここの所まともに笑った事なくて、表情筋がうまく働かないんでね。

 

「……え、えと」

「あぁ?」

 

 ちょっ、ソーマさん凄まないで! 口がパクパクしちゃうから!

 

「あっ……ぁ、あり…………ぁ……」

 

 でも、おかしい……なんで俺こんなにテンパってるんですかね!? 

 コミュ障みたいになって上手く話せないんですけど!?

 

 ブラッド隊とは割と普通に話せてたでしょうに! このド陰キャ!

 

「ぁ、ぁあ…………ありが……とう……」

「……そうか」

 

 や、やべえよ。緊張で心臓バクバクして、まともに喋れなくするとか、お前バケモンか。

 いや、ゲームだと化け物とか呼ばれてたけどさ。アラガミ直接入ってるみたいなもんだし。

 

「…………あ、あの」

「何だ?」

「…………アマテラスのコア…………いる?」

「そいつは元々お前の獲物だろう。俺がやったんじゃねぇ。気にするな」

 

 ……お、マジか。

 

 GE2ともなると、やっぱり性格が優しくなっている。

 

 ツンツンソーマも悪くないが、今の時間軸にいて本当に良かったと思う。

 それじゃあ、ありがたく頂こう。

 

「……いただきます」

 

 神機の捕食形態でコアを抽出すると、大体バスケットボール大のそれを、合掌してから口に運んだ。

 大きさが大きさなので、経口摂取するには齧って食べるしかない。

 

 アマテラスの味は……いちごショートケーキだ。久しぶりの甘味でとても美味しい。

 

「ん……」

「なっ……!」

 

 すると、体がほんのり光って、変化を始めた。女体系のアラガミで、しかも強力かつ初めてのものを食った影響だろう。

 

 ……頼むから、アマテラスみたいなお山は出来ないでください!

 

 目を瞑っていると、俺の願いが聞き届けられたのか、特に背が成長しているのが分かった。

 

 前が150センチくらいだった筈だから、今は……

 

「……勝手に何やってんだ」

 

 ソーマの隣に立つと、ソーマとの背の差でおおよその背丈を測る。

 

 ソーマの高さがこれで、それより二回り小さいのが俺。つまり、大体だけど俺はついに160センチ近くに到達した訳だ。

 

「つ、ついに18歳レベル……!」

「おい、だから一人で何をやってやがる」

「……ふぁっ!?」

 

 ソーマが腕を掴んで、目を真っ直ぐに見てくる。

 ひええ、強面な美形顔が……

 

 でもよく見てみると、目尻が下がっているような気がしなくもない。視線が怖いのは変わらないけどな!

 

 初代主人公──この世界では神薙ユウと霊代アキ──は、さぞかし怖かっただろう。

 

「……ぁ、あ、あの…………放して、ほしい……」

「!! あ、あぁ……すまん」

 

 こうして面と向かい合うだけで恐ろしいのは、偏にアラガミの天敵でもあるからか、GEの中でも一番好みのキャラが実物で迫ってくるからか……激しくキョドりながら懇願した。

 シオの方は純真無垢だったので、当初はソーマの怖さとかがあんまり分からなかったらしい。

 

 内心溜息を漏らしてから、ソーマと改めて向かい合う。しかし、何も起こらない。

 

 ……いや、話しかけてくれよ。俺に用があるんじゃないのか。

 

「……えっと……何か話した方が、いい……?」

「……いやいい。それよりも、まぁ、分かっているとは思うが……俺から単刀直入に言っていいか?」

「……う、うん」

 

 怖い。ソーマのことなんで、要求は一つだろうけど、なんか死刑宣告に聞こえてくる。

 

 面と向かって、そしてソーマが意を決したように手を差し出して、言った。

 

 

 

「ウチに……極東支部に、来てくれないか?」

 

 

 

 ──〝フェンリル極東支部〟

 

 アラガミにとっては敵の本拠地でもあるその場所へ、勧誘されたのだ。

 

 ソーマの言う通り、分かってはいたけど……行くべきか、行かぬべきか……行った方が良いのかなぁ。分からん。

 

 提案に目をパチパチさせて、少し困惑する素振りを見せて、内心では考え込む。

 取り敢えず、行く事によるメリットを列挙してみるなら……

 

・手厚く保護してくれる。

・サツバツとした外の世界から一時的にサヨナラバイバイできる。

・2の主人公、神威ヒロに取り合ったら、頑張ってブラッドアーツを覚えられるかも。

・シエルちゃんとヒロ君と一緒にブラッドバレットが覚えてみたい!

・ハルオミさんの聖域探索に付き合える。

・下乳さんと合法的に接触できる。ムフフ。

・誤射姫に一度だけ誤射されたい。一度だけ。射線上に(ry

・リッカさんのえってぃな作業着が見れる。

・もしかしたら神機作れるかも!

・サカキ博士から定期的にコアをもらって養ってくれる。

・バガラリー見てみたい!

・ムツミちゃんのお袋の味が食べたい! というか料理に飢えてます。

・もしかして、初恋ジュース売ってる? 飲んでみたい。

・ナンクルナイザーを試食したい。

・ユノちゃんの生歌が聴きたい。

・カレーなピクニック隊長の鉄◯DA◯H。聖域を開拓せよ!

 

 パッと思いつくだけでこれくらいだろうか。

 

 ……待てよ。デメリットどうこうの前に、これだけのメリットがあるなら物凄く行かないといけない気がした。

 

 というかそもそも、俺はアラガミになってから、どうして真っ先に極東支部に行かなかったのか。

 ロマンチストなサカキくんが居るなら大丈夫に決まっているというのに。

 

 アホじゃね? もう一回言うけど、俺、アホじゃね?

 

 いくらゴッドイーターが天敵とはいえ、優しい奴らも多いのは身をもって知っているだろうに……昔の俺に言ってやりたい。

 

「虫のいい話だってのは分かっている。無理にと言える資格はねぇ。だが、お前がもし、俺を信頼してくれるなら……お前を、この手で守らせてくれ」

 

 ほら、こうやって。

 無条件で、こんな事が言える奴が居るんだ。

 

 ……羨ましいな。

 

「……信頼は、とうの昔からしてる。ソーマ達が、シオを幸せにしてくれた……理由は、それだけで十分」

「……そうか」

 

 断る理由は何一つ無い。おずおずと、ソーマの手を取った。

 

「……だから、あの、えと…………はじめ、まして……?」

「……フッ、お互い挨拶の順序が逆になっちまったな。……俺はソーマ・シックザール。まぁ、宜しくな」

 

 そんなソーマの表情は、ゲームでも中々見ない、優しい笑顔をしていた。

 

 

 

 

「ああ……少し偏食場レーダーを止めてくれ。今から頼む。……ああ。了解した」

 

 エスカレーターのようなもので移動していると、連絡を終えたらしいソーマがふと質問してきた。

 

「……なぁ。お前、名前あるのか?」

「……無い……お──私は、アラガミだから……」

 

 一瞬、俺と言いかけたのを、即座に言い換える。

 

 人だった頃の名前は、アラガミになった時からもう忘れていたので、俺に名前は無い。

 うーむ……前にも思ったが、家族とかの名前は思い出せるんだけどなぁ。なんでだろう……

 

「……なら、シアンって名前はどうだ。名前が無いと、呼びづらいだろう」

 

 シアン。シアンか……シオの例があるし、何かのフランス語か。

 

 でも、これが何故だかしっくりくる。

 流石、シオの名付け親ということかもしれない。

 

「……シオに、似てる」

「っ……疑ってはいなかったが、本当にアイツを知っているとはな」

 

 当たり前だい。こちとらブラッドアーツもプレデタースタイルも無い鬼畜な無印からやってる猛者だぞコラ……

 

 だなんて、今まさに肩を掴んで、鬼気迫った顔のソーマに言える筈もない。

 

「……ん。多分、私の姉、かも……少なくとも、シオの記憶を持ってるから」

 

 記憶の限りでは、特異点となってから随分と大人びてしまったらしいので、俺では敵いそうにない。

 

 エスカレーターが到着し、着いた先で今度はエレベーターに乗る。

 

「……シオの記憶を持っているのは、それがアラガミの基本的な性質によるものだな。アラガミには記憶を継承し、それに基づいて進化していく、急速な学習能力を持っている。つまり、お前はシオに関する何かしらのオラクル細胞で構成されているか、もしくはその細胞を何処かで喰らった、という訳だ」

 

 ……そうではあるのだが、シオの記憶に関しては前世の知識と先程の記憶の追体験によるものが大きいので、ソーマの推測は惜しい。まあ絶対に分かる訳ないけど。

 

 あ、そう言えば、シオの記憶で思い出したのだが……

 

「……ソーマって、シオのこと好きなの?」

「──ブフォッ!?」

 

 ソーマが噴き出した。予想だにしない質問だったのだろう。

 

 ゴホッゴホッと咳をしつつ勢いよく頭を横に振ると、呼吸を整えてから話しだした。

 

「……そ、そんなんじゃねえに決まってるだろうが。あいつはただ、何だ…………手のかかる妹みたいなもんだ」

 

 あれま、そんな認識だったのか。てっきり俺はソーマがロリコンだとずっと思っていた。

 

「……じゃあ、私もソーマの妹?」

「そんな訳ねぇーだろ、バカか!」

「ひぐっ!?」

 

 脳天に拳骨が打ち込まれた。凄い痛い。

 どれくらい痛いかと言うと、アマテラスの触手ビンタを食らうくらい痛い。

 

「い、痛い……」

「大人の人間をおちょくると痛い目を見るぞ。学習したか?」

「……ぶった。親父にも打たれことないのに」

「アラガミに親父もクソもあるか」

 

 くっそ、俺渾身のガ◯ダムネタが通じねえ。

 これだから令和以降の世代は……

 

 すると、ガシャンという音がして、エレベーターが止まった。

 

「着いたぞ」

 

 スライドの自動ドアが開き、一歩足を踏み出すと、横には巨大な直下トンネルがあり、それ以外には廊下と二つの部屋、奥にあるエレベーターのみの殺風景な階に出た。

 

「……もう、ここはアナグラ?」

「ああ。このまま、エレベーターに乗って、サカキのおっさんの研究室まで行く」

 

 廊下の奥のエレベーターまで行ってボタンを押し、再度エレベーターに乗る。

 

「……これから、どうなる?」

「まあ、確実に検査はされるだろうが……嫌なら言ってくれ。説得するぐらい訳ない」

「……それくらい構わない」

「……そうか」

 

 反応うっす!

 何だろう、このコミュ障同士を引き合わせてみた、みたいな遣り取りは。とてつもなく気まずい。

 

 仕方ない……一芝居打つか。

 

「……それとも、キャー、変態よー。……とでも言えばいい?」

「…………」

 

 スルーされた。再来の渾身一発ネタなのに。

 

 笑いの感情が消えて無くなっているんじゃない?

 笑わないと体に良い物質が生成されないって聞いたことあるよ?

 

 チーン♪という音が鳴ると、ゲームでも足繁く通った、ラボラトリの通路の景色が広がる。

 

 すると、ラボラトリの階層の自販機前に、二人の人物……我らがピクニック──ジュリウスと主人公、神威ヒロくんが飲み物を片手に談話していた。

 

「ジュリウス隊長、あのアラガミに会っても手は出すなって、どういう事でしょうね」

「俺には分からないが、ペイラー支部長はフェンリル創設に貢献した科学者なのは知っているか? 何か、人型のアラガミについて研究をしている……」

 

 そんな二人の横を、スーっと軽く会釈しながら通って行く。

 

「「──はあぁ!?」」

 

 おお、ジュリウスが「はぁ!?」なんて言うのか。すげぇ。

 

 そんな新発見をしながら、ソーマが部屋に入っていく。

 

「おっさん、入るぞ」

「入ってから言うのは遅いと思うよ? にしてもお早い帰りだ。……と、そうそう。わざわざ偏食場レーダーを停止させた理由を聞きたいのと、貴重なアマテラスのコアは回収出来た……かい……?」

 

 モニターから顔を動かしたサカキ博士が、ソーマの隣にいる俺の姿を見て、眼鏡をずり落とした。

 しかも珍しく、あの糸目が大きく見開かれている。

 

「さっきエイジスで拾ってきた」

「……道理で、連絡までして偏食場レーダーの停止を求めた訳だ。……ソーマ。ちょっと、いいかな?」

「……ああ」

 

 ソーマとサカキ博士がコソコソと話している。

 

 だが、アラガミの聴覚を舐めないでほしいね。耳を研ぎ澄ませば……

 

『やっぱり、ソーマはアラガミに好かれやすい性質を持っているんじゃないかな』

『……はぁ?』

『シオ君といい彼女といい、いくらなんでも仲良くなるのが早すぎないかと思うのだよ、私は』

『……まあ、名前は付けたが』

『……キミには、もれなくヒト型アラガミ誑しの称号を与えるよ』

『要らねぇ……』

 

 そのまま、ソーマがソファにぐったりと座った。

 というか、まだ全然ソーマと仲良くなれてないぞ、俺。

 

「おっと、待たせてすまなかったね。名前は知っているだろうけど、改めて。私の名前は、ペイラー・榊。このフェンリル極東支部の、支部長をしているものだ。……ようこそ、対アラガミ組織フェンリルへ」

「おいおい、最初から脅すな」

「ははっ、今のはジョークだよ。気にしないでねー?」

 

 この掴み所の無い性格。流石ペイラーさんだ。対アラガミ組織とか言ったら、普通ビビるだろうに……

 

 じゃあ、自己紹介といきますかね。

 

「……私はシアン。種族はアラガミで、性別は多分、女……? 今の目標は、背が伸びること」

 

 一礼で締めると、サカキ博士から拍手が飛んできた。

 

「流石だね。日本語は独学かい?」

「……記憶からある程度。後は勉強した」

 

 ふっ、生粋の日本人の日本語力を舐めんな。

 

「そうかそうか……なら、着いて早速で申し訳ないんだけど、私の時間がある内にキミの体を検査させてくれないかい?」

「……キャー! 変態よー」

 

 取り敢えず、ソーマの後ろに隠れた。

 ふはは、困れ困れ。

 

「おおっと、これはこれは……レディに失礼なことを言ってしまったかな?」

「博士、こいつの話に乗るな。移動中に、さっきみたいなのを言えばいいか俺に質問してきやがったからな」

「そんなんじゃ──いてててっ!?」

 

 ソーマに頭蓋を掴まれた。

 こいつ、アラガミの骨をメキョメキョ言わせるとか握力強すぎだろ。

 

「……私の渾身の一発ネタなのに。この朴念仁さんめ」

「お前のは大して面白くない」

「……ひど」

 

 こいつ無愛想だなぁ。いや、笑いの耐性でもついたのか?

 

「それじゃあ、麗しきマドモアゼル、手をお貸ししましょうか?」

「……うむ、良きに計らえ──いたっ!?」

「おっさん、頼むからこいつのペースに乗るな」

 

 こ、こいつ俺に容赦無さすぎだろ。しかも殴った癖に一瞥もくれないとは……

 

「二度もぶった。親父にも殴られたことないのに」

「だからアラガミに親父もクソもねぇつってんだろうが!」

「……いっ、やめてぇ! 骨が、ゴキってしちゃ……!!」

 

 俺のキャラ崩れるから、アイアンクローはやめて……!!

 

 

 


おまけ

 

 

 無事説得に成功したソーマが、少し遠くを見つめたままのアラガミの少女……この時はまだ名前が付いていない──シアンの真正面に立つと、少し姿勢を低くして紫水晶の瞳を真っ直ぐに見る。

 

「ボーッと突っ立ってないで、そこのエレベーターから降りるぞ」

「……少し、待ってて」

 

 用事という言葉にソーマが内心首を傾げていると、シアンはエイジスの端の所に座った。

 

 それについて行くと、その場所では緑色の月がよく見えていた。

 

(何を始める気だ……?)

 

 ソーマが隣に立って顔を覗くと、シアンは目を閉じており……口を小さく開き始めて、喉を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わらない──……歌がないなら──くり返し……歌えばいい──……」

「!?」

 

 

 まさか……! と、ソーマの目が見開かれた。

 

 

「……枯れない──……花がないなら──別の種、蒔けばいい──……」

 

 

 恐らくは、二十年前の平和だった世界でも通用する程の美声。

 

 この曲を歌った人物とは似ても似つかないほど声色が違っているが、ソーマは違和感なんてものは感じていない所か、寧ろ、その声に聴き入ってすらいた。

 

 

「life──……my life──♪」

 

 

 ソーマの胸中に、ざわりと、暫く感じていなかった感情が呼び覚まされていく。

 

 

「続いてゆく──、きっと永遠に──……」

 

「誰もがそう──、本当は信じたい……」

 

「現実という──、悲しみに出会うまで──……」

 

「瞳──……逸らそう────……」

 

 

 それは、寂しさ。大事な人がそばに居ないという、心にぽっかりと空いてしまったもの。

 

 何年も、ずっと会えてない人に会いたい。例え時間が経って忘れていようとも、その感情は決して、離れていくことは無い。

 

 

「憶えている──……母の胸は……温かく、優しい……」

 

「この世を……離れる日に……思うでしょう──uh──」

 

「忘れないで……私の声……voice──of me──」

 

 

 その時、一瞬だけ時間が止まったかのような感覚に囚われる。

 

 シアンが大きく息を吸う。すると、途端にソーマの見る景色が、ガラリと変化していた。

 

 ……エイジス全体が、仄かな青白い光に包まれている……ソーマがそう判断するのに、さほど時間は必要なかった。

 

 ノヴァを構成していたオラクル細胞の幹が橙色から変わっており、海面が発光し、光の粒子がシアンを中心にして辺りに現れ、煌めきを放っていた。

 

 シアンは立ち上がると、胸に手を当て、目をスッと開ける。

 

 そして月を見上げながら、吸い込んだ息を、ありったけの声に乗せて〝彼女〟のもとへ届ける。

 

 

「いつか必ず──訪れる──……」

 

「別れなら……出来るだけ────」

 

「美しく────きっと──……言おう──……」

 

 

 声にならなかった息まで吐きだして長い音価を終えれば、たちまち、青白く光っていたエイジスは何事も無かったかのごとく元の姿へと戻っていった。

 

 呆然としつつも、シアンの歌を聴いていたソーマが我に帰ると、シアンは既にエレベーター近くの所まで歩いていて、ソーマの方へと振り返り、待っていた。

 

「はぁ……あの現象が何だったのかサッパリだな」

 

 これじゃ科学者として失格だ……と自嘲する。

 

 しかし、そんなソーマの頭では、先程まで聴いていた曲が未だに流れ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……あれ? 遠くにいたはずだし、さっきの歌聞こえてないよな?)

 

 こっそり「一度エイジスで『my life』を歌いたい」という野望を果たしてきたシアンは、ぼけーっとするソーマを見て訝しんだ……

 

 

 

 




名前安直スギィ!とか突っ込まないで……

恋愛要素未定だけど、あった方がいいかなぁ

  • 恋愛要素アリ(=精神的BLとなる)
  • (恋愛要素は)ないです
  • その他(√ラケル……なんつって)
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