ありふれない怪物は、やがて英雄へ   作:シロマダラ

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 息抜きとリハビリ代わりに、ギャグ要素満載の小話を時々出していきます。


小話
爆誕! ブルック幻のアイドル・ユウキちゃん!!


 ライセン大迷宮の攻略から二日、旅の準備を整えている一行に一通の手紙と大量の荷物が届けられた。

 

 訝しみながら確認すると、送り主はクリスタベルであり、悠姫に服の試着とモデルをしてほしいとのこと。要するに、ファッションショーの依頼だった。

 

 しかし、問題なのは荷物の中身。色鮮やかな絹布やレースで彩られたワンピース、歌って踊るふわりとしたスカートのアイドル衣装(ハジメ談)etc...と、つまるところ“女物”である。

 

 ユエやシア(女性)宛ではない、悠姫(男性)宛である。なにか見落としがあるのではと何度も確認しても、悠姫なのだ。

 

 男に負けたと項垂れるユエとシア(二人)を視界の隅に収めながら、手紙と荷物を持ってきた宿屋の一人娘ソーナに、了承の旨を伝えてもらうのだった。

 

 そして二日後、悠姫はクリスタベルの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 悠姫は、女装すること自体への抵抗は基本的には無い。

 

 過去には女顔を利用して男娼をしていたこともあれば、人攫い(マンハント)の囮捜査として女性のふりをしていたこともある。

 

 それらに比べれば特に危険だと思わない。着せ替え人形(マネキン)に徹する程度で誰か(クリスタベル)の役に立つならばそれでいい、と思って引き受けたが――

 

「――断ればよかった」

 

 ――悠姫は今、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「いいわッ! いいわよッ! アイディアが沸いてくるぅぅッ!!」

 

 気分は飢えた肉食動物の前に置かれた()である。檻で隔離されているから襲われません、安全ですよ。安心してください――――なんて一体どこに安心できる要素があると言うのだろうか。

 

「次はこれッ! ああぁん、いいッ! こっちも着てッ……いいわッ! いいわよユウキちゃんッ!」

 

「は、はは……」

 

 もはや乾いた笑い声しか上がらない。

 

 残像と共に姿を消し、服を手に現れる。そして一瞬で悠姫を着せ替え、化粧を整え、腰をくねらせながら恍惚して悶えるクリスタベル。そして再び姿を消して、次の服を手に現れる。

 

 悠姫すら捉えることが出来ない速度で動くクリスタベルは、英雄(怪物)を超える化物(怪物)。たとえ千年を生きた者であろうとも、今の彼女には手足も出ないのは間違いない。

 

 ふと、遠くから見守るハジメ達の姿が目に映る。だが、恐怖に染まった表情を目の当たりにすれば助けを求めることなど誰に出来よう。少なくとも、この()()に三人を巻き込む決断など当然取れるはずがない。

 

 やがて、クリスタベルは更なる領域(ステージ)へと足を踏み入れる。

 

「きたッ! きたッ! 私は今、生きているわッ!! 至高の(カミ)はここにあるッ!!」

 

 上半身の服が弾け飛び、見る者全員を魅了する程の美しい筋肉美が披露される。そして、悠姫の着せ替え速度が爆発的に加速する。インスピレーションが湧いた瞬間には想像通りの服を編み上げて悠姫へ着せる。

 

 そしてフリフリのアイドル衣装を身に着けた時、クリスタベルは咆哮した。

 

「そこでターンッ、ポーズッ! さあかわいく決めて、ウインクッ!」

 

 ――キラッ☆――

 

 数拍の静寂の後、空間が割れんばかりの大歓声がアイドル衣装の悠姫を包み込み、ブルックの町へ轟いた。

 

 アイドル「ユウキちゃん」誕生の瞬間である。

 

 

 

 

 

 余談だが、後に「幻のアイドル・ユウキちゃん」と呼ばれるようになったこの一件について伝え聞いた四人の女性は、その姿を見せてほしいと悠姫に頼み込むも頑なに断られ、悔し涙を流していたという。

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