ありふれない怪物は、やがて英雄へ   作:シロマダラ

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適当すぎたなと思って、編集再投稿です。


第十五話 新たなる旅立ち

西暦2578年――その年、世界は崩壊した。

 

 星辰体(アストラル)技術の争奪に端を発した第五次世界大戦は、全世界規模の空間震災と、地球環境の改変を引き起こした大破壊(カタストロフ)により幕を下ろす。

 有史以来最大となる空前絶後の災禍を前に、既存文明は一新されたのだ。

 大戦末期に誕生した、一体の人型人造兵器と一体の装置を残して......

 

 西暦末期、蠅にすら命中する精度の誘導ミサイル、世界を幾度も滅ぼせる量の核爆弾。地球という惑星はすでに限界を迎えていた。

 更に後押しするように、当時の日本軍タカ派が生み出した初のアストラル運用兵器迦具土神(カグツチ)壱型。

 

 地球の崩壊を危惧して、極秘裏に日本軍ハト派が生み出したアストラル運用環境改竄(テラフォーミング)装置(システム)大地母神(ガイア)。それが彼女の正体であった。

 

 だが、大破壊(カタストロフ)の発生により大破した彼女はセントラル地下に転移し、星辰奏者(エスペラント)、アダマンタイトなどの技術をカグツチと共に完成させた。

 カグツチとガイアはお互いの協力者を探し、選ばれたのが...

 

 

 

 

 

 

「ユキだったわけか...」

「結構真剣な話だった...」

 

 オスカーの拠点でハジメとユエは、ガイアについての話を聞いていた。

 最初は(ユキ)(ガイア)の関係を知りたかっただけが、思いのほか真面目な話だったことに驚いていた。

 

「ガイアの協力者はただの人間では担えない。大量の星辰体(アストラル)に耐えられる存在でなければならないからな」

 

 世界中を隈無く探せばいたかもしれない。だがガイアはセントラル地下から動くことができない。故に条件の合う人間を待つしかなかった。

 

「俺は大破壊(カタストロフ)の発生によって西暦から新西暦に転移してる。その時に超高濃度の星辰体(アストラル)に感応したことでその資格を得た。だから俺が選ばれた」

 

 無論、それだけが理由ではないだろう。大破壊(カタストロフ)を生身で受けている以上、第二太陽(アマテラス)の一部になっていてもおかしくはなかったはずだが...

 

「...恨んだことはないのか? 結局のところ、そのガイアとかを造った連中のせいなんだろ?」

 

 ハジメの疑問はもっともだった。言ってしまえば他国の戦争に巻き込まれて、急に別の世界に飛ばされ、何度死んでも戦うことを強制されたのだから。

 異世界に強制召喚されたハジメたちも大概だが、ユキほど異常な人生を経験しているものなどまずいない。

 

「...どうだっただろうな。生きるのに必死だったし、恨む相手も知らなかったからな。確かに、〝家に帰りたい〟〝家族に会いたい〟とは思ってた。でも、」

 

 ヴァルゼライドという(ヒーロー)に出会ってしまったからだろうか、〝恨む〟ということを忘れ、光に憧れた。

 当時のユキは5、6歳、単純にかっこいいものに憧れる年齢だ。しかも、本物(ヴァルゼライド)を見てしまったのならなおさらだ。

 そして、なにより

 

「泣いてたんだ、ガイアは。〝私たちのせいで辛い目にあわせてしまって、ごめんなさい〟って。そんなの見たら、怒る気にもなれないさ」

 

 


 

 

「はふぅ~、最高だぁ~」

「ああ、生き返るようだ」

 

 その日の晩、男二人は風呂に入っていた。

 ハジメは天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様をぼんやりと眺め、ユキも同じく眺めながら考え事をしていた。

 

「.........」

「...あの話か?」

「...ああ」

 

 ユキはガイアが残したメッセージのことを考えていた。

 

 

『ユキ…いいえ、悠姫。私は神山、聖光教会の総本山にある迷宮にいます』

 

『きっと過酷な旅になるでしょう。でも、必ず迎えに来てくれると信じています』

 

『あなたは怪物。ならばこそ、()()()()()()()()()()()()()なのだから』

 

『待ってるわ、いつまでも…』

 

 オスカーが託されたというガイアからのメッセージ。

 全幅の信頼を寄せた、しかし一種の狂気染みたメッセージではあったが、ユキにとってはこれで十分。

 

 この世界にガイアがいる。故に、自らの使命は明白だと。

 

 ーー全能神(エヒト)を討ち、絶滅闘争(ティタノマキア)に勝利せよーー

 

 「ああ、いいさーー」

 

 「勝つのは、怪物()だ」

 『勝つのは、怪物(あなた)よ』

 

 

 

「どうする? 神山って、俺たちが召喚された場所だろ。ここを出たら向かうか?」

「...いや、まだ早いだろう。聖光教会、おそらく今の聖教教会のことだろう。複数人の神代魔法の使い手がいて敵わなかった相手だ。今の俺たちでもまず勝てないだろう」

 

 正確には教会が信仰している神に、ではあるが、教会に手を出せば神あるいは神の手先が介入してくることは確実だろう。

 

「そんな相手に挑んだって無駄死にになるだけだ。他の迷宮を攻略して神代魔法を手に入れたほうがいい」

「...まあ、そうなるか...」

 

 ガイアも()()()()()()()と言っていた。つまり、自分の元にたどり着くには様々な条件が必要だということだろう。

 ハジメはユキの言葉に納得するが、ユキはそれよりガイアの言葉の方が気になっていた。

 

(なんでガイアは()()()()に言い直した? 一体何を伝えたいんだ?)

 

 そうユキは考えたが答えが出なかった。すると、脱衣所の方から誰かの気配を感じたため、風呂を上がるために立ち上がった。

 

「俺は先に出る。ハジメはもう少しゆっくりしていけよ。じゃあ、あとは()()()ごゆっくり。...あまりはしゃぎすぎるなよ」

「おう。...ん? 二人? おい、どういうこと...」

 

 ハジメを無視してユキは先に風呂を出る。途中ユエとすれ違い、その後風呂の方からハジメの悲鳴が聞こえたが、ユキはそれも無視して出ていった。

 

 

 

 

 

 それから二ヶ月、ユキとハジメは、ヒュドラと戦った場所でお互いに武器を構えながら向き合っていた。

 

「...行くぞ、ハジメ」

「おう、来い、ユキ」

 

 一拍置き、ユキはハジメに斬りかかる。一瞬で距離を詰めるが、ハジメも後方へ飛び下がることで攻撃を回避する。同時にドンナーで牽制するが、ユキは電磁加速された弾丸すらも容易く切り払いながら距離を詰める。

 

「チッ!」

 

牽制は効果がないと判断し、〝縮地〟を使って逆にユキの懐に潜り込む。さすがにユキも懐に入られたら武器を振ることはできない。ハジメが〝豪腕〟を使い、

 

「甘い」

 

()()()()()

ユキは懐に入られた瞬間に武器を手放し、柔道の如くハジメを投げ飛ばした。そのまま首元に短刀を突き付ける。

 

「......参った。俺の負けだ...」

「いや、焦ったぞ。それより、義手の調子はどうだ?」

 

 こうして模擬戦をしていたのは、ハジメが左腕に着けている義手が理由だった。

 この義手は封印された工房にあったオスカー作のアーティファクトで、魔力の直接操作で本物の腕と同じように動かすことができる。疑似神経が備わっており、魔力を通すことで触った感触もきちんと脳に伝わる様に出来ている。

 この模擬戦は義手と体を馴染せるためと、戦闘で使えるかを確かめるようだった。模擬戦自体はすぐに終わってしまったが...

 

「ああ。問題なさそうだ」

 

 この二ヶ月の間で三人の実力や装備は依然とは比べ物にならないほどに充実していた。

 例えば

 

=========================

ユキ・ロスリック ??歳 男 レベル:???

天職:神子

筋力:15000

体力:15000

耐性:15000

敏捷:15000

魔力:15000

魔耐:12000

技能:星辰光・■■■■・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・魔力変換[+身体強化][+部分強化][+治癒力変換][+衝撃変換]・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・生成魔法・言語理解

=========================

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:10950

体力:13190

耐性:10670

敏捷:13450

魔力:14780

魔耐:14780

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+調律]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

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 二人のステータスはこうなっていた。

 

 ハジメは魔物の肉を喰いすぎて体が変質し過ぎたのか、ある時期からステータスは上がれどレベルは変動しなくなり、遂には非表示になってしまった。さらに、ようやく調律を習得したため、ユキの発動体の調律もできるようになった。

 ユキに関して言えば、ハジメよりも異常だった。おそらくヴァルゼライドとの戦いで幾度と覚醒を果たしたせいだろうが、なぜ本当にステータスに反映されているのだろうか。

 

 ちなみに、勇者である天之河光輝の限界は全ステータス1500といったところである。限界突破の技能で更に三倍に上昇させることができるが、それでもハジメとは約三倍、ユキとは約四倍の開きがある。しかも、ハジメも魔力の直接操作や技能で現在のステータスの三倍から五倍の上昇を図ることが可能であり、ユキは星辰光でハジメ程ではないが大幅なステータスの上昇ができるため、二人が如何に規格外な存在になってしまったかが分かるだろう。

 

 義手の他にも工房にはいろいろなものが保管されていた。様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては楽園かと見紛うほどである。発動体も保管されており、おそらくユキのために準備されていたのだろう。刀、太刀、短刀、いろいろな形状が保管されてあったため、同調率はともかく、最低限全て使えるようにハジメに調律してもらった。そのほかにも〝宝物庫〟という指輪型アーティファクトを手に入れた。

 

 書斎の方では、脱出の方法が見つかり、他の迷宮や〝解放者〟たちのことについて書かれたオスカーの手記も見つけた。手記によると、他の〝解放者〟たちも迷宮の最深部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかったが、おそらく元の世界に帰る方法も見つかるだろう。

これで、今後の指針は完全に決まった。

 

 その準備として、ハジメは〝魔力駆動二輪と四輪〟を製造した。

 つまるところ、魔力で動くバイクと車である。ドンナーの最大出力でも貫けないだろう耐久性に、魔力を直接操作して駆動するため速度は魔力量に比例する。

 

 次に、〝魔眼石〟というものを開発した。

 ハジメはヒュドラとの戦いで右目を失っている。生成魔法を使い、神結晶に〝魔力感知〟〝先読〟を付与することで通常とは異なる特殊な視界を得ることができる魔眼を創ることに成功した。これに義手に使われていた擬似神経の仕組みを取り込むことで、魔眼が捉えた映像を脳に送ることができるようになった。魔眼では、通常の視界を得ることはできないが、魔力の流れや強弱、属性を色で認識できるようになった上、発動した魔法の核が見えるようにもなった。しかし、常に発光してしまうので、黒い眼帯をつけてる。

 

 他にも様々な装備・道具を開発した。しかし、装備の充実に反して、神水だけは遂に神結晶が蓄えた魔力を枯渇してしまった。そのため、魔力を蓄えられる性質を利用してアクセサリーとしてユエに贈られた。

 

「......プロポーズ?」

「なんでやねん」

「それで魔力枯渇を防げるだろ? 今度はきっとユエを守ってくれるだろうと思ってな」

「......やっぱりプロポーズ」

「いや、違ぇから。唯の新装備だから」

「......ハジメ、照れ屋」

「......最近、お前人の話聞かないよな?」

「......ベッドの上でも照れ屋」

「止めてくれます!? そういうのマジで!」

「ハジメ...」

「はあ...何だよ?」

「ありがとう...大好き」

「...おう」

 

 そんなやり取りをしていた。

 

 

 なにはともあれ、ようやく準備は整った。

 それから十日後、遂に三人は地上へ出る。

 

 3階にある魔法陣を起動させながらハジメはユキとユエに声をかける。

 

「ユキ、ユエ...俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

「まあ、当然だろうな」

「ん...」

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい。教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

「覚悟の上だ」

「ん...」

「世界を敵にまわすかもしれない危険な旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

「今更だ」

「ん...本当に今更...」

 

 ユキとユエの言葉に苦笑いをするハジメ。真っ直ぐハジメを見つめてくるユエに、ユエのふわふわな髪を優しく撫でるハジメ。そんな二人を見ながらユキはさらに二人を守ろうと決意する。

 

「たとえ何が来ようと関係ない。勝つのは俺たちだ。全てなぎ倒して、世界を越えよう」

(ガイア、必ず迎えに行く。待っていてくれ...)

 

 ――ええ、待ってるわ――

 

 どこからかガイアの声が聞こえた気がして、ユキは思わず苦笑してしまった。

 ユキの言葉にハジメとユエは強くうなずき、

 

「...よし。じゃあ、行こう」

「おう!」

「んっ!」

 

 魔法陣が光り輝き、三人を包んでいく......




地上組の幕間の次に一旦人物詳細を挟むので、ユキやガイアの色々はそのときに
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