ありふれない怪物は、やがて英雄へ   作:シロマダラ

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第十七話 シア・ハウリアの懇願

 事情はシアを魔物から助け出したあとに聞いた。

 

 シアから聞いた話を要約すると、

 

 彼女らハウリア族と名乗る兎人族は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。とても温厚な種族で他の亜人族に比べてスペックが低く、同じ亜人族の中でも格下として見下されている。

 

 そんな中、シア・ハウリアという異端児が誕生した。亜人族は本来魔力を持っておらず、それ故に人間族、魔人族両方の種族から差別の対象とされている。そのなかでシアは魔力を持って生まれてきた。さらに直接魔力を操ることができ、加えて固有魔法〝未来視〟まで使える。当然だが、本来なら迫害の対象になる。しかし、基本的に温厚で家族の情が深いハウリア族はシアを十六年間もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとうばれてしまい、樹海を出ることになった。

 

 山の幸があれば生きていけると考えて山脈地域を目指すことにしたが、樹海を出て直ぐに偶然帝国兵に見つかってしまい南に逃げるしかなかった。温厚なハウリア族と訓練された帝国兵、比べるまでもないほどの戦力差があるため、気がつけば半数以上が捕とらえられ、それでも必死に逃げ続け、苦肉の策として峡谷に逃げ込むと今度は魔物に襲われてしまう。そこで助けを呼んで来ようとシア一人で飛び出して、〝未来視〟を頼りにユキたちの元まで逃げてきた、ということらしい。

 

「気づけば六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けてください」

 

 悲痛そうな表情を浮かべ、シアは三人に頭を下げる。鬱陶しそうな、実際に鬱陶しく感じているハジメがユキのほうを向く。助けたんだから何とかしろ、と。

 

「…事情は分かった。だけど、はい了解しました、なんて簡単には言えない」

 

 頭を下げたままユキの言葉にピクリと反応しながらシアは話を聞く。

 

「俺は元軍人だ。だから助けて、と言われれば助けてやりたい。だが、その後はどうする? 自分の身を守れないような者たち、しかも約四十人をいつまで守ればいい? 端的に言ってメリットがない」

 

 単純に他国の問題に容易に首を突っ込みたくない、というのもある。今の自分たちは後ろ盾はなく、いつ異端者としてトータス中に手配書が回ってもおかしくない立場だ。むやみに自分たちの首を絞めるようなことはしたくない。

 

「…わかっています。でも、私たちの希望はあなたたちしかいないんです。私にできることなら何でもします。お願いします」

 

 さて、どうしたものか、ユキが悩んでいると、

 

「…助けてください。()()()()()()()

 

 小声でシアが呟く。星辰奏者(エスペラント)であるユキにはしっかりと聞こえ、

 

「…ハジメ、ユキ、連れて行こう」

「ユエ?」

 

 突然のユエの言葉にハジメ訝しそうにする。

 

「…樹海の案内に使う」

「あ~」

 

 確かに、樹海は亜人族でなければ必ず迷うといわれているため、兎人族の案内があるなら心強い。だが、兎人族が抱える厄介ごとも多い。

 

「…賛成だ」

 

 今度はユキがユエの言葉に賛同した。シアの呟きで何やら考え事をしていたようだったが話はしっかり聞いていたようで、

 

「案内は確かに必要だろう。自分たちから進んで案内してくれるなら、そのほうがいい。

 しかしまあ、世界は広いようで狭いか。なるほど面白い」

 

 ユキはユキで別の理由がありそうだが、ハジメとしては二人が良いというならまあ良いか、と納得する。

 

 そして、新たにシアを含め四人は兎人族救出へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「で、どういう風の吹き回しだよ」

 

 四人になったため、魔道四輪に変えて兎人族の場所へと向かう。道中、ハジメが運転中のユキに先ほどのことを尋ねた。

 

「理由はさっき言った通りさ。あとはまあ、」

 

 と、後ろでユエに三人のこれまでのことを聞いているシアに、

 

「なあ、シア。さっき、ディルグ兄さまって呟いてたのをきいたんだが」

「は、はい。…私の兄です。私が小さいころまで一緒に暮らしていたんですが、ある日突然村を出て行ったきり戻ってきていないんです」

 

 話を聞くと、シアには年の離れた兄がいて、突然村を出て行ったきり行方不明らしい。温厚なハウリアとしては珍しく好戦的な性格で、逃げ続けることしかしないハウリアに不満を持っていたという。

 

 ディルグという名前からして、おそらくユキの部下の一人、ディルグ・ロートレクのことだろう。世界が広いようで狭いとはこのことだった。アヤメの話だと金ランク冒険者として活動しているらしいので、そこまで心配するようなことではないだろうが、そのことを知らないシアからしたら何者かに捕まっているか、死んでいると思ってしまうだろう。

 

「出て行ったとしても、私たちにとってはかけがえのない家族なんです。でも、きっともう」

「家族だっていうなら信じてやれよ。希望があるって考えるだけで、何とかなるって思えんだぞ」

 

 シアはハジメの言葉に黙ってしまうが、すぐに遠くから咆哮のようなものが聞こえた。

 

「ッ! 魔物の声! 父様たちです!」

「わかってる、飛ばすぞ」

 

 ユキはアクセルを踏み込み、一気にスピードを上げる。同時に、いつでも飛び出せるようにハジメはドンナーを構える。

 それから約二分、飛竜のような魔物ハイベリアに今まさに襲われようとしているハウリア族のもとにたどり着いた。

 

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