ありふれない怪物は、やがて英雄へ   作:シロマダラ

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お待たせしました。
第十八話です。


第十八話 越える一線

 近づいてくるユキたちに、まだ兎人族とハイベリアは気付いていない。

 

 ならば先手必勝。ハジメの銃撃がハイベリアの頭部を打ち抜き、悲鳴とともにハイベリアは今まさに喰らおうとした兎人族の脇へ崩れ落ちる。

 呆然とする兎人族たちを後目に、先行したハジメがハイベリアの群れへ飛び込み蹂躙する。同時、魔道四輪が兎人族をハイベリアから守るように停車し、今度はユキがハイベリアの群れに切り込む。

 

「い、いったいなにが?」

 

 再び家族を失おうという瞬間、ハイベリアが突然倒れ謎の(ハジメ)や謎の物体(魔道四輪)やらと急展開に頭が追い付かない。それこそ、上空を飛び交うハイベリアが仲間の死に咆哮しても、そのことにも気が付かないほどだ。

 自分たちに襲い掛かっていたハイベリアが次々と倒されていく様を呆然と眺めていると、目の前の魔道四輪から今朝がた姿を消した仲間が飛び出してきた。

 

「みんな~助けを呼んできましたよ~」

『シア!?』

「シア、飛び出さない」

 

 共に金髪の少女が出てくるが、それよりもシアが生きていたことが嬉しく、シアに兎人族が集まる。

 

「シア! 無事だったのか!」

「父様!」

 

 兎人族たちの中から初老の男性が真っ先に飛び出してくる。どうやらシアの父親のようだが、現状では不用心としか言いようがない。

 一人飛び出してきたシアの父親を狙ってハイベリアが急降下してくるが―――

 

「いきなり飛び出るな、危険だろうが」

 

 ユキによって首と翼が胴体から切り離される。すぐに残りのハイベリアに向かうもののすぐの片が付き、ハジメと共に兎人族のもとに向かうと、シアと話は終わったようでユキたちの方へ向き直る。

 

「ユキ殿とハジメ殿、でよろしいでしょうか。私はカム、ハウリア族の長です。此度はありがとうございました、シアのみならず我々まで助けていただいて。しかも脱出まで助力してくださるとか…」

 

 カムと名乗った兎人族の族長が深々と頭を下げ、続くように残りの兎人族も頭を下げる。

 

「そういう契約だからな。君たちを助ける代わりに樹海の案内をしてもらう、それがシアとつけた条件だ。聞いているな?」

 

 そこからは予定調和の如く話が進んだ。

 ユキたちは家族(シア)を助けてくれた。ならばそのお礼はしなければならないと、むしろ進んで案内役を一族総出で買って出た。

 

 こうして、シアからの救援による兎人族の救出劇は一旦幕を閉じた。

 四人から一気に四十六人に増えた一行は、とりあえずライセン大峡谷の出口を目指し歩を進めた。

 

 

 


 

 

 

 道中、兎人族を狙って幾度か魔物に襲われるものの、次の瞬間にはハジメの銃撃によって撃ち落とされていく。試し斬りとばかりにユキが斬り込むこともあったが、当然として一匹たりとも生き残った魔物はいなかった。

 

 そうしている間に、ようやくライセン大峡谷から脱出することが出来る階段が見えてきた。

 

「帝国兵はまだいるでしょうか?」

「どうだろうな、流石に全滅したと思って帰ったんじゃないか」

 

 シアの不安な声にハジメは気だるげに返す。

 

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……ハジメさんやユキさんは……どうするのですか?」

「? どうするって何が?」

「当然、斬るが?」

 

 ハジメはピントきていないようだったが、ユキは一切の迷い無く斬ると言った。

 

「え? で、ですが、」

「あ~なるほど。人間、というより同族を相手にどうすんのかってことか」

 

 その返答はさすがに予想外だったようで、シアも驚きを隠せず、ようやくどういう意図の質問なのかハジメも気が付いた。

 

「俺たちが帝国兵をどうするのか、未来視でもう見てるんだろ?」

「はい、帝国兵とお二人が相対して…」

「分かってるじゃないか。問題ない、これでも割り切ってるからな」

 

 帝国からハウリアを護る以上、ユキたちは帝国に、人間族に敵対すると認識されてもおかしくない。

 ()()()()()

 

「敵だから、生きるために、或いはあいつが気に入らないから。大義名分なんて極論その程度だ。だから同族でも戦争をする。

 つまりはそういうことだ。()()()()()()()。それだけだ」

「な、なるほど」

 

 そういう話をしながら階段を登りきると―――

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ユキたちを見るなり驚いた表情を見せた。

 だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。特に女性の兎人族には下卑た視線を向けている。

 

「――ハジメ、いいな?」

「ああ、大丈夫だ」

 

 短く、小声で行われたやり取り。それは、()()()()()()()()()()()ということ。ユキはともかく、ハジメは人を殺したことなどない。とはいえ、これから旅をするには不殺を貫くことは不可能だ。

 だが決断はすでに済ませた、だからあとは一線を越えるだけ。

 

「あぁ? お前ら誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」

「ああ、人間族だ」

「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

「断る」

「……今、何て言った?」

「断ると言った。彼ら兎人族の身は俺たちが保証している。それに、仮に奴隷として扱うにしても、所有権は俺たちにある。諦めて国に帰るといい。ああそれとも、力の差が理解できないほど脳が空っぽなのか、ヘルジャー帝国の帝国兵(ぐんじん)様は」

 

 容赦ないユキの言葉(あおり)に小隊長の額に青筋が浮かぶ。が、後ろで立っているユエの姿を見たとたんに、再び下卑た表情になる。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇらが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇらの四肢を切り落t―――」

 

 話の途中だったが、破裂音ともに小隊長の頭部が消し飛び、残った小隊長の体が後ろに倒れる。

 それを皮切りにユキも帝国兵の後方へ一気に斬りかかる。さすが訓練された帝国兵と言ったところか、次々に武器を構え後衛へ指示を出すが、もう遅い。

 

「て、てめえら。こんなことして分かってんのか! 俺たちは―――」

「黙れ」

 

 帝国兵が何かを言おうとしたが、ユキの一刀により首と胴体が斬り離される。

 

「己の我欲を満たすことしか真がない蛆虫が」

「貴様ら風情が帝国兵(ぐんじん)を名乗るなど烏滸がましい」

「消えろ、いや死ね、盗賊(バンデット)。惨めに泣き叫びながら朽ち果てろ」

 

 時間にして十数秒、三十人いた帝国兵は一人を残して肉塊へと姿を変えていた。

 残った一人も戦意などすでになく、恐怖で泣きじゃくりながら尻もちをついて後ろに下がり懇願するばかりだった。

 

「た、頼む! 殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」

「状況を理解できていないようだな。

 他の兎人族はどうなった? 結構な数が居たはずだ……全部、帝国に移送済みか?」

「は、話せば殺さな――ぎゃ」

「意見できる立場じゃないと言ったばかりだろうが。本当に脳が空のようだな」

 

 ユキが帝国兵の頭部を踏みつけ徐々に力を加える。帝国兵の悲鳴と共に、何かにひびが入るような音が鳴り響く。

 その状況にハジメですら息を飲み誰もが言葉を発しない中、悲鳴とひび割れる音だけがリアルに響いていた。

 

「た、多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから……」

 

 ()()()()()()。つまり老人や売れそうにない兎人族は殺した、ということで…

 

「…屑が」

 

 さらに足に力を入れ、ひび割れる音が加速する。

 

「た、助けてくれ! な、何でも話す! 帝国のことだって話す! だ、だから、」

「今、俺たちの情報が帝国に知れ渡るのはまずいんだ。死人に口無し、目撃者は少ない方がいい。今なら魔物に襲われて全滅した、そういうことになるだろう。

 まあ、ようするにさ―――」

 

「―――顔見られたから、死んでくれ」

 

 そのまま柘榴の如く頭部を踏み潰す。ハウリアから悲鳴が上がるがユキは微動だにしない。

 そのときのユキの表情を見たハジメ曰く、感情のない能面のようだったという。

 




今回は話の途中でドパンしましたが、うちの子のおかげで多少は会話の余地があるハジメさんです。


あと、閣下に勝てるとか主人公強すぎ! 神祖ですら閣下には勝てないらしいのに、と言われるんですが、あくまで自己解釈ですけど


神祖
 千種類のゲームを攻略してきた初見プレイゲーマー

閣下
 一種類のゲーム一週目で最強になった初見プレイゲーマー

ユキ
 一種類のゲーム無限周回したため攻略法知ってるゲーマー


みたいな認識です。一応閣下攻略法を知ってるから勝てるだけです。初見で神祖と戦ったら経験の差で負けます。
まあ、閣下に勝てる時点で十分怪物なんですけど…
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