ありふれない怪物は、やがて英雄へ   作:シロマダラ

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早二ヶ月…忙しいし、PC壊れるしで遅くなりました。
いや、迷宮ボス戦は既に出来上がってるんですけど…

せめて年内中にって急いだら、最後当たりが雑になっちゃいました。最後に出した眼鏡に免じて許してください。

ではでは、第二十一話です。


第二十一話 ブルックの町

 魔道四輪を走らせていると、やがて周囲を柵や堀で囲まれた町、ブルックの町が見えてきた。街道に面した場所に木製の門があり、数人の衛兵が立っている。衛兵が常駐しているあたりそれなりの規模ではあるらしく、充実した買い物ができるだろう。

 それなりの距離に近づいたら徒歩に切り替える。さすがに魔道四輪で近づけば、騒ぎどころか警戒から通報まですぐに行われてしまうはずだ。

 

「ハジメ、ステータスプレートは隠蔽したか?」

「おう、大丈夫なはずだ」

 

 道中で最低限の準備は済ませてはある。ステータスプレートには隠蔽機能が付いている。冒険者などにとって、戦闘力の露呈はまず避けたい事態だからだ。加えて、ユキとハジメのステータスは化物の一言で片付く状態ではあるし、ユキはさらに天職:神子、レベル及び技能一部バグ表示など、壊れたと言い訳するには厳しいだろう。ユエとシアの二人は紛失した、そもそも持っていないということにすればいい。

 

 もう一つの準備としてシアには位置特定機能付きの黒い首輪を付けてもらっている。人里における亜人族という立場から、誰かの所有権を主張するためだ。なお、その所有者はハジメである。シアは、特に愛玩用奴隷として知られている兎人族、さらに十人中十人は振り向くであろう高い容姿という、人攫い等に狙われ続けることは間違いない要素の塊なのだ。

 

 異世界人二人 + 滅びたはずの吸血姫 + 魔力持ち兎人族という異端しかいない一行はようやく門の前にたどり着く。門番に隠蔽済みステータスプレートを見せて、一行は遂にブルックの町へ入ることができた。ユキの天職を見たときに一悶着あったものの、教会を敵に回すかもしれないと思ったのか黙認してくれた。

 まずは冒険者ギルドへ行くことにした。門番が言うにはそこで町の地図をもらえ、一行の目的でもある換金も行えるらしい。

 

 ギルドに辿り着いて中に入ると、当然だが一気に注目を浴びた。見慣れない恰好をした連中だと思っただろうが、女性二人を見たとたんに男たちの目線は釘付けとなった。中には感心する者や、ボーっと見惚れる者、女冒険者に殴られている者もいた。そのまま視線を釘付けにしたまま受付に向かう。受付のカウンターには恰幅のいいおばちゃん受付嬢がいた。

 

「おやおや、ずいぶんな色男たちじゃないか。カップル同志のパーティーかい?」

「残念だけど俺と三人だよ」

「おや、そっちが両手に花かい。愛想を着かされないようしなさいよ」

「……肝に銘じておく」

 

 この説教じみた光景はこのギルド恒例なのか、見ていた冒険者たちからも生暖かい目線を向けられた。いわゆる、母は強しというやつなのだろうか。この肝っ玉の強さには屈強な冒険者たちでも敵わないのだろう。

 

「さて改めて、ようこそ冒険者ギルドブルック支部へ。今日はどんな用件だい?」

「ここで町の地図がもらえるって聞いてね。あと魔物の素材の買取を」

「じゃあまずは素材の買取だね。ステータスプレートを出してくれるかい?」

「ステータスプレートか?」

「ん? なんだい、あんたら冒険者じゃないのかい? 買取ならステータスプレートの提示は必要ないけど。冒険者だと確認できれば買取価格が一割増になるんだよ」

 

 他にもギルドと提携している店舗では割引になったり、馬車を使用する時もランクによっては無料になるなどの特典もあるらしい。

 

「なるほど、それじゃあ一緒に登録してもらえないか? 登録料は買取額から引いてくれ。あいにく四人して文無しでさ」

「可愛い子が二人もいて文無しなんてなにやってるんだい。ちゃんと上乗せしておくから、不自由させるんじゃないよ?」

 

 ユキとハジメの二人はステータスプレートを差し出した。冒険者はランク分けで、青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の九ランクに分かれている。ちなみにアヤメ、シェリア、ディルグの三人は金ランク、つまり最高ランクということになる。黒ランクが非戦闘系天職の上限ランクであり、天職が預言師であるシェリアは黒ランクにとどまるはずなのだが、ヘルジャー帝国からの要請もあり例外的に金ランクになっている。実力主義国家である以上、黒ランク以下の実力しかないと認識されては困るという考えがあるのだろう。

 戻ってきたステータスプレートの天職欄の隣に職業欄ができており、そこに冒険者の文字と青ランクを示すマークがついていた。

 

「男なら黒を目指しなよ。お嬢ちゃんたちにカッコ悪いところ見せないようにね。そっちのお兄ちゃんは…いや、後は買取だね」

「ああ、ここでできるのか?」

「ああ。あたしは査定資格を持ってるからね。そこに素材を出してちょうだい」

 

 ユキの天職を見たのか一瞬言いよどむが、ただでさえ冒険者ではない文無し四人なのだ。何か事情があるのだろうと話を進めた。ハジメがあらかじめ袋に入れておいた樹海の魔物の素材をトレーに置いて提出すると、ひどく驚いて慎重に査定を始めた。

 

「まさかこれは…。樹海の魔物だね?」

「やっぱり珍しいか?」

「そりゃあねぇ。樹海じゃ人間族は感覚を狂わされるし、迷ったら出てこられない。ハイリスクを冒してまで入る人はいないだろうね」

 

 そう言いチラリとシアを見た。亜人族が案内すれば少なくとも樹海で迷う可能性は小さくなる。その亜人族であるシアが仲間にいるので迷うことなく探索できたのだろうと推察していた。

 

 そのまま素材の査定が終わり買取も終わった。四十八万七千ルタ、額としては結構なものだ。

 次いで町の地図を貰った。簡易な地図だと聞いていたはずだが、有料でもおかしくないレベルの地図。書士の天職だから落書き程度ということらしいが、はっきり言って辺境の町にいる受付嬢じゃない。

 

 ギルドを出たユキたちは、受付嬢(キャサリンというらしい)におすすめされた〝マサカの宿〟という宿に向かった。料理がおいしい、防犯もしっかりしてる、風呂にも入れるなど。準高級宿といった具合だが、金額面は問題はない。

 

 宿に着いた一行の部屋割りは、一悶着(主にユエシアの暴走と看板娘の妄想)あったが2:2の男女分けになった。

 この一日は非常に疲れたと言えただろう。ピー音が横行していた様子を多数の宿泊客が見ていたからか、夕飯で食堂に向かった数時間後でも全員いるその時の宿泊客からの視線、ユキのことなど知らないとばかりに男女で分けているのに風呂に突撃してくる女二人+覗き一人、寝る時でも部屋に突撃してくる女子二人(ユキが部屋に戻らせた)。

 

 翌日の男二人の精神的疲れは酷かった。少なくともハジメは一日部屋で作業しようと思うほどだ。

 というわけで、この日はハジメが宿で作業、残り三人は買い出し兼情報収集をすることになった。

 

 なお、看板娘が昨晩の覗きによって妄想が暴走して腐ったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 町に出た三人はユキが食料と道具メイン、ユエとシアが衣類と他雑貨メインで分かれた。

 朝早い方だったからか混雑していたものの、早々と買い出しを済ませたユキはそこそこ賑わっている酒場で情報収集することにした。古今東西、酒場や娼館というのは情報が集まる場所であり、異世界だろうとそれは変わらない。

 

「いらっしゃいませー。うわ、なかなかの色男」

「あら? マサカさんのところで噂になった男性のお一人ではありませんか?」

「ああ、あの酒池肉林の限りを尽くした挙句、ソーナちゃんを腐女子に墜としたっていう」

「なるほど昨晩では足りなかったということですね。でしたら、双子丼スペシャルセットはいかがですか」

「オプションで生クリームと蜂蜜のトッピングもどうですか。かしこまりましたー。にしし」

 

 酒場に入った途端に放たれた金髪の双子ウェイトレスによるマシンガントーク。不穏極まりない話が含まれていたような気がしないでもないが、似たような体験をしたことがあるためスルーする。

 

「とりあえずおすすめのお酒を。あとお酒に合うつまみを少々」

 

 カウンターに座る。お酒とつまみを食べながらユキは周囲の会話に耳を傾け、

 

「隣、いいかね?」

 

 と、ユキの隣に男が座ってきた。カウンター席はまだ空いているし、わざわざユキの隣に座ってきたのだから目的は明確だろう。ユキはチラリと男を見て納得した。声で誰かは分かっていたが、自分と同じ黒い軍服、整った容姿に眼鏡を掛けたその姿はまさしく自分の元同僚だ。

 

「偽物、ではないな。トータス(こっち)にいるということは、敗死でもしたのか」

「ああ。私は貴方が知っている人間だ。まあ、一種の逆襲を受けてしまってね」

「珍しい。お前ほど完璧な奴が計画を失敗するのか」

「私は凡庸な男だからな。閣下や怪物(あなた)なら、逆襲すらも覆すだろう」

 

 男もユキと同じ注文して、届いたつまみを食べながら二人で乾杯した。普通なら昼間から酒を飲む酔っ払いに見えてしまうだろうが、粗野な冒険者などではなく容姿の整った男軍人二人が酒を飲むその様子は一種の神秘性を秘めているのか、周りは一線引いて誰も近づこうともしなかった。

 当の二人はその周りの反応など気にしていない。

 

「こっちでも極楽浄土(エリュシオン)を目指すのか?」

「ゆくゆくは。だが、まずは天を墜とさなければ進まぬだろう」

 

 皮肉だな、とユキは思った。他者に天翔を求めているのに、まずは天墜しなければ始まらないというのだから。とはいえ、その天墜の算段もある程度ついてはいるのだろう。この男の優秀さは身をもって体験済みだし、おそらくその算段に自分たちも含まれているはずだ。ならばそれを利用させてもらうとしよう。

 

「それなら、何か有力な情報はないか? 情報の精度はともかく、こっちが何を知りたいのかは分かるだろ」

「そうだな…強欲竜団(ファブニル)という傭兵団を知っているかね? その首魁が魔人族側に着いている」

強欲竜団(ファブニル)? というと、ファブニル・ダインスレイフだったか。英雄を目の敵にしている奴が…勇者か」

「いや、あなたのようだ。怪物と英雄は表裏一体の存在だ。閣下が英雄(ジークフリート)なら、さしずめ貴方は英雄(シグルド)と言ったところか」

「だったらお前は策略家(レギン)か? 竜の心臓を喰らった覚えなどはないんだけどな。まあ遭遇すれば俺が狙われる、ということを覚えておけばいいだろ」

「ああ、あともう一つ。魔人族領にあるシュネー雪原、そこの氷結洞窟は大迷宮だ。今私が知る限りで攻略者は二人、一人は分かるだろう」

「邪竜、か。宝は?」

「さて、そこまでは…だが破壊されているということはないだろう」

 

 それならまだ望みはある。宝に細工をしていないかが気になるところだが、魔人族側に着いている現状では心配ないだろう。

 他にも噂を含め色々と聞いた。王国最強の王女が勇者たちに合流した、勇者たちはオルクス大迷宮の攻略を続けている、どこかの町周辺で竜を見たなどなど。

 

「私はそろそろ行くとしよう。では、怪物(テュポエウス)。またどこかで」

「ああ、またな審判者(ラダマンティス)。敵にならないことを祈るよ」

 

 これが異世界で初の怪物(テュポエウス)審判者(ラダマンティス)の邂逅。情報としては十分すぎるほどだ。審判者(ラダマンティス)が敵になるか味方になるか、そのどちらでもないか、今はまだ分からないが警戒しておくに越したことはないだろう。

 

 酒場を出ると何やら内股気味になっている男が多いのが気になったが、特に問題なく宿に戻った。丁度ユエとシアも戻ったようで四人で合流した後、宿のチェックアウトを済ませて再び外に出た。

 

 目指すはライセン大峡谷、七大迷宮の一つが眠るとされている場所だ。

 

 

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