邪竜おじさんの言うことは本当だったんだなって思いました
気が付いたら赤バーになってました!
ありがとうございます!
二十四話です。
騎士甲冑改め、騎士ゴーレムの動きは二メートル程度と言う巨体に似合わず俊敏。それも約五十体が一斉に動く様は、ユキからすればカンタベリー聖教皇国の
だが所詮は
「――シッ!」
一振りで首を斬り飛ばす、胴を断つ。ユキの力は何も
加えて仲間が三人もいるのだ。故に苦戦などもっての外、赤子の手をひねるかのように騎士ゴーレムを相手に立ち回る。
だからだろうか。
さながら実験のように、騎士ゴーレムの反応を確認しながらユキは別の手法で騎士ゴーレムを両断する。これは死に戻りによって同じ人生を繰り返してきた弊害だった。繰り返すからこそ様々な選択を試し最適な方法を取ろうとする。新西暦では失敗すれば死に戻りするだけだったからこそやっていたので、トータスに召喚されてからは失敗しても問題なような余裕のある時にしかやらないが。
そして都合十体ほど破壊したときに、一部の騎士ゴーレムの様子が変わった。
「…なんだ?」
十体の騎士ゴーレムが一瞬だけ停止すると、さらに俊敏になって動き出した。どこか機械らしさがあった先ほどまでの動きと違い、今度はフェイントを織り交ぜたりした人間らしさを感じさせた。それこそ、
ハジメたちの方に迫る騎士ゴーレムは変わった様子が見られない。つまりユキに迫っている騎士ゴーレムの動きだけが変わっているということだ。
加えて、一向に騎士ゴーレムが減っているように感じない。四人が倒した数、戦っている数を合わせれば、優に五十は超えるはず。
これはさすがにおかしいと、ハジメ達に合流する。
「ユキ、こいつら核を持ってねぇ!」
「なるほど、それに再生すると」
さらに聞くとこの騎士ゴーレムは、感応石という鉱石で出来ており遠隔操作されているのだという。ということは、動きが変わった騎士ゴーレムは操縦者が変わったということだろうか。
見ると破壊された騎士ゴーレムが壊れた部分を繋ぎ合わせて復活している。床が所々窪んでいるのは騎士ゴーレムの再生に使ったからなのだろう。つまり終わりが見えない状況であり、いくら余裕があるとはいえこのままではジリ貧だ。ならだ取る選択肢は一つ。
「「強行突破!」」
奥の祭壇の先、扉の方へ向かう。祭壇の方、前方への道をユキが切り拓き、後方の追ってをハジメが手榴弾で薙ぎ払う。
ユキは扉に最初に到達したため一足先に扉を調べる。
「…開く?」
「いや、ダメだな。封印されてる。おそらく水晶をこの窪みに嵌めればいいと思うが…」
「…ユキはハジメの方に行って。ここは私がやる」
「すまない。任せる」
扉の開錠をユエに任せて、ユキはハジメとシアの元に合流した。
「ユエが扉を開けるまで食い止める」
「おう。錬成じゃ魔力が馬鹿にならなそうだしな」
「はい! ここから先は通しません!」
と、防衛戦が始まったもののやはりそれなりに余裕はある。トラップを警戒して手榴弾などは使っていないが、それでも雑談しながら対処している。
というのも、先の動きが変わった十体の騎士ゴーレムがユキを執拗に狙ってくるからだ。騎士ゴーレムを引き連れて階段を離れる。
やはりこの十体の動きは無駄に良い。スリーマンセル又はツーマンセルでユキに迫ってくる。唯一の救いは剣と盾しか持っていないことか。
「まずは、一組!」
一体の両腕を断ち切り盾にして、一体の胴を横薙ぎ、一体を唐竹割りにて両断する。
これで残り七体、だが時間を掛ければ三体も復活するだろう。
(これは、面倒な)
そうして相手をすること数分。
「開いたぞ!」
「了、解!」
太刀を突き刺した騎士ゴーレムを足場に、祭壇の方へ跳躍する。着地点は階段の中断付近。着地と同時に階段の騎士ゴーレムを薙ぎ払いつつ、開いている扉へ向かう。
ハジメが置き土産と手榴弾を数個放り投げ、二人同時に部屋の奥へ飛び込む。騎士ゴーレムが追ってくるも既に遅い。手榴弾の爆発による衝撃にたたらを踏んで止まり、その隙にシアとユエが扉を閉めた。
部屋は特に装飾も何もない、四角い部屋だった。よく観察してみても、特に手掛かりになるようなものもない。
「これは…これ見よがしに封印してたけど、特に何もない部屋でしたって感じか?」
「…あの性格ならあり得る」
「うぅ、ミレディめぇ。何処までもバカにしてぇ!」
「それにしては今入ってきた扉しかないが…閉じ込められたか?」
すると、いつもの仕掛けが作動する音が鳴り、部屋自体が揺れると同時に横向きのGが襲い掛かった。
「っ!? 何だ!? この部屋自体が移動してるのか!?」
「……そうみたッ!?」
「うきゃ!?」
「うおっ!?」
今度は真上からGが掛かる。次は横に、下に、斜めに、回転と、何度も方向転換しながら約四十秒ほど移動して急停止した。
「止まった、な…ユエ、大丈夫か」
「…ん。問題ない」
「ハ、ハジメさん…私は…」
「とりあえずシアは喋るんじゃない。ハジメに不名誉なあだ名をつけられるぞ」
「うぅ、はい…うっぷ」
ハジメはユエを抱えてスパイクで、ユキは体勢を低く膝をついて移動に耐えていたが、シアは部屋を転がり続けていたので酔っていた。なのでシアが落ち着くのを待ちつつ、部屋を再度観察する。が、やはり変化がない。
「ということは、やっぱりあの扉か…」
「さて、鬼が出るか蛇が出るか…」
「…ん。何が出てもハジメは守る。ユキと…あとシアも」
「…聞こえてますよぉ…うっぷ」
「頼りにしてるぞ。ハジメのついでに守ってくれ」
「…ん」
そして扉を開け出ると――
「……何か、見覚えないかこの部屋?」
「……ある。あの石板とか…」
「……最初の部屋、じゃないですか?」
――そう。回転扉から入った最初の部屋である。
その証拠に、石板にある挑発文も見たことがあるものだ。
〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟
〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟
〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟
「「「……」」」
ハジメ達の顔から表情がストンと抜け落ちる。能面という言葉がピッタリと当てはまる表情だ。さすがユキでさえ頬が引き攣っている。三人とも、微動だにせず無言で文字を見つめている。すると、更に文字が浮き出始めた。
〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟
〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟
〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ!〟
〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟
〝ひょっとして作っちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー〟
「は、ははは」
「フフフフ」
「フヒ、フヒヒヒ」
三人から壊れた笑いが漏れ、次の瞬間迷宮を震わす大絶叫が響き渡ることは言うまでもなかった。
一方ユキはハジメ達が読んだ挑発文とは別の、
〝申し訳ございません。あなた方には初めから攻略していただきます〟
〝文句は姉さまにどうぞ……最奥でお待ちしています〟
〝…怪物なら…できますよね、先輩?〟
「………ああ。なるほど。そういうことかシスティ・ライセン」
明らかに
そうか、システィ・ライセンは
ならばよかろうさ。
怪物を倒すのはいつだって英雄だと決まっているのだから。
だからこそ、
「勝つのは、俺だ」
そして、迷宮攻略冒頭に戻ることになる。
だが、まだこの時は、■■■■■など誰も想像もしていなかった。