「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」
「台無しです姉さま。システィ・ライセンです。お見知りおきを」
「「「…は?」」」
「はぁ…やっぱりか…」
ユキ達を出迎えたのは二体のゴーレムと、その一方の巨大な騎士ゴーレムのふざけた挨拶だった。
ハジメ達三人は口を開けてポカンと呆け、ユキはため息を吐いて呆れていた。
「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者はさあ……もっと常識的になりたまえよ」
やれやれだと言うように無駄に人間臭い動きで肩を竦めている。
この二体のゴーレムはそれぞれミレディ・ライセン、システィ・ライセンと名乗った。つまりは
「これは失礼した、ミス・ミレディ。
既に貴方は故人だと聞いていたし、生きていたとしてもゴーレムになっているとは思っていなかったが故、どうかご容赦していただきたい」
「私はユキ・ロスリック。元軍事帝国アドラー…と、過去の肩書は必要ないか。
貴方達に〝怪物〟などと呼ばれている、始まりの
「お、おう。まさかの紳士的な返し方をされてミレディさんもびっくりしちゃった…
「姉さまの言う通りです。それに私と貴方は同じ
「…なるほど。それでは遠慮なく」
いまだ呆けている三人を置いて、ユキはライセン姉妹と相対した。
肉体を捨てゴーレムの身体を得ているとは思っていなかったが、アドラーでも人造惑星という似たような者がいることを考えてみれば、まだ想定の範囲内といえるかもしれない。
「…おい待てよ。さっきの反応から察するが、ユキはミレディが生きてるのを知ってたのか?」
「生きているという表現が正しいのかは怪しいが、少なくとも最奥にいるのは察していた。システィ・ライセンが最奥にいる、それならその姉のミレディがいると思うのは自然だろう?」
「…まあそれは分かるが、なんで俺等に教えなかったんだよ」
「別に教えても良かったが…あの
「「「……」」」
思わず三人は黙って眼を逸らした。
自分たちを散々煽り散らかしたミレディ自身が生きていると知れば一体どうなるか。明確な対象が生きているからこそモチベーションが上がるかもしれないが、少なくともストレスは今以上になっただろう。邂逅早々に暴走しても不思議じゃない。
「ええ~まさかミレディちゃんを案じてくれたの~? やっさし~」
「寝言は寝て言えよ。俺もそれなりにキレてるんだよ。むしろ
「ええ本当に、姉さまには振り回されて…はあ…。姉さまは自業自得です、それなりには反省してください」
「ええ~シーちゃんは薄情だな~。んん~まあいいや。それで、
攻略中の様子を見てたけど、いろんな見たことないアーティファクトを持ってるよね? ということはオーちゃんの迷宮を攻略して、生成魔法で作ったってことだと思うんだけど、それならあの
まあ
何のために此処に来て、何のために神代魔法を求める?」
ミレディが纏う空気が切り替わる。嘘偽りは一切認めないと、ふざけた様子は一切消えて問いかける。それに続くようにシスティもまた纏う気配の重圧が増す。こちらが本当の彼女達なのだろう。
「元の世界に帰りたい。言っちまえばそれが全てだ。狂った神なんざ知ったことじゃない。だがそれと同じくらいに、俺はユキの役に立ちたい。無能だと罵られてた俺に寄り添ってくれた無二の
「…私は、ハジメと一緒にいる…」
「わ、私も、ハジメさんと一緒にいたいです!」
三人の答えを聞いたミレディは何かに納得したのか、小さく頷いた。
「そっか…よろしい、それでは戦争だ! 君たちが神代魔法を受け継ぐにふさわしいか、ここで見定めてやろう」
「私たちごときに勝てない様では、話になりませんから」
先の真剣な雰囲気が霧散して、再びふざけた様子でミレディが宣言した。
話は終わりだ、その力を示して見せろと言外に告げてくる。
「ハッ! 言ってくれるぜ」
「…ん」
「絶対殺るデス!」
「お望みなら見せてやるさ。怪物を打ち倒すのはいつだって英雄だ。お前たちに、
全員がそれぞれの武器を構え、両者の視線が火花を散らす。
そして、ライセン大迷宮の最終戦が始まった。
「死ね!」
初撃はハジメが放つオルカンの弾幕雨。全弾がミレディに直撃し、爆音と共に爆煙がミレディの前身を包み込む。
「やりましたか!?」
「……シア、それはフラグ」
ユエの言う通り、当然この程度で終わるはずがなく、煙幕からシア目掛けてシスティが槍を構えながら突撃してきた。その切先はシアの眉間を狙っており、油断したシアはそのまま串刺しに――
「やらせるわけがないだろ」
――そこに割り込んだユキが槍を弾いて迎撃する。その妨害を読んだのか、弾かれた勢いのままもう片方の槍でユキを薙ぎ払う。それを仰け反って回避し、隣の浮遊ブロックにシスティを部分強化して蹴り飛ばす。
ほんの数秒の攻防、ユキの頬には一筋の赤い線が刻まれていた。システィの横薙ぎの際に、僅かに掠ってしまったらしい。
ユキとしては見誤ったつもりはなかったのだが、事実として回避しきれなかったということは、システィの槍術はユキの想像以上なのだろう。
するとシスティに続くように、ミレディは赤熱化した右腕で煙幕を払いながらをモーニングスターを
「おお、さすがだね~。まあこの程度は、軽く乗り越えてもらわないとね~」
ミレディは、オルカンの直撃で所々が砕けた右腕を近くの浮遊ブロックを使って修復する。飛ばされたシスティも既に立ち上がって槍を構えている。
「でもいったいどれだけ持つかな~? 総数五十体の復活するゴーレムに、私とシーちゃん。同時に捌けるかな~?」
浮いていた騎士ゴーレムたちが一斉に動き出した。突きの体制で構え、数体ずつ時間差で突撃してきた。ユエが水筒の水を圧縮した〝破断〟で、ハジメが宝物庫から取り出した別のアーティファクト、ガトリング砲:メツェライで騎士ゴーレムを無残な鉄屑へと変えていく。弾幕を抜けた騎士ゴーレムはユキが切り払う。
同時にシアは上からミレディへと突撃した。大きく振りかぶったドリュッケンを、咄嗟に横へと叩き付けた。
「ごめ~ん。ブロックもあったね~操作できるのはゴーレムだけじゃないからね~」
シアは横から浮遊ブロックが迫ってきていることに気付いたから、浮遊ブロックにドリュッケンを叩き付けたということだった。浮遊ブロックは砕けたが代わりに勢いを失って、明らかな隙を晒す。
悪びれた様子など一切出さず、空中のシアを燃え盛る右手で殴りつけた。
「ッ、ぁぁぁあああ!」
ドリュッケンに搭載された爆裂機能の爆発力で勢いをつけ、ミレディのヒートナックルを迎撃する。その威力は咄嗟の行動でもシア自身の身体強化を合わさって、騎士ゴーレム数体は軽く粉砕できるほど。
ただ、今回は相手が悪かった。
「
ヒートナックルとドリュッケンがすさまじい轟音を出しながら衝突した。激突による衝撃は近くの浮遊ブロックを吹き飛ばす。数秒程拮抗するが、やはり
「きゃああ!!」
シアが悲鳴を上げる。その先に浮遊ブロックはなく、そのまま落下するかというところで、横からユエが来翔を使って救出した。
「…くそッ、かなり強いな…」
「ああ、さすがは解放者というところか。――ッ!」
シアとユエの無事を確認して、ハジメとユキは改めて解放者という者達の強さを感じていた。先の騎士ゴーレムの波状攻撃、縫うようして作った一緒の隙を突けば浮遊ブロックやミレディ、システィの妨害が入る。
これまでは魔物を相手に戦ってきたために、いわば野生の本能を把握していれば対応できたが、今回は違う。明確な知性を持った
そこにシスティがユキに向かって突貫してきた。ユキは咄嗟に防御して鍔迫り合いに移行する。
「私を忘れないで下さい。 一曲いかが?」
「はッ! よろこん、で!」
ユキとシスティは、数ブロック離れた場所へ移動する。
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対ミレディは基本的に原作主人公達が相手するので、ほとんどスキップします。