ほとんど独自解釈で賛否両論が多いと思いますが、ご容赦ください。
西暦2578年――その年、世界は崩壊した。
有史以来最大となる空前絶後の災禍を前に、既存文明は一新された。
だがその転換期の裏側である一人の少年の、永く不可思議な物語が始まっていた。
西暦2005年――その年、一人の少年が忽然と姿を消した。
飛行機という密閉空間で忽然と姿を消した少年。後に現代最大の怪奇事件として語られる謎の飛行機事故。少年―天津悠姫は一体どこへ消えてしまったのか。
その原因こそが西暦2578年に発生した
西暦2575年――その年、世界は震撼した。
世界中が抱えるエネルギー不足。その問題を、極東の島国、日本が高位次元からのエネルギー抽出に成功。
その時代の裏側で、ある一人の少年が世界に現れた。その少年こそ天津悠姫。
高度に文明が発展したこの時代、国民として国が認知していない人間は限りなく少ない。それは
増えていく人口とエネルギー不足。
日本が高位次元から
様々な対策が行われる中、
プロジェクト・テオゴニア。
環境改竄装置《テオゴニア》を用いて地球を包み込むあらゆる穢れを浄化して、地球を新天地へ作り替えようという計画。
選ばれた
とはいえそう簡単に実行できるものではない。事実、この計画には克服しなければならない幾つかの問題あった。
一つはエネルギー。新たに発見されたエネルギー、
もう一つが高位次元と
だがそのための臨床実験を行おうと知れば、人権問題が壁となって立ちはだかる。
そのため一向して進まず、計画凍結の危機すら迫ったその時に、一筋の光が差し込まれた。
高位次元を生身で漂った為、
それが天津悠姫。未来の事象によって過去から現れた少年だった。
その身柄はすぐに取り抑えられた。
それはまるで肉塊に群がる飢えた猛獣のようで、鎖で繋がれ幽閉され闇の深奥へ封じ込められた。
彼が
心臓の鼓動が停止する。脳に送られる酸素が途絶え、この世界で唯一無二である悠姫はその生に幕を降ろす――――ことは無く、心臓は動き出し、脳は再び活性化し、悠姫は死の淵から掬い上げられた。
手足が切断される。まるで達磨となった悠姫は、芋虫のように地べたを這い回り――――数分後には切断された手足は元に戻り、悠姫はその二本の足で立っていた。
壁と壁に圧縮され血肉が潰される。目玉が飛び出て、内臓が口から逆流する。壁に染みる
死んでは生き返る。傷つけばすぐに治る。
ではどのように? 生き返る法則は? 斬殺撲殺刺殺銃殺轢殺、結果の違いは? 薬物の効力は? などなどと…
悠姫は幼く、そして無力。故に一切の抵抗もできず
そこで悠姫の扱いは主に三つに分離した。
一つはこのまま殺してしまおう。未知の塊である悠姫の存在は、様々な面で爆弾となりえるのだと。
もう一つはこのまま標本にしよう。悠姫の存在はまさしく神の奇跡。その御加護が失せたとしても、唯一無二であることに違いはないと。
そして三つ目であり、結果として選ばれた
仮にも高位次元と繋がっているのだから、
そして肉は削がれ骨が断たれ、シリンダーに浮かぶ脳髄のみとなった、人だった
これが、天津悠姫の成れの果て。新たな星の生み出すための生贄として捧げられた少年の末路だった。
それはテオゴニアの制御機構。いくらエネルギーを確保しようとも、制御できなければ意味がない。当初はIAによる制御を行おうとしていたが、エネルギー源が生体ユニットになったことで感情による不安定が問題視されていた。それは奇しくも後の新時代に誕生する■■■と似たようで、即ち
だが、まだ
それはプロジェクトに参加していた研究員の女性。プロジェクトの研究員で唯一、天津悠姫を人として接していたからこそなのか、
二つの生体ユニット、個体名称:カオス、ガイアの
そして同年、世界の崩壊が始まった。別の
ここである複数の要因が重なることで、このテオゴニアのみが別の動きをした。
まず一つとして、天津悠姫という少年は西暦2005年から西暦2575年に、
そしてもう一つ、天津悠姫の存在自体が、どの時間でも
「未来(西暦2578年)の事象により過去(西暦2005年)から現在(西暦2575年)に飛ばされた」
というのが天津悠姫の経歴。それはつまり現在過去未来すべての時間軸の影響を受け、なおかつこの
卵が先か鶏が先か、という方が的確だろうか、これらがバグとして蓄積された結果、全ての時間軸で
その結果、
そして時は流れ新西暦1005年。軍事帝国アドラー、帝都の
その名前は天津悠姫。西暦2005年からここに飛ばされたという
少年はとても特殊な存在だった。なぜなら少年が死亡した瞬間に、この時代に少年が現れた時まで
それはまるでゲームのようで、Aの道を進めば
死亡して道を覚え、死亡して道を覚え、それを繰り返していくうちに悠姫の心は同時に死んでいった。この地獄の終わりは分からない、だというのに自分は死を繰り返す、死んで戻る。
そして
「そこまでだ、悪党ども」
――光明が差す、とはこのことなのだろうか。歳は悠姫とは離れていないだろう、金髪の少年がそこに立っていた。その姿に、既に死んでしまったはずの悠姫の心にある感情が満ちた。
(すごい、かっこいい…僕も、
希望か、憧れか、少なくともこの天津悠姫の人生にとって最大の
この時の少年こそ、クリストファー・ヴァルゼライド。正史において軍事帝国アドラー第三十七代総統閣下の地位に着き、旧暦の遺物と聖戦を約し逆襲撃に敗れる男でだった。
そう、
時は戻り、前を進むことを決めた悠姫。そこから数回の死に戻りでクリストファー・ヴァルゼライドの名前と、帝国軍へ入隊するという目的を知りその手助けをすることを決めた。というのも、決して彼の道に無関係ではないという言い知れぬ何かを感じたからでもある。
そこからの悠姫の行動は合理的ではあるが、人としては常軌を逸していた。
無限に人生を繰り返すというこの状況は、
合計ですでに約千年分は体験しているであろう悠姫だが不思議と衰えはなく、やがてユキ・ロスリックと名前を変え、ヴァルゼライドともう一人の新しい親友、アルバート・ロデオンと出会う。三人はそれぞれユキ、クリス、アルと呼ぶほど仲が良くなり、そして三人は帝国軍に入隊した。
入隊後、軍学校でも三人の関係は変わらず、知識という点においては明らかに群を抜くユキ、あらゆる不条理を乗り越え続けるヴァルゼライド、その異常な二人についていけるアルバートは様々な意味で目立った。軍学校卒業後に配備された東部戦線での新しい仲間、天才のギルベルト・ハーヴェスが加わったことで勢いはさらに増した。
傭兵団「神凪の虹」の制圧、東部に深く根付いていた巨大麻薬組織「ニルヴァーナ」の壊滅、それに伴う前線の押し上げなど、少なくとも当時の権力層に目を付けられる程度にはすさまじかった。
やがて東部戦線から帝都へ移され、所謂飼い殺し状態になったとき、ユキとヴァルゼライドはそれぞれ己の人生を変える者と出会うことになった。
旧暦日本の遺物、ガイアとカグツチ。
このガイアとの出会いが、ユキ・ロスリックを未来を決定づけた。
ガイアによって語られたのはユキ・ロスリックとクリストファー・ヴァルゼライドを結んでいる因果律。
『正史に存在しないユキ・ロスリックという異物が紛れていることで、クリストファー・ヴァルゼライドは道半ばで倒れることになる』
ありえない、と思いながらも納得してしまった。知識を付けるために奮闘していた約千年間、ニュースなどにおいて
ただし、不条理を覆すヴァルゼライドの
ではなぜユキとヴァルゼライドの因果律などが構築されているのか。それはガイアのみが知ることであり、それが語られることはなかった。しかし重要なのは過程ではなく、この現状。自分の存在が英雄の進軍を妨げるというならば是非もなし。この歪みを正して世界をあるべき形に戻してみせよう。
そして計画されたのが
それも、ただユキが敗れるだけでは何の意味もない。文字通り、因果律を断ち切る何かが必要だった。そうして、幾度と
この無限に近しい死に戻りを二人の少女が見守っていたことも知らず、ユキ・ロスリック、天津悠姫は新西暦にて息を引き取った。
・
ユキとガイアが計画した戦いであり、新西暦におけるユキの最終目的。
「ヴァルゼライドを倒して、世界の歪みを正す」のではなく目的はその逆。
「ヴァルゼライドに
その目論見通りに、ユキが死亡した後の新西暦では逆襲撃による英雄の崩御、古都での超人大戦、聖教皇国での神殺しが起きている。