次から早く投稿出来るように頑張るので許してください。
「終わったな…」
胸部に漆黒の杭を叩き込まれて横たわる巨大な騎士ゴーレムがいた。
それはハジメ達三人と戦っていたミレディ・ライセンであり、瞳の光が失われていることから、ハジメ達が勝利したことが分かる。
三人は疲労困憊の様子で、最後の一撃を叩き込んだシアはドリュッケンを支えにしてようやく立てるほどだった。
三対一。それも化物ステータスのハジメ、魔法に関しては天才のユエ、身体強化でハジメに匹敵するシアの三人。
さすがは世界を敵に回した
「それにしても…すごいですね」
離れた場所で斬り合う悠姫とシスティを見ながら、シアがぼそりと呟いた。
よく考えてみれば、ユキもとい悠姫の本気をシアが見たのは初めてではないだろうか。
シアにとって
ハジメのようにアーティファクトを作れるわけでもなく、ユエのように吸血鬼だったり魔法が優れているわけでもない。
ただ純粋に巧く強いという良く言えばシンプル、悪く言えば地味。
それにトータスの外から召喚されたのに、
更には消滅から若返って復活。それどころか魔力分解作用をものともせず色々な
正直、本当に同一人物なのかすら疑わしい。
でも怪しさや危機感は感じない。むしろあの背中を見ているとどこか安心感さえ感じてくる。まるでかつて守ってくれていた
「私はハジメさん一筋ですよ!」
「なんだいきなり」
浮気ではありませんとばかりに否定から入るシアに、そもそも付き合ってすらいねぇという視線を送るハジメ。神妙な雰囲気など一瞬で消し飛んだ。
「まあ、姿形がどうであれユキはユキだ。心配するようなことはねぇだろ」
「うん、本当だね。光は光だし、怪物は怪物だ。それは絶対に変わらない数式だし、見た目が違うから仲間じゃないというのは、本当の仲間とは言えないよね」
突然三人に話しかける別の誰か。その声の主はすぐに見つかった。というより一人しかいないというべきか。
「まだ生きてんのかよ」
「まあね。こんな簡単に消えるミレディちゃんじゃないか――
――ちょ待って待って! 試練はクリア、私に戦う力なんて残ってないから! どうにかして君たちと話せるように力を絞り出してるだけだから!」
力を絞り出しているという言葉の通り、焦るように瞳が点滅を繰り返すだけで体自体はピクリとも動いていない。
重力魔法すら使っている様子もないあたり嘘はないのだろうと、構えたドンナーやドリュッケンを降ろす。
「で、なんだよ。まあ大方アッチの話しなんだろうが」
そう言いハジメは悠姫とシスティの方を向いた。
これまでの解放者たちの期待ぶりからして、悠姫とシスティを繋ぐ縁、そして
そう考えると自分達は悠姫の
「確かにそうだけど、君達の事でもあるんだよ?
今の
それだけで、彼が君たちのことを信用しているのは理解できるし、そんな君たちをおまけなんて思わないよ」
ハジメ達は思わず目を点にして驚いた。
どうやらミレディからの評価は以外にも高かったらしい。
「だから教えてほしい。君達にとって、
さっき言ったけど光は光で、怪物は怪物。だから彼はそうなるだろうし、
「元の世界に戻りたいという君の願いは、全ての神代魔法を集めれば確かに果たせる。でもその前に必ず
嘘は許さないと言外に告げるものの、戦闘前のような威圧は感じない。どちらかと言えば再確認の意味合いが大きい。
そのことを理解してなのか、ハジメは鼻で笑いながら言い放った。
「馬鹿を言え、てめえは三歩歩いたら忘れる鶏か?
お前が自分で言ったんだろうが。光は光で、怪物は怪物。だったら
「変な道を行きそうになったらぶん殴ってでも止めてやる。だから
「――ッ」
一切迷いなく言うハジメと、当然だと言わんばかりに頷くユエとシア。それに息を呑むかのように驚いた後に、優しい声色でミレディは告げた。
「…そっか。それだけの啖呵が切れるなら…十分かな…安心して…逝くことが…できる」
残り僅かな時間しか残っていないのか、次第に言葉が途切れ途切れになっていく。もう
「おい待て。行くならせめて他の迷宮はどこにあるのかだけ教えてくれ。いくつかは目星はついてるが、正確な場所は失伝してて殆ど分かってねえ」
「そっか…迷宮の場所が…分からなくなるほど、時間が経ってるって…ことだね。じゃあ一回しか言わないからよく聞いておいてね」
そうしてポツリポツリと神代魔法が眠る迷宮の所在を語っていく。
数ヶ所は想像通りの場所ではあったが、逆にいかにも
「…以上だよ。頑張ってね。そして、
先程とは比べ物にならないほどしおらしく、これが最期だと言わんばかりの様子のミレディ。ハジメは冷めた目で見ているが、ユエとシアは若干目尻に涙を浮かべている。
「それじゃあ…先に行くね…シーちゃん」
「君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」
そして、瞳は光は消え、ライセン大迷宮の最終試練であるミレディ・ライセンは、完全に沈黙した。
しんみりした空気の中、システィと決着をつけた悠姫が合流した。そして、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気が付く。
ブロックの一つに四人で跳び乗ると、足場になっている浮遊ブロックが動き出し、光る壁まで悠姫達を運んでいく。このタイミングで壁が光りだしたということは、その先がライセン姉妹の住居なのだろう。
四人が近づくと、壁は自動ドアのように勝手に開き、浮遊ブロックはそのまま向こう側へと進んでいった。
くぐり抜けた壁の向こうには……
「あ、あの! シーちゃん?! さすがのミレディさんでも、これはちょっと恥ずかしいんだけど!」
「安心してください。そんなツルペタボディ(笑)に欲情する殿方なんていませんよ…多分」
「そういう話じゃないんだけどなー!」
亀甲縛りされて天井から吊り下げられてるコ〇助(姉)と、それを見上げるように見ている〇ロ助(妹)がいた。
「…うわぁ…」byハジメ
「――(言葉が出ない)」byユエ
「ひぇ…」byシア
「…ミレディ・ライセンって…そういう趣m」
「違うから!」
悠姫の一言にミレディが条件反射で答えたことでシスティが四人が来たことに気が付き、ミレディをそのままに四人に向き直した。
「ライセン大迷宮の攻略、お疲れさまでした。
「あれー? もしかしてこのまま? というより私の呼び方おかしくなかった?」
「まずは神代魔法を。…ああ、そこのへんた、変態はお好きにどうぞ。調子に乗った罰です。いい薬です。治らないと思いますけど」
「変態って言ったね?! 言い直してないよね?!」
ハジメは薄々感づいていたようだが、ユエとシアは先のシリアスシーンがミレディによる茶番だったと気が付いたようだ。一瞬だけ目からハイライトが消え、次には口が三日月のように吊り上がった。
自分達をコケにする態度をとる相手が身動きを取れないでいる。
「――え、あの…や、優しくしてくださぁぁぁぁああ!」
薄気味悪い笑い声を出しながら、獲物を見つけた獣のように眼を光らせた三人はミレディへと群がり……
閑話休題
「というわけで、改めて攻略おめでとう! ご褒美にさっきのイジメは見逃してあげる! ミレディさん優しいね!」
「自業自得だな」
「自業自得です」
「まだ足らねぇか」
「ん」
「デス」
「ん~殺意高いなぁ」
全員からバッサリと言われ、やれやれと肩を振るコロ〇。
先のやり取りの通り、この二体が今のライセン姉妹。騎士ゴーレムはあくまで遠隔操作していただけであり、ミレディのあの今にも消えそうな様子はただの演技に過ぎない。
ミレディ曰く、
「騙された? プ~クスクス。やっぱりミレディちゃんは演技派だな~(笑)」
とのこと。その後、数名によって叩かれることは言うまでもない。
重力魔法。これまでブロックや騎士ゴーレムが空中を飛び回っていた正体だ。つまり、これで四人は飛行手段を手に入れたのかと言えば、そうでもなかった。
理由は単純に適正不足。
ユエの適性は十分。修練すれば十全に使いこなせる。問題は残りの三人。
シアは体重の増減くらいは出来るだろう、ハジメは悲しいくらいに才能がないから生成魔法で補え、とミレディが言う。
「そして
本当に何なの君?」
「何なのと言われてもな…」
分からない、というのがミレディから見た悠姫の適性だった。
色々と規格外な存在だからこそ、単純な適正など分からないだろうと思っていたようで、事実その通りだった。
実は、召喚されてから悠姫(ユキ)まともに使用できた魔法は、身体強化しかない。
使い方は分かる、才能が無いという訳でもない、でも使えない。これは生成魔法も同じで、今回の重力魔法も同じだった。と言うことは残りの神代魔法も同じく使えない可能性は大きいだろう。
でもどうでもいいというのが当の本人の認識であり、そもそも何なのかと言われても分からないとしか言えないのだ。
「これで全員、重力魔法の取得は終わりましたね?
それでは報酬を準備していますので、あちらにどうぞ。姉さま」
「こっちだよ~」
最後に悠姫が重力魔法を取得し終えると同時に、奥でシスティが攻略の証や各種鉱石を準備しており、ミレディがハジメ達を先導して連れて行った。
悠姫も続こうとしたところをシスティに呼び止められた。
「…数々の無礼、申し訳ありません」
「気にしてない。エヒトって言うのは狡猾なんだろ?
守るべき人々を盾に、そして武器として振るわれれば、執れる行動は二つに一つ。勝つために殺して前へ進むか、
だから
「……はい」
「ああ、託されたさ。君達が灯した希望の光で、俺達が
君達が選んだ
「…はい」
「
例え相手が神であろうとも、勝つのは俺達だ」
「…ありがとう、ございます」
無機物の身体へと変えながらも生き続けたシスティは、今までのすべてが無駄ではなかったのだと確信した。
嗚咽が止まらない、既に失ったはずの瞳の奥が熱く感じる。
そんなシスティを、悠姫は優しく抱擁した。
父母のような温かさを感じ、姉に心配を掛けまいと封印してきた
この日、運命の歯車は回りだした。
小さな小さな