お待たせ?しました。
第四十八話です。
この平原で最も激しい戦いは、三体の化物たちによって繰り広げられていた。
初手、ノイントが銀翼を羽ばたかせる。そこから放たれるのは、銀色の魔力が込められた無数の羽弾。恐るべき連射速度により、悠姫の前方を遮る弾幕と化している。
その上で、真の神の使途の攻撃である以上、生半可な威力ではないのは明白。まずは小手調べだと、悠姫は己の不死性を最大限に活用して羽弾の壁に突撃し――
「!」
――両足が千切れ飛ばん限り横へ急加速して、羽弾を回避した。永年に渉り磨き上げられた直感が、
羽弾が直撃した地面は物理的なものが直撃したような抉れ方ではない。まるで触れた地面が消えているかのようだ。よく見ればノイントが持つ双大剣からも同じような性質を感じる。着弾地点の状態と、己を討てる可能性を合わせて考えれば――
「――分子間結合崩壊、いや魔力を含めた構造体結合崩壊能力。さしずめ、分解魔法と言ったところか」
確かに、魔力による結合すらも分解するならば
だが、逆に言えば、特異点とのパスが途切れれば復活できなくなる。そして、魔力結合を分解するあの魔法は特異点とのパスすらも分解される可能性は十分ある。血肉が一片でも残っていれば、たとえパスを断絶されても時間を掛けて復活できるだろうが、此処は戦場でノイントは敵。完全消滅されない可能性に賭けるのは、あまりに分が悪い賭けだろう。
「消えなさい、
「面白い。やってみろよ、
『おいおいおい!
そこに、
今現在、この三体の間には、奇妙な拮抗状態が生まれていた。
ステータス含め
通常の戦いならば、悠姫が優勢のはずだった。しかし、悠姫には
つまり、悠姫対
ノイントだけでも大した問題は無い。
しかし、同時となれば話は変わる。
「厄介極まりない!」
斬空真剣で迫りくる羽弾を切り落とし、そのままノイントに斬撃を伸ばすも、両手の双大剣に受け止められる。ならばと、羽弾を縫ってノイントに接近しようと足に力を籠めるが、左右から迫りくる土竜爪に気付いて、
――〝
物質崩壊の
だがしかし、効果がない。崩壊の瘴気を纏わせた蹴撃だというのに、
そこに、
非物質である雷撃は、この瘴気では防げない。電撃で悠姫を焼き殺せれば良し、それでなくとも感電した瞬間を羽弾で止めを刺す算段だろう。ならば地面を盛り上げ壁とするか? いや、自ら
ならばと悠姫は太刀を
「押し通る!」
――〝
極光の斬撃で、雷撃ごと羽弾を消し去る。そのままノイントと
そのまま滞空する二体。
「……やはり、その力は異常です。主の駒に相応しくない」
大剣の切先を中心に大量の魔方陣が展開され、炎の槍が形成されていく。ユエも使用する、〝緋槍〟だ。
「相応しくなくて結構だ。駒になるつもりなど微塵も無い」
極光を纏う二刀を構える。
「盤上、
「全ては主の御心のままに」
――〝
悠姫の咆哮に返し、同時にノイントによる〝緋槍〟の槍衾が放たれる。一発一発が必殺の殺意を宿し、さながら
そして、悠姫の太刀がノイントの首に叩き込まれるその瞬間、悠姫とノイントを中心に多数の魔法陣が展開され、そのすべてに〝緋槍〟がセットされている。
ノイントは太刀を大剣で防ぎながら銀翼は羽ばたかせて魔法陣の外に退避し、同時に悠姫を多数の〝緋槍〟が包み込む。
空中において足場がなく、防御することも回避することも不可能な豪炎は、一切の容赦なく悠姫を焼き尽くした。
ノイントは勝利を確信するが、だがしかし、
「シッ!」
「なッ!?」
ノイントの眼前に飛ばされてきた
悠姫が〝緋槍〟で消し飛ばされなかった原因、それは単純に〝分解〟の魔力が付与されていなかったことによる。
最初の〝豪炎槌〟に先の雷撃、そしてこの〝緋槍〟に共通するのは、どれも〝分解〟の魔力が付与されていなかったこと。
現状、悠姫を殺せるのは〝分解〟のみ。つまり、ノイントの羽弾か、双大剣だけになる。ノイントはそれを理解できておらず、悠姫はその理解を突いた形になる。
「ですが、これで!」
「そう来るだろうさ!」
地に落とされたノイントを悠姫は追撃し上段から振り下ろすが、ノイントはその一撃を右の大剣で下に受け流す。すると生まれるのは、体勢を崩して隙を晒した悠姫と、左の大剣を振りかぶったノイントの姿。
構図としては、悠姫がノイントに切り裂かれる一寸前、そしてその流れの通りに、ノイントは左の大剣を振り下ろす。
だが、悠姫からすれば想定通り。追撃時の一瞬に
「終わりだ!」
「ッ!」
再び太刀に
『よそ見してんじゃねえぞぉッ!』
「しまッ?!」
死角から巨体が顎門を開きながら迫る。右の一振りで殲滅光を放ち、
だが、悠姫の防御力は文字通りの桁違い。
繋がっている右腕を基点に、数十トンという巨体が重りとなり、悠姫をその場に固定したのだ。そして当然、それは大きな隙となる。そこに、ノイントが銀色の魔力を纏った双大剣を振りかぶる。
「終わりです」
「チッ、まだ!」
左腕一本、更には
ならばと、悠姫は自分から右腕を引き千切り、ノイントの双大剣を躱そうとする。しかし、さすがに無理のある体勢だったためか、右の大剣が悠姫の左腕を斬り飛ばした。
さらに左の大剣で悠姫に止めを差そうとするが、地面から生えるように出現した土壁がノイントの行く手を遮り、悠姫はその土壁を蹴って距離を取る。
欠いた両腕の内、既に
「悠姫!」
「主殿!」
そこに、五体の竜を倒したハジメ達が合流する。
傍から見ればズタボロな悠姫を見て息を飲むが、各々が覚悟を決めた顔をしながら武器を構える。
「俺達はあの
「……油断するなよ」
「そんな恰好のお前に言われたくなねえよ」
それもそうかと、悠姫は苦笑する。そして、悠姫はティオと、ハジメはユエ、シア、ディルグと、それぞれノイント、
「行くぞ!」
ウル防衛戦線、最終戦が開始された。
個人的にですが、不死身主人公を用意した以上、不死身特攻を持つボスキャラは鉄則だと思います。
次回、ハジメ、ユエ、シア、ディルグ VS 邪竜
なるべく早めに仕上げます。