ありふれない怪物は、やがて英雄へ   作:シロマダラ

59 / 106

割と駆け足で書いたので、後日修正するかもしれないです。


第四十九話 ありふれた職業で邪竜討伐

 

「まず一発目、喰らっとけや!」

 

 初撃はハジメの、シュラーゲンによる一撃。

 

 現代兵器を大きく上回る破壊力を宿した超速の弾丸が、紅いスパークが迸りながら邪竜(ファヴニル)に向けて射出された。ファヴニル・ダインスレイフによって改造(アップグレード)された竜すら貫いた貫通特化の砲撃は、堅牢な邪竜(ファヴニル)の竜鱗すら貫けるだろう。

 

 そして、それは目で追えるような速度ではなく、取れる選択は避けるか貫かれるかの二択のみ。

 

『しゃらくせえぇッ!』

 

 だからこそ、邪竜(ファヴニル)の行動に、ハジメ達は目を見開いた。

 

「は?! うそだろ!」

 

 ファヴニル・ダインスレイフは戦闘の天才であり、邪竜(ファヴニル)と化した今でさえその戦闘技巧(センス)に衰えはない。むしろ冴え渡る感覚と蓄積された知識量が合わさり、さらに覚醒し続けることで常に進化を重ねている。

 

 ならば必然的に、その凶悪なフォルムと紅いスパークからシュラーゲンがレールガンであることを見抜くのは初歩の初歩(当たり前)。そして、自身の竜鱗に這わせるように竜体を動かすことで、超速の弾丸を()()()という離れ業すら行える。

 

「おいおいおい、冗談じゃねえぞ!」

 

『さあ行くぜ、お返しだァッ!』

 

 驚き固まるハジメ達に邪竜(ファヴニル)はブレスを放つ。同時、まるで闘技場(コロッセオ)のように土壁が高く隆起し大地も壁も、その全てが命を刈り取る邪竜の牙となる。

 

 それは即席の竜の巣穴。生き残りたければ英雄となれ。邪悪な魔性を露と散り、英雄譚を輝かせろと語っている。

 

 ハジメ達は放たれたブレスをそれぞれ散開して回避する。そして、次に邪竜(ファヴニル)が狙ったのは、後方から右手をスッと掲げて魔法を行使しようとしているユエだった。

 

 理由は単純、支援・回復役の後方を先に討つのが定石(セオリー)だからだ。

 

 ハジメが注意を裂こうとドンナー・シュラークを撃つが、元人である邪竜(ファヴニル)にその考えは通じない。更には邪竜(ファヴニル)の竜鱗は非常に硬く、仮にもレールガンであるドンナー・シュラークの銃弾が直撃しても僅かな傷しかできず、ダメージが通っているとは言い難い。

 

 邪竜(ファヴニル)は顎門を大きく開け、そのままユエを噛み砕こうと突撃する。が、この巣穴(コロッセオ)に閉じ込められているのは二人ではなく四人。ディルグが邪竜(ファヴニル)の突進を受け止め、運動エネルギーが無くなったところを質量を増加、シアが邪竜(ファヴニル)の横腹を殴り飛ばした。

 

「…助かった…ありがとう」

 

「妹の仲間なら守るのは当然だ」

 

『存外やるじゃないか。それなら、こいつはどうだァッ!』

 

 邪竜(ファヴニル)は爆炎と猛毒が入り混じった炎毒ブレスを扇状に放射する。触れれば炎と毒で焼け爛れるブレスは、ハジメ達に回避という選択しか与えない。

 

 そして、ブレスで邪竜(ファヴニル)の姿が見えなくなった時、シアは自分が竜腕に押しつぶされる光景を“視た”。

 

「ッ!」

 

 それは〝未来視〟による光景で、このままでは訪れる自身の死。シアは咄嗟に後ろにジャンプすると、次の瞬間には自分が立っていた場所に、邪竜(ファヴニル)が竜腕を振り下ろしていた。

 

『こいつを避けるか。なら、これはどうだ?』

 

「ッ、そんな?!」

 

 再び“視えた”死の光景。飛んで避けようと足に力を籠めるが、足元に生えた()()がシアを地面に縫い付けて、その身体は上空へと飛び立てない。

 

「きゃぁぁあああッ!」

 

 そしてその身に叩き込まれる竜尾(サマーソルト)。ドリュッケンを盾にしたことで即死は免れたものの腕と肋骨が数本砕ける重傷を負い、同時に剣鱗が消えたことで空中に投げ出される。その空中で無防備なシアに、今度は逆に竜尾を上から叩き付けるように追撃する。

 

「シア!」

 

『そう来ると思ったぜ不落(ヘクトール)質量加減(お前)はこれを受けられるのか?』

 

「なッ!」

 

 兎人族としての気配察知でシアの危機を察知したディルグは、空中のシアの前に飛び上がり、尻尾を受け止めるために槍を構えた。しかし、ディルグに触れる瞬間に反転、炎毒を構えた顎門を兄妹に向けて放射した。

 

 原子、分子単位の精密操作など、ディルグに出来る芸当ではない。結果、視界が晴れてハジメとユエの目に映ったのは、全身が爛れながら地面に倒れ伏す兄妹と、それを見下すように悠々と滞空する邪竜(ファヴニル)だった。

 

「シア! ディルグ!」

 

『クハハハハハァッ! さあさあさあ、次のこれはどうやって防ぐよ!』

 

 邪竜(ファヴニル)は攻撃の手を止めず、巣穴(コロッセオ)の中心部で飛び上がると、その顎門に魔力を収束していく。誰が見ても判るほどに明確な、極大威力の()()()だ。

 

 巣穴(コロッセオ)は逃げ場を塞いでいる。そもそも、倒れた兄妹を見捨てハジメとユエの二人で逃げる選択などある筈がない。

 

 ハジメとユエは兄妹の元に駆け、未だ魔力を収束している邪竜(ファヴニル)の方向に向けて大盾を展開する。下部のアンカーで大盾を固定し、自分達を含めて大盾を〝金剛〟で強化する。

 

 さらに追加で、金属製の十字架を七つ展開する。ハジメ製のアーティファクト、クロスビットだ。縦六十センチ横四十センチほどの大きさで、内部にはライフル弾や散弾が大量に搭載されている。表面金属には生成魔法で〝金剛〟が付与されているので、防御性能も高い。

 

 北の山脈地帯の探索で使用した鳥型無人偵察機と同じ原理で動いており、つまるところライセン大迷宮の攻略報酬としてもらった“感応石”による遠隔操作。操作という性質上僅かばかり意識を裂くことになる為、極限状態では相性が悪いという欠点もある。

 

 そのため、魔物殲滅戦では使えたのだが、先ほどの竜との戦いでは、そもそも攻撃が通らないということもあり使用できなかった。

 

 ハジメはそのクロスビットの内一つを大盾の前に、残り六つをさらに前に二つずつ並べて配置。クロスビット全ての〝金剛〟を起動し、計五重の守りを構築した。

 

 そして邪竜(ファヴニル)の顎門から、直径十五センチほどまで圧縮された魔力塊が()()した。その魔力塊が地面に触れた瞬間、ハジメ達の世界は閃光に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ! グッ、オォオオオオッ!!」

 

 大盾から伝わる凄まじい衝撃に、ハジメは雄叫びを上げて抗う。魔力塊の起爆から、一瞬で〝金剛〟ごとクロスビットは砕け散り、大盾もまた〝金剛〟が剥がされ砕けようとしていた。しかし、〝金剛〟が剥がされた瞬間に張り直し、大盾に罅が入ったり融解しかける前に、〝錬成〟で修復する。

 

「ッソォォオオオッ!」

 

 だが、それも時間の問題だ。〝金剛〟や大盾の守りは、あくまで防御力に準ずるものであり、圧力を消すものではない。アンカーを固定していた地面そのものも消滅し、ハジメは〝限界突破〟を使用して筋力を底上げすることで、なんとか耐えている。

 

 しかし少しずつ後ろ擦さり、このままではハジメ諸共四人はこの世から一片残らず消滅するだろう。

 

「――いいや、()()()ハジメ(こいつ)は一人ではないし、ここには不落()もいる。ならば仲間が一人でも死ぬことなど、断じてありえないのだから!」

 

 その時、今まで倒れていたディルグが立ち上がり、大盾にそっと手を添えた。そして輝照する星辰光(アステリズム)、大盾に質量増加の付与(エンチャント)。それにより大盾の重量は数十倍にまで増加し、アンカーで固定することもなく、襲い掛かる衝撃に対してピクリとも動かなくなる。

 

 そして、その援護はハジメにとっては非常にありがたいものだ。これで〝金剛〟と〝錬成〟にのみ集中できる。

 

「「ォォォォオオオオオオッ!」」

 

 二人は雄叫びを上げる。同時、ハジメの〝金剛〟と〝錬成〟の速度も上がり、この破壊の雫を前にしても鉄壁の大盾と化していた。

 

 

 

 

 

 衝撃波が収まり、邪竜(ファヴニル)はクレーターとなった地面に降り立つ。周囲を見渡すと、巣穴(コロッセオ)を形成していた土壁がすべて消し飛んでいる。しかし一点、それらの爪痕の形が不自然な場所を見つけた。それはまるで、何かがクレーターを作り出すほどの衝撃波を防ぎ切ったよう。

 

 邪竜(ファヴニル)は嬉しそうにニヤリと嗤った。そんなことが可能な者などそうそういるわけもないが、その()()を可能にする者達を相手に、たった今邪竜(ファヴニル)は戦っていたのだ。

 

『魅せてみろよ、てめえらの“本気”をなぁッ!』

 

「は、知ったことかよ。そんなに“本気”が見てえなら、てめえ一人やってろや!」

 

「〝雷龍〟」

 

 大盾を消したハジメの影からユエが飛び出した。発動させた魔法は、ユエが即時発動できる中では最大規模の威力を誇る〝雷龍〟で、それを()()

 

 邪竜(ファヴニル)は雷龍の出現と同時に、術者であるユエにブレスを放っていた。戦闘者の感と言うべきなのか、ユエの位置をよく見ることなく放たれたそのブレスは、ユエの半身を消し炭に変えていた。

 

 それでも、〝雷龍〟は止まらない。五体の〝雷龍〟は邪竜(ファヴニル)の身体に巻き付き、焼き尽くそうと火力が跳ね上がる。

 

 しかし――

 

『まだだァッ!』

 

「ええ、まだですッ!」

 

 咆哮と共に覚醒、雷龍を無理やり()()()()()邪竜(ファヴニル)は口内に超高密度の魔力を収束させていく。先ほどの周囲の全てを破壊しようとした極大の一撃を、ブレスとして吐き出そうとしている。

 

 そこに、()()()()シアが邪竜(ファヴニル)の頭上からドリュッケンを振り上げる。ドリュッケンの爆裂による反動で数回転していることで、その一撃には遠心力がたっぷりと乗っている。代償に腕に千切れんばかりの反動と激痛を与えるが、それを歯を食いしばり「まだだ」と耐える。

 

 そのシアに向けて、邪竜(ファヴニル)の尻尾が容赦なく襲い掛かる。捨て身でドリュッケンを振るっているシアには、回避も防御も不可能。しかし、尻尾の軌道上に現れた守人(ディルグ)が、シアの脅威を排除する。

 

 ならばと翼を広げて飛び立って避けようとするが、凄まじい重力が邪竜(ファヴニル)を襲い、邪竜(ファヴニル)を含めた周囲の地面まで陥没する。

 

「……逃がさ…ないッ」

 

 ユエだ。左半身が消し炭のまま、しかし途切れそうな意識を気合で繋ぎ合わせ、範囲だけを絞り、出力の制御を無視した重力魔法を行使している。

 

 剣鱗を射出しようとも、重力魔法が周囲の地面まで影響を及ぼしている為に、土塊一つ動かせない。

 

「でりゃぁぁああッ!!」

 

 身動き取れない邪竜(ファヴニル)の頭部に、シアのドリュッケンが咆哮と共に叩き込まれた。竜鱗を砕き、肉を潰すが――骨までは砕けない。

 

「ッ、ぁぁぁぁあああッ!」

 

『まだ、まだぁッ!』

 

 何度も爆裂させることでドリュッケンを押し込もうとするが、まだだ、まだだと覚醒し、邪竜(ファヴニル)の頭部に刻まれた傷は、押し込みを上回る速度で回復しようとする。

 

「――シア! そこをどけ!」

 

 そこに、ハジメがシアに代わり、右手に構えた大型のアーティファクト、漆黒のパイルバンカーを突き出す。ミレディ・ライセンとの戦闘時よりも超強化され、それこそシアのドリュッケンをも超える破壊力を叩きだす。

 

 そして遂に、凄まじい轟音とともに打ち出された杭は邪竜(ファヴニル)の頭部を完全に貫通した。だがしかし――止めを刺すには至らない。

 

「――だからこそ二段構えだッ!」

 

 打ち込まれた杭から放射状に走った罅に、ギミックの〝振動破砕〟と〝炸裂ショットガン〟、そして〝豪腕〟を使って義手を叩き込む。竜骨を砕き、口内まで貫通した拳に握られたのは、臨界点まで魔力を注ぎ込まれた、漆黒に輝く黒星晶鋼(アキシオン)

 

「その馬鹿みたいに溜めた魔力に、この黒星晶鋼(アキシオン)を投げ入れたらどうなる?」

 

 目を見開く邪竜(ファヴニル)と、ニヤリと嗤うハジメ。言うなれば人為的に生み出した神結晶である黒星晶鋼(アキシオン)と、その黒星晶鋼(アキシオン)に匹敵する魔力塊。それがぶつかり合えばどうなるかは、もはや言うまでもない。

 

『クハハハッ! 正気かよ、自滅まっしぐらだぜそれは!』

 

「はッ! 誰が死ぬかよ、さっさとくたばれッ!」

 

 そして、ハジメは握りしめた黒星晶鋼(アキシオン)を握り砕く。超密度の魔力が口内で解放され、それは邪竜(ファヴニル)のブレスと連鎖反応を起こし、辺り一帯を巻き込んだ超爆発を引き起こした。

 

「ハジメ!」

 

「ハジメさん!」

 

 爆心は容赦なくハジメも呑み込み、ユエとシアの声が響き渡った。そして、爆煙が晴れたそこには、今にも義手が砕けそうなほどに満身創痍なハジメと、上顎から上の頭部しか残っておらず残骸としか形容できない邪竜(ファヴニル)がいた。

 

『ハハハハハッ――認めようじゃないか、英雄(シグルド)に集いし勇者たちよ…お前等は我が魔剣を打ち砕くに相応しい。ならばこそ、英雄(やつ)の足跡に続くがいい』

 

「…英雄(シグルド)だの魔剣だの、うるせえよ…俺達は、悠姫(ヒカリ)の足跡に続くんじゃねえ…悠姫(ヒカリ)と足跡を()()()()()()()()

 

 発声器官諸共吹き飛んでいるはずなのにも関わらず、何故か響く邪竜(ファヴニル)の声に悪態を吐きながら、右手でシュラーゲンを構える。そして引き金を引き、残った頭部残骸を消し飛ばす。

 

 邪竜戦記の幕は閉じた。

 





ダインスレイフ、退場。

というのは嘘で、まあ当然ですが生きています。おじさんにはこれからも頑張ってもらわなければならないのです。

次回、悠姫、ティオ 対 ノイント
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。