サブタイトル考えるのが大変です…
崩落した天井から降り立った悠姫に視線が集中する。
その殆どが困惑であり、アハトドを一瞬にして消滅させたという事実から金縛りにあったかのように動くことができない。そんな中、悠姫はへたり込む雫の頭をポンポンと撫でている。
「え、えっと…ユキさん…」
「こんなにボロボロになるまでよく頑張ったよ。香織、雫に回復魔法をかけてくれ」
「は、はい! あ、でも…」
声を掛けられて反応した香織が雫の回復に向かおうとするが、香織の後ろにはアヤメとシェリアが倒れている。前には二体の魔星も立ちはだかり、二人を置いて雫の元に向かうことはできない。
しかし次の瞬間、天井の穴から紅雷を纏った二発の弾丸が魔星を襲う。咄嗟に回避行動をとったことで、二体はそれぞれ片腕を失うものの大きく跳び退いて、二発三発と続いた追撃を回避する。
そして、穴から飛び出してきたハジメと、その隣にふわりとユエが、そしてユエの反対側にシアが降り立った。
「いきなりで悪いが、ハジメはあれをそのまま警戒してくれ」
「了解だ」
ハジメはドンナー・シュラークの銃口を魔星に向けたまま返事をする。その名を聞くと雫達は驚いてハジメを見るが、白髪眼帯義手と様変わりした姿に困惑の声を上げる。
「え、うそ…ハジメ君なの?」
「おう、まあ驚くのも無理はねえけどな。正真正銘、無能の錬成師、南雲ハジメだぜ」
それは確かにクラスメイトの南雲ハジメの声であり、悠姫同様に生きていたと涙ぐむと、ハッと我に返った香織が雫に駆け寄って回復魔法を施した。
「ゆ、悠姫さんッ! ちょッ! 余波で吹き飛ばされたんですが?! って言うかなんすか今の光?! いきなり床をぶち抜くとか何してんすか?!」
「物質を構成する最小の核が壊れる時に放出される皆殺しの光。つまり核分裂だが?」
「だが? じゃないんすよッ?! ほんと、何してんすか?!」
そして最後に全身黒装束の少年、遠藤浩介が降り立った。当たり前だろ? という風にさらりと言った悠姫に対して、遠藤が騒いでいる。
なお、核分裂反応によく似た性質を持っているだけなので、厳密には違ったりする。
「「浩介!」」
「重吾! 健太郎! 助けを呼んできたぞ!」
その遠藤の言った“助けを呼んだ”という一言に、魔人族や光輝達がハッと我を取り戻した。そして再び悠姫に視線が集中する。
しかし悠姫はそんな周囲の様子に一切構うことはなく、何故か笑顔の
「ユエは一塊になってる連中の護衛、シアは向こうで倒れてる騎士甲冑の男の容態を見てくれ」
「ん…わかった」
「はいですッ!」
「ハジメは魔人族の女性と魔物の相手を頼む」
「氷女と赤鬼はいいのか?」
「俺の部下二人がやる気みたいだ」
ハジメがチラリとアヤメとシェリアの方を見ると、二人は己の発動体を握り尽きぬ闘志を宿した眼光で魔星を睨みつけていた。なるほどと納得するとハジメは両銃を魔人族へ向け、余裕そうに笑いながら口を開く。
「おい、そこの女魔人族。お前らに勝ち目はねえ、
「……何だって?」
それは、今まさに魔物に囲まれた人間の発言ではない。たった数人増えただけで、戦力差は相変わらず魔人族側が圧倒的に優勢なのだ。だからこそ、ハジメの言ったことが理解できず、魔人族は思わず聞き返した。しかし、ハジメの余裕が崩れることはなく言い間違いではないと理解すると、魔人族は表情を消して一言命令する。
「…殺れ」
この瞬間、女魔人族は致命的な間違いを犯した。天井を崩落させて階下へ降りるというありえない事態、敬愛する上司より賜ったアハトドの消滅などで、明らかに冷静さを欠いていたということが原因で、普段であればもう少し冷静な判断が出来ていた筈だ。しかし、既に賽は投げられた。
そう、
しかし
そしてハジメの標的から外れた二体の魔星は、
「創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌めく流れ星」
二人の金ランク冒険者によって、
それは良く言えば“覚醒”であり、逆に言えば“異常”。少なくとも、先までの敗北が嘘のように思えるほどの
「無謬の空を従えるは、燦爛たる天空神。穢れに満ちた大地を見下し悦に浸る」
「だからこそ、
そして呪怨を宿して紡がれる
「血筋も力も運命も、魂の一片残らず腐り果てた哀れな
アヤメ・キリガクレ、否、アヤメ・淡・アマツにとって、
口を開けば“血筋が”“高貴な”“選ばれた”そればかり。極めつけには、実妹である
なんだそれは、ふざけるな。と反発したところで、実姉から自分への扱いが良くなるわけがない。
ゆえに、アヤメは唯の帝国民として軍の門を叩いたのだ。そしてそれから暫くして、改革派によって生家が粛清され実姉含めて処刑されたのだと聞いた。
「やはり貴様のような愚神には、奈落の底こそ相応しい」
「その
家族全員皆殺され唯一の生き残りとなったアヤメだが、そこに哀しみは全く存在しない。寧ろ清々しい位だ。なぜなら、これで忌々しい悪夢を終わった過去にできるのだから。
それなのに、実姉は
「それでも血族の縛鎖から逃れられぬというならば――我は化生へ変わろうぞ」
「輝け、昼光の女神。墜ちろ、天空の氷河姫。
ならば粗野で野蛮な暴力で、何度でもその天空を粉砕しよう。アマツではない、一人の
「
その答えは、
「ここです」
アヤメの武器、
アヤメは別に
「次です」
再びアヤメの姿が掻き消える。上下左右と見回しても見当たらない。ならば二度目は喰らわないと、
「連続してするわけがないでしょう」
側頭部に衝撃が轟いた。
それは
一方的に勝利を収めたはずの相手に、しかも一刻も経たない内に逆転されている。その事実が、
「ガァァアアアッ!」
視界の端にアヤメを捉えた瞬間、顔を憤怒に歪ませ見た目に合わない魔物としての咆哮と共に、全方位に極寒の
それは
「これだから拡散型はッ!」
そして例外なく、アヤメは
視覚情報誤認能力。それがアヤメ・キリガクレの
相手の視界に映った“アヤメ・キリガクレ”という情報体を変換することで、“アヤメ・キリガクレが其処にいる”という認識を妨害する。
誰かに変装することも、今のように透明になることも可能。しかし、姿が見えなくなっても消えたわけではない。
この氷結世界のような範囲攻撃をされてしまえば、アヤメを視界に入れずとも場所など直ぐに特定されてしまう。
ゆえに。
「バトンタッチよ。
「了解しました。
「創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌めく流れ星」
躊躇なく相方へと
「予言を此処に、私は必ず勝利を刻む。たとえ
そして、シェリアは声高々に
「ラピテスの
「吟遊詩人よ、私の竪琴を奏でながら黄泉を降りなさい。悲哀の音色は冥府の全てを魅了するでしょう」
一対の曲剣に光輝が宿る。それは邪悪を滅ぼす死の光などではない、灼熱の太陽の輝き。
物心がつく頃には既に
だが確かなことは一つ。当時のシェリアは最底辺の
「これぞ私の示す予言の形、世界に輝く星々の海。あの日に憧れた
その数年後、
そして、
「そして始まる巨人大戦、私の強弓は遍く敵を撃ち貫く。しかし、この身は十二の一柱、巨人を討つには一手足りぬ」
「この森羅を照らす
「そして巨人を射抜き、私は勝利を刻むのだ。それで
ゆえに、シェリア・ハムは剣を手に取る。
たとえ世界が変わろうとも、
「
理想を、羨望を、憧憬を。いざ形にせんが為に、雄々しくシェリアは宣言する。
「“勝つ”のは私達よ!」
視覚情報誤認能力
基準値:E
発動値:D
集束性:E
操縦性:C
維持性:D
拡散性:D
付属性:C
干渉性:D
他者からの視界に映るアヤメの情報体を別の何かに変換することで、アヤメの位置情報を誤認させる星辰光。
平均的に素養が低いことが最大の弱点であり、純粋な戦闘力としては決して高くない。
そのため、戦闘を避けた暗殺が最も優れた運用方法であり、正面からの戦闘を行う場合は戦闘力の高い相方の支援に徹することが基本である。
次回は、悠姫VSギルベルトか、アヤメ・シェリアVS偽魔星のどちらかです。
シェリアの星辰光についてはその時に。
なお、ハジメ対カトレアは大体原作通りなので殆どカットです。
よければ感想、評価などをいただけると嬉しいです。