ありふれない怪物は、やがて英雄へ   作:シロマダラ

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第四話 情報収集と訓練

 召喚から二週間、ユキは訓練と座学を行う合間に、トータスの情報を集めるため図書館に行っていた。

 

(七大迷宮、オルクス大迷宮、ハルツィナ樹海か。ほんとにファンタジーみたいだな)

 

 七大迷宮とはトータスに存在している有数の危険地帯のことで、オルクス大迷宮、ハルツィナ樹海の二つも含まれている。

 

「ハジメ、そっちはどうだ?」

「うん、こっちは大体調べ終わったよ」

 

 二週間前のステータスの一件から、ユキとハジメの二人は親交を深め、お互いにため口で会話できる程には仲が良くなっていた。

 

「やっぱり、亜人族は差別されてるみたい。海人族だけは例外みたいだけど...」

(自分とは違う者を差別するのは、どの世界でも変わらないんだな)

 

 亜人族は魔力を一切持っていない。そのため、神から見放された種族として人間族、魔人族の両方の種族から差別の対象になっている。

 

 但し、エリセンという街に住む海人族だけは、産物のほとんどをがエリセンから供給されているため、例外として王国に保護されている。

 

「一度はケモミミを見てみたいけど、基本的に樹海から出てこないみたいだし無理かな? でも、せめてマーメイドは見てみたいな。男のロマンだよ」

「そうなのか? そういうことには疎くてな」

「へえ、意外だなあ。ユキさんって何でも知ってるようなイメージだからなあ」

「そうでもないぞ? 他人より知識や経験が多いのは認めるが、知らないものは知らないぞ?

 それより、そろそろ訓練の時間だ。準備しろ」

「え? ほんとだ!」

 

 時間が迫っていることに慌てながら、ユキとハジメは訓練場に向かった

 

 

 

 

 

 ユキは教官側として参加しているため、メルド団長たちの方へ向かい、ハジメは一人で訓練場へ向かった。

 訓練場に到着すると、既にほかの生徒達が談笑したり自主練したりしていた。

 ハジメは自主練しながら待とう思っていると、後ろから衝撃を受けて、たたらを踏んだ。

 後ろを振り向くと、檜山大介率いる小悪党四人組が立っていた。地球にいたころからちょっかいをかけていたが、それは召喚されてからも変わっていなかった。

 

「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が訓練なんてしても意味ないだろうが。マジ無能なんだしよ~」

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~」

「なんで毎回訓練出てくんだよ。俺なら恥ずかしくて無理だわ!」

「なぁ、大介。こいつさぁ、もう哀れだから、俺たちで稽古つけてやんね?」

「おいおい、信治、お前マジ優しすぎじゃね? まぁ、俺も優しいし? 稽古つけてやってもいいけどさぁ~」

「いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってゆるとかさぁ。南雲~マジ感謝しろよ~?」

 

 何が面白いのかニヤニヤ、ゲラゲラと笑う檜山達。

 しかも稽古してやると言いながら、馴れ馴れしく肩を組み人目のつかない方へ連行していく。

 

「いや、大丈夫だよ。僕のことは放っておいていいからさ」

 

 やんわりと断るハジメだが、

 

「はぁ? お前、無能のくせに何様のつもりだよ。俺たちが稽古をつけてやるって言ってんだから、お前はただありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

 そう言いハジメを殴り飛ばそうとする檜山だが、

 

「お前こそ、何様のつもりだ?」

 

 急に聞こえてきた声に固まる檜山達。その声が聞こえてきた方向には、メルド団長たちと話を終えてきたユキが立っていた。

 

「稽古をつけてやる? お前たちに他人に稽古をつけるほどの才能なんてないはずだが?」

「ッ! うるせえ! てめえこそ何様だよ! いきなりしゃしゃり出てきやがって! 目障りなんだよ!

 少しくらい強いからって、調子に乗んな! ここに風撃を望む――〝風球〟」

 

 急に現れたユキにイラつきながら檜山は魔法を放つ。

 

 魔法自体は下級魔法であり、ただ風の球を打つだけの魔法だが、それでもプロボクサーが殴る程度の威力はある。

その風球をユキは、帯刀している太刀で()()()()()

 

「「「「...は?」」」」

「なんだ、その顔は? 剣術を修めている者ならこの程度造作もない」

 

 檜山達はそのことに唖然とする。選ばれた者(ゆうしゃ)である自分たちの魔法を破られたことが信じられないのだろう。

 

「それより、訓練でもないのに攻撃してきたんだ。それなりの覚悟はあるんだろうな」

 

 殺気を込めながら言うユキに、顔を青くしていく檜山達だったが、

 

「何をやってるの!?」

 

 その声に「やべっ」という顔をする檜山達。その女の子は檜山達が惚れている香織であり、雫、光輝、龍太郎の三人もいた。

 

「いや、俺たちはただ南雲の訓練に付き合ってやろうとしてただけで...」

「ユキさん! ハジメ君!」

 

 檜山の弁明を無視して、香織はユキとハジメに駆け寄る

 

「訓練ね。南雲君の訓練はユキさんに一任されてるはずだけど?」

「いや、それは...」

「待ってくれ、雫。きっと檜山達だって南雲のためを思ってのことなんだろう? 南雲ももう少し真面目になった方がいい。訓練がない時は図書館にこもってばかりじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬にあてるよ」

「ちょっと、光輝。それは...」

「それはつまり、俺が間違っていると言いたいのか? メルド団長たちにも許可はとっているんだが?」

 

 光輝の言葉にユキが反論する

 ハジメは後衛職だったこともあり、唯一ハジメを高く評価していたユキに訓練を一任されていた。

 

「い、いえ、そうは言いませんが、南雲のステータスは低いんだからほかの人よりもっと訓練しなきゃいけないじゃないですか」

「ハジメは後衛職だ、前線で戦うこと基本的にはない。もしそうなれば俺がフォローに入ればいいだけだ。

 だからハジメに教えているのは基本以外は護身用の技術だけだ。あとは知識をつける方に時間を割いた方が効率がいい」

「で、でも...」

「光輝、そこまでよ。南雲君はユキさんが訓練するって決まってるんだから。あなただって他人を気にしてる暇はないでしょ」

 

 雫の言葉を一応受け入れた光輝だったが、その表情は納得がいっていない顔だった。

 

 その日、檜山達はユキのことを睨みつけながら訓練をしていたが、ユキはさっきのメルド団長たちとの話の内容が気になっていたため気付いいなかった。

 

 それは、訓練終了後の夕食時に、メルド団長から告げられる内容で、明日から実施訓練として【オルクス大迷宮】へ行くと言うものだった。

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