ありふれない怪物は、やがて英雄へ   作:シロマダラ

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 お久しぶりです。

 原作通りじゃつまらないなと思って色々考えてたら、三か月半も経ってました…

 では、七十一話です。


第七十一話 隠された最終試練

 

 【グリューエン大火山】おそらく五十層。それが、現在、悠姫達がいる階層だ。

 

 なぜ()()()()なのかと言えば、それは悠姫達の置かれた状況が特異な状態で、はっきりと現在の階層が分からないからである。

 

 具体的には、悠姫達は宙を流れるマグマの上を赤銅色の岩石で出来た小舟のようなものに乗って流されているのだ。

 

「気分は、ハードモードのインディさんだな……」

 

「雫、インディさんとは……」

 

「私達の時代で世界的に有名な冒険家、というか考古学者かしら…」

 

「ほほう、そちらの世界にはそんな御仁がおるんじゃのう」

 

「いや、一応創作上の人だから」

 

 ハジメの呟きに反応した悠姫とティオの疑問に雫が答える。そも、なぜこんな状況になっているのかというと、端的に言えばハジメのミスである。

 

〝静因石〟を探していた悠姫達は、自分たちを炙り続けるマグマが時々不自然な動きをしていることに気が付いた。具体的には、岩などで流れが邪魔をしているわけでもないのに大きく流れが変わっていたり、流れが急激に遅くなっていたり、宙を流れるマグマが一部だけ大量に滴り落ちていたり、というものである。

 

 そして、ハジメの〝鉱石系探査〟によってその不自然な動きの原因が〝静因石〟であることが判明したのだ。マグマそのものに宿っている魔力が〝静因石〟によって鎮静され、流れが阻害されている結果だったのだ。

 

 ならば、そのマグマの流れが強く阻害されている場所に〝静因石〟が強く埋まっているはずだと推測して探った結果、確かに大量の〝静因石〟が埋まっている場所を多数発見した。

 

 早速、錬成の派生技能〝鉱石分離〟で静因石だけを回収するハジメなのだが、暑さによる集中力低下と何度と繰り返した〝静因石〟の回収による油断が重なり、壁の向こう側の様子というものに注意が向いていなかった。つまるところ、やらかしたのだ。

 

 ハジメがそれに気が付いたのは、採取した〝静因石〟を〝宝物庫〟に収納し効力が失われた瞬間、〝静因石〟が取り除かれた壁の奥からマグマが勢い良く寸出した時である。

 

 咄嗟に飛び退いたハジメだったが時すでに遅く、亀裂の入ったダムから水が噴出して決壊するように、マグマが穴を押し広げて一気に流れ込んできた。

 

 その勢いに一瞬でマグマに取り囲まれた一行だったが、ユエが障壁を張って凌いでいる間にハジメが小舟を錬成。ハジメ・ユエ・シアと、悠姫・雫・ティオに別れてそれに乗り、マグマの上を漂うことで事なきを得たのである。

 

 なお、宙を流れるマグマ河の上へと移った時、当たり前のように川底を抜け出しそうになったが、シアが重力魔法で小舟の重さを軽減し、悠姫が伝令神の星辰光(アステリズム)で小舟とマグマを反発させることで、マグマに浮かばせるが出来た。

 

「あっ、ハジメさん。またトンネルですよ」

 

「標高的には、そろそろ麓辺りのはずじゃ。何かあるかもしれんぞ?」

 

 シアが指差した方向を見れば、確かに悠姫達が流されているマグマが壁に空いた大穴の中へと続いていた。トンネル内はマグマに照らされて、下方へと続いているのが見える。今までも、トンネルに入る度に階層を下げてきたのだから、間違いなく最奥へと続いているはずだ。

 

 ティオの忠告に頷き、いざトンネル内に突入する悠姫達。マグマ河は洞窟を蛇のようにくねりながら流れている。そして、しばらく順調に高度を下げていたマグマ河がカーブを曲がった先でいきなり途切れていた。いや、正確には滝と表現できるほどに急激に下っていたのだ。

 

「全員、振り落とされ……なにッ?!」

 

 ハジメ達の小舟の後ろを流れていた悠姫達の小舟が、突然できた横穴へと流れていったのだ。

 

「悠姫!」

 

 ハジメが叫ぶももう遅く、悠姫達が乗る小舟は支流へと姿を消し、ハジメ達の小舟は落下を開始した。風を切るような轟音と、途轍もない速度を出す激流となったマグマに流される。そしてこういう時に時に限って…

 

「ハジメさん、魔物が!」

 

「ちッ!」

 

 舌打ちと同時にドンナーを抜き、躊躇なく引き金を引く。三発の炸裂音を響かせながら撃ち抜いたのは、マグマを撒き散らコウモリだった。一瞬で絶命したコウモリだが、襲撃はこれでは終わらない。

 

 このコウモリの厄介なのは群れとなって襲い掛かってくること。黒光りするGのように、一匹いたら三十匹はいると思え、と言われ岩の隙間や影からわらわらと現れるのだ。

 

「……このまま進むしかねえか」

 

 おびただしい数の翼がはためく音を聞き、ハジメは逸れた悠姫達を気にしながら再びドンナーを構える。

 

 そして、その悠姫達は…

 

 

 

 

 

「〝星環境変性(オルタレーション)〟――

 ――〝超新星(Metalnova)〟―――〝抜刀・天羽々(O r o t i n o a r a m a s a)斬空真剣( T y r f i n g)〟」

 

「八重樫流刀術・〝霞穿〟ッ」

 

「〝嵐空〟」

 

 ハジメ達と同じように、迫りくる魔物達への対処に追われていた。違いがあるとすれば、悠姫達ははマグマに浮かぶ小舟の上ではなく、小舟に乗る前の地面に移っていることだ。支流へと流された先で宙へと投げ出され、悠姫とティオが風を操り地面へと着地したのだ。

 

 そして、追い打ちをかけるように襲い掛かる魔物群。マグマ牛にマグマコウモリ、さらにはカエルや狼といった魔物まで含まれていた。しかし、マグマ河と小舟という縛りから解放された悠姫達によっていとも容易く蹂躙される。

 

 射程を無視した伸びる斬閃が断ち切り、女剣士の突きが穿ち、超密度の風壁が襲い来るマグマを寄せ付けない。まさに鎧袖一触、一切損耗することもなく、三人は瞬く間に魔物群を殲滅した。

 

「ふむ、どうするかの主殿。ハジメ殿達とは逸れてしまったわけじゃが」

 

「どうするも何も、船が壊されたなら階段を下りていくしかないんじゃないかしら」

 

 ティオに答えた雫の視線の先にあるのは、木っ端微塵になった小舟だったもの。それはハジメが錬成したものであった以上、ハジメ達と逸れた悠姫達に元に戻す術はない。つまり、雫の言う通りのことしかできないわけだ。

 

「そうだな。ハジメ達とは最奥まで行けば合流できるだろう」

 

 離れたところに下層へ向かう階段があることを確認し、相変わらず肌を炙る熱波にウンザリしながら、三人は階段を下って行った。

 

 

 

 

 

「……急に開けたわね。もしかして、ここが最奥?」

 

「それにしては、違和感を感じるの」

 

 それから数回ほど階段を下ると、三人は開けた空間に到達した。これまでと同じように宙にはマグマ川が流れているのだが、なにやらティオには様子が違って見えた。いや、明らかにおかしいのだ。

 

「天井が高い?」

 

 目測でおよそ五キロメートル四方、上には二百メートル程に広がっている。

 

 たった今、悠姫達が下りてきた階段はそれほど長くはない。せいぜい歩く速度で数分程度だ。つまり、この空間はその階段や前階層があったはずの場所すら侵食していた。

 

 物理法則すら無視した超空間、その正体を考えれば答えは一つ。

 

「神代魔法か」

 

 悠姫が口にした瞬間、それは空間を引き裂きながら出現した。巨大な毒蛇の下半身に人間の上半身。肩からは無数の蛇が、背には翼が生えている。こんな魔物は、長く生きるティオですら見たことも聞いたこともない。

 

『グルォアアアアアアッッッ!!!』

 

 そして、赤い両眼が悠姫達を視界に収めるとグリューエン大火山を震わせるほどに咆哮した。

 

「な、なんなんじゃ、あの怪物は!」

 

 本能的に理解し、これまで生きてきた中で圧倒的ともいえる()()()()()に耳を塞いで堪えるティオの声色には恐れが混ざり震えていた。だが、それも当然だ。

 

 この異形の姿は、地球の古き神話にて語られる、最強の全能神を下したことすらある最強(最凶)の怪物。

 

 テュポエウスなのだから。

 




 ボス戦に備えて短めです
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