この世界で私は   作:まのめ

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久々の投稿、紆余曲折有りましたがなんとか形に出来ました。




本編です


記録 一 「狼煙」

目が覚める。

 

気がつくと私はベットで寝ていた。夢だったのだろうか、明石に振り向きざま拳銃を突きつけられ、撃たれ、死ぬ……。そんな内容の夢を。

しかし私の目に映った光景に私は絶句する。

 

私が記憶する限り、日付が一日ずれている。昨日一日を私は寝て過ごしたというのか、昨日過ごした一日の記憶が無い。だが寝ていたとしても昨日の秘書艦だった大井が起こしに来ているはずだし、何より提督が一日無断で不在をしていたら誰かが気づくだろう。

 

なぜそのようなこともなく私は昨日一日を寝て過ごしてしまったのだろうか、今がどういう状況なのか全くもって検討がつかない。

 

 

 

 

0600になり起床のラッパがなる。

 

何時ものようにドアからノックの音が聞こえ、今日の秘書艦が私を起こしに来る。しかし起こしに来たのは秘書艦ではなく、明石だった......。

 

「お体に不調はございませんか?」

 

そう聞いてきた彼女。どこか不適な笑みを浮かべこちらをみる。

 

「最悪な目覚めだ、君に殺される夢をさっきまで見ていたからな。」

 

明石は少し俯き「そうでしたか......。」と小さく答えた。だが私は見逃さなかった、俯く瞬間彼女のこれまでに無い笑みを浮かべながら。

 

「ですが提督、残念ながらそれは夢なんかではなく現実なんですよ。」

 

先ほど見せた笑みを再度浮かべ、私に話しかける。

 

「残念ながら提督は、死んでも死ねない死にきれない体になったのです。」

 

「もう一度聞きましょう提督......、お体の具合はどうですか?」

 

鳥肌が立った、濁った思考で頭が一杯になる。なぜ?なぜ?なぜ?と次から次に質問が出てくるが自分では答えが導き出せないし分からない。

 

自問自答できるような内容でもないが。

 

震えも出てきた、指先に力が入らない、声を出そうにも息が吸えないし今自分が息をしているのかも分からない。聴こえてくるのは自分の心臓の音だけ、バクバクと激しい鼓動する音が聴こえてくる。

しかしそんな音も明石の声によりかき消される

 

「震えているようですね、汗もすごいですよ...提督。」

 

「復元する時に調整を間違えたかな?でも違いますね。きっと提督は自分が今置かれている現状と、目の前に見える恐怖に怯えているのでしょう?」

 

「完璧に仕上げてるのでね……。」

 

言葉が出ない。

 

だが分かる事がひとつだけある。

 

狂っている。

 

「なぜ………、こんなことを……する…いや、したんだ。」

 

喉から絞り出した言葉を発する、しかし明石はこの質問が来ることが解っていたかのように考えることなく直ぐに答えた。

 

「提督でも分かる通り、この鎮守府は全線基地。」

 

「毎日誰かが戦い、傷つき、隣り合わせの死を恐怖しながら生きています。」

 

「祖国の為に、何よりも仲間の為に私たちは日々、傷つき、明日への希望を持って勝利を確信し、信じて戦っています。」

 

「そこでここ何日か色々調査してたんです。」

 

「調査?」

 

「はい、調査です。」

 

「長かったですよ、そりゃもうね。」

 

「提督がされてるお仕事を1から覚えたり、提督がご自身で作り上げた作戦書から数多の戦略を1から徹底して訓練したりしてね。」

 

特に訓練は辛かったですね、下手に資材を使うとバレますから。そう言いながら彼女は窓を開け部屋に風を送る。逆光を浴び、淡く光る彼女は何処か怪しげに私を見る。

今度は優しく微笑みながら彼女はまた話を始める。

 

「提督が不在でも私達でどれ程の司令業務がこなせるのか、資材のやりくり等、とにかく自分達でどこまでこの鎮守府の運用が可能なのかを調査してたんですが………。」

 

「私達の努力あって、提督がいなくてもこの鎮守府は運用可能になったのです。」

 

優しい微笑みが口角を上げ、淀み濁った黒い笑みに変わる。

 

「……。」

 

もう言葉も出ない。だがそんな私を横目に彼女は話す。

 

「なので提督には死んでも死なない体になって貰ったって訳ですね。」

 

どうやってこの体が形成されているのか、いつどのようにして私の体を作り変えたのか等こと細かく話す明石。しかし私の耳にはその内容が入っては来なかった。

 

「正直、提督は良くやってくれていますよ。こんな前線基地を受け持って、普通だったら一人じゃ回らないような仕事内容もお一人で片付けてしまうのですから。」

 

「現に提督のお仕事を回すのに最低でも3人は必要ですから。」

 

「ですが私たちも限界なんですよ、精神的にもストレス的にも。」

 

「あっ、でも勘違いしないでくださいね。別に私達が提督のことを嫌ってる訳ではないので。みんな提督の事は大好きですよ、まぁ異性としてかは別として。」

 

少なくとも私は異性として好きですよ、提督。と明石は続けて言った。その真意はどうであれ昨日の行動からみて疑いたくもなる、私に対する愛憎が裏返ったのかただ歪んでいるのか確かめるすべは無いだろう。

 

 しかし気になることを言っていたな。

 

精神的にもストレスが限界に来ている……と。私はどこで間違かてしまったのだらうか、私が敷いた管理体制が杜撰だったのは今の彼女を見れば一目瞭然。責任の一端を担っているのは間違いないが、ならなぜ相談もなくここまで彼女達を暴走させてしまったのだろう。

 

彼女達の意見は尊重し反映させて来たと自負するが、それは今ではただのエゴなのだろう。私の自己満足が生んでしまった負の遺産とでも言うのか、しかしながら果たして私と彼女等との間にそれ程の差があったのだろうか。話しにくい、相談しにくい雰囲気が私にあったのだろうか、褒賞や設備、娯楽などに何かしらの不平や不満があったのだろうか。

 

こうして思い返せば下意上達があまり成されていなかったのではと、気付く。

 

今更気付いた所で……だが。

 

「朝から長考が過ぎますよ、提督。」

 

その一言で我に返る。

 

「色々言われて、色んな感情が襲ってきて整理したい気持ちも分かりますがもうそろそろ朝食の時間です。」

 

そう言われ時計を見る、0614、この異様な空気異様な空間で感じた時間はもっと長く感じたが実際そんなに時間は進んでいなかった。

 

「提督の食事が済み次第また来ます。それまで少ない平和な時間をお過ごしください。」

 

そう言って明石は退室する。それと交代の形で今日の秘書艦が入る。

 

長門だ。

 

「聞いた通り食事だ提督、あまり遅くなると鳳翔や間宮に心配されるぞ。それに、食堂が少しだけ寂しくなる。」

 

着替え終わったら共に行こう、とだけ言い残し部屋を出る。いつもと変わらない長門の姿があった、しかし長門も私を狙う者の一人なのだろう。明石の発言や今の長門の行動から今は私の身に危険は無いのだろう。私は全身に浸る汗を手早く拭い制服に見を包む。外で待つ長門に声を掛け食堂へ進む。

 

 

食堂に着き全く変わらない朝の情景に思わず息を呑んだ。挨拶はしてくれるし、机を共有し日常会話を挟みながら朝食を済ませる。皆変わらず弾けるような笑顔で私に接してくれる、しかし私は死んだ、殺されたのだ。それなのに何もなかったように彼女達は私に“変わらず”接してくれる。

 

違和感しかない。

 

この異様なまでの対応に苦笑いも出来ない……。

 

 

朝食を終え、執務室に帰ると明石が待っていた。

 

不敵な笑みを浮かべて。

 

「おはよう明石、早朝ぶりかな。」少しだけ強がって見る。

 

「おはようございます、提督。まだまだ余裕そうですね。」嫌味のように返す明石。

 

そうして明石は手に持っていた紙の束を私に渡してきた。

 

「これから提督には今日からの生活について説明させていただきます。よく資料を読んでくださいね。」

 

そう前置きを置いて説明しだす明石。要約するとこうだ。

 

 

1.私には一応休息の時間があるらしい。起床から課業開始までの間。昼休みの間。課業終了から次の起床までの間。その間については私への手出しは無用とのことだ。

 

2.この一方的な殺し合いの終わりは私が一日生き残る、若しくは、艦娘全員分終了したら。

 

3.毒物、主に化学物質による殺害は禁止(私の復元にエラーが出る恐れがあるため)。

 

4.あくまで一対一、私から艦娘への救援や艦娘側の複数によるリンチは禁止。

 

5.艦娘側は故意による基地や敷地内の破壊は禁止。

 

6.島民が住むエリア以外島全体を逃避可能、住宅街やその他の生活施設への侵入は禁止。海に出るのも禁止。空を飛ぶのも禁止。

 

7.外部への救援要請等も禁止。

 

8.私の武器の使用は禁止。

 

9.制約を破るものは死刑、若しくは解体。

 

乾いた笑いが出る

 

「なかなか……フェアなルールだな。」

 

驚くほど緻密なルールだ、細分化されており私にも幾分かチャンスが有るようにも見える。

 

「これくらい当たり前です、本当に死んでほしかったら昨日の段階で殺して放置してます。わざわざ生き返らせる何てことしませんよ、それにこのルールは皆さんにはもうすでに共有してありますのでご心配なく。」

 

「あくまで提督はわたし達の玩具なんですから。」

 

意地悪で、それでいて不気味な笑みでそう言った、言い切った。

 

再度乾いた笑いが出た。

 

ここまで説明し終えて静かになった執務室にノックの音が響き渡る、小さくはないが控えめでそれでいてはっきりと聞こえる音が3回。

 

「島風入りまーす。」

 

入ってきたのは島風だった。周りの駆逐艦の娘達と比べると背はやや高めだが大人っぽいというわけではなく顔つきはまだまだ少女な彼女。おっとりとした顔つきだが誰よりも速さを求め、ストイックであり続けるその姿はまさにアスリートそのものだろう。

 

そんな彼女がまさか今日の

 

「明石さんまだなの?おっそーい!」

 

「時間は説明したとおりです、0800から行動開始なのであと少しだけ待っててくださいね?」

 

「まぁ守んないと解体だもんね、しょうがないよね。ねぇ提督、始まる前にお膝に座ってもいいかな?」

 

無邪気にも聞いてくる、明石の説明だとこの時間はまだ大丈夫なはずだ。今すぐ死ぬわけでは無いだろう。

 

「あぁ、いいよ。」

 

「やったぁ〜!」

 

そうして島風は私の膝の上に来た、こうやって接しているが島風は今日私を殺しに来たのだろう。何故か達観しているが別に殺されたいわけでも生きる希望がないわけでもない。

島風とは私が着任してから2ヶ月ほどしてから着任した艦娘で所謂初期組の一人。

 

苦労を分かち合いながらも寄り添って来たこの数年、そんな数年来の戦友とも、親友とも呼べるような間柄だと思っていたのは私だけだったのか。私は知らず識らずのうちに彼女たちから憎悪を買っていたのだろう、そうとも知らずに私は……。

 

しかしそんな彼女は今は私の膝の上で私に撫でられながら目を細め、柔らかな笑みを浮かべている。

 

恨まれてるとは到底思えないのだが、なぜ彼女は私を殺しに来るのだろうか。考えたところで無駄なのはわかるが。

 

「ありがとう提督!これで心置きなくぶっ殺せるよ!」

 

あぁ、天使のような笑顔でなんてことを言うんだ。島風は私の膝から降り、正対して続ける。

 

「わたしから少しだけ説明するね。」

 

課業開始のラッパが鳴る。

 

「提督はわたしから逃げるの、鬼ごっこだよ!」

 

無邪気に笑う島風。

 

「今から30分時間をあげるから提督は好きなところに逃げてね?」

 

「3回ルールで、捕まえたら腕を切り落としていくから。3回捕まるか、失血多量で死んじゃったらおしまい!」

 

「お昼までに両腕無くなってたら島風がご飯食べさせてあげる!」

 

島風の目が猟奇的な目に変わる。

 

「早く逃げないと直ぐに死んじゃうよ?そんなの楽しくないよね、提督。」

 

ハッと我に返る。

 

強張った体を奮い立たせ、ドアを力強く開き廊下を、階段を、駆け降りる。工廠、グラウンド、食堂を横目に営門を突破する。誰にも止められなかった、普通なら憲兵が無断での出入りは取り締まるがそうか、ここまで用意周到なのか。感心しつつもそんな感情を捨て去り走る。

 

遠く遠く、少しでも時間を稼がなくては。猶予を貰った30分、宣告を受けてから今13分が経とうとしている。私も一端の軍人、事務仕事が多いがそれなりに鍛えている、しかしそれは人間基準。相手は艦娘、それに島風が相手となればまた話は違うだろう。

 

どうせ明石の事だ、私の行動はいちいち監視しているのだろう。市街地に逃げるだけ野暮だろう、ルール違反は速死刑らしいからな。

 

呼吸が辛い、肺が辛い、心臓が辛い、足が辛い、しかしそんなことも気にしていられない、一心不乱に走り抜ける。まずは隠れられそうなところを探そう、そして容易に逃走が可能な場所を探そう。

何年もここで生活してきた、知らない場所はないはず、地図は頭にしっかりと記憶している。

 

逃げ切ってやる、泥臭くても生き抜いてやる!

 

そしてこんなことになった原因を聞き出すんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督すんごい顔してたね、ね明石さん。」

 

「生にしがみつく立派なお顔でしたね。……やっぱり貴女らしく速攻で殺しに行くのですか?」

 

「それもいいけど〜、久々に提督に遊んでもらうんだから目一杯時間を使うよ!それまでにくたばったらそれまでだけどね。」

 

「あまり遅くなるようなことにはならないでくださいね、提督の復元にも時間は掛かりますので。」

 

「わかってまーす。」

 

 

「さぁて」

 

 

 

 

 

「30分経過だよ、提督。楽しい楽しい鬼ごっこの時間だよ。」

 




久々の執筆でネタ帳もないままスタートしましたが、書いてくると乗ってくるものですね。

またぼちぼち月一位で更新していくのでたまーに覗きに来てください。

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