青き銃士と戦女神(ヴァルキリー)   作:衛置竜人

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今回の話、マグナコンボイ達の出番が冒頭しかない…


第25話『魔人族の女と蜘蛛型ジーオス』

 

 

―side:Magna Convoy―

 

 

冒険者ギルド前で合流した私達はミュウへの自己紹介を行ってから中に入った。ユエはミュウの事を大層気に入った様だ。

 

「倒壊した建物22棟、半壊した建物44棟、消滅した建物5棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員98名、再起不能44名、重傷28名、行方不明者109名…派手にやったねぇ…」

応接室でイルワは報告書を片手にため息を吐いた。

因みにミュウはシアの膝に乗って出された茶菓子を分け合いながらムシャムシャと食べている。

「まさかと思うけど…メアシュタットの水槽やら壁やらを破壊してリーマンが空を飛んで逃げたという話…関係ないよね?」

「それは私は関与していないな。なぁ、ハジメ、優花」

「う、うん。そうだね碧刃」

「碧刃は関わってないわ」

ハジメと優花の目が一瞬泳いだのをイルワは見逃さなかったらしく、イルワは深い溜息を吐き、秘書長ドットはさり気なく胃薬を渡した。

「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね…今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。

…はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だったけど、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね…はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」

「其の辺はフューレンの行政が何とかするところだろ。今回はたまたま身内にまで手を出されそうだったから、反撃したまでだ。この都市の行政にまで干渉する気はない」

「唯の反撃で、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい?ホント、洒落にならないね」

「そういう犯罪者集団が二度と私達に手を出さないように、見せしめを兼ねて盛大にやったのだからな」

 

私達の処遇については、イルワが関係各所を奔走してくれたのと、治安を守るはずの保安局が意外にも正当防衛的な理由で不問としたので特に問題はなかった。

保安局としても、日頃自分達を馬鹿にするように違法行為を続ける裏組織は腹に据えかねていたようであるのと、一度預かった子供を保安署を爆破されて奪われたというのが相当頭に来ていたようだったらしく、還暦を超えているであろう局長が挨拶に来て私達に礼を言って帰っていったのだが、その足取りが心なしか軽かった。

 

「それで、そのミュウ君についてだけど…」

イルワはクッキーを両手で持って食べているミュウに視線を向ける。

そう言えばまだミュウをどうするか話し合ってなかったな。

「碧刃さん…私、絶対、この子を守ってみせます。だから、一緒に…お願いします」

「私からもお願いするよ!」

シアと宮古は私に頭を下げる。どうしても、ミュウが家に帰るまで一緒にいたいようだ。ハジメ、優花、綾波、嵐、ユエ、ティオは私の判断に任せると言わんばかりに無言で頷いた。

「どのみちメルジーナ海底遺跡の攻略に行くからエリセンを訪れる事になるからな。良いだろう」

「碧刃さん!」

「碧刃!」

「お兄ちゃん!」

シア、宮古、ミュウは満面の笑みで喜びを表にする。エリセンに行く前に大火山を攻略しなければならないが、何とかすれば良いか。

 

その後、私達はイルワから手紙を託され、それを大火山やエリセンの通り道にあるホルアドの冒険者ギルド支部長に渡して欲しいと依頼を受けた。

ホルアド、か…あの勇者(アホ)共がいるな。奴らと会わない様に手紙を渡したらさっさと出発するか…

 

 

 

―side out―

 

 

オルクス大迷宮の89層。

 

淡い緑色の光だけが頼りの薄暗い地下迷宮に、激しい剣戟と爆音が響いていた。

 

苛烈と表現すべき程激しく、姿が見えない遠方においても迷宮の壁が振動する程である。銀色の剣線が虚空に美しい曲線を無数に描き、炎弾や炎槍、風刃や水のレーザーが弾幕のごとく飛び交い、強靭な肉体どうしがぶつかる生々しい衝撃音や仲間への怒号、気合の声が本来静寂で満たされているはずの空間を戦場へと変えていた。

「万象切り裂く光、吹きすさぶ断絶の風、舞い散る百花の如く渦巻き、光嵐となりて敵を刻め!"天翔裂破"!」

天之河は聖剣を腕の振りと手首の返しで加速させながら、自分を中心に光の刃を無数に放ち、体長50センチ程のコウモリ型の魔物を一気に10匹以上を一瞬で細切れに変える。

 

天之河達勇者パーティーは現在、コウモリ型の魔物に加えて無数の触手をうねらせるイソギンチャク型の魔物に地球では考えられない大きさの蟻型の魔物と交戦していた。

この中でも厄介なのが飛行能力があるコウモリ型の魔物で、コウモリ型は前衛組の隙を突いて後衛に突進する。

「刹那の嵐よ、見えざる盾よ、荒れ狂え、吹き抜けろ、渦巻いて、全てを阻め!"爆嵐壁"」

しかし、結界師たる谷口鈴の攻勢防御魔法によってそれは阻まれる。

コウモリ型は谷口の存在など気にせず詠唱を行っている後衛組に向かって襲いかかろうとするが、彼らの突進に合わせて"空気の壁"が大きくたわみ現れ、何十匹というコウモリ型は次々と衝突していく。

空気の壁はたわむばかりでコウモリ型を一匹も通さず、全てのコウモリ型が空気の壁に衝突した瞬間に空気の壁は凄絶な衝撃とともに爆発。

その衝撃によってある者は肉体を粉砕され、ある者は一気に迷宮の壁まで吹き飛ばされて絶命した。

「ふふん!そう簡単には通さないんだからね!」

この時の谷口はまさか自分が"人外"の存在になってしまうとは思ってもいなかった。

 

天之河達は戦闘の終了と共に油断なく周囲を索敵しつつ互いの健闘を讃え合う。

「ふぅ、次で90層か……この階層の魔物も難なく倒せるようになったし……迷宮での実戦訓練ももう直ぐ終わりだな」

「だからって、気を抜いちゃダメよ。この先にどんな魔物やトラップがあるかわかったものじゃないんだから」

「雫は心配しすぎってぇもんだろ?俺等ぁ、今まで誰も到達したことのない階層で余裕持って戦えてんだぜ?何が来たって蹴散らしてやんよ!それこそ魔人族が来てもな!」

天之河の呟きに八重樫は注意するが、脳筋たる坂上は豪快に笑いながらそんな事を言い、天之河と坂上は拳を付き合わせて不敵な笑みを浮かべ合う。

八重樫はため息を吐くと白崎と中村に視線を向ける。

最近になって白崎と中村の2人の仲が深まったというのは八重樫にとっても喜ばしい事だった。このままでは白崎は完全に壊れてしまうと思っていた矢先に何故か中村が白崎を気にかける様になったのだ。

 

現在、この階層にいるのは天之河、坂上、八重樫、白崎、谷口、中村の他、永山重吾を含める5人及び中野、斎藤、近藤の14人であり、メルド団長達は第70層で待機している。

というのも第30層と第70層をつなぐ転移魔法陣が第70層で発見されたのだが、流石にメルド団長達でも第70層以降の階層は能力的に限界であった事と迷宮でのノウハウは既に教えきっていたこともあって、自分達は転移陣の周囲で安全地帯の確保に努め、それ以降は天之河達だけで行くことにさせたのだ。

 

天之河の号令によって第89層の探索を再開する。

第89層の探索は9割ほど完了し、残すは現在探索しているエリアのみだった為、出発してから10分程で階段を発見、トラップの有無を確かめながら慎重に薄暗い螺旋階段を降りていき90層へと到達した。

 

一行はマッピングしつつ油断せず警戒しながら探索を開始するが、白崎と中村以外はあまりにも順調すぎる事とある状況に怪訝そうな表情を浮かべつつ高さ10メートル以上はありそうな大きな広間に出たのだが、不可解さが頂点に達して表情を困惑に歪ませた。

「…どうなってる?…何で、これだけ探索しているのに唯の一体も魔物に遭遇しないんだ?

思わず天之河は疑問の声を漏らす。

探索は細かい道を省けば半分近く済んでしまっているのだが、これまでは強力な魔物がいた事もあってワンフロアを半分ほど探索するのに平均2日はかかっていたのだが、一行が90層を探索を開始してからまだ3時間ほどしか経っていないのに、魔物と遭遇していない事もあってこれ程までに進んでいるのだ。

彼等の感知系スキルや魔法を用いても魔物が一切索敵にかからず、気配すらないという異常事態なのだ。

「…光輝。一度、戻らない?何だか嫌な予感がするわ。メルド団長達なら、こういう事態も何か知っているかもしれないし」

雫は警戒心を強めながら天之河にそう提案し、天之河も嫌な予感を感じていたのもあって雫の提案に乗るべきかと考えていた一方、一行の何人かが辺りを観察していたのだが、何かを見つけたようで声を上げた。

「これ…血…だよな?」

「薄暗いし壁の色と同化してるから分かりづらいけど…あちこち付いているよ」

「おいおい…これ…結構な量なんじゃ…」

表情を青ざめさせる一行の中から永山が進み出て、血と思しき液体に指を這わせる。そして、指に付着した血をすり合わせたり、臭いを嗅いだりして詳しく確認した。

「天之河…八重樫の提案に従った方がいい…これは魔物の血だ。それも真新しい」

「そりゃあ、魔物の血があるってことは、この辺りの魔物は全て殺されたって事だろうし、それだけ強力な魔物がいるって事だろうけど…いずれにしろ倒さなきゃ前に進めないだろ?」

「天之河…魔物は、何もこの部屋だけに出るわけではないだろう」

と巨漢ながらも思慮深い永山は天之河に意見を告げる。

「今まで通って来た通路や部屋にも出現したはずだ。にもかかわらず、俺達が発見した痕跡はこの部屋が初めて。それはつまり…」

「…何者かが魔物を襲った痕跡を隠蔽したってことね?」

雫の言葉に永山が頷き、天之河もその言葉を受けて永山と同じように険しい表情で警戒レベルを最大に引き上げる。

「それだけ知恵の回る魔物がいるという可能性もあるけど、人であると考えたほうが自然ってことか…

そして、この部屋だけ痕跡があったのは、隠蔽が間に合わなかったか、あるいは…」

天之河の言葉に答えたのは一行の誰でもなかった。

「ここが終着点という事さ」

足音を響かせながら、広い空間の奥の闇からゆらりと現れたのは燃えるような赤い髪をし、耳は僅かに尖っていて肌は浅黒い妙齢の女。

「…魔人族…!」

天之河の呟き通り、現れたのは魔人族の女である。

更にその女の後ろからガチガチという金属が地面に当たる音が響いてきて、その音の主が魔人族の女の後ろに着く。魔人族の女と一緒にいるという事は魔物かと一行は考えるが、露になったその姿に一行は驚愕するしかなかった。

見た目は金属で構成された白い外殻を持つ巨大な蜘蛛だ。だが、一行の目に入ったのは蜥蜴の様なその頭部だ。

第46太陽系の地球の人間なら映像ごしにでも見た事があるであろうその顔に一行の誰かがこう呟いた。

「ジーオスだ…」

「何でジーオスが此処に…」

そんな呟きを無視して魔人族の女は蜘蛛型ジーオスに待てと指示を出す。

「勇者はあんたでいいんだよね?そこのアホみたいにキラキラした鎧着ているあんたで」

「あ、アホ…う、煩い!魔人族なんかにアホ呼ばわりされるいわれはないぞ!それより、なぜ魔人族がこんな所にいる!」

「はぁ~、こんなの絶対いらないだろうに……まぁ、命令だし仕方ないか…あんた、そう無闇にキラキラしたあんた。一応聞いておく。あたしらの側に来ないかい?」

「な、なに?来ないかって……どう言う意味だ!」

「呑み込みが悪いね。そのまんまの意味だよ。勇者君を勧誘してんの。あたしら魔人族側に来ないかって。色々、優遇するよ?」

「断る!人間族を…仲間達を…王国の人達を…裏切れなんて、よくもそんなことが言えたな!やはり、お前達魔人族は聞いていた通り邪悪な存在だ!

わざわざ俺を勧誘しに来たようだが、二人でやって来るなんて愚かだったな!多勢に無勢だ。投降しろ!」

「一応、お仲間も一緒でいいって上からは言われてるけど?それでも?」

「答えは同じだ!何度言われても、裏切るつもりなんて一切ない!」

天之河はそんな勧誘を受けること自体が不愉快だと言わんばかりに仲間には相談せず代表して即行で答えると聖剣を起動させ光を纏わせ、八重樫と永山はあの馬鹿と言わんばかりに舌打ちした。

場合によっては一度、嘘をついて魔人族の女に迎合してでも場所を変えるべきだと考えていたのに天之河の怒り任せの行動によってそれも台無しになったのだ。

「仕方ない…ジーオスパイダー、1人見せしめに殺りな」

魔人族の女の指示に蜘蛛型ジーオス(ジーオスパイダー)

「クゥワッキャ、クゥワッキャ、キシャァァァァァァァ!」

と咆哮し、口から本来ジーオスには"ない筈"の舌の様な物を伸ばすとそれを近藤の腹に突き刺す。

一瞬何が起きたのか理解出来なかった近藤は自分の腹にジーオスパイダーの舌が刺さっていると理解すると外そうと足掻くが、その前にジーオスパイダーは近藤の腹から自身の舌を引き抜いて口内に戻す。

白崎は近藤に回復魔法を掛けようとしたが、数秒後に近藤の肉体が急速に肥大化し

「ぐわっ、ぎゃぁ!」

という断末魔の叫びを上げ、皮膚が裂けて肥大化した筋肉が飛び出して肉塊へと変わって絶命し、しかもその肉体は所々金属化していたのだ。

天之河達は何が起きたのが理解出来なかった…いや、したくなかったのだ、近藤はジーオスパイダーの"毒"で即死したのだと。

「こいつの舌には詳しい事は聞かされてないけど金属細胞とかいう物に由来する毒を持っていてね、刺されたら大半は即死だよ。で、どうする?」

「何度言われても、裏切るつもりなんて一切ない!」

仲間の相談なしに天之河はそう答える。

「そう。なら、もう用はないよ。あと、一応、言っておくけど…あんたの勧誘は最優先事項ってわけじゃないから、殺されないなんて甘いことは考えないことだね」

魔人族の女がそう答えた後、谷口は本能的な危機感に従って予め唱えておいた障壁魔法をパーティーの後方に咄嗟に張る。その行動は正しく、後方から人と同じくらいの大きさはあろうラプトル型の魔物が出現し、谷口の障壁を破ろうと遅いかかる。

 

谷口の障壁がなければそのラプトル型の魔物は難なく永山のパーティーメンバーを切り裂いていただろう。

 

ラプトル型の一撃によって障壁にヒビが入り、更に魔人族の女の後ろから現れた個体が合流して障壁を破砕、その衝撃をモロに浴びた谷口は後方へ吹き飛ばされ、すぐ後ろにいた中村によって受け止められて事なきを得る。

 

ジーオスパイダーは天之河に対し舌を突き刺そうと伸ばし、谷口に対し尻尾の先を展開してエネルギー弾を発砲、天之河は魔法で何とか相殺・防御するが、それを破られるのも時間の問題だろう。

「にゃめんな!守護の光は重なりて 意志ある限り蘇る"天絶"!」

谷口は自分達の前に10枚の光のシールドを重なるように出現させてジーオスパイダーの攻撃を防ぐる。

そのシールドは全て斜め45度に設置されており、ジーオスパイダーのエネルギー弾は弾かれ、それらは谷口達に届かない。

「ちくしょう!何だってんだ!」

「なんなんだよ、このヴェロキラプトル擬きと蜘蛛ジーオスは!」

「くそ、とにかくやるぞ!」

混乱から抜け出した永山のパーティーの仲間が悪態を付きながらも完全な戦闘態勢を整えるが、ラプトル型は攻撃の手を緩めない。

「だいぶ厳しいみたいだね。どうする?やっぱり、あたしらの側についとく?今なら未だ考えてもいいけど?」

「ふざけるな!俺達は脅しには屈しない!俺達は絶対に負けはしない!それを証明してやる!行くぞ"限界突破"!」

天之河は魔人族の女の言葉と態度に憤怒の表情を浮かべると、ジーオスパイダーの舌を聖剣で弾くと一瞬の隙をついて"限界突破"を使用する。

天之河はその身に神々しい光を纏わせ、ジーオスパイダーの舌を切り落とすとこれで終わらせると言わんばかりに魔人族の女に向かって突進しようとするが、ジーオスパイダーは魔人族の女の前に移動して天之河を阻む。

 

ジーオスパイダーの舌を切り落としたとしてもエネルギー弾を放ってきたりと脅威である事に変わりはない。

「遠藤、頼みがある!この事をメルド団長へ伝えに言って応援を呼んで欲しい!」

永山は共に戦う遠藤に声をかける。

「しかし…!」

「これは影が薄いお前にしか頼めない事、応援が来なければ俺達は全滅だ!」

「わかった!すぐ戻るから死ぬなよ!」

そう言って遠藤は離脱し、メルド団長達の元へ向かうのだった。

 

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

メタルスダイノヴェインのベース(あくまでもベースなので色や形状を変えます)

  • ADブラックナイトグリムロック型
  • TLKダイノボットスコーン
  • メタルスメガトロン型
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