青き銃士と戦女神(ヴァルキリー)   作:衛置竜人

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第25話を掲載したばかりでしたが、思ってたより早く出来たので投稿します。

今更ですが、マグナコンボイの勇者()に対する罵倒は仕様です。


第26話『銃士達、再会する』

 

 

遠藤が離脱した後も天之河達は戦闘を継続していたが、徐々に追い詰められていた。

一度態勢を立て直さなければ、そう考えた八重樫は天之河に向かって叫ぶ。

「光輝!撤退するわよ!退路を切り開いて!」

「なっ!?ここまで来て、逃げろっていうのか!」

「限界突破もそろそろヤバイでしょ?この状況で、光輝が弱体化したら、本当に終わりよ!冷静になりなさい!悔しいのは皆一緒よ!」

「わかった!全員、撤退するぞ!雫、龍太郎、援護を頼む!」

「任せなさい!」

「おうよ!」

天之河は剣を天に突き出すように構えると長い詠唱を始める。

「撤退なんてさせると思うかい?」

魔人族の女は天之河の詠唱を妨害しようとラプトル型を差し向けるが

「キシャアァァァァァ!」

味方だった筈の3体のラプトル型が襲いかかってきたのだ。

魔人族の女は魔法によって自身を中心に高密度の砂塵を渦巻き刃とさせ、襲いかかろうとするラプトル型を切り裂いた。残りのラプトル型の攻撃は、砂塵に自らを吹き飛ばさせることで何とか回避し、他のラプトル型の手によって始末された。

魔人族の女は襲ってきたラプトル型の身体を確認するが、そのどれもが頭がなかったり前肢がないなどの身体の一部が欠損した個体だったのだ。

「光輝君の邪魔はさせない!」

中村は手をタクトのように振るって死体のラプトル型2体…永山達が先ほど討伐した個体で魔人族の女の行く手を阻む。

「ちっ!降霊術の使い手か!」

魔人族の女は"ひとまず"舌打ちをする。

「行くぞ!"天落流雨!」

その隙に天之河は掲げた聖剣から閃光が打ち上げ、その光は天井付近で破裂するように飛び散って周囲のラプトル型達とジーオスパイダーに流星の如く降り注ぎ、身体が小さかったラプトル型達は吹き飛ばされる。

天之河はそれを確認すると

「"収束"!」

詠唱して魔力を再び聖剣に収束させ、聖剣は光を纏って輝かせ、真っ直ぐ退路となる通路とその前に陣取

るラプトル型達に向けて突き出し

「"天爪流雨"!」

聖剣から無数の流星が砲撃のごとく撃ち放たれる。

同じ砲撃でも切り札である"神威"には遠く及ばない威力だが、今の状況では最適の手だった。

流星は着弾と同時に無数の爆発を引き起こし、砲撃を構成する無数の光弾が破裂。それによって衝撃が連続して発生し、ラプトル型達は体勢を崩され大きく吹き飛ばされ、通路に向かって一直線に道が開かれた。

「今だ!撤退するぞ!」

天之河の号令を受けて全員が一斉に動き出し、天之河達は第89層へ撤退するのだった。

天之河達が撤退したというのに魔人族の女は焦っておらず、それどころか不適な笑みを浮かべていた。

「今はゆっくりすれば良いさ。居場所はわかるからね。しかし、勇者達も思いもしないだろうね。自分達の仲間の中に魔人族軍(わたしら)と手を組んだ"裏切り者"が2人もいるなんてね」

 

 

その頃、第89層の最奥付近の部屋にて天之河達は一先ずの休息をとっていたが、その表情は一様に暗かった。

皆、消耗が激しく、中には満身創痍であるが故に苦痛に表情を歪めている者も多い。

天之河も"限界突破"の副作用により全身をひどい倦怠感に襲われており壁に背を預けたまま口を真一文字に結んで黙り込み、白崎は仲間の治療を行っている。

そんな中、即席通路の奥から野村と辻が話をしながら現れた。

「ふぅ、何とか上手くカモフラージュ出来たと思う。流石に、あんな繊細な魔法行使なんてしたことないから疲れたよ…もう限界」

「壁を違和感なく変形させるなんて領分違いだものね…一から魔法陣を構築してやったんだから無理もないよ。お疲れ様」

野村は"土術師"であり、この空間を作成し入口を周囲の壁と比べて違和感がないようにカモフラージュしたのだ。

土術師は土系統の魔法に対して高い適性を持つものの、土属性の魔法は基本的に地面を直接操る魔法であるので錬成のように加工や造形のような繊細な作業は出来ないのだ。

なので大雑把に壁に穴を開ける事は手持ちの魔法陣で出来るが、周囲と比べて違和感のない壁を造形することは完全に領分外で、一から魔法陣を構築しなければならなかったのだ。

「お疲れ様、野村君。これで少しは時間が稼げそうね」

「…だといいんだけど。もう、ここまで来たら回復するまで見つからない事を祈るしかないな。浩介の方は…あっちも祈るしかないか」

「…浩介なら大丈夫だ。影の薄さでは誰にも負けない」

「いや、重吾。それ、聞いてるだけで悲しくなるから口にしてやるなよ…」

 

 

一方、その遠藤は一度も戦闘をせず全ての魔物をやり過ごしながらメルド団長達のいる70層を目指していた。

そして70層に辿り着いてメルド団長達の姿を発見する。

「団長!俺です!気づいてください!大変なんです!」

「うおっ!?何だ!?敵襲かっ!?」

「だから、俺ですって!マジそういうの勘弁して下さい!」

「えっ?って、浩介じゃないか。驚かせるなよ。ていうか他の連中はどうした?それに、何かお前ボロボロじゃないか?」

「ですから、大変なんです!」

遠藤はメルド団長に状況を報告する。

遠藤の話が進むにつれてメルド団長達の表情が険しさを増していき、たった一人逃がされたことに話しながら次第に心を締め付けられたのか、メルド団長は涙をこぼす遠藤の頭を撫で回した。

「泣くな、浩介。お前は、お前にしか出来ないことをやり遂げんたんだ。他の誰が、そんな短時間で一度も戦わずに20層も走破できる?お前はよくやった。よく伝えてくれた」

「団長…俺、俺はこのまま戻ります。あいつらは自力で戻るっていってたけど…今度は負けないっていってたけど…天之河が限界突破を使っても倒しきれなくて、逃げるので精一杯だったんだ。

みんな、かなり消耗してるし、傷が治っても…今度、襲われたら…だから、先に地上に戻って、このことを伝えて下さい」

と遠藤が自身の思いを伝えた時だった。

「ウァァァァァァァァァオ!」

その鳴き声に遠藤達が振り向くと其処にはラプトル型達の姿があった。

遠藤は、予想外に早く追いつかれたことに動揺して尻餅を付いてしまう。

ここに来るまでの間、遠藤は"暗殺者"の技能を使って気配や臭い、魔力残滓などの痕跡を消しながら移動し、魔人族の女が天之河達を探しながら移動する以上は一直線に駆け抜けたのだからこんなに早く追いつくなどあり得ないと考えたが、魔人族の女はその一枚上をいっていた。

「逃げるなら転移陣のあるこの部屋まで来るかと思ったんだけど…様子から見て、どこかに隠れたようだね。

まぁ、任務もあるし…さっさとあんたら殺して探し出すかね」

ラプトル型達は今にも襲いかからんと言わんばかりにメルド団長達を包囲する。

「円陣を組め!転移陣を死守する!浩介!いつまで無様を晒している気だ!さっさと立ち上がって逃げろ!地上へ!」

「えっ!?」

「向こう側で転移陣を壊せ!なるべく時間は稼いでやる!そして、お前が地上へこの事を伝えろ!お前しか出来ない!」

「でも…」

「行け!浩介!」

メルド団長の言葉を受けて遠藤は逃げ延び、冒険者ギルドのホルアド支部へ向かうのだった。

 

 

―side:Magna Convoy―

 

 

「すっごいのー!これすっごいのー!」

現在、ミュウはハジメが再現に成功したアーケオプテリクス種のゾイド―ソニックバードに乗ってはしゃいでいた。

ミュウを故郷へ送り届ける…つまり私達に同行するという事は彼女の身にも危険が迫るかもしれないという事だ。

私達の内の誰かがいる時なら良いがそれでも専属のボディーガードがいた方が良いし、ミュウの故郷たる海上の都市エリセンに行く前に大火山にある大迷宮を攻略しなければならない為、攻略中のミュウをどうするかという問題もある。

そこでハジメは前々から再現しようとしたソニックバードを再現した。

「ミュウ、気に入って貰えた様で良かったよ」

「うん、ありがとうなのハジメお兄ちゃん!」

 

ホルアドに到着すると皆をトレーラーから降ろし、私は碧刃としての姿になる。

ソニックバードから降りミュウは宮古に肩車をして貰い、ソニックバードは素粒子コントロール装置で小鳥程のサイズ…丁度キット版と同じサイズとなってミュウの肩に留まり、私達は周囲の人々の視線を無視しながら、私達は冒険者ギルドのホルアド支部へ向う。

 

冒険者ギルドのホルアド支部の金属製の扉を開けると、壁や床はところどころ壊れていたり大雑把に修復した跡や汚れがあり、内部の作り自体は他の支部と同じく入って正面がカウンター、左手側に食事処があるのだが、他の支部と異なり、普通に酒も出しているからか昼間から飲んだくれた男達がたむろっていた。

二階部分にも座席があるからか手すり越しに階下を見下ろしている冒険者らしき者達もいて、総じて強者の雰囲気を出している。

制度か暗黙の了解かはわからないが、高ランク冒険者は基本的に二階に行くのかもしれないな。

そして、冒険者の誰もが目をギラつかせており、ブルックのようなほのぼのした雰囲気は皆無だ。

冒険者や傭兵などの魔物との戦闘を専門とする戦闘者達が自ら望んで迷宮に潜りに来ているのだから気概に満ちているのは当然といえば当然か。

 

私達がギルドに足を踏み入れた瞬間、冒険者達の視線が一斉に私達を捉えて今にも手出ししようとするが、私は冒険者達にミュウが怖がるからこっち見んなと言わんばかりに殺気を放って黙らせる。

 

そんな中、冒険者の一人が呟いた。

「おい、あの青いコートを羽織った女みたいな奴ってもしかして"青き銃士"じゃないのか!?」

「じゃあ、あいつらは"オーダーヴァンガード"か!?」

「あのベヒモスを瞬殺してパーティーのメンバーだけで万単位の魔物を殲滅したって噂の?」

「それだけじゃなくてフリートホーフを半日で壊滅させたらしいぞ」

冒険者達がそんな話をしているのも構わずに私はギルドの受付嬢に話しかける。

「支部長はいるか?フューレンのギルド支部長から手紙を預かっている…本人に直接渡せと言われているんだが」

私は自分のステータスプレートを受付嬢に差し出しながらそう言う。

「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼…ですか?」

まぁ、 一介の冒険者がギルド支部長から依頼を受けるなどということは普通はありえないからな。

「き、"金"ランク!?」

驚くのも無理はない。受付嬢は自分が個人情報を大声で晒してしまったことに気ついて表情を青ざめさせ、ものすごい勢いで頭を下げる。

「も、申し訳ありません!本当に、申し訳ありません!」

「別に構わない。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてくれるか?」

「は、はい!少々お待ちください!」

 

待っている時、何者かが勢いよく扉を開けた。

 

何事だと思い私達は音がした方を注目していると、その方向から全身黒装束の少年が床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて受付嬢に声をかけようとしていた。

あいつには見覚えがある。

「え、遠藤!?」

「遠藤君!?」

「その声は…お前ら南雲に園部じゃないか!?待てよ、二人がいるという事は…」

遠藤は私に視線を向けて呟く。

「ら、頼尽…」

そして次の瞬間、遠藤は土下座した。

「あんたが俺達の事をどう思っているかは分かってる!その上で頼む!一緒に迷宮に潜ってくれ!早くしないと皆死んじまう!一人でも多くの戦力が必要なんだ!健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ!頼むよ!」

「メルド団長がいれば、二度とベヒモスの時みたいな失敗もしない筈だ」

「現れたんだよ!魔人族が!」

遠藤がそう言うと

「話の続きは奥でしてもらおうか。そっちは俺の客らしいしな」

六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った男が声をかけてきた。長い年月を経て磨かれたであろう深みがその目から見て取れるし、全身から覇気が溢れている。

隣には受付嬢もいる…なる程、彼がこのホルアド支部のギルドマスターか。前来た時には会わなかったから今回初めて会った。

 

 

冒険者ギルドのホルアド支部の応接室にて対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスと遠藤浩介が座っており、ロアの正面に私が、私の両サイドにハジメと綾波が、ハジメの隣に優花が座っている。

宮古、嵐、ユエ、シア、ティオは用意された椅子に座っており、ミュウは少し離れた場所でソニックバードと遊びながらお菓子を頬張っている。

「頼尽、イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」

「碧刃で良い。全部成り行きでの事だ」

私の言葉にロアは面白そうに唇の端を釣り上げた。

「手紙には、お前の"金"ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。

一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな…オルクス大迷宮に於いて単独でベヒモスをあっという間に討伐し、たった数人で六万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅…

にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん。"豊穣の女神"と並ぶ"青き騎神銃士"に俺からの冒険者ギルドのホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

「…勇者達の救出か?悪いが、"勇者"達を救出せよというのには…私としては答えはNOだ。

軽々しく戦争すると言い、自分の力を過大評価しているわ戦争で人を殺す事は駄目だ悪だとか馬鹿な事をほざいた勇者を助ける気にはなれない。あんな阿呆と彼奴に賛同する連中に自分から関わる気はない」

私の言葉に遠藤はこう言った。

「あんたが言う事もわかる。俺達は天之河に流されるままに戦争に参加したし、地球では南雲に酷い扱いをしてきた。だからまずは謝らせて欲しい!」

遠藤はそう言うとプライドなど全て投げ捨てるかの様に土下座した。

「すまなかった!この程度じゃあんたと南雲の怒りは収まらないのは分かる!だけど、今はこれしか出来ないんだ!」

必死に叫ぶ遠藤から誠意が伝わってくる。私はハジメに目線を向ける。ハジメは遠藤の事を許す、と念話で私に告げる。

「私とハジメとしてはその誠意からお前は許そう、遠藤。だが、他の連中は別だ。しかし、ひとまず話は聞こう。何があった」

私の言葉に遠藤は詳細を話す。

「白い外殻の蜘蛛型ジーオス、か…」

そんなジーオスは聞いた事がない、だがジーオスである以上、放っておけばいずれは増殖して厄介な事になるだろう…そうなる前に討伐した方が良い。

それに、メルド団長には借りがあるからな。

「遠藤、私は勇者(バカタレ)とそれに賛同する者を助ける気は端からない、自業自得だ。だが、ジーオスは放っておけばいずれ増殖して厄介な事になりかねない。それにメルド団長には私達の離反を許可した事への借りがある。

あくまでもジーオス討伐とメルド団長の救援だけだ。それで良いな」

「あ、あぁ…それでもありがとう、頼尽」

私は立ち上がり、ミュウに視線を合わせる。

「ミュウ、私達はこれから悪い怪獣を倒しに行ってくるが、これから行く場所は今危険な状態だ。今回ばかりは大人しくお留守番してくれるか?」

「うん、ミュウは碧刃お兄ちゃん達を待っているの」

「よし、良い子だ」

私はミュウの頭を優しく撫でた後、立ち上がり、皆に指示を出す。

「宮古、ティオ。お前達はソニックバードと共にミュウの護衛を頼みたい」

「承知したのじゃ」

「任せてよ」

とティオと宮古は返し、ソニックバードも肯定するかの様に短く吠える。

「え、えっと、結局、行ってくれるのか?」

「そうだ、ロア支部長。だが、あくまでも危険生物の討伐とメルド団長の救援だけだ。勇者(クズ)共を救出する気はない。一応、対外的には依頼という事にしておきたい」

「ロアで構わない。上の連中に無条件で助けてくれると思われたくないからだな?」

「そうだ。勇者(ゴミ)共に対しては本当に助ける気はないが。それともう一つ。帰ってくるまでミュウ達のために部屋を貸して欲しい」

「ああ、それくらい構わねぇよ」

ロアの言葉の後、私はハジメ、綾波、嵐、優花、ユエ、シアと共に遠藤の案内でオルクス大迷宮へ潜るのだった。

 

 

 

 

To be continue

 

 

 

 

メタルスダイノヴェインのベース(あくまでもベースなので色や形状を変えます)

  • ADブラックナイトグリムロック型
  • TLKダイノボットスコーン
  • メタルスメガトロン型
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