第29話『砂漠の中の王国』
グリューエン大砂漠は砂が微細で赤銅色をしており、常に一定方向から吹く風により砂は易々と舞い上げられ、大気の色をも赤銅色に染め上げていた。
更に様々な大きさの砂丘が無数に存在し、その表面は風に煽られて常に波立つと共に刻一刻と表面の模様や砂丘の形を変えてさせている。
太陽系が照りつけ、その太陽からの熱を砂は余さず溜め込んで強烈な熱気を放っており、40度を超える気温と悪路は旅の道としては最悪の環境だろう。
そんな環境の中もマグナコンボイと彼が牽引するトレーラーに乗って入れば快適に進む事が出来る。
「外、すごいですね…普通の馬車とかじゃなくて本当に良かったです」
「全くじゃ。この環境でどうこうなるわけではないが…流石に、積極的に進みたい場所ではないのぉ」
窓から外の光景を眺めていたシアとティオがしみじみした様子でそんなことを呟いた。
「前に来たときとぜんぜん違うの!とっても涼しいし、目も痛くないの!碧刃お兄ちゃんとハジメお兄ちゃんはすごいの!」
「凄いよね。ミュウ、冷たいお水飲む?」
「おやつもあるわよ」
「飲むぅ~。鈴お姉ちゃん、優花お姉ちゃん、ありがとうなの~」
鈴と優花はミュウと向かい合って座り、ミュウは嘗て誘拐されて通った時との違いに興奮したようにキラキラした眼差しをしている。
このトレーラーにはあらゆる気候条件での長旅も快適に過ごせるように冷暖房完備となっているのだ。
さて、鈴は碧刃の独断でオーダーヴァンガードの一員として無事に迎え入れられたのだが、此処で一度時を鈴がオーダーヴァンガードに加入したあの日の夜のホルアドの宿まで遡るとしよう。
鈴を迎え入れた碧刃は解放者の事やエヒトに関する事を話した後
「明日明朝には出発する。それまでに荷物を纏めておけ」
と言って鈴が泊まっている部屋を後にした。
「盗み聞きとは良い趣味をしているな」
碧刃は部屋から出るなり気配を消して隠れていた綾波、宮古、嵐にため息を吐きながら呼び掛ける。
「私達も気にならないかと言われれば嘘になりますので」
「僕もやり取りを見てて流石にあれはキツいって思ったよ」
と綾波と嵐は返す。オーダーヴァンガードに所属するアデプトテレイターは何かしら裏切りなどにあった者達だ。
だから綾波達も鈴の気持ちは痛いほど分かるのだ。
「話をしたければすれば良い。私はハジメ達にも報告してくる」
碧刃はそう言うとハジメ達が泊まる部屋へ向かった。
碧刃が去った後、3人を代表して綾波が鈴の部屋の扉をノックする。
「オーダーヴァンガードのメンバー、高坂綾波以下アデプトテレイター組です。新たなアデプトテレイターとなった貴女に会いにきた…です」
「うぇ!?う、うん、良いよ。どうぞ」
鈴の言葉に綾波達は
「失礼します」
「お邪魔するよー!」
「失礼するよ」
と部屋に入っていった。
「改めて自己紹介を。私は高坂綾波…です」
「私、渡駒宮古!宮古でもミコでも好きに読んで!」
「僕は嵐、神北嵐。宜しく、谷口鈴さん」
「は、始めまして!谷口鈴です!」
「そんな畏まらなくても良いよ!私達は貴女より年下だから」
宮古はそう言うとステータスプレートを見せ、綾波と嵐も続けてステータスプレートを見せる。
「てっきり年上かと思ったよ…」
と鈴は驚きを露にした。
「さっきの碧刃との話、悪いけど僕達も聞き耳を立てて聞かせて貰ったよ。僕達も君の事が気掛かりだったし、気持ちはわかるからね」
綾波達もまた自分達の過去を語り、鈴は彼女達の過去に涙を流した。この一夜でアデプトテレイター組はすっかり打ち解けたらしく、一緒に荷物を纏めて宝物庫に仕舞うと何だかんだで盛り上がって4人で百合な性行為に及んだ。
因みに鈴は美女や美少女が大好きで、心の中に小さなエロいおっさんを飼っているとクラスメート達から思われている。鈴からしてみれば綾波、宮古、嵐は可愛らしい美少女でドストライクであり、もっと言えば碧刃も男性器が付いている点を除けば金髪碧眼の美少女(というより美女)に見えるので鈴としては彼の容姿もドストライクであるのだった。
綾波、宮古、嵐、鈴が4人で百合な性行為を行っている頃、碧刃はハジメ達が泊まっている大部屋を尋ねた。
「ミュウ以外は起きているな?」
「うん、起きてるけど…こんな夜遅くにどうしたの?碧刃」
ハジメは碧刃に問い、碧刃は先ほどの事を報告する。
「谷口…いや鈴の事だ。私の独断で悪いが、私は彼女を私達オーダーヴァンガードの一員として迎え入れ、同行させる事にした」
と報告する碧刃だったが、ハジメ達はまるでそうなるのをわかっていたかの様に対して驚きもしなかった。
「驚かないし反対もしないんだな」
「まぁ、こうなるのは予想出来てたし」
優花の言葉に皆は肯定するかの様に頷く。
「…彼女の気持ちは分からなくもない」
とユエはそう言い、皆はそうだそうだと言わんばかりに頷く。
「それに碧刃殿としてはアデプトテレイター化した上に裏切りにあった彼女を放っておけなかったのじゃろ?」
ティオの言葉に碧刃はそうだな、と返す。
「ならば、私達からとやかく反対意見を言う気はないです。歓迎するですよ」
「ありがとう、皆…」
ハジメ達が泊まっている部屋を出た碧刃は宿の外に出て
『―ちょい待て、もう一度言ってくれ』
「クラスメートの谷口鈴が蜘蛛型ジーオスから金属細胞由来の毒を注入され、神水で治療したらアデプトテレイターになった」
『まじかぁ…親御さんにどう説明すりゃ良いんだ…只でさえ召喚の件もあるのに…わかった。何とか説明しておく』
「助かる。ありがとう、つばめ」
そして翌朝早朝。勇者(笑)が今も爆睡中の中、メルド団長とクラスメート達を代表して八重樫、永山は碧刃の見送りとしてホルアドの門にいた。
「お前らにこれを貸しておこう。だが、使えるのは私が許可した者達のみだ」
と碧刃はハジメと共に作った武器の一部をメルド団長達に渡した。因みに武器の中には八重樫が使うようにと刀型の物もある。
「ありがとう、碧刃」
とメルド団長は礼を言い、八重樫と永山も礼を言う。
「八重樫、お前は今後どうするんだ?白崎と中村はお前にとっても親友だったのだろ?」
「そうね…昨晩はどうすれば言いか悩んだわよ。でも、香織の暴走は彼女に甘く接していた私の責任でもあるし、私は彼女達を止めたい」
「例え殺す事になってもか?」
「そうね、私にはそうしてでも止めなければならない責任があるわ」
「八重樫だけの責任じゃない。俺達にもそうしなければならない責任がある」
と永山も自身の考えも伝える。
「だから私達はメルド団長の元に残って自分を鍛え直す事にしたの」
「そうか…お前達の奮闘に期待する」
碧刃はそう言うと
皆がトレーラーに乗り込んでいく中、鈴は
「シズシズ、行ってくるね」
と八重樫に挨拶する。
「えぇ、鈴。気を付けてね」
鈴は八重樫と抱き合った後、トレーラーに乗り込む。
全員が乗ったのを確認したマグナコンボイはメルド団長や八重樫、永山に見送られながらホルアドを出発するのだった。
そして現在、グリューエン大砂漠。
「碧刃、三時方向で何か騒ぎが」
と優花が碧刃に報告する。
「私の方でも確認した。あれはグリューエン大砂漠にのみ生息するサンドワームだったか?」
このサンドワーム、普段は地中を潜行していて、獲物が近くを通ると真下から三重構造のずらりと牙が並んだ大口を開けて襲いかかるのたが、察知が難しく奇襲に優れているので、大砂漠を横断する者には死神のごとく恐れられている。
幸いなのはサンドワーム自身も察知能力は低い事だ。
「あいつらは偶然近くを通りかかったりしないい限り、遠くから発見され狙われるということはない筈だが…なんで、アイツ等あんなとこでグルグル回っているのか…?」
そう、サンドワームに襲われている者がいると仮定しててなしても何故かサンドワームがそれに襲いかからずに、様子を伺うようにして周囲を旋回しているだけという事に碧刃は疑問を抱いていた。
「まるで、食うべきか食わざるべきか迷っているようじゃのう?」
「確かにそう見える。だが、そんな事あるのか?」
碧刃はこの世界の事で一番博識であろうティオに問う。
「妾の知識にはないのじゃ。奴等は悪食じゃからの、獲物を前にして躊躇うということはないはずじゃが…」
と二人が会話していた時だった。
「碧刃!後方からサンドワームが来るわ!」
「我々も不運だったか…!」
マグナコンボイは牽引しているトレーラーにガトリングと連装砲を設置、3匹の内の1匹を蜂の巣にするが、その状況に残りの2匹はガトリングから放たれる銃弾の雨の中を掻い潜ってくる。
「碧刃、キラービークを出して良い?サンドワームが留まっていた理由を知りたい」
「良いだろう」
碧刃の言葉に優花は宝物庫からキラービークを出し、旋回しているサンドワームの調査へ向かわせる。
「白い衣服に身を包んだ人物が倒れているわ」
「という事はあのサンドワーム達はおそらくその人物を狙っていたんだろう。待ってろ、回収してくる。ハジメ、トレーラーを任せる」
マグナコンボイはそう言うとトレーラーを切り離し
「マグナコンボイ、トランスフォーム!」
ロボットモードへ変形、足裏のスラスターで倒れている人物の元へ行く。サンドワームはマグナコンボイに襲いかかろうとしたが、マグナコンボイのENソードは頭を切り落とされてしまうのだった。
マグナコンボイは着地するとその人物を連れてトレーラーの待機場所まで引き返す。
エジプト民族衣装であるガラベーヤに酷似した衣装に顔に巻きつけられるくらい大きなフードの付いた外套を羽織っていたその人物はうつ伏せに倒れており、フードによって顔が隠れている。
若い二十歳半ばくらいの青年だろう、彼は顔を苦しそうに歪ませ、大量の汗が浮かべていた。
「呼吸は荒く脈も早い。服越しでもわかるほど全身から高熱を発しているな。しかも、まるで内部から強烈な圧力でもかかっているみたいに血管が浮き出て目や鼻といった粘膜から出血もしている。明らかにただの日射病や風邪というわけではないみたいだな」
マグナコンボイはスキャナーで青年の身体を調べる。マグナコンボイはこの世界で日々を過ごす上でスキャナーなどに逐一アップグレードを施しているのだ。
「何か分かったの?」
トレーラーから聞こえてきたハジメの言葉にマグナコンボイはこう返した。
「…摂取した毒物で体内の魔力が暴走しているようだ。何かよくない飲み物を摂取して、それが原因で魔力暴走状態になっている。
外に排出できないからか、内側から強制的に活性化・圧迫させられて、肉体が付いてこれてない…このままだと内蔵や血管が破裂し、出血多量や衰弱死の可能性がある」
「神水で治らないかな?」
「試してみる価値はあるだろう」
と鈴の提案にマグナコンボイは賛同し、鈴は宝物庫の子機から神水が入った小瓶を出すとトレーラーから出てマグナコンボイの掌に乗る。
「まずは余剰魔力を抜き出せないか試してみる」
マグナコンボイは青年の余剰魔力を抜き出そうとしてみる。
オルクス大迷宮で白崎がマグナコンボイにやっていた魔力吸収…その実態は一定範囲内における人々の魔力を他者に譲渡する光系の上級回復魔法"廻聖"であるが、それに着想を得たマグナコンボイは周囲の魔力粒子を吸収出来るトランステクターやアデプトテレイター用武器の技術を応用し、光系の上級回復魔法"廻聖"を自分なりに模倣した魔法を編み出す事に成功したのだ。
マグナコンボイは青年から余剰な魔力を抜くとエネルゴンマトリクスに吸収させ、鈴は注射器に入れた神水を青年に注射する。
やがて青年の呼吸が安定し、体の赤みも薄まり、出血も収まってきたようだ。
「ユエとティオはこの症状について何か知らないか?」
マグナコンボイはこの世界の知識に詳しいだろうユエとティオに訊ねるが、二人も該当知識はないようだった。
「原因不明の未知の病、か…」
マグナコンボイはアデプトテレイターを除いた面々をスキャナーで診察したが、異常は見当たらないという状態だった。
そうこうしている内に青年は意識を取り戻した。
「此処は…」
「目が覚めたみたいだな。私はマグナコンボイ、またの名を頼尽碧刃。オーダーヴァンガードというパーティーを率いている。青き銃士か青き騎神銃士と言えばわかるか?」
「噂には聞いている…」
「じゃあ、お前は何者だ?」
「私の名はビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ。助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと…アンカジまで終わってしまうところだった」
「アンカジまで終わってしまうって何が起きているの?」
「詳しく聞かせてほしい」
鈴とマグナコンボイの言葉にビィズは頷き、マグナコンボイと鈴は彼をトレーラーの中に案内する。
―side:Magna Convoy―
「さて、アンカジで何が起きたんだ?」
碧刃としての姿になった私はトレーラーの中でビィズという男に問う。
「四日前、アンカジにおいて突然、原因不明の高熱を発し倒れる人が続出した。
初日だけで人口27万人のうち3000人近くが意識不明に陥り、症状を訴える人が2万人に上った。医療院は直ぐに飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たったが…進行を遅らせることは何とか出来ても完治させる事は出来ず、次々と患者は増えていくばかりか医療関係者の中にも倒れるものが現れ始めた。
進行を遅らせるための魔法の使い手も圧倒的に数が足りず、なんの手立ても打てずにいる中、処置を受けられなかった人々の中から死者が出始めた。その者は発症してから僅か二日だった。
そして、一人の薬師が液体鑑定をかけた結果、その水には魔力の暴走を促す毒素が含まれていることがわかった。
最悪の事態を想定しながら直ちに調査チームを組んでオアシスが調べられたのだが…案の定、オアシスそのものが汚染されていた」
「なるほどな…アンカジのような砂漠のど真ん中にある国において、オアシスは生命線だからな。
だからこそ、その警備、維持、管理は厳重に厳重を重ねてある。普通に考えれば警備を抜いて、オアシスに毒素を流し込むなどできないと言っても過言ではないほどに、あらゆる対策が施されているのに、か…」
「あぁ、一体どこから、どうやって、誰が…だが、それより重要なのは2日以上前からストックしてある分以外に使える水がなくなってしまったということだ」
「そして、既に汚染された水を飲んで感染してしまった患者を救う手立てがないということか」
「その通りだ。しかし、全くない訳ではない。砂漠のずっと北方にある岩石地帯かグリューエン大火山で少量採取でき、魔力の活性を鎮める効果を持っている特殊で貴重な鉱石"静因石"を使う方法だ。
粉末状にしたものを服用すれば体内の魔力を鎮めることが出来る。
しかし、北方の岩石地帯は遠すぎて往復に少なくとも一ヶ月以上はかかってしまうし、グリューエン火山に行って静因石を採取し戻ってこられる程の者は既に病に倒れてしまっている。
それにどちらにしろ安全な水のストックが圧倒的に足りない以上、王国への救援要請、それも強権を発動して直接救援要請できる私やその家族が行く必要があった。
父上や母上、妹も既に感染していて、アンカジにストックしてあった静因石を服用することで何とか持ち直したが、衰弱も激しく、とても王国や近隣の町まで赴くことなど出来そうもなかった。
だから、私が救援を呼ぶために一日前に護衛隊と共にアンカジを出発したのだが…」
「しかし症状は出ていなかったが…感染していたという事か。発症までには個人差があったのだな」
「その通りだ。家族が倒れ、国が混乱し、救援は一刻を争うという状況に…動揺していたようだ。万全を期して静因石を服用しておくべきだった。護衛をしていた者達も、サンドワームに襲われ全滅してしまい私だけが生き残ってしまった。今、こうしている間にも、アンカジの民は命を落としていっているというのに…情けない!」
次期領主になるであろうビィズは責任感の強い民思いな人物みたいだな。
「君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい!」
ビィズは私達に頭を下げる。暫くの沈黙の後、私は彼にこう告げた。
「頭を上げてほしい。我々は貴殿に協力しよう。まずはアンカジに案内してほしい」
To be continue
メタルスダイノヴェインのベース(あくまでもベースなので色や形状を変えます)
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ADブラックナイトグリムロック型
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TLKダイノボットスコーン
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メタルスメガトロン型