青き銃士と戦女神(ヴァルキリー)   作:衛置竜人

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予め言っておきますが、本作ではエヒトとアルヴに関して原作から設定(主に種族)を大幅に変えます。はっきり言って別物と化しますのでご了承ください。


第30話『アンカジを救え』

 

 

魔人族の国たる魔国ガーランド。カトレアに連れられて中村と白崎は足を踏み入れた。

「カトレア、只今帰還しました。アルヴ様」

カトレアは玉座に座る存在に頭を下げる一方、中村と白崎はその存在に驚愕を隠せなかったのだ。

人より巨大…それでこそマグナコンボイに匹敵するであろう鋼鉄の身体は各部のパーツから航空機に変形する事が伺える。

「驚きを隠せないみたいだな」

とアルヴと呼ばれた存在は白崎と中村に言う。

「私はアルヴヘイト。魔人族の神にしてこの国の王たる"トランスフォーマー"だ」

 

 

 

―side:Magna Convoy―

 

 

赤銅色の砂が舞う中、到着したアンカジはフューレンを超える外壁に囲まれ、外壁も建築物も軒並み乳白色となっている。

外壁は不規則な形で都を囲み、各所から光の柱が天へと登って上空で他の柱と合流してアンカジ全体を覆う強大なドームを形成している。

このドームが砂の侵入を防いでいるらしく、月に何度か大規模な砂嵐に見舞われても、曇天のような様相になるだけでアンカジ内に砂が侵入する事はないらしい。

時折、まるで水中から揺れる水面を眺めているかの様に何かがぶつかったのか波紋のようなものが広がっており、美しく不思議な光景が広がっていた。

 

私達は、砂の侵入を防ぐ目的から魔法によるバリア式になっている光り輝く巨大な門からアンカジへと入都した。現状によって覇気がなかった門番は次期領主の姿を見るなり直立不動となり、覇気を取り戻した。

尚、アンカジの入場門は高台にあり、アンカジの美しさを最初に一望出来るようになっていた。

東側にあるオアシスは太陽の光を反射して煌めいており、その周辺には多くの木々が生えていて非常に緑豊かだ。

そしてその水は、幾筋もの川となって町中に流れ込み、砂漠の中にあるとは思えない程小船があちこちに停泊し、町のいたるところに緑豊かな広場が設置されていている。

北側は農業地帯となっており、多種多様な果物が育てられているのがわかるし、西側には純白と言っていい白さで一際大きな宮殿らしき建造物があり、あれが領主の住む家なのだろう。

その宮殿の周辺は行政区になっているのか無骨な建物が区画に沿って規則正しく並んでいる。

 

アンカジは砂漠の国でありながら、まるで水の都だった。

しかし、今は通りに出ている者は極めて少なく、ほとんどの店も営業していない。

暗く陰気な雰囲気に覆われていたが、本来はエリセンとの中継地であることや果物の取引で交易が盛んで、観光地としても人気のあることから活気と喧騒に満ちた都であった筈なのだろう。

「皆様にも活気に満ちた我が国をお見せしたかった。すまないが、今は、時間がない。都の案内は全てが解決した後にでも私自らさせていただこう。一先ずは、父上のもとへ。あの宮殿だ」

 

 

ビィズ氏の顔パスで私達は宮殿内に入り、そのまま領主であるランズィ氏の執務室へと通された。衰弱が激しいと聞いていたのだが、どうやら治癒魔法と回復薬を多用して根性で執務に乗り出していたらしい。

「父上!」

「ビィズ!お前、どうして…それにこの者達は…」

私は一歩前に出て挨拶をする。

「始めまして、領主ランズィ殿。私は頼尽碧刃。オーダーヴァンガードというパーティーを率いるリーダー…青き銃士と言えば分かるでしょうか?」

「青き銃士…噂には聞いているが…」

その後、私達は事情説明をした後、皆に指示を出す。

「水の確保だが…オアシスが汚染され、その原因がわからない以上はどこかに仮の貯水池を用意しておかなくてはならない。領主殿、何処かに最低でも200メートル四方の開けた場所は?」

「うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが…」

「よし、ユエとハジメは貯水池の作成を頼む。綾波と優花、ティオでオアシスの調査に行ってほしい。他の者達は私と共に医療院と患者が収容されている施設へ行くぞ」

私の指示に従い、皆は各班に別れてそれぞれの役割を果たしに行くのだった。

 

 

―side out―

 

 

現在、ハジメとユエはランズィやその付人と共に農業地帯を訪れていた。

ランズィは未だに半信半疑であり、もしこの非常時に謀ったと分かれば即座に死刑にしてやると言わんばかりの心境である。

普通なら無理だと疑っていたランズィ達はユエが魔法を行使した瞬間に驚愕一色に染まった。

「"壊劫"」

ユエは右手を前方の農地に頭上に向けて真っ直ぐにつき出し、その先に黒く渦巻く球体が出現させる。

農地の上で球体は形を変え、薄く四角く引き伸ばされていって200メートル四方の薄い膜となった後、一瞬停滞した後に音も立てずに地面へと落下、そのまま何事もなかったかのように大地を押しつぶしたのだ。

大地は凄まじい圧力により盛大に陥没し、地響きが鳴り響く。

農地は一瞬にして超重力を掛けられ、200メートル四方、深さ5メートルの巨大な穴となった。

ハジメはランズィ達を見るが、彼ら全員が口を開けけ、目も見開いていた。

衝撃が強すぎて声が出ないようだ。

「…ハジメ」

「分かったよ、ユエ」

ハジメはキラービークを出すとそれに捕まって穴の中に入り

「錬成!」

と口にして貯水池の中を神水を飲みながら連続で錬成して舗装していき、それが終わると貯水池から出る。

ハジメが貯水池から出たのを確認したらユエは神水で回復した上で

「…ん、"虚波"」

大波を作り出して相手にぶつける水系上級魔法の一つである虚波を使う。

普通の術師では10から20メートル四方の津波が発生する程度だが、ユエが行使すると桁が変わり、横幅150メートル高さ100メートルの津波が虚空に発生すると一気に貯水池へと流れ込み、百合はそれを連発する。

「…こんなことが…」

ランズィは信じられない光景にに呆然としながら眼前で太陽の光を反射してオアシスと同じように光り輝く池を見つめる。

「取り敢えず、これで当分は保つと思います。あとはオアシスを調べている優花達次第ですね」

「あ、ああ。いや、聞きたい事は色々あるが…ありがとう。心から感謝する」

 

 

綾波、優花、ティオはビィズの案内で件のオアシスを訪れていた。

「ビィズ殿、調査チームはどの程度調べたのじゃ?」

「資料ではオアシスとそこから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査を行ったようだ。水質に関しては地下水脈は特に異常は見つからなかった。

もっとも、調べられたのは、このオアシスから数十メートルが限度でオアシスの底まではまだ手が回っていない」

「オアシスの底には、何かアーティファクトでも沈めてあるの?」

優花の言葉にビィズはこう返した。

「いや、オアシスの警備と管理に"真意の裁断"というアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある。結界系のアーティファクトで、オアシスだけでなくアンカジを守っている。

砂の侵入を阻み、空気や水分など必要なものは通す作用があり、何を通すかは設定者の側で決めることが出来る。

そして、単純な障壁機能だけでなく探知機能もあり、何を探知するかの設定も出来る」

「つまり、オアシスに対して悪意のあるものと設定すれば、それが反応し、設定権者に伝わるのね」

「現在は調査などで人の出入りが多い上、既に汚染されてしまっていることもあり警備は最低限を残して解除されている。

しかし、本来オアシス全体を汚染されるなどありえない事だ。事実、今までオアシスが汚染されたことなど一度もなかった」

「なるほどね…じゃあ、あれは何かしら?」

優花の言葉にビィズは疑問を浮かべ、優花はこう続けた。

「エネルギー反応が出てる…明らかに何かいるわね」

優花はトライデントスピアーを出すと

「纏雷!」

とトライデントスピアーに電気を流し、バチバチという音が響いた後、現れた"それ"は触手を伸ばして優花に襲いかかろうとするが、優花は後ろに下がって回避する。

そして、オアシスの水面が突如盛り上がったかと思うと、重力に逆らってそのまませり上がり、十メートル近い高さの小山になったのだ。

「どうやらあれが犯人みたい…です」

「なんだ…この魔物は一体…?バチュラム…なのか?」

と呟く綾波とビィズ。

バチュラムとはこの世界に於けるスライム型の魔物である。

この手のスライム型の魔物といえば体長1メートルくらいである事が多く、周囲の水を操るような力もなく、少なくとも自身の肉体以外では触手のように操ることは出来なかったはずである。

しかし、彼ら達の前にいるバチュラムは体長10メートル、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持っている

「アデプタイズ!ダイノヴェイン、変身(マキシマイズ)!」

綾波はダイノヴェインと一体化し、ロボットモードへ変形する。

「恐らく斬撃や打撃は効果ない…です。銃火器で仕留めるです」

ダイノヴェインはリボルビングバスターキャノンを装備すると魔力粒子を溜め込み、優花とティオは援護としてバチュラムを攻撃し、動きを牽制する。

「チャージ完了!2人共、下がるです!」

「えぇ!」

「わかったのじゃ!」

タイミングを見計らって優花とティオがバチュラムから距離を取ると

「発射!」

リボルビングバスターキャノンから放たれた魔力粒子砲による強力な一撃と熱量によって魔石は一瞬で消滅し、同時にバチュラムを構成していた水も力を失ってただの水へと戻り、大量の水が降り注ぐ音を響かせながらオアシス激しく波立つ。

「…終わったのか?」

「えぇ、もう、オアシスに魔力反応はない。原因を排除した事で浄化されたのかと言えるのかは分からないけど」

オアシスを汚染していた元凶が目の前で消滅したことを受け、同行していたビィズやランズィの部下の一人が水質の鑑定を行った。

「…どうだ?」

「…いえ、汚染されたままです」

部下は落胆した様子で首を振った。

元凶を排除しても一度汚染された水は残るという事実にビィズ達は落胆が隠せないようだ。

「まぁ、そう気を落とすでない。元凶がいなくなった以上、これ以上汚染が進むことはない」

とティオはビィズを慰め、ビィズ達は気を取り直し復興に向けて意欲を見せ始めた。

「…しかし、あのバチュラムらしき魔物は一体なんだったのか……新種の魔物が地下水脈から流れ込みでもしたのだろうか?」

気を取り直したランズィが首を傾げてオアシスを眺める。

「おそらくですが…魔人族の仕業じゃないかしら?」

「魔人族だと!?優花殿、貴殿がそう言うからには思い当たる事があるのだな?」

驚いた表情を見せながらもすぐさま冷静さを取り戻したビィズに優花はこう推測した。

「おそらく、魔人族の魔物の軍備は整いつつあるから戦争が本格化する前に危険や不確定要素、北大陸の要所に対する調査と打撃を行っているんじゃないかしら。食料事情を一変させられる作農師の愛ちゃん先生と勇者の天之河を狙ったのがいい証拠よ」

「それにこのアンカジは、エリセンから海産系食料供給の中継点じゃ。果物やその他食料の供給も多大じゃから食料関係において間違いなく要所であると言えるのう」

「しかも襲撃を受けた場合、大砂漠のど真ん中という地理から救援も呼びにくいです。魔人族が狙うのもおかしな話ではないです」

とティオと綾波は付け足す。

「魔物のことは聞き及んでいる。こちらでも独自に調査はしていたが…よもや、あんなものまで使役できるようになっているとは…見通しが甘かったか」

「仕方ないんじゃないわよ。天之河達が襲われたのもつい最近の事よ」

「いよいよ、本格的に動き出したということか…優花殿、綾波殿…貴殿達は冒険者と名乗っていたが…そのアーティファクトといい、強さといい、もしかして…」

ビィズの言葉に優花はどうかしらと言わんばかりに何も答えず肩を竦め、綾波はそもそも神の使徒として召喚されたのではなく簡単に言えば迷い込んだだけなので首を横に振って否定する。

2人の返答にビィズは何か事情があるのだろうとそれ以上の詮索を止めた。

だが、どんな事情があろうとアンカジが彼女達に救われたことに変わりはないのだ。

ビィズは3人に対しお礼を言うのだった。

 

 

その頃、碧刃は医療院に赴いてビィズにそうした様に病に感染し、魔力暴走状態に陥っているアンカジの民から余剰魔力を吸収し、宮古、嵐、鈴、シア、ミュウは彼らに神水を飲ませて治療していく。

医療院の職員達は民達を次々と治療していく彼らの姿に、驚愕を通り越すと深い尊敬の念を抱いたらしい。

途中でハジメとユエ、綾波、優花、ティオも合流し作業に参加。

ビィズとランズィ、彼らの付き人は此処でも驚きを隠せなかったのだ。

 

 

アンカジの民達の治療が終わった後、碧刃達はランズィから呼び出された。

「碧刃殿、そしてオーダーヴァンガードの皆様方、アンカジ公国領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、国を代表して礼をいう。この国は貴殿等に救われた」

ランズィはそう言うとビィズや部下達と共に深々と頭を下げた。領主たる者が、そう簡単に頭を下げるべきではないのだろうが、これも民を思う心愛国心が並々ならぬものであるからだろう。

それを周囲の部下達も理解しているからこそランズィが一介の冒険者を名乗る彼らに頭を下げても止めようとせず、一緒に頭を下げているのだろう。

そして、それは息子にもしっかり受け継がれているのか仕草も言動もそっくりである。

「頭を上げて欲しい。ランズィ殿、貴方に頼みがある」

「頼みとは?」

「この先、我々は教会と敵対することになるだろう。もしそうなった時に後ろ盾になって欲しい。我々の味方になって貰えれば嬉しいが、最低でも中立の立場となってくれればありがたい。

この条件を呑んでくれるのなら防衛用の設備や一部の技術提供も行おう」

碧刃の言葉にランズィは少し考えた後、それを了承した。

それから碧刃達は今後の事についてあれやこれやと話し合い、碧刃達は大迷宮の一つたるグリューエン大火山へ挑むと同時に今後アンカジにもしもの事が起きた時に備えて静因石の採取も行う事になった。

量に応じて報酬を支払うとの事だ。

だが、グリューエン大火山に挑む上で問題となるのがミュウの事だ。護衛のソニックバードがいるとしても大迷宮へ挑むのには危険が大きすぎる…誰か一緒に此処で待っておくべきだろう。

「ミュウ、私達はこれからグリューエン大迷宮に挑む事になるが、大迷宮の探索には危険が伴う。魔物とはいえ今まで生きていた物を殺したり…それでこそ魔人と殺し合いをすることになるかもしれない。私としては本音を言えば、その光景をお前に見せたくはない。だから此処で待っていてくれるか?」

「うぅ、いい子してるの。だから、早く帰ってきて欲しいの」

「ああ、出来るだけ早く帰る」

「碧刃、私がミュウの面倒を見るよ。私じゃ魔法の適性自体ないから獲得しても宝の持ち腐れになるだろうし」

「僕も残るよ。魔法の適性がないのは僕も同じだからね」

「綾波も残る…です。もし魔人族の襲撃があった時に備えるです」

とミュウの護衛に宮古、嵐、綾波が名乗り出た。

「3人共、頼んだぞ」

碧刃は綾波、宮古、嵐の頭を優しく撫でるとハジメ、優花、鈴、ユエ、シア、ティオを連れてグリューエン大火山へ向かうのだった。

 

 

 

 

第46太陽系の地球、園部優花の両親が経営する洋食レストランはその日は臨時休業となっていた。

店内にいるのはハジメの両親と優花の両親、鈴の両親…そう、碧刃のクラスメートの中でオーダーヴァンガードに所属しているメンバーの両親である。

そして彼らを此処へ呼び出したのは

「南雲さん、園部さん、谷口さん。本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。園部さんに関してはわざわざ貸し切りにしてもらってありがとうございます。

改めてまして、私は皆様方のご子息のクラスメートの一人、頼尽碧刃の養母にして特殊災害対策機関(ネスト)に所属しております頼尽あかりと申します」

「同じく頼尽ヴェールヌイです」

「この2人の上司の立木つばめです」

そう、あかり、ヴェル、つばめである。

「皆様方をお呼びしたのはこの度の事件の事と皆様方のご子息が私共の養子が行動を共にしているからです。今回の話は出来るだけ他言無用でお願いします」

「そして谷口さん、貴殿方のご息女に関してどうしても話さなければならない事があります」

あかりとヴェルがそう前置きをした後、彼女達とつばめは今回のトータスへの召喚の件とハジメ、優花、鈴が現在碧刃が率いるパーティーであるオーダーヴァンガードのメンバーとして行動を共にしている事、そして鈴がアデプトテレイター化した事とアデプトテレイターの事について話すのだった。

 

結論を言うと3人の話を彼らは受け入れた。そして谷口夫妻は鈴の身に起きた事…人外の存在となってしまった事にショックを受けて涙しつつも考えた末に娘の今後を碧刃に託したいと語ったそうである。

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

メタルスダイノヴェインのベース(あくまでもベースなので色や形状を変えます)

  • ADブラックナイトグリムロック型
  • TLKダイノボットスコーン
  • メタルスメガトロン型
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