青き銃士と戦女神(ヴァルキリー)   作:衛置竜人

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第31話『火山の襲撃者』

 

グリューエン大火山はアンカジ公国より北方に約100キロメートルの位置に存在し、見た目が直径約5キロメートル、標高3000メートル程の巨石というべきだろう。

成層火山のような円錐状の山ではなく溶岩円頂丘のように平べったい形で、山というより標高と規模が並外れている巨大な丘と表現するほうが相応しいグリューエン大火山は七大迷宮の一つとして周知されていながらオルクス大迷宮のように冒険者が頻繁に訪れるということはない。

 

というのもオルクス大迷宮の魔物のように魔石回収のうまみが少ない上に内部も危険かつ厄介で、更にグリューエン大火山自体がすっぽりと覆われて完全に姿が隠されているとでも言わんばかりに巨大な渦巻く砂嵐に包まれており、まず入口にたどり着ける者が少ないからである。

「あれじゃ砂嵐の竜巻というより流動する壁と行ったほうがしっくり来るよ」

「確かに鈴の言う通りだな」

そしてこの砂嵐の中にはサンドワームを筆頭に様々な魔物が数多く潜んでおり、視界すら確保が難しい中で容赦なく奇襲を仕掛けてくるというのだから、並みの実力ではグリューエン大火山を包む砂嵐すら突破できないと言われている。

「つくづく、徒歩でなくて良かったですぅ」

「流石の妾も、生身でここは入りたくないのぉ」

「私も遠慮したいわね」

「僕もだよ」

シア、ティオ、優花、ハジメがそう言う中、トレーラーを牽引しているマグナコンボイは自身を加速させ、砂嵐の中へ突入し、道中でサンドワームの襲撃がありながらも先へ進んだのだは良いのだが、やがて傾斜角的にマグナコンボイがビークルモードのままで進むのが厳しくなってきた場所に到達した。

「マグナコンボイ、トランスフォーム!」

マグナコンボイはロボットモードへ変形するとトレーラーを背負ってグリューエン大火山の内部へ入った。

 

グリューエン大火山の内部ではマグマが宙に浮いて、そのまま川のような流れを作っている。巨大な龍が飛び交っているかの様に赤熱化したマグマが空中をうねりながら真っ赤に流れていく。

無論、マグマは空中だけでなく通路や広間のいたるところにも流れており、地面と空中の両方に注意する必要がある。

現れる魔物も炎属性の魔物ばかりで、例えばその身にマグマを纏わせ、立っている場所もマグマの中で口からマグマを吐くという雄牛型の魔物やマグマの中を泳いだりまるでドリルの様に回転しながら地面や壁、天井を進む独特の形状の硬い嘴を持つ蜥蜴の様な魔物、シーラカンスに二本の足が生えた様な見た目でマグマの中を泳いだり陸上を歩いたりする魔物などが生息している。

そんな火山の中を碧刃としての姿になったマグナコンボイとハジメ達は熱源感知を常時発動しながら進んでいた。

普通なら暑さに耐えきれないだろうが、碧刃達はこの時の為に極暑地帯での行動用に冷却スーツを開発し、それを着て探索を行っていた。

魔物への対処は高圧の水を出すだけでなく超低温レーザーも放つ事が出来る冷凍兵器としての機能も有するウォーターアームズで対処し、魔物を倒しながら進んでいった碧刃達はあちこち人為的に削られている場所を発見した。

ツルハシか何かで砕きでもしたのかボロボロと削れており、その壁の一部から薄い桃色の小さな鉱石が覗いていた。

「ティオ、これが静因石か?」

と碧刃はティオに問う。

「間違いない。静因石じゃ」

「という事は、此処はどうやら砂嵐を突破してグリューエン大火山に入れる冒険者の発掘場所のようだな」

「だけど、この静因石…小さいね」

「ほかの場所も小石サイズばっかりですね」

鈴やシアの言葉通り…残されている静因石の殆んどが小指の先以下のものばかりなのだ。

「ほとんど採られ尽くしたというのもあるのだろうが、そもそも小さいんだろうな」

「やはり表層部分では静因石回収の効率が悪すぎるのさかしら?」

「そうだろうな、優花。一気に大量に手に入れるには深部に行く必要があるようだ」

 

 

 

更に先へ進みつつも、幾ら早く攻略した方が良いとは言えぶっ通しで探索する訳にもいかない。

「ハジメ、マグマから比較的に離れている壁を錬成して横穴を開けて欲しい」

「うん、わかった」

ハジメはそう言うと指示通りに錬成によってマグマから離れた場所に横穴を開け、碧刃達全員が入った後、マグマの熱気が直接届かないよう入口を最小限まで閉じ、更に"鉱物分離"と"圧縮錬成"を使って部屋の壁の表面だけ硬い金属でコーティングし、魔物やマグマの噴射に襲われないよう安全を確保した。

「これ、生身で来るのはキツイ」

「…ハジメの言う通り。これは生身じゃキツイ」

とハジメとユエはそう言いながら水を飲む。

「…おそらく、それがこの大迷宮のコンセプトなのじゃろうな」

「コンセプトですか?」

シアの言葉にティオはこう返す。

「うむ。皆から色々話を聞いて思ったのじゃが、大迷宮は試練なんじゃろ?神に挑むためのなら、それぞれに何らかのコンセプトでもあるのかと思ったのじゃよ。

例えば、碧刃殿が話してくれたオルクス大迷宮は、数多の魔物とのバリエーション豊かな戦闘を経て経験を積むこと。ライセン大迷宮は、魔法という強力な力を抜きに、あらゆる攻撃への対応力を磨くこと。このグリューエン大火山は、暑さによる集中力の阻害と、その状況下での奇襲への対応といったところではないかのぉ?」

「攻略することに変わりはないから特に考えたことなかったけど、試練そのものが解放者達の教えになっている訳だね」

ハジメの言葉にティオは頷く。

 

休憩終了後、碧刃達は探索を再開する。

「どうしたの、碧刃?」

「いや、マグマが岩などで流れを阻害されているわけでもないのに大きく流れが変わっていたり、何もないのに流れが急激に遅くなっていたり時々不自然な動きを見せているなと思ってな。

宙を流れるマグマに至っては一部だけ大量にマグマが滴り落ちている。

通路から離れたマグマの対岸だったり、攻略の障害にはならないだろうから気にも止めていなかったが…」

碧刃はハジメにそう答え、ハジメは鉱物系探査で調べてみる。

「確かに"鉱物系探査"で見たら不自然な動きをしているね」

その言葉である事に気付いたのかティオはこう告げた。

「もしかしたら静因石が原因かもしれんのう。マグマそのものに宿っている魔力が静因石により鎮静されて、流れが阻害されているかもしれぬのじゃ」

「ならば、マグマの動きが強く阻害されている場所に静因石は大量にあるかもな。そうだと分かればそのポイントを探してみるか」

碧刃達はマグマの動きが強く阻害されているポイントを探し

「碧刃、見つけたよ!大量の静因石が埋まっている場所」

ハジメは大量の静因石が埋まっているポイントを発見した。

「よし、マグマの動きに注意しつつ採掘するぞ」

碧刃達は相当な量の静因石を集めた後、予備用にもう少しだけ集めておこうと、宙に流れるマグマが大きく壁を迂回するように流れている場所へ向かい、ハジメは錬成を使って即席の階段を作成して近寄る。

「鉱物系探査を使って見てみたけど、充分な量の静因石が埋まってる!」

「しかし、そこの静因石を採るとマグマが勢いよく吹き出すかもしれない。トレーラーを用意しておくから静因石を回収したら即座にトレーラーに退避しろ。鈴とユエは障壁を頼む」

碧刃は宝物庫からマグマの高熱にも耐えられるトレーラーを出すと本来の姿(マグナコンボイ)となり、ワイヤーでトレーラーと繋がると掌に鈴とユエを乗せ、2人は障壁を張る。

ハジメは錬成の"鉱物分離"を使い静因石だけを回収、静因石が取り除かれた壁はその奥からマグマを勢いよく噴き出し、鈴とユエが障壁でマグマを防いでいる間にハジメはトレーラーに飛び乗り、マグナコンボイは障壁を展開し続ける鈴とユエをトレーラーに乗せると碧刃としての姿になってトレーラーに飛び乗る。

碧刃がトレーラーに乗った後、鈴とユエの障壁で防がれてきたマグマはまるで亀裂の入ったダムから水が噴出し決壊するように穴を押し広げて一気に流れ込んだ。

トレーラーは流されるままにマグマの上を漂い、やがて宙を流れるマグマに乗って、階段とは異なるルートでグリューエン大火山の深部へと、時に灼熱の急流滑りを味わいながら流されていくのだった。

 

 

―side:Magna Convoy―

 

 

トレーラーに乗った私達は道中、襲撃してくる翼からマグマを飛ばしてくるコウモリに対してはウォーターアームズで撃退していく。

トレーラーは洞窟の中に入ったり、滝の様に落ちたりしつつライセン大迷宮の最終試練の部屋よりも広大な空間へとたどり着いた。

空間は自然そのままの歪な形をしているため正確な広さは把握しきれないが、少なくとも直径3キロメートル以上はあり、地面はほとんどマグマで満たされている。

所々に岩石が飛び出していて僅かな足場を提供し、周囲の壁も大きくせり出している場所もあれば削れているところもあり、空中にはやはり無数のマグマの川が交差し、そのほとんどは下方のマグマの海へと消えていっている。

そして、マグマの海の中央に海面から十メートル程の高さにせり出ている岩石の小さな島があり、その上をマグマのドームが覆っていた。

「あそこが住処かな?」

「階層の深さ的にも、そう考えるのが妥当だろうな」

ハジメの言葉に私はそう返す。

「でも、そうなると最後のガーディアンがいるはず」

「でも、優花さん。ショートカットして来たっぽいですし、とっくに通り過ぎたと考えてはダメですか?」

とシアは自分の考えを口にする。

「もしくはこれからあるのか…」

私がそう呟いた後、宙を流れるマグマからマグマそのものが弾丸のごとく飛び出してきた。

私はトレーラーに装備されたウォーターアームズから冷却弾を放ってそれを相殺する。

「総員、戦闘態勢!」

私達はトレーラーから降り

「アデプタイズ!マグナコンボイ、トランスフォーム!」

私はトランステクターを顕現させて本来の姿(マグナコンボイ)となる。

「あれが試練の相手のようだな…マグマスネークとでも呼ぶべきか?」

私達の前に現れたのはマグマで出来ている巨大な蛇だった。しかも複数もいる。

「魔石の位置も特定できない…」

と優花は口にする。

「でも、倒すしかないですよ」

「…シアの言う通り…倒してみたらわかるかもしれない」

私はそう言いながらコンボイガンやイオンブラスターを使ってマグマスネークを討伐していき、皆もウォーターアームズでマグマスネークの討伐を開始するが、奴らはまるでゴキブリや大量発生した時のジーオスの様に次から次へと現れては襲いかかってくる。

 

数十分は経っただろうか、全員でマグマスネークを100匹倒した所でマグマスネークの出現が止まった。

「出てこないですね」

とシアはそう呟く。

確かにこれ以上出てくる気配がない。

「…皆、あれ…」

ユエが指差した方角―中央の島に視線を移すと岩壁の一部が拳大の光を放っていた。

保護色になっていてわかりづらいが、かなりの数の鉱石が規則正しく中央の島の岩壁に埋め込まれており、そこからオレンジ色の光が放たれている。

その数はマグマスネークの総討伐数と同じく100個、その全てが光っていた。

「もしかしたら、あれってあいつらの討伐数を示すものなんじゃないかな?」

「なるほど、ハジメの言う通りかもな」

と私が答えた時だった。

「クゥワッキャ、クゥワッキャ、キシャァァァァァァァァァァ!」

聞き覚えのある声が聞こえてきたかと思ったら私達の後ろの壁が破壊され、其処から現れた存在が私達に向けてエネルギー弾を放ち、鈴とユエは障壁を張ってその砲撃を防ぐ。

エネルギー弾を放ってきたのは白い外殻に後ろ足がヒレになっているジーオスだった。

「ジーオス…という事は…」

白ジーオスの後ろから現れたのは純白の巨竜に乗った赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男だ。

男の周りにはそれよりも小さな竜が幾つもいた。

見た感じ、ジーオスはあの後ろ足がヒレになっている物だけのようだ。

「魔人族か…私達に何の用だ?」

「貴様等こそ一体何者だ?いくつの神代魔法を修得している」

「はいそれと答えると思ったか?名乗るのなら自分から名乗れ」

「私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である」

「神の使徒、か。大仰だな。神代魔法を手に入れたから、そう名乗ることが許されたってところか」

「その通りだ。神代の力を手に入れた私に、"アルヴ様"は直接語りかけて下さった。"我が使徒"と。故に私は己の全てを賭けて主の望みを叶える。その障碍と成りうる貴様等の存在を、私は全力で否定する」

「そうか…私はマグナコンボイ。オーダーヴァンガードのリーダーだ」

私達が臨戦態勢に入るとフリードは白ジーオスに指示を出した。

「マグナコンボイをやれ、ジーオスレッジ」

フリードの指示に白ジーオス…ジーオスレッジは咆哮すると私に向けてエネルギー弾を放ち、私はイオンブラスターで相殺する。ハジメ達はそれぞれの武器で小さめの竜達の相手をする。

「私の連れているのが竜だけだと思ったか?この守りはそう簡単には抜けんよ。さぁ、見せてやろう。私が手にしたもう一つの力を。神代の力を!」

フリードはそう言うと極度の集中状態に入り、複雑怪奇な魔法陣が描かれている大きな布を手にして詠唱を唱え始めた。

「このグリューエン大火山で手に入れた神代魔法か…」

ハジメはそう呟く。

神代魔法の効果は絶大だ。私達は詠唱を妨害しようとフリードを攻撃しようとするが、小型の竜―灰竜が障壁を展開させ、突破されて消し飛んでも直ぐに後続が詰めて新たな障壁を展開する上に私の場合はジーオスレッジに邪魔される。

私はENソードでジーオスレッジの右前ヒレを切り落とし、更に口の中にENソードを串刺しにするが

「"界穿"!」

そうしている間にフリードの詠唱が完了し、フリードと白竜の前に光り輝く膜のようなものが出現、フリード達はそれに飛び込んだのだ。

「碧刃さん!後ろです!」

シアの警告通り、振り向くと白竜の背に乗って私を睨むフリードと大口を開けた白竜がおり、膨大な熱量と魔力が白竜の口内に臨界状態まで集束・圧縮されて発射され、私はジーオスレッジを盾にその攻撃に耐えた。

ジーオスレッジはENソードでコアを貫通させられた上に白竜の一撃でトドメを刺されたのか機能停止してマグマの中へ落ちていった。どうやら強さ的にはジェネラル級ジーオスと変わらない程度の様だ。

「何というしぶとさだ…紙一重で決定打を打てないとはな」

フリードはそう言うと次の魔法を放つ為に詠唱し始める。

「大人しく魔法を放たせるとでも思ったか?」

私はコンボイガンを発砲して詠唱を妨害しようてしたが、フリードと白竜に到達する前にあの小さな竜…灰竜達によって阻まれる。

皆は灰竜を次々と討伐していき、その隙に私は白竜との間合いを狭めると白竜を殴っては蹴る。

「神代の力を使って、なお、ここまで追い詰められるとは…仕方あるまい。未だ危険を伴うが、この魔法で空間ごと…」

「させると思ったか?」

私は白竜の背後に移動して尻尾を掴むとジャイアントスイングの要領で白竜を振り回し、壁に向かって投げ飛ばし、白竜は壁にめり込んだ。その時の衝撃によってフリードは血を吐きながらも一度目を伏せ、決然とした表情で私を睨み付けてきた。

「この手は使いたくはなかったのだがな…貴様等ほどの強敵を殺せるなら必要な対価だったと割り切ろう」

「何を言っている?」

私の質問に応えることなく、フリードは自分の元へ飛んできた小鳥の魔物に何かを伝える。

その直後、グリューエン大火山の全体に激震が走ると凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始め、激震は刻一刻と激しさを増し、マグマの海からは無数のマグマ柱が噴き上がり始めてきた。

「碧刃、水位が!」

優花の言葉で下を見るとマグマの海がせり上がってきており、この異常事態を引き起こした犯人であるフリードは中央の島の直上にある天井に移動しながら答えた。

「要石を破壊しただけだ。このマグマを見て、おかしいとは思わなかったのか?

グリューエン大火山は明らかに活火山なのにもかかわらず、今まで一度も噴火したという記録がない。それはつまり、地下のマグマ溜まりからの噴出をコントロールしている要因があるということだ。

マグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが…貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮もろとも果てるがいい!」

フリードは私達を見下ろした後に首に下げたペンダントを天井に掲げる。

天井に亀裂が走り左右に開き始め、そのまま頂上までいくつかの扉を開いて直通し、フリードは白竜と共に天井の通路へと消えていったのだった。

 

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

メタルスダイノヴェインのベース(あくまでもベースなので色や形状を変えます)

  • ADブラックナイトグリムロック型
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