青き銃士と戦女神(ヴァルキリー)   作:衛置竜人

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ブラックナイトグリムロックをベースにする票が多くて驚いてたりです( ・∇・)


第34話『母子との別れ』

 

 

―side:Magna Convoy―

 

 

「!さぁ、神の忠実な下僕達よ!獣共と異教徒共に裁きの鉄槌を下せぇ!ああ、エヒト様!見ておられますかぁ!!」

 

アレイスト王は膝を付き天を仰いで哄笑を上げ、彼が合図でパーティー会場である甲板を完全に包囲する形で船員に扮した兵士達が現れる。各国の重鎮達に逃げ場はなく、彼らの表情は絶望一色に染まった次の瞬間、遂に甲板目掛けて一斉に魔法が撃ち込まれた。下という不利な位置にいる乗客達は必死に応戦するものの…一方的な暴威に晒され抵抗虚しく次々と倒れていった。

何とか、船内に逃げ込んだ者達もいるようだが、ほとんどの者達が息絶え、甲板はほんの数分前までの煌びやかさが嘘のようだったかの様に一瞬で血の海に様変わりした。海に飛び込んだ者もいるようだが、そこにも小舟に乗った船員が無数に控えており、やはり直ぐに殺されて海が鮮血に染まっていく。

その後の事を一言で言えば…地獄絵図といったところで、乗客達は次々と殺されていき、あっという間に甲板は血の海と化した。

「これは酷いね…」

とハジメは呟く。

「一度タガが外れて抑えが効かなくなった者は何をしでかすかわからない…残虐な事も何の疑いもなく出来る…私や綾波の前世もそうだったけど、何処の世界も同じみたいだね」

と嵐はそう口にした。

 

その後も探索を続けたのだが…まるでお化け屋敷といった感じだろうか、霧によって視界が遮られ、物理トラップとして私達目掛けて飛来物か飛んできたりする。

この迷宮を創設したメイル・メルジーネはとことん精神的に追い詰めるのが趣味なのだろうか…

"死にたくなかったのに"

"生きたかったのに"

といった複数の声も聞こえてくる。

「これは…亡霊達の声ですね」

「そうみたいね…」

とシアと優花は呟く。

"普通に一生を過ごしたかったのに"

「…そうですね。その気持ちは私にもよく分かるです」

「私もそう思った事は幾度もあったよ」

と綾波と宮古は亡霊達に声をかける。

「僕の同胞達の中にもそう思った者が多くいたよ

嵐達の目の前には多くの"魂"の姿があった。その中には子供もいた。

「世の中、理不尽な事も多い…何でこんな目に遭うんだと思う事もある。だけど、悪い事ばかりではない。生きていれば良いこともある。私も大切な人達からそれを教えられた。

まぁ、お前達からしたら何様のつもりだと思うだろうが、これからどうするか…此処に留まって怨み嘆き続けるか、勇気を出して一歩踏み出して第二の人生を歩むのか…それはお前達次第だ」

と私も"魂"達に呼びかける。私の言葉を聞いてくれたのか"魂"は私達に先へ行くようにと言わんばかりに道を開けた。

「あの霊達が道を開けるとは…」

「凄いね…」

とティオと鈴はそう呟く。他の皆も驚いているようだ。私だって彼らが私の言葉を聞いてくれた事に驚いている。

「さて、先に行こうか」

 

"魂"が開けた道を進んでいった末に辿り着いたのは淡い光に照らされ中央に四本の巨大な支柱に支えられている神殿のような建造物がある空間だ。

神殿の支柱の間に壁はなく、吹き抜けになっていて、中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれている。

神殿は周囲を海水で満たされているが、海面に浮かぶ通路が四方に伸びていて、その先端は円形になっている足場があり、そこに魔法陣が描かれていた。

私達は魔法陣の内の一つからこの空間に飛ばされてきたのだ。

「…ここは…あれは魔法陣?」

「まさか、攻略したのかな?」

「まさかもうクリアとは思わなくて…」

「…他の迷宮に比べると少し簡単だった気がする」

「最後にあのクリオネモドキくらい出てくると思ったんですけど…」

と優花とハジメ、宮古、ユエ、綾波は発言する

「いや、最初の海底洞窟だって普通は潜水艇とかなんて持ってないから、クリアするまでずっと沢山の魔力を消費し続ける羽目になるし、普通なら下手したら溺死しちゃうよ」

そう答えたのは鈴だ。

「ゼルフィの言う通りだ。クリオネ型は強敵だったし、物理攻撃が効かない亡霊達の大軍には魔力頼りになるだろう」

「確かにそう言われればそうじゃな」

「それにこの世界の人なら信仰心が強いだろうし…あんな狂気を見せられたら精神的にキツいと僕は思うよ」

 

私達が祭壇へと足を踏み入れると他の迷宮と同じく脳内を精査され、記憶が読み取られたのだが、今回はそれに加えて他の者が経験したことも一緒に見させられるようだ。

記憶の読み取りが終わり、私達は攻略者と認められたようで新たな神代魔法が脳内に刻み込まれていった。

「ここでこの魔法か…大陸の端と端か」

と私は思わず呟いた。

メルジーネ海底遺跡の神代魔法…それは"再生魔法"だった。

ハルツィナ樹海の大樹の下にあった石版の文言に先へ進むには"再生の力"が必要だと書かれていた。

つまり東の果てにある大迷宮を攻略するには、まず西の果てにまで行かなければならなかったということだ。

「これ、最初にハルツィナ樹海に訪れた人にとっては途轍もなく面倒だよね」

「私達には碧刃がいたから良いけど、普通の人はそうにもいかないわよね」

ハジメや優花の言う通り…私かトランステクター等がなかったらどれだけ時間がかかった事か…

そんな事を考えていると、魔法陣の輝きが薄くなっていき、床から小さめの祭壇らしき立方体がせり出してきた。

祭壇は淡く輝き、その光は形をとり人型となった。

その人物…解放者の一人たるメイル・メルジーネはその外見から海人族もしくはその祖先の様だ。

彼女はオスカーと同じく、自己紹介した後に解放者の真実を語り、最後にこう言葉を紡いだ。

「…どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています」

メイル・メルジーネはそう締め括ると再び淡い光となって霧散し、彼女が座っていた場所には小さな魔法陣が浮き出て輝き、その光が収まった後、メルジーネの紋章が掘られたコインが置かれていた。

「これでハルツィナ樹海の大樹に挑戦できるな」

と私が証たるコインを取ったその時、神殿が鳴動を始め、周囲の海水がいきなり水位を上げ始めた。

「強制排出か…総員、急いでトレーラーに乗り込め!」

「これ、乱暴すぎるよ!」

「ライセン大迷宮みたいなのは、もういやですよぉ~」

「水責めとは…やりおるのぉ」

「感心している場合じゃないよティオ!」

と鈴、シア、ティオ、宮古はそう言う。

私は宝物庫からトレーラーを出し、皆はトレーラーに乗り込む。水が入らないよう結界を張っているので水が流れ込む事はない。

私達全員がトレーラーに乗り込んだ直後、周囲は水没し、更に天井部分がグリューエン大火山のショートカットと同じように開くと猛烈な勢いで海水が流れ込む。

私達を乗せたトレーラーはその縦穴に流れ込んで、下から噴水に押し出されるように、猛烈な勢いで上方へと吹き飛ばされた。

「これがメルジーネ海底遺跡のショートカット!?」

「滅茶苦茶乱暴な強制ショートカットだよ!」

「意外に、過激な人なのかもしれないわね」

「…それはあり得る」

とハジメ、鈴、優花、ユエはそう感想を述べる。

道中、行き止まりにぶつかる寸前になりかけたが、天井がスライドして開き、私達は遺跡の外の広大な海中へと放り出された。

「何とか出れたが…」

トレーラーの両サイドから触手が伸びてきて、私は咄嗟にトレーラーにエクスキャノンを4基展開し、搭載した魚雷を発射する。

「どうやらこれで終わりとはいかなそうだな」

私達を襲ったのはあのクリオネ型の魔物だ。

クリオネ型の魔物に対し私はエクスキャノンに魚雷を再度装填し、一度に12本の魚雷を射出する。

普通に考えれば十分な破壊力だとは思うだろう。魚雷はクリオネ型に直撃したが、クリオネ型はすぐさま再生し始める。

「再生が早すぎる」

「ちぎれた触手から再生したみたいですね」

「碧刃、周りがゼリーだらけだよ!」

とハジメ、シア、鈴はそう発言する。

「恐らくちぎれた触手だけでなく、半透明ゼリー状の物体が最初から海流に乗ってあちこちに分布していたようだな」

「火で殺せるとは思うのじゃが…」

「あの量を殺す火を起こすとなると水蒸気爆発が起きる事になるだろう…そうなった時に生態系にどんな影響が出るか…」

「…じゃあ、どうする?」

「凍らせるとかどうかな!?」

「それだ!魚雷を冷凍弾に変えればあのクリオネ型を凍結させる!ナイスだよ、宮古!」

ハジメはそう言うとユエに協力してもらって作った冷凍弾をエクスキャノンに装填する。 

私はトレーラーから出て本来の姿(マグナコンボイ)となり、クリオネ型を牽制する。

『発射準備完了!マグナコンボイ!』

ハジメからの通信を受けて私はクリオネ型から距離を取り、トレーラーのエクスキャノンから冷凍弾12発がクリオネ型目掛けて放たれ、クリオネ型はハジメの目論見通りに凍結した。

私はイオンブラスターを装備すると貫通弾を装填してそれを数発ほど発砲しながら距離を詰めていき、凍結したクリオネ型にヒビが入ると、私はそれを左手で掴むと右手で殴り、凍結したクリオネ型はそのままバラバラになって海の底へと沈んでいったのだった。

 

 

メルジーネ海底遺跡を攻略した私達は無事にエリセンへ帰還し、レミアやエリセンの人々の勧めで私達は数日間エリセンに滞在する事になった。

あまり長居する訳にはいかない…何故なら帰りにアンカジに訪れる予定だからあまり遅くなるとビィズ達が心配するだろうし、それに一緒にいる時間が長ければ長い程ミュウとの別れが辛くなるからだ。

 

レミアは神水の回復効果によって以前の健康体を完全に取り戻しているから心配はないのだが、問題はミュウだ。私達が此処を出発する事の話を出そうとするとミュウは決まって甘えん坊になって阻止する為に中々言い出せずにいた。

私はともかく、ハジメは何だかんだで皆と共にミュウの遊び相手になっているから尚更らしい。

「もう6日か…」

「そろそろ出発しないとね」

「そうだね」

私はハジメや嵐と共に装備開発や改修をしながら外で鬼ごっこをして楽しんでいるミュウの姿を見た後、作業を再開する。すると、レミアが入ってきた。

町の男連中はこぞって彼女の再婚相手を志願してたり、母子セットでファンクラブがあったりとミュウとレミアは人気のある母子らしい。

「レミアさん、どうしたんですか?」

「有難うございます。ハジメさん、碧刃さん、嵐さん」

「いきなりどうしたんですか?僕達、礼を言われるようなことは…」

ハジメの言葉にレミアはこう返した。

「うふふ、娘のためにこんなにも悩んで下さるのですもの…母親としてはお礼の一つも言いたくなります

「それは…バレバレでしたか」

「一応、隠していたつもりなんだがな」

「あらあら、知らない人はいませんよ?ユエさん達もそれぞれ考えて下さっているようですし…ミュウは本当に素敵な人達と出会えましたね」

レミアは窓の外に視線を向ける。ミュウのいたずらで水着を剥ぎ取られたシアが手ブラをしながら必死にミュウを追いかけている姿に彼女は笑みをこぼした後、再度私達に視線を転じると今度は少し真面目な表情で口を開いた。

「皆さんは、十分過ぎるほどして下さいました。ですから、どうか悩まずに、すべき事のためにお進み下さい。皆さんと出会って、あの子は大きく成長しました。甘えてばかりだったのに、自分より他の誰かを気遣えるようになった…あの子も分かっています。皆さんが行かなければならないことを…まだまだ幼いですからついつい甘えてしまいますけれど…それでも、一度も行かないでとは口にしていないでしょう?あの子もこれ以上皆さんを引き止めていてはいけないと分かっているのです。だから…」

「…そうか」

「幼子に気遣われてちゃあ、世話ないよね…わかりました。今晩に明日出発するってはっきり告げることにします」

ハジメは私と嵐にそれで良いよねと言わんばかりに視線を向け、私達はそれで良いと言わんばかりに頷く。

 

そして私達は夕食前にミュウにお別れを告げ、それを聞いたミュウは懸命に泣くのを堪え、暫くの沈黙の後にこう言った。

「…もう、会えないの?お兄ちゃん達やお姉ちゃん達はずっとミュウのお兄ちゃん達やお姉ちゃんでいてくれる?」

「ミュウが、それを望むなら」

宮古がそう答えると、ミュウは涙を堪えて食いしばっていた口元を緩めてニッと笑みを作る。

「なら、いってらっしゃいするの。それで、今度はミュウが皆を迎えに行くの」

「迎えに…ミュウ。僕達は凄く遠いところに行くつもりなんだ」

「それでも、迎えにいくの。どれだけ時間がかかっても」

その言葉に皆は考え、代表してハジメが私に念話である事を伝える。私はハジメの好きにしろ、面倒な手続きなどは私や特殊災害対策機関(ネスト)が何とかすると答えた。

「だったらさ、全部終わらせたら必ず皆でミュウのところに戻ってくるから。戻ってきたら、今度は、ミュウも連れて行く」

「それで、私達の故郷、生まれたところを見せてあげるわるよ」

「きっと、びっくりするよ。私達の故郷はびっくり箱みたいな場所だから!」

とハジメ、優花、鈴はそう言う。

「お兄ちゃん達やお姉ちゃん達が生まれたところ?みたいの!」

「楽しみ?」

「すっごく!」

ハジメの言葉にミュウは満面の笑みを浮かべ、ピョンピョンと飛び跳ねながら喜びを表現する。

私はレミアにこう提案した。

「何だったら母子2人揃って地球に移住するか?戸籍なら何とかなるだろう」

「良いのですか?」

「ユエ達も一緒に来て移住する予定だからな。1人や2人増えたところで問題ない。あとは貴女次第だ」

私の言葉にレミアは頭を下げてこう口にした。

「ありがとうございます!その時が来たら宜しくお願いします!」

レミアの言葉を聞いた私は頷くとミュウの隣にいるソニックバードにこの母子を守れ、と指示を出した。

 

翌朝、私達はミュウとレミアに見送られながら海上の町エリセンを旅立った。

 

 

―side out―

 

 

時は鈴がオーダーヴァンガードに加入し、彼らオーダーヴァンガードがホルアドを出発した翌日にまで遡る。

「此処は…確か俺はオルクス大迷宮で魔人族と…」

碧刃によって気絶させられていた天之河は宿のベッドの上で目覚めた。

「目が覚めたか、光輝。此処はホルアドの宿だ」

そう声をかけたのは坂上だ。

「龍太郎、教えてくれ。どうなったんだ…!?」

坂上はどうしようかと迷ったが意を決して話すことにした。

「中村と香織は自分達の目的の為に魔人族軍に寝返った。斎藤、近藤、中野は死んだ…あのジーオスの毒でな。谷口は死にかけたけど、ホルアドの冒険者ギルドの依頼を受けて救援に来た園部が飲ませた薬で命は助かったが、代償として人間じゃなくなった。そしてその谷口は自分の意思で頼尽達に付いて行った」

坂上から出た言葉を天之河は信じられなかった。

「じ、冗談だよな…龍太郎…嘘だよな…」

「光輝、これは冗談でも嘘でもない、現実だ」

天之河は受け入れたくなかった。白崎と中村の裏切りとジーオスパイダーの毒で3人も死んだ事、谷口が人外(アデプトテレイター)化した事と碧刃達についていった事。

もし天之河がカトレアを要求を呑むのをふりでも良いからしたら死人は減っていたかもしれないが、天之河はそうしなかった…己の正義感で行動した結果、3人も死に谷口はアデプトテレイターと化した。

何故こうなったのか、と天之河は自問自答する。

「そうか…頼尽のせいか…あいつの身勝手な行動で近藤達は死んだんだ…すべてはあいつのせいなんだ…あいつこそが諸悪の根源なんだ…あいつのせいで皆おかしくなったんだ…!」

天之河の自己中心的でご都合主義な解釈に流石の坂上もし呆れるしかなく、それを扉越しに聞いていた八重樫は

「光輝の…"天之河"の馬鹿…!」

と拳を強く握って呟くのだった。

 

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

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