―side:Magna Convoy―
私達を乗せたトレーラーは海上を航海し、上陸すると私は
暫く進んでいくとアンカジが見えてきたのだが…その前に大きな隊列が出来ていた。
「あれって商隊かな?」
「だろうな。ハジメ」
「物資を届けに来たんですかねぇ」
シアがそう言って私達が商隊の後ろに並ぶと
「オーダーヴァンガードの皆様方ですね」
兵士の一人が声をかけてきた。
「あぁ、そうだ」
「貴殿方を見かけたら優先して通すようにと言われています。さぁ、こちらへ」
私達は兵士に案内されアンカジの中へ再び入った。
「久しい…というほどでもないか。無事なようで何よりだ、碧刃殿」
と王宮にてランズィは私達を出迎えた。
「静因石〟を託して戻って来なかった時は本当に心配したぞ。貴殿は、既に我が公国の救世主なのだからな。礼の一つもしておらんのに勝手に死なれては困る」
「心配しなくともこの通りピンピンしてる。どうやら救援も無事に受けられているようだな」
「ああ。備蓄した食料と、ユエ殿が作ってくれた貯水池のおかげで十分に時間を稼げた。王国から援助の他、商人達のおかげで何とか民を飢えさせずに済んでいる」
「オアシスも大丈夫そうだし後は土壌か…そう言えば作物は全て廃棄したのか?」
「…いや、一箇所にまとめてあるだけだ。廃棄処理にまわす人手も時間も惜しかったのでな」
「私に良い考えがある。ユエ、ティオ。作物と土壌の浄化は出来るか?」
「…ん、問題ない」
「うむ。せっかく丹精込めて作ったのじゃ。全て捨てるのは不憫じゃしの。任せるが良い」
私達は作物が纏められている農地地帯へと向かい、ユエとティオの手によって作物と土壌は浄化された…その時だった。
この町の聖教教会関係者と神殿騎士の集団が半円状に包囲したのだった。
―side out―
神殿騎士達の合間から白い豪奢な法衣を来た初老の男が進み出てきてこう告げた。
「ゼンゲン公…こちらへ。彼等は危険だ」
「フォルビン司教、これは一体何事か。彼等が危険?彼らオーダーヴァンガードは我が公国を救った英雄ですぞ?彼等への無礼は、アンカジの領主として見逃せませんな」
初老の男―フォルビン司教はまるで馬鹿にするかのようにランズィの言葉を鼻で笑った。
「ふん、英雄?言葉を慎みたまえ。彼等は、既に異端者認定を受けている。不用意な言葉は、貴公自身の首を絞めることになりますぞ。
私は、これから神敵を討伐せねばならん。相当凶悪な連中だという話だが、果たして神殿騎士百人を相手に、どこまで抗えるものか見ものですな。
さぁさぁ、ゼンゲン公よ、そこを退くのだ。よもや我ら教会と事を構える気ではないだろう?」
ランズィは瞑目し、オーダーヴァンガードが異端認定された理由を察した。
オーダーヴァンガードの力は教会よりも強大であり、支配下に置いて管理することなどできないどころか教会に対し敵視している節すらあった…だから許せないのだろうと。
だが、オーダーヴァンガードとの敵対は自殺行為に等しく、彼らと戦争でもする気なのかとランズィとビィズは中央上層部の者達の正気を疑った。
ランズィやビィズから見ればオーダーヴァンガードはアンカジを救ってくれた英雄だ。
毒に侵され倒れた民を癒し、生命線というべき水を用意し、公国の象徴たるオアシスに潜む怪物を討伐しただけでなくオアシスそのものの浄化してくれた。
ランズィは目を見開くと、莫大な恩を返すにはちょうどいい機会ではないかと口元に笑みを浮かべ、フォルビン司祭に領主たる威厳をもって、その鋭い眼光を真っ向からぶつけ、アンカジ公国領主の答えを叩きつけた。
「断る」
「…今、何といった?」
「断ると言った。彼等オーダーヴァンガードは救国の英雄。例え、聖教教会であろうと彼等に仇なすことは私が許さん」
「なっ、なっ、き、貴様!正気か!?教会に逆らう事がどういうことかわからんわけではないだろう!異端者の烙印を押されたいのか!」
「彼らはこの猛毒に襲われ滅亡の危機に瀕した公国を救ったのだぞ?報告によればウルの町も彼に救われているというではないか…そんな相手に異端者認定?その決定の方が正気とは思えんよ。
故に、ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、この異端者認定に異議とアンカジを救ったという新たな事実を加味しての再考を申し立てる」
「だ、黙れ!決定事項だ!これは神のご意志だ!逆らうことは許されん!公よ、これ以上、その異端者どもを庇うのであれば、貴様も、いやアンカジそのものを異端認定することになるぞ!それでもよいのかっ!」
フォルビン司教の言葉を受けてもランズィもビィズはその意思を曲げない。
そんな彼の姿にランズィの部下達も一瞬瞑目した後、覚悟を決めたように決然とした表情を見せてフォルビン司教や神殿騎士達を睨み付ける。
フォルビン司教も彼らの意思を読み取って、顔を真っ赤にして最後の警告を突きつけた。
「いいのだな?公よ、貴様はここで終わることになるぞ。いや、貴様だけではない。貴様の部下も、それに与する者も全員終わる。神罰を受け尽く滅びるのだ」
「このアンカジに、自らを救ってくれた英雄を売るような恥知らずはいない。神罰?私が信仰する神は、そんな恥知らずをこそ裁くお方だと思っていたのだが?司教殿の信仰する神とは異なるのかね?」
ランズィの言葉に、何を言っても無駄だと理解したフォルビン司教は、片手を上げて神殿騎士達に攻撃の合図を送ろうとし、碧刃達も武装して応戦準備に入ったその時、一人の神殿騎士のヘルメットに何かが音を立ててぶつかり、神殿騎士が足元を見るとそこには小石があった。
石は次々と飛来し、神殿騎士達の甲冑に音を立ててぶつかっていった。
神殿騎士やフォルビン司教が石が飛来して来る方を見てみると大勢のアンカジの住民達が神殿騎士達を包囲していた。
彼らは何処からか流れてきたオーダーヴァンガードが帰還したという噂と慌てて駆けていく神殿騎士達の姿を見て集まってきたのだ。
オーダーヴァンガードの面々は彼らにとっては命の恩人であり、彼らを見捨てる事などアンカジの民にも出来なかったのだ。
「アンカジの民よ!やめよ!奴らは異端者認定を受けた神敵である!やつらの討伐は神の意志である!」
フォルビン司教は殺気立つ住民達の誤解を解こうと大声で叫び、オーダーヴァンガードが異端者認定を受けていることを知らなかった住民達は困惑をあらわにして顔を見合わせ、投石の手を止めるが、今度はランズィが威厳と共に言葉を放たれる。
「我が愛すべき公国民達よ。聞け!彼等オーダーヴァンガードは我らのオアシスを浄化してくれた!我らのオアシスが彼等の尽力で戻ってきたのだ!そして、汚染された土地も!作物も!全て浄化してくれた!
彼等は、我らのアンカジを取り戻してくれたのだ!この場で多くは語れん。故に、己の心で判断せよ!救国の英雄を、このまま殺させるか、守るか!…私は、守ることにした!」
ランズィの言葉に住民達は神殿騎士やフォルビン司教への投石という形で自分達の意思を示した。
「なっ、なっ…」
再び言葉を詰まらせるフォルビン司教に住民達は言葉を叩きつける。
「ふざけるな!俺達の恩人を殺らせるかよ!」
「教会は何もしてくれなかったじゃない」
「なのによ、助けてくれた"青き銃士一行"を害そうなんて正気じゃねぇ!」
「何が異端者だ!お前らの方がよほど異端者だろうが!」
「きっと、異端者認定なんて何かの間違いよ!」
「青き銃士一行に栄光を!」
「オーダーヴァンガードに栄光を!」
「領主様に続け!」
事態を知った住民達が、続々と集まってくる。一人一人の力は神殿騎士には遠く及ばないが、彼らの湧き上がってくる怒りと敵意にフォルビン司教や助祭、神殿騎士達はたじろいだ様に後退り、ランズィは更に追い討ちをかけるように言う。
「司教殿、これがアンカジの意思だ。先程の申し立て…聞いてはもらえませんかな?」
「…ただで済むとは思わないことだっ」
フォルビン司教は歯軋りしながら最後に碧刃達を煮え滾った眼で睨みつけた後、踵を返して立ち去り、神殿騎士達が慌てて付いていき、それを見届けたハジメはランズィに問う。
「…本当によかったんですか?僕達のことは放っておいても良かったのに」
「なに、これはアンカジの意思だ。この公国に住む者で貴殿等に感謝していない者などおらん。そんな相手を、一方的な理由で殺させたとあっては…それこそ、私の方がアンカジの意思に殺されてしまうだろう。愛すべき国でクーデターなど考えたくもない
それに君達は、ある意味教会よりも怖い存在ということだ。救国の英雄だからというのもあるがね、半分は、君達を敵に回さないためだ。信じられないような魔法や武器をいくつも使い、未知の化け物をいとも簡単に屠り、大迷宮すらたった数日で攻略して戻ってくる。教会の威光をそよ風のように受け流し、百人の神殿騎士を歯牙にもかけない。万群を正面から叩き潰し、勇者すら追い詰めた魔物を瞬殺したという報告も入っている。
そんな君達を敵に回すなど自殺行為に等しい。父から領主を継いで結構な年月が経つが、その中でも一、二を争う英断だったと自負しているよ」
「そうか…感謝する、ランズィ殿」
「こちらこそ礼を言わせて欲しい。ありがとう」
碧刃はランズィと握手を交わすのだった。
碧刃達がアンカジに滞在して3日後、彼らは見覚えのある人物と出会った。
「誰かと思ったらモットーか?」
「これはこれは碧刃殿ではありませんか」
私はモットーと握手を交わす。
「まさか此処で会えるとはな。丁度いい、これを渡しておこう」
と碧刃はある物を渡した。
「これは…まさか!?」
「お前が思っている通りの物だ。ハジメと共に作成して一個だけ完成した。お前を信用して渡しておこう。魔物の素材もいくつか入っているから確認して欲しい」
碧刃が渡したのは子機などではない宝物庫である。
空間魔法を取得したハジメの手によってまだ一個だけだが再現が成功したのだ。
「わかりました。ありがとうございます、碧刃殿」
その後、碧刃はモットーから様々な情報を受け取った。
「そう言えば、貴殿方を探しているという御方達を連れてきています」
「私達を探している者達だと?」
モットーはその人物を呼ぴ、馬車からその2人の人物は降りて来た。
「メルド団長、傷だらけじゃないか」
「あぁ、色々あってな。会えて良かった、碧刃」
一人はメルド団長であったが、もう一人の人物は碧刃にとっては予想外の人物だった。何せ目にした事はあったが、会話した事などない人物だったからだ。オーダーヴァンガード内で面識があるのは鈴くらいだろう。
「リリィ!」
「鈴!元気そうで何よりです」
彼女―リリィことリリアーナは鈴にそう返し、碧刃達に一度頭を下げた後、モットーに頭を下げて彼に礼を言う。
「ありがとうございます、商人様。もちろん、ホルアドまでの料金を支払わせて頂きます」
「いえ、お役に立てたなら何より。お金は結構ですよ」
「えっ?いえ、そういうわけには…」
「ですが…一応、忠告を。普通、乗合馬車にしろ、同乗にしろ料金は先払いです。それを出発前に請求されないというのは、相手は何か良からぬ事を企んでいるか、または、お金を受け取れない相手という事です。今回は、後者ですな。
どのような事情かは存じませんが、貴女様ともあろうお方が、お一人で忍ばなければならない程の重大事なのでしょう。そんな危急の時に、役の一つにも立てないなら、今後は商人どころか、胸を張ってこの国の人間を名乗れますまい」
「ならば尚更、感謝の印にお受け取り下さい。貴方方のおかげで、私達は、王都を出ることが出来たのです」
「ふむ。…突然ですが、商人にとって、もっとも仕入れ難く、同時に喉から手が出るほど欲しいものが何かご存知ですか?」
「え?…いいえ、わかりません」
「それはですな、信頼"です。商売は信頼が無くては始まりませんし、続きません。そして、儲かりません。
逆にそれさえあれば、大抵の状況は何とかなるものです。さてさて、果たして貴女様にとって、我がユンケル商会は信頼に値するものでしたかな? もしそうだというのなら、既に、これ以上ない報酬を受け取っていることになりますが…」
「貴方方は真に信頼に値する商会です。ハイリヒ王国王女リリアーナは、貴方方の厚意と献身を決して忘れません。ありがとう…」
「勿体無いお言葉です」
その人物…ハイリヒ王国の王女たるリリアーナの言葉を賜ったモットーは部下共々、その場に傅き深々と頭を垂れた後、碧刃達に挨拶をしてホルアドに向けて出発した。
そしてリリアーナは再び碧刃達の方を向いてこう言った。
「漸く貴殿方に会うことができました」
「これまた意外な客人だな、ハイリヒ王国の王女」
碧刃は警戒心を向けながらリリアーナにそう言う。
一方、ハジメと優花は誰なのかピンと来てないようで鈴はこう説明する
「えっと、ハインリヒ王国の王女様なんだけど、覚えてない?気さくで人当たりのいい性格で、誰にでも分け隔てなく接する優しい王女様って有名だよ」
鈴の説明にハジメと優花は
「「…あぁ」」
と漸く思い出した様だ。
「ぐすっ…私って、そんなに印象薄かったでしょうか…?」
と泣き崩れるリリアーナに対し碧刃はこう言った。
「ハジメと優花が覚えてないのは無理はない。鈴、お前はあの
「うん、ほぼ毎日だよ」
「優花、お前はどうだ?」
「そんなには会ってないかな…せいぜい3~4日くらい?」
「ハジメ、お前は?」
「最初の顔合わせだけかな」
「私もハジメと同じだが、私は元から人間じゃなかったから記憶力もあったくらいで、ハジメや優花が覚えていないのも無理はない。教会や連中と癒着関係にある王国の上層部からすれば私達召喚者は駒でしかないだろうからな。使えそうな駒には良くして使えない駒や反逆的な駒はこうして異端認定して始末しようとしているのだからな」
「貴方の言う通りかもしれません…ですが、私は貴殿方を戦争の道具たる駒などと一度たりともありません!」
とリリアーナは涙混じりに訴える。
「碧刃、彼女が信用に値する人物である事は私が保証する」
メルド団長の言葉に碧刃は一先ず警戒を解く。
「話を聞こう」
―side:Magna Convoy―
私達はアンカジの王宮の応接室を借りてそこでリリアーナ姫とメルド団長から話を聞いていた。
「最初に言っておきます。愛子さんが…攫われました」
リリアーナの話を要約するとこうなる。最近、王宮内の空気が何処かおかしく、リリアーナはずっと違和感を覚えていたらしい。
父親であるエリヒド国王は、今まで以上に聖教教会に傾倒し、熱に浮かされたようにエヒトを崇め、それに感化されたのか宰相や他の重鎮達も巻き込まれるように信仰心を強めていった。
更に妙に覇気がない、もっと言えば生気のない騎士や兵士達が増えていき、顔なじみの騎士に具合でも悪いのかと尋ねても、受け答えはきちんとするものの、どこか機械的というか、以前のような快活さが感じられず、まるで病気でも患っているかのようだった。
リリアーナはこの事をホルアドから帰還していたメルド団長に相談し、彼と共に調べていたのだが、そこへ畑山教師が王都に帰還し、ウルの町での詳細が報告された。その席にはリリアーナも同席したらしいが、教会と王国上層部は功績等を無視して私達に対する異端者認定を強硬決議した。
リリアーナは父であるエリヒドに猛抗議をしたが、エリヒドは娘に対して、信仰心が足りない等と言い始め、次第に、娘ではなく敵を見るような目で見始め、恐ろしくなったリリアーナは咄嗟に理解した振りをして逃げ出した。
畑山教師とメルド団長に自らの懸念を伝えたリリアーナは畑山教師から私達が奈落の底で知った事や旅の目的を夕食時に生徒達に話すからメルド団長と共に同席して欲しいと頼まれたのだが、夕刻になってリリアーナがメルド団長と共に畑山教師の元へ向かおうとしていたら件の畑山教師が銀髪の教会修道服を着た女に気絶させられ担がれているところを目撃。
その銀髪の女に底知れぬ恐怖と嫌な予感を感じたリリアーナとメルド団長は咄嗟にすぐ近くの客室に入り込んで王族のみが知る気配隠蔽のアーティファクトが使用されている隠し通路に入り込み息を潜めた。
銀髪の女は2人に気がつかなかったのか見つけることなく去っていき、2人は銀髪の女が異変の黒幕かそれに通じていると考え、そのことを誰かに伝えようと考えたが、生徒達は見張られていると考えるのが妥当であるし、他の騎士も信用出来ない…そこでメルド団長は私達オーダーヴァンガードに頼るしかないと考え、2人は隠し通路から王都に出て、一路、アンカジ公国を目指したのである。
アンカジであれば、王都の異変が届かないゼンゲン公の助力を得られるかもしれないし、タイミング的に、私達と会うことが出来る可能性が高いと踏んだらしい。
「あとは知っての通り、ユンケル商会の隊商にお願いして便乗させてもらいました。まさか、最初から気づかれているとは思いもしませんでしたし、本当に貴殿方に会えるとは夢にも思いませんでしたが…少し前までなら神のご加護だと思うところです。…しかし…私は…今は…教会が怖い…一体、何が起きているのでしょう。…あの銀髪の修道女は…お父様達は…」
リリアーナが語った状況はメルジーネ海底遺跡で散々見せられた神に魅入られた者の続出という末期状態に似た非常に危うい状況だ。
そして畑山教師が拐われたのは神の真実と私達の旅の目的を話そうとした事が原因で、あの駒としての
畑山教師を信用出来ない事は今でも変わらないが、拐われた事には私達にも間接的に責任があるし、教会の総本山たる神山にはどちらにせよ行かなければならない。私はどうするか考えた末にリリアーナにこう言った。
「…神山には私達も用がある。彼処には七大迷宮の一つがあるし、"解放者"が遺したという物を回収しなければならないからな。行くぞ、王国へ」
こうして私達はメルド団長とリリアーナに畑山教師が話そうとしていただろう神の真実と解放者の事を話しながらハイリヒ王国へ向かったのだった。
To be continue…
メタルスダイノヴェインのベース(あくまでもベースなので色や形状を変えます)
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ADブラックナイトグリムロック型
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TLKダイノボットスコーン
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メタルスメガトロン型