―side:Hajime―
トラウムソルジャーの大群に襲われている状況にクラスメートの殆どはパニックになり、隊列など無視して我先にと階段を目指してがむしゃらに進んでいく。
そして、一人の女子生徒―園部さんが後ろから突き飛ばされ転倒し、トラウムソルジャーは剣を降り下ろそうとする。
「錬成!」
僕は錬成でそのトラウムソルジャーを筆頭に周囲のトラウムソルジャーの足下を隆起させ、何体かは橋の下へ落とし、落としきれなかった分はハンドガンで撃破していく。
周囲からトラウムソルジャーを排除した僕は園部さんの元へ駆け寄る。
「落ち着いて、大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ!うちのクラスは僕以外全員チートだから!」
「な、南雲!?」
「ゆっくり後ろへ」
「うん…」
「ここは引き受ける!行って!」
僕の声に園部さんはゆっくり後ろに下がってトラウムソルジャーとある程度距離を取ると一気に階段に向けて駆け出し、僕は周囲のトラウムソルジャーの足元を崩して固定し、足止めをしてから撃ち抜いていきつつ、周囲を見渡す。
誰も彼もがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。このままでは、いずれ死者が出る可能性が高い。
一方、碧刃は一流の冒険者ですら歯が立たないというベヒモスをあっという間に倒した。
「あれがマグナコンボイ…」
青い上半身と黒い脚部に頭部、銀色のマスクと太腿と腰…あれが碧刃の
碧刃はトランステクターとの一体化を解除した後、ハンドガンを装備して次々とトラウムソルジャーを撃ち抜いていった後、メルド団長や天之河君達の方へ向かっていった。
そんな中、ふとある作戦が浮かんだ僕は近くでトラウムソルジャーと戦っていた綾波ちゃんを呼んで、作戦を碧刃やメルド団長に伝えるべく彼らの元へ向かった。
―side out―
一方、メルド団長達と天之河のパーティーはトラウムソルジャーの大群に囲まれており、それと交戦していた。
「光輝、早く撤退しろ!お前達も早く行け!」
「嫌です!メルドさん達を置いていくわけには行きません!絶対、皆で生き残るんです!」
「くっ、こんな時にわがままを…」
天之河の我が儘にメルド団長は苦虫を噛み潰したような表情になる。
「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」
「龍太郎…ありがとな」
天之河は坂上の言葉に更にやる気を見せ、八重樫は舌打ちする。
「状況に酔ってんじゃないわよ!この馬鹿ども!」
「雫ちゃん…」
苛立つ八重樫に心配そうな白崎。
だが、其処へ碧刃が合流してきた。
「天之河!皆を連れて撤退しろ!」
「いや、此処は俺達が―」
「あれが見えないのか!?リーダーがいないからパニックになっているんだぞ!」
碧刃は天之河の胸ぐらを掴みながらある方向に指を差す。
その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ、訓練のことなど頭から抜け落ちたように誰も彼もが好き勝手に戦っているクラスメート達の姿があった。
「お前なら皆の恐怖を吹き飛ばす力があるだろ!前ばかり見てないで後ろもちゃんと見ろ!」
呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る天之河は、納得したのか頭を縦に頷いた。
「ああ、わかった。直ぐに行く!」
と天之河のパーティーはクラスメート達の元へ向かった。
「後は連中の撤退準備が完了した後の事だが…」
「碧刃!メルド団長!」
其処へハジメと綾波が碧刃達と合流した。
「僕に考えがあります」
とハジメは発言し、作戦を伝える。
ハジメの考えは至ってシンプルであり、皆の魔法攻撃で橋を崩してトラウムソルジャーがこちらに来れなくするという物だ。
「皆が橋から撤退したら魔法を放ってください」
「あぁ、わかった」
「ハジメ、私達が護衛しよう」
「碧刃と綾波ちゃんはメルド団長達と一緒に逃げ遅れたクラスメート達の援護をしてほしい…」
「だが、それだとハジメの身が…」
「私が護衛する…です。碧刃は団長さん達と一緒に逃げ遅れた人達の援護を」
そう言ったのは綾波だった。
「…分かった。2人とも、無茶はするな。生きて帰ってこい」
碧刃の言葉にハジメと綾波は頷き、2人が橋に残って碧刃達は出口の階段へと向かっていった。
そして天之河はクラスメートに合流すると皆に告げた。
「皆!ベヒモスは頼尽が倒した!後はここから出るだけだ!新たに出現しているトラウムソルジャーは南雲達が引き付けているから俺達は連携しながら階段まで後退するぞ!道は僕達が作るからみんなついて来い!」
天之河と碧刃によって道が切り開かれ、皆が階段に向かって走り出す。階段に到着した後も碧刃と天之河達前衛組は追い付いてきたトラウムソルジャーの討伐を続ける。
「総員、南雲達が離脱したら一斉攻撃で橋を崩すぞ!」
メルド団長の言葉に皆が橋を崩す為に魔法を放つ準備をする。
一方で白崎に好意を持っている檜山は自分がしでかした惨状に焦っていた。。
白崎に好意を抱きながらも自分とでは釣り合わないと思っており、天之河のような相手なら、所詮住む世界が違うと諦められたが、自分より劣った存在と思っているハジメが白崎の傍にいるのはおかしいし、それなら自分でもいいじゃないか、と本気で考えていた。尤もハジメは白崎に恋愛的な好意をこれっぽっちも抱いていないのだが、檜山がそんな事を知る余地もない。
グランツ鉱石を手に入れようとしたのも、白崎への好意とハジメへ憎しみの気持ちが焦りとなって白崎か見惚れていた物をプレゼントすれば少しでも自分に振り向いてくれるかもしれないと考えたからだ。
だが、現実はこうだ。それに白崎は今も祈るようにハジメを案じている…その様子とメルド団長から伝えられた橋を崩すという作戦にあることを思い付いた檜山は不適な笑みを浮かべた。
「皆は退避したみたい…です!」
「うん、なら僕達も退避しよう!」
皆が橋から退避したのを確認したハジメと綾波は皆がいる方角―出口の階段へ向かう。
更にハジメは信号弾を放ち、それを確認したメルド団長は皆に指示を出す。
「今だ!!魔法詠唱!!」
夜空を流れる流星の様に様々な属性の魔法が橋に向かって飛び交う。
無数に飛び交う魔法の中をハジメと綾波は進むのだが、魔法群の中から一つの火球が軌道を僅かに曲げ、ハジメに向かってきたのだ。
何で、と焦るハジメに対し綾波はシールドを展開してそれを防ぐと同時に誰が火球を自分達に向けて放ったのかを探る為に碧刃から渡されていた小型カメラを作動させ、録画を開始する。
火球はもう1発飛んできて、ハジメが相殺したのだが、その直前から度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋が遂に耐久限度を超えてしまい崩壊を始めたのだ。
(犯人は分かった…です!後は碧刃さんに送るだけ…!)
綾波は記録した映像を碧刃の持つ端末へ送ると体勢を整えた後に衝撃に備える為にシールドを装備、ハジメの手を掴むと引き寄せてハジメの体勢も整えさせ、ハジメにもシールドを装備させる。
落ちていく2人はやがて壁の横から噴き出している滝に流されるが、綾波はシールドをサーフボード代わりにして水流に乗り、ハジメもそれに見倣ってシールドで水流に乗る。
水流に流されていく2人は陸地を発見し、其処へ上陸した。
「ありがとう、綾波ちゃん。助かったよ」
ハジメは綾波に礼を言う。
「貴方が死ぬと碧刃さんが悲しむ…だから助けた…です」
と答え、碧刃の事が好きなんだなとハジメは苦笑いを浮かべた。
綾波は碧刃から渡された予備の端末を出すと2人とも無事に生きていると碧刃にメッセージを送る。
「此処って何処なんだろう…」
「わからないですが、かなり下の階層に落ちた事は確かです。今は安全地帯の確保と脱出路の確保を行うです」
「うん、分かった」
こうしてハジメと綾波はオルクス大迷宮の第101階層目…奈落の底の1階層目の探索を始めた。
一方、オルクス大迷宮の第65階層目では…
「離して!南雲くんの所に行かないと!離してぇ!」
飛び出そうとする白崎を八重樫と天之河が必死に羽交い締めにして動きを止めさせようとするが、白崎はそれを振りほどいて崖を飛び降りようと必死に足掻いていた。
「香織っ、ダメよ!香織!」
「香織!君まで死ぬ気か!南雲はもう無理だ!落ち着くんだ!このままじゃ、体が壊れてしまう!」
天之河は白崎を気遣ってそう言うが、今の白崎には逆効果だった。
「無理って何!?"南雲くんは"死んでない!行かないと、きっと助けを求めてる!」
そんな白崎に対しメルド団長は歩み寄ると問答無用で白崎の首筋に手刀を落とした。
白崎はビクッと一瞬痙攣し、そのまま意識を落とし、天之河はぐったりする白崎を抱きかかえ、メルド団長を睨んで文句を言おうとしたが、八重樫がそれを遮るように団長に頭を下げた。
「すいません。ありがとうございます」
「礼など…止めてくれ。もう一人も死なせるわけにはいかない。全力で迷宮を離脱する。…彼女を頼む」
「言われるまでもなく」
八重樫は天之河から白崎を受け取り、彼に告げる。
「私達が止められないから団長が止めてくれたのよ。わかるでしょ?今は時間がないの。香織の叫びが皆の心にもダメージを与えてしまう前に、何より香織が壊れる前に止める必要があった。今は生きて帰る事が優先よ」
「そうだな、早く出よう」
この一件によりクラスメイト達の精神に多大なダメージが刻まれ、ある者は茫然自失といった表情で石橋のあった方をボーと眺め、ある者は「もう嫌!」と言って座り込んでいる。
その中である者は疑問に思っていた。友人が"死んだ"というのに何故碧刃は冷静なのか、と。ハジメに助けられた園部優花もその一人だ。友人を2人も失って辛い筈なのに平然としている…というかまるで2人の生存を確信している様に感じたのだ。
そして、その碧刃はハジメと綾波が生存していると分かっていた。彼のセンサーは2人の生体反応を捉えていたし、綾波から2人とも無事だというメッセージを受け取っていた。
予備の端末を持ってきていてかつそれを綾波に渡しておいて良かった、と碧刃は思っていた。
だが、それはそれとしてクラスメート達―特に火球を放って2人を奈落の底に落とした犯人に対し怒りを抱かずにはいられなかった。
戦闘支援ロボットだった頃…当時の彼が所属していたブルー・オーダーはメンバーの一人だったストラクサスの裏切りによって壊滅した…ストラクサスへの復讐は果たしたが、それでも死んだ仲間が帰ってきた訳ではない。
その時の事を思い出させられた…いや下手したらその繰り返しになりかねなかったのだ。
犯人は綾波が送ってくれた映像でわかった…後は迷宮から脱出した後に処刑するだけだ。
天之河達が先導する形で上の階層へと上がっていき、一行は遂に安全圏である第1階層まで戻ってきた。
「さて、無事に戻ってきたからそろそろ良いだろう」
碧刃はそう呟くと共に檜山の元まで歩き、彼を殴って転倒させた後、ハンドガンの銃口を檜山の首元へ向ける。
「次はないと言った筈だ」
「何で殺そうとするんだ!」
と天之河は抗議するが碧刃は天之河に殺気を放ちつつこう言った。
「こいつはその身勝手な行動から皆を危険に晒しただけでなく、あの橋を崩した際にハジメと綾波に向かって火球を放った」
「証拠はあるのか!?」
天之河の言葉に碧刃は端末にあるその映像を再生する。
「これは綾波が直前に送ってきた映像だ。あいつにはもしもの時に備えて予備の端末とカメラを持たせていたからな」
そして、映像にはハジメと綾波に向かってくる火球と、不適な笑みを浮かべる檜山が写し出されていた。
「証拠なら此処にある。動機はおそらく嫉妬だろうな。
私の推測でしかないが、白崎の好きだが正面から告白する勇気などなかった…だからこそ彼女が好意を一方的に寄せているハジメが邪魔で憎んでいた…だからこそハジメをいじめ、そして殺そうとした」
「な、何でそうなるんだよ!」
と図星をつかれ、否定しようとする檜山。
「図星か…そんなに焦って否定しているという事は肯定しているようなものだ。まぁ、尤もハジメは白崎に好意を抱いていなかったんだけどな」
檜山は誰か味方になってくれないかと皆を見るが…
「最低ね…そんな理由で南雲くんを殺そうだなんて…」
「人間としてどうかと思うわよ」
「流石に俺も引くわー」
「ほんとそれ」
ハジメをいじめていたもしくはいじめを黙認していたのに彼が奈落の底に落ちた途端に掌返しとは、と碧刃はクラスメート達に呆れていた。
「だ、だからと言って殺すのはやり過ぎだ!」
「ふん、だったら牢屋に一生ブチ込んでおけ。こいつの行動で皆の命を危険に晒し、ハジメに対しては殺人未遂罪だ。それに知っているか?いじめも立派な恐喝罪…犯罪だ。クラスメートだからという言葉は無駄だ。私はクラスメートだろうがお前らの事は味方だとは思っていない。
ハジメと出逢う前、私は仲間だと思っていた者に裏切りによって他の仲間を喪った」
碧刃の言葉にクラスメート達は言葉を失った。
「お前らにその気持ちがわかるか?わからないだろうな。これまで平和な世界で過ごしてきた連中にはな」
碧刃はハンドガンの引き金を引こうとしたが
「頼尽、そんな奴の為に手を汚す事はない」
そう言ったのは園部だったのだ。
「そいつは殺す価値もない。殺したらそこで終わりだから一生苦痛を味わらせた方が良いと思う」
園部の言葉も一理ある、そう考えた碧刃はハンドガンを仕舞うと檜山の股間を蹴り上げた。急所をやられた痛みに檜山は悶える。
「園部に感謝しろ。命拾いしたな」
碧刃はそう言うとメルド団長にこう言った。
「こいつを牢屋に入れて欲しい…出来れば拷問部屋が良い。それで今回の件は私からは口出ししない」
メルド団長は碧刃の言葉に頷くのだった。
皆が宿に帰還し、それぞれが泊まっている部屋に籠っている中、碧刃は自身とハジメ、綾波の荷物を纏め、素粒子コントロール装置が積まれたバッグ―MSバッグに積めようとしていた。
「…何の様だ?園部」
そんな碧刃を訪ねてきたのは園部だ。
「何処に行くつもりなの?」
「簡単に教えると思ったか?」
碧刃は答える気などないと言わんばかりにそう言うが、これも園部からしてみれば予想してた通りの返答だ。そして園部は碧刃がこれから何処に行って何をしようしていたのか予想がついていた。
「南雲とあの娘を助けに行くんでしょ?」
「何故そう思う?」
「2人を喪って普通なら一番動揺していてもおかしくないのにまるで2人の生存を確信しているかの様に平然としていたから」
園部の言葉に碧刃はあの状況の中で其処まで見ているとはなかなかの洞察力だ、と思い、こう言った。
「私のセンサーが2人の生体反応を捉えていた。それに綾波に渡した予備の端末から2人とも無事だというメッセージが届いた。だからこれから2人と合流する」
「じゃあ、どうして南雲の分の荷物も纏めているの?まるで帰ってくる気がないみたいに…」
「その言葉通り、帰ってくる気はない。2人と合流したらそのまま旅に出る。
私は
碧刃が言う言葉も一理ある、と園部は考え、更にある頼みを言った。
「ねぇ、私も連れてってもらって良い?」
「理由は?」
「南雲にお礼を言いたい。魔物に殺されそうになった時、南雲が助けてくれた…あの時、お礼は言ったけど、改めて落ち着いてお礼を言いたいし、それに南雲は命の恩人だから今度は私が彼を助けたい」
そう言う園部優花の瞳は真剣そのもので既に覚悟を決めているようだった。その覚悟を受け止めた碧刃はこう告げた。
「5分だ。私はメルド団長に出発する事、
メルド団長に伝え終わったら宿の入口で待っているから1人で来い。それが連れて行く条件だ」
「えぇ、わかった」
「それと、これだけは言っておく。万が一、ハジメに危害を加える様な事があれば…」
「わかってる。その時は好きにして」
優花はそう言うと荷物を纏める為に自分が泊まっていた部屋に戻り、荷物を纏めて出発の準備を行い、碧刃はメルド団長の元へ行き、優花を連れて行く事を伝える。
優花が泊まっていた部屋は幸いにも1人部屋だったので、誰にもバレる事はなかった。1人で碧刃についていく為に仲の良いクラスメートに挨拶を出来ないのは心苦しいが、碧刃を待たせる訳にはいかない。優花は碧刃に言われていた通りに荷物を纏めて宿の入口へ行く。
其処には碧刃とメルド団長の姿があった。
「メルド団長…」
「本当に行くんだな…」
メルド団長の言葉に優花ははい、としっかり答えた。
「気を付けてな」
「短い間でしたが、お世話になりました」
優花はメルド団長に頭を下げる。
「頼尽、お前も達者でな」
「あぁ、今後の健闘を祈る」
メルド団長と握手を交わした碧刃は優花と共にオルクス大迷宮に向かうのだった。
To be continue
本作ではハジメは原作同様に奈落の底へ落ちる展開にしましたが、綾波も一緒だったりそもそも碧刃がいるので"覚醒"したりもしません。
そして、お分かりかと思いますが、本作でのハジメのヒロイン1号は優花となります。マグナコンボイを主役にしたありふれ二次を書きたいというのが大きな理由なのですが、ハジメ×優花をやりたいというのも理由の1つだったりです。
谷口鈴の今後について最終投票(1の場合テレイター化で大幅強化&碧刃ハーレム入りで出番増加、2の場合出番は原作と同じ位か減少)
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1.オーダーヴァンガードへ正式加入
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2. 坂上とくっつく(坂上改心・和解)