青き銃士と戦女神(ヴァルキリー)   作:衛置竜人

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やっと本編後日譚の話が出来ました。時系列としては碧刃達が地球に帰還した直後の話となります。


After stage編
After stage『帰還と最後の女神』


 

 

 

 

第46太陽系の地球、特殊災害対策機関(ネスト)の日本支部の本拠地にある演習広場。

 

現在、その一角にて複数の隊員達が慌ただしく働いている中、突如としてその空間が歪んだのだ。

それが何なのかを聞かされていた隊員達は"彼ら"を出迎える最終準備を行い、空間の歪みの中から数十人もの人物の姿が現れた―そう、碧刃達である。

碧刃の次に歪みから現れたのはつばめであり、つばめの姿を確認した隊員は彼女に声をかける。

「お帰りなさいませ、つばめ様」

「おう、ご苦労様。状況は?」

「整っています。"帰還者"の家族も大会議室に集まっていますし、マスコミには箝口令を発令しています」

「分かった。報告ありがとう」

つばめの横を歩いていたあかりは彼女にこう訊ねた。

「つばめさん、私とヴェルは綾波を連れてこのまま西木野総合病院に行くけど良いかな?」

「あぁ、構わないぞ…っていうか早く行け。彼女も長くは保たないからな」

「ありがとう」

あかりはそう答えるとヴェルと綾波の元へ向かい、碧刃達とは別行動を始めた。

つばめ達の後ろにはオーダーヴァンガードのメンバーが続き、更にその後ろには"帰還者"と呼ばれる碧刃のクラスメート達、事情説明と今後についての話し合いの為にトータス代表として招致されたメルド、フリード、アルフレリックと彼らの護衛が続き、最後尾には両腕を手錠で繋がれた中村と白崎、更に車椅子に拘束されている四肢を失った天之河とその監視役としてコンボバットとストームジェットとイヴァックのアデプトマスターが出てきて、空間の歪みもといスペースブリッジが閉じられた。

 

 

碧刃達は天井までの高さが20メートルはあろう屋内ホールへ移動する…そこにハジメの両親を筆頭に帰還者の家族が集められていたのだ。

屋内ホールの大扉を碧刃が開けた時、皆の視線が碧刃達に向けられ、碧刃達も屋内ホールに入った。

「「ハジメっ!」」

ハジメの両親…愁と菫を始め帰還者の家族達はそれぞれの息子や娘、兄や姉、弟や妹の元へ向かう。

因みにユエを筆頭とするトータス出身組は別室で嵐や宮古と共に待機している。

「ハジメっ、お前、この馬鹿野郎!」

「このバカ息子っ。どんだけ心配したと思ってんの!」

ハジメは普通の人間という枠組みから変質してしまった今の自分は両親に受けて入れてもらえないかもしれないと心の奥底でその可能性を考えていた。

しかし蓋を開けてみればこの通り、愁も菫も、ハジメの変化になど目もくれず確信と怒りと、どうしようもないほどの安堵を溢れさせて抱き締めたのだ。

ハジメの脳裏に碧刃達と共に異世界で経験したありとあらゆる様々な経験が、まるで走馬灯でも体験しているかの様に過り、そして、ただただこう思ったのだ。

(あぁ、やっと、帰ってきたんだ…)

ハジメは両腕をそっと両親の背に添えて、震える声で小さいがはっきりと口にした。

「父さん、母さん―ただいま」

愁と菫は涙に濡れる瞳もそのままに少しハジメから離れと視線を合わせると、微笑みながらこの言葉を贈った。

「「おかえり、ハジメ」」

他の帰還者とその家族も愁や菫の様に我が子や兄弟姉妹を出迎える中、碧刃に憎しみの眼差しを向ける者達がいた…そう、檜山達小悪党組の遺族である。

「お前がネストに所属している頼尽か…!」

と檜山の父親が小悪党組の遺族を代表して碧刃に問う。

「あぁ、そうだ」

碧刃の返答に檜山の父親は碧刃に憎しみをぶつけるかの様にこう言った。

「話はネストから聞いた…お前、俺の息子を殺そうとしたんだってな…!それに息子はジーオスに襲われて死んだってな…!責任とれやこの野郎!」

檜山の父親は碧刃を殴ろうとしたが、その拳を碧刃は片手で受け止めた。

「お前の息子…檜山大介とその取り巻きの中野信治、斎藤良樹、近藤礼一は我が友たる南雲ハジメに対し常日頃からいじめをしていた。今までは騒ぎを大きくしたくないというハジメの意思を尊重して注意程度で済ましていた。だが、トータスに於いて檜山大介はハジメを虐めるばかりか殺そうとしていた」

碧刃の言葉に帰還者の家族一同は騒然とし、碧刃はモニターに召喚当時、ステータスプレートが配布された時の様子やハジメと綾波が檜山の放った火球で結果的に奈落の底へ突き落とした時の様子を写し出す。

「優花が殺す価値もないと言って止めなければ殺っていただろうな。ジーオスに殺されたのは言っちゃ悪いが、因果応報だ」

「この野郎…それでもネストの隊員か!」

それでも反撃しようとする檜山の父親に対し碧刃はため息を吐くとハジメ達に対し皆を下がらせるようにと念話を送り、碧刃が何をしようとしているのか察したハジメ達は皆を下がらせる。

「アデプタイズ、マグナコンボイ、トランスフォーム」

碧刃は静かにそう呟くと本来の姿(マグナコンボイ)となり、檜山の父親を筆頭に小悪党組の家族に殺気を放つ。

人間の姿から8メートルはあろう鋼鉄のボディを有する巨人の姿となったマグナコンボイ(碧刃)に帰還者の家族の大半は驚きを隠せず、檜山の父親は殺気を浴びた事で失禁していた。これでもマグナコンボイは殺気を抑えた方だ。

「今の私はネストに身を置いているが、私自身はネスト設立よりも遥か昔から生きている存在…お前らからしたら異星人(エイリアン)で、惑星トータスではネストの隊員としての私ではなく私個人としての考えで動いていた。ネストから離れてもどうって事はない」

マグナコンボイの言葉につばめはやっちゃったとか言っちゃたよと言わんばかりに右手を顔に当てて天を仰いでいる。

ネストからしてみてもマグナコンボイは大きな戦力にして人材であり、それを失うのは惜しい事なのだ。

マグナコンボイを失う…そうなれば彼を慕う綾波達もマグナコンボイに同行する事を選ぶだろう。

「頼尽君…いや、マグナコンボイさん」

そんな中、マグナコンボイに声をかけたのが鈴の父親だった。

「ありがとう…死にかけた娘を救ってくれて」

「鈴の命を救ったのは優花だ。礼なら彼女に…」

「貴方は娘の心を救った。その事実に変わりはない」

鈴の父親はそう告げると妻…鈴の母親と共にマグナコンボイに感謝の意を表して頭を下げる。

「私達からも礼を言わせてほしい。娘を…いや、娘達が帰ってこれたのも君達のおかげだ。ありがとう」

更に優花の父親もマグナコンボイに礼を言い

「何時もハジメを…息子を気にかけてくれてありがとう」

愁もそう言うと菫と共に頭を下げる。

「マグナコンボイ…ありがとう、息子を止めてくれて。そして息子が迷惑をかけて申し訳ない」

天之河の父親は感謝と謝罪の意を込めて頭を下げる。

「貴方の息子を止めたのは私の連れだ」

「それでも言わせてほしい…ありがとう、そして済まない」

天之河の父親はマグナコンボイに謝罪すると四肢を失った息子に向き直る。

「父さん…」

「この馬鹿息子が、自分が何をしでかしたのか分かっているのか?」

「いくらなんでもジーオスになるのは…流石に…」

天之河の妹は兄がジーオスと化して世界を滅ぼす側に付いた事にドン引きしていたのだった。

その後、メルドやフリードを交えて改めてトータスでの一件についての説明と謝罪が行われた。

先程のマグナコンボイ(碧刃)の言動に対してだが、帰還者の家族の要望とトータスでの功績を踏まえてお咎めなしとなった…碧刃はトータスでの出来事に関する報告書の作成を行うという仕事が出来たが…

また、綾波達トータスからの移住組に対してはネスト側から戸籍を与えられ、綾波、宮古、嵐は碧刃の元で、ユエ、シア、ティオ、ミュウ、レミアは南雲家で暮らす事になり、ハジメは彼女達と正妻である優花を愁と菫に紹介。

愁と菫もクリエイターである事もあって普通に息子のハーレムを受け入れ、優花の両親も娘がハジメのハーレムに入っている事…どころか正妻である事を喜び、普通にハジメハーレムを受け入れていた。

鈴の両親も実質的にハーレムを形成している碧刃に対しアデプトテレイター化した娘の事を頼むと碧刃ハーレムを普通に受け入れていた。

因みに白崎香織の両親は記憶喪失は仕方ないしその役目を担った八重樫雫に止めてくれてありがとうと感謝すると共に辛い思いをさせてしまって申し訳ないと謝罪し、更にハジメに対しても迷惑をかけてしまったと謝罪。

清水幸利の両親もショックを受けつつも仕方ないと受け入れたのだった。

 

 

 

一方、その頃…あかり、ヴェルは綾波を連れて西木野総合病院を訪れた。

「頼尽さん、面会ですね?」

あかりは何度も訪れているが故にこの病院の受付や医者、看護師とも顔見知りである。

「うん、それで穂乃果の容態は…」

「昨晩、一度意識を失いました。保って今日まででしょう」

そう答えたのは穂乃果の担当医師だ。

「お待ちしておりました。お帰りなさい、頼尽さん」

彼はあかりとヴェルがトータスに行った事を知っている…勿論、別の世界線に於ける穂乃果の孫である綾波の存在も聞かされている。

「ありがとう。どうやら間に合ったみたいだね。早速行こうか」

あかりとヴェルは慣れた道なりを進み、そんな二人の後を綾波は追い、やがて3人は穂乃果がいる病室の前までたどり着いた。

「此処に穂乃果お婆ちゃんが…」

感慨深げに呟く綾波にあかりとヴェルは頷き、あかりは綾波に呼ぶまで待っててと言うとドアをノックして

「穂乃果、入るよ」

と何時もの様に病室に入った。

「あかりちゃん、いらっしゃい。それとお帰りなさい」

「うん、ただいま。穂乃果」

「あかりちゃんが帰ってきたという事は…」

「あぁ、終わらせてきた。トータスでの戦いを」

そう言って入ってきたのはヴェルだ。

「ヴェルちゃんもいらっしゃい。そして、お帰りなさい」

「あぁ、ただいま」

「早速だけど、穂乃果に会わせたい娘がいるんだよ」

あかりはそう言うと

「綾波、おいで」

と綾波を呼ぶ。

「お、お邪魔します…です」

綾波はおどおどしながら入り、彼女の姿を見るなり穂乃果は嬉し涙を流す。

「は、始めまして…です、穂乃果お婆ちゃん。高坂綾波…です」

「始めまして。私がこの世界の高坂穂乃果だよ」

穂乃果は隣にきて、と言わんばかりに綾波を手招きで呼び、綾波は穂乃果が寝かされているベッドの隣にある椅子に座る。

穂乃果はゆっくり、優しく綾波の頭を撫でながらこう口にした。

「雰囲気は何処と無く海未ちゃん似かな。髪の色は絵里ちゃんに近いけど…」

「私の前世での世界線では穂乃果お婆ちゃんは絵里お婆ちゃんの親族と結婚した…です」

「ある意味先祖帰りだね」

と穂乃果は優しく微笑む。

綾波はこれまでの経緯を穂乃果に話した…前世で死ぬまでの事にこの世界で碧刃と出会い、仲間達と共に惑星トータスを冒険した事、更に自身がインドミナス・レックスだった事や碧刃から結婚を申し入れられ、それを受けて夫婦になった事など…どれだけの時間を話したのか綾波ですら分からなくなっていた。

「―といった感じ、です」

と一通り話し終えた綾波に穂乃果は綾波の頭を撫でながらこう言った。

「碧刃君になら任せて安心だよ。何度か会ったけど、仲間を大切にする彼なら信頼できる」

穂乃果は綾波に微笑みながらこう口にした。

「綾波ちゃん…ありがとう。こうして生まれ変わって会いに来てくれて…」

「穂乃果…お婆ちゃん…私もっ、私も穂乃果お婆ちゃんに会えて…会えて良かった、です…!」

穂乃果の言葉に綾波は涙声でそう返す。

「綾波ちゃん、ヴェルちゃん、悪いけどあかりちゃんと2人っきりにしてもらって良いかな?」

穂乃果の"最後"の頼みにヴェルは

「あぁ、わかった」

と返す。ヴェルが綾波を連れて部屋を出る前に穂乃果はこう言った。

「ヴェルちゃん、あかりちゃんの事を頼んだよ」

「あぁ、任せろ。穂乃果」

ヴェルが綾波を連れて退室した後、病室には見た目は老婆と孫に見えるが同い年の従姉妹同士である穂乃果とあかりが残された。

「2人っきりになるのなんて、凄い久しぶりだね」

「そうだね、もう何十年も前の事だよ」

「私は随分老いちゃったけど、あかりちゃんは変わらないね」

「それは人外の存在(アデプトテレイター)になった私への皮肉かな?」

「そうかもね」

と穂乃果の返答にあかりは笑みを浮かべ、二人は笑い合う。

「穂乃果、覚えてる?あの日…音ノ木坂が廃校になるって告げられた日の事」

「学校がなくなる!?何処かの学校に転校なの!?勉強しなきゃって慌てたんだよね。覚えているよ。そして、そんな時にスクールアイドルに出会って…音ノ木坂を救うにはスクールアイドルを結成して学校をアピールして人を呼ぶしかないって」

「それで真っ先に海未とことり、私に真っ先に声をかけて…ことりは一発OKだったけど、海未はあの性格だから最初は却下して…私はアイドル活動は断ったけど、マネージャーとしてなら廃校阻止を達成するまでって条件で協力する事にしたんだよね」

「あの時はあかりちゃんの事情…ネストのアデプトマスターだったなんて知らなかったからね。

でも、真姫ちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃん、にこちゃん、絵里ちゃん、希ちゃんが参加して9人でやっとμ'sが揃って廃校を阻止してからもあかりちゃんはマネージャーを続けてくれた」

「穂乃果達に…μ'sに救われたからね。その恩を返したいからというのもあったし、μ'sは何処いけるか見てみたかったからね。見届けられてよかったよ…μ'sの軌跡を。

私もヴェルも穂乃果達に救われた…穂乃果達は私達がアデプトテレイターだと知っても変わらず接し続けてくれてくれた…それだけでも救いになるし、ジーオスXとの戦いも穂乃果達の声があったから勝つことが出来た…私の、私達の帰るべき場所を守るんだ、ってね。穂乃果、ありがとう」

「私の方こそありがとう」

あかりも穂乃果もこれが最後の会話になると察していた。だからこそあかりは最期の最後に穂乃果にこう訊ねる。

「穂乃果、やりきったかい?」

「うん、やりきったよ。最期まで」

穂乃果は満足げな表情を浮かべるとこう口にした。

「あかりちゃん、ちょっと疲れちゃったから寝てもいい?」

穂乃果の言葉にあかりは涙を堪えてこう答えた。

「うん、良いよ。おやすみ、穂乃果」

「おやすみなさい…あかりちゃん…ありがとう…」

こうして穂乃果はあかりに看取られながら静かに…穏やかに…安らかに眠りに就いて二度と目が覚める事はなかった。

「ありがとう、私の、私達の女神様…」

 

 

 

 

伝説のスクールアイドル"μ's"の最後の生き残り…高坂穂乃果の死は翌日にはスクールアイドル業界にも伝えられた。

 

 

スクールアイドル創成期と呼ばれるおよそ100年前に学校を救いたいという思いで結成された彼女達は目標を達成しただけでなく、多くのスクールアイドル達に影響を与え、憧れの存在となっている。

 

 

 

「ほら、行くよ歩夢!」

「ま、待ってよ侑ちゃん!」

今も何処かでスクールアイドルを目指す者達やそれを支えんとする者達は奮闘するのだった…自分達の夢を叶える為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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