青き銃士と戦女神(ヴァルキリー)   作:衛置竜人

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今回の話は鋼鉄の戦女神と夢駆ける少女達の第20話ラスト~第24話とリンクした話になってますので先にそちらを読む事をオススメします。


先日、仕事終わりにジュラシックワールド 新たなる支配者を観に行きましたが、幼少期から見たかった光景過ぎて良い意味で言葉を失いました←


After stage『脱獄せし元勇者 前編』

 

 

 

 

―side:Magna Convoy―

 

 

 

トータス事変が終結し、地球への帰還を果たしておよそ5年が経過した。

あれからハジメは錬成師としての経験と自身の知識を生かしてフィギュア・ガレージキットの原型製作や今まで通り愁や菫のサポートなどクリエイターとして活躍しつつティオやレミアからの協力の元、アクセサリー製作し販売する事業を行っている。

優花は専門学校に通って調理師の資格を獲得と同時にハジメと正式に結婚し、彼を支えながら実家の手伝いを行っている。ユエやシアも優花の実家の洋食店で一緒に働いている。

ミュウは幼稚園を卒業後、小学校へと入学。同年代と比べて波乱万丈な人生経験をしている事もあって同級生と比べて大人びているらしく…遂にはクラスのボス的な存在と化したらしい。

嘗てのクラスメート達…所謂帰還者達もそれぞれの将来に向かって進んでいる。例えば八重樫と坂上はあれから交際の末に結婚、遠藤については諜報員向きの能力を私もだがつばめも高く評価し、ネストの諜報部へのスカウトを行った。遠藤はこれを承諾し、今はネスト諜報部の一員として嫁であるハウリア族の女性と共に奮闘している。

 

そんな我々だが、現在は年に一回でも集まれる者達だけでも集まって同窓会を開いている。トータス側からはリリアーナ、メルド、フリード、カム達を招待し、彼らから近況を聞いたりしている。トータスの方だが、嘗てのトータス事変の爪痕が今も残っているからかドミネイト個体でないジーオスの出現も確認されているらしいが、人間族と魔人族、獣人族がそれぞれ手を取り合って立ち向かっているそうだ。

 

 

そして今回の同窓会もお開きとなり、皆と共に片付けをしていた最中、その一報は私の元に届いた。

『碧刃、今良いか?』

「あぁ、どうしたんだ?つばめ」

『緊急事態だ。来てくれ。場所は"パシフィクス刑務所"だ』

「分かった。今から綾波と一緒に行く」

私はつばめからの連絡を一旦切るとハジメや優花の手伝いをしている綾波の元へ急ぎ足で歩く。

「あれ、碧刃どうしたの?」

「ハジメ、優花。片付けの最中すまないがつばめからの緊急の呼び出しを受けた」

「つばめさんから?」

ハジメの言葉に私は頷きこう続けた。

「行き先はパシフィクス刑務所だ」

「…碧刃、言っちゃあれだけど嫌な予感がするわよ」

「あぁ、私もだ」

優花の言葉に同感だな。

「詳しい事は帰ってから話す」

「わかった」

「気をつけて」

「あぁ、我が友達よ」

私はハジメと優花にそう告げると

「綾波、つばめからの呼び出しだ。一緒に来てくれ」

綾波を呼び出した。オーダーヴァンガードがネスト内の部隊として再編された後、綾波は指揮官補佐…言ってしまえば私の秘書の役目を担っている。私が業務で外出する際には基本的には必ず同行させている。

「わかったです」

綾波も一つ返事で了承し、私はスペースブリッジキーの座標をパシフィクス刑務所に合わせて開いた。

 

 

 

パシフィクス刑務所はネストが管理する刑務所の一つであり、その名の通りに太平洋上に存在する無人島を買い取って建造された刑務所だ。

当然四方は何処を見渡して海、刑務所自体も頑丈な外壁に囲まれ、更に万が一の水空双方からの襲撃に備えて24時間体制で警備が行われているこの場所はネストが保有する刑務所の中でも最高クラスのセキュリティで護られており、脱獄は不可能だと言われている。

此処に収容されているのはテロの主犯など国家レベルの犯罪を犯した者や普通の刑務所なら脱獄出来てしまう能力を持つ者などだ。

前者の代表格は50年ほど前に兵器化したアデプトテレイターを使って大規模テロを引き起こそうとした反社会勢力"メック"のリーダーたるサイラス・ビショップ、後者はトランスフォーマー等人間以上の能力を持つ者が該当し、天之河はその両方に該当する。

後にわかったのは奴の体内には今もジーオスの因子が残っており、放置していれば再度ジーオスフォールンブレイブへと化す事だ。故に奴は厳重に隔離され、定期的に途中まで再生した手足を切り落としている。

 

 

スペースブリッジキーで開いたグランドブリッジを通ってパシフィクス刑務所に入ると職員が私達を出迎えた。

「お待ちしておりました、頼尽碧刃隊長。話は立木司令官から聞いております。さぁ、こちらへ」

「ありがとう」

普段なら静寂に満ちているが今は慌ただしい様子を横目に私達は何時もの様に奴が収容されている監獄へ案内される。

そして到着すると奴の監獄の前にはつばめ外壁立っていた。私と綾波は案内した職員に再度礼を言い、つばめの元へ歩いた。

つばめは私達の気配に気付いたのか

「休みの所呼び出して悪かったな、碧刃、綾波」

と口にした。

「いや、構わない。非常事態らしいからな」

「あぁ、マジで非常事態だ。見ての通り最悪なレベルでな」

「自分の罪を認めないあの天之河(勇者のなり損ない)ですか…全く何年経っても変わらないですね」

と綾波は汚物を見るかのような眼差しで監獄に目を向ける。

「何回か面会に来ても言うのは私達が元凶で間違っているって事だからな」

私もまた呆れた眼差しで監獄に目を向ける。監獄には本来なら収容されている"筈"の天之河の姿はなく、奴を拘束していた拘束具も破壊されていた。

「つばめ、音声ログは残ってないのか?」

「残念だが映像には奴の声は記録されていない」

つばめは端末を操作し、映像を再生する。その映像には奴が監獄の中に発生した時空の裂目(ブラスティーゾーン)に呑み込まれて消える姿が映し出されていた。

「トータス式魔法による物でもないようだな…」

「スペースブリッジキーの様な物でもないですね」

「そうだな…それにキーは私が管理しているし、設計図もハジメの頭の中にしか残ってない上にハジメ達は自分達の身を守る為の装備は持っている。それに余程の相手が来た時は私達の元に連絡が来る様にしてあるからな」

「だな。しかしブラスティーゾーンが偶然発生にして位置がピンポイントすぎる…とにかく奴の行方は捜索中だ。セイバートロン連合や同盟関係にある他の地球にも協力を要請している」

とつばめは私達に告げる。

「一体何が起きているのか…」

「わからない。だが、考える可能性としては―」

「何者かが奴を連れ去ったという事ですか」

「だろうな。しかも相手はブラスティーゾーンを開く事が出来る。一筋縄ではいかないだろうな」

「そこでだ、碧刃。頼みがある」

「行方が判明次第、奴の捕縛する…だろ?」

「あぁ、最優先で頼む。おそらく自由になっただろう奴が何をしでかすか分からないからな」

「わかった、引き受けよう。だが、その為にも準備が必要だ。我が友達の力を借りよう」

 

 

私達が再び同窓会の会場たる優花の実家たる洋食店に戻ると片付けは既に終わっていた。この場にいるのはハジメと優花を初めとする新旧オーダーヴァンガードのメンバーと今日は泊まっていくと言っていたメルド、フリード、カム、リリアーナなどトータスから招待された者達のみだ。

「碧刃、綾波。お帰り…って言う雰囲気でもないか」

とハジメは声をかけた。

「あぁ、問題が発生した。"奴"が脱獄した」

「脱獄って確かあの元勇者が収容されているのは―」

「そうだ、フリード。奴が収容されているのはネストが管理する刑務所の中でも最高レベルのセキュリティで護られている…収容されているのも戦犯やテロリスト、通常の刑務所では容易に脱獄出来てしまう能力を持つ者達だ」

私はつばめから見せられた映像をこの場にいた者達にも見せる。

「召喚魔法ではありませんね…」

映像を見終わったリリアーナはそう呟いた。

「奴を連れ去った存在がいるという仮定で話すが、奴の元にへピンポイントでブラスティーゾーンを開けるという事はその存在はエヒトに匹敵するかそれ以上の脅威となるだろう。正体が不明である以上、防衛体制を強化するしかないだろう。それよりも今は―」

「脱獄した天之河光輝を探しだし、捕縛する事ですね、マグナコンボイ」

「そうだ、コンボバット。現につばめからそう指示を受けている。…そこでだ、ハジメ、鈴、ユエ。お前達の力を借りたい」

「…天之河(あのアホ)を捕縛するアーティファクトの作成」

「そうだ、奴は体内にジーオスの因子を宿している…再度出現した奴がどうなっているかは分からないが、例えジーオス化してて倒した後にコアから引きずり出して捕縛しても再度ジーオス化するなど抵抗する可能性が高い。だからこそ強固かつ奴の能力を出来れば無効化、そうでなくとも能力を抑えるアーティファクトが必要となる。それを作れるのは概念魔法が使える錬成師たるハジメと魔法の専門家たるユエ、そして結界師たる鈴…お前達だけだ」

「わかった、鈴達に任せてよ!」

「ありがとう、頼りにしているぞ」

私は鈴の頭を優しく撫でる。

「目的が不明な以上は光輝が何処に現れるかは分からない…もしかしたらトータスに現れる可能性も否定できない」

「あぁ、という事は我々も警戒しなければならないだろう」

「メルドとカムの言う通りだ。我々もそうだが、トータス側でも万が一に備えて欲しい」

 

 

こうして穏やかに終わる筈だった同窓会は天之河の脱獄という最悪の事態の発生により余韻に浸る暇もなくなった。メルド達トータス組は宿泊する予定をキャンセルして惑星トータスに戻って上層部の者達に今回の件…奴の脱獄とエヒトに匹敵するかそれ以上の脅威が存在するであろう事を報告、私からの報告だったという事もしもあって彼らも事態を重要視し、軍備増強を行うという判断に至ったと後にカムからの報告を受けた。

 

ハジメ、鈴、ユエは試行錯誤の末に奴を捕縛する為のアーティファクト"キャプチャープリズン"の開発に成功、自身の仕事と平行して徹夜で作ってくれた彼らには感謝してもしきれない。

 

後は天之河の行方だが、宇宙はあまりにも広いが故にその手掛かりはなかなか掴めずにいた…あの日までは。

 

 

 

天之河の脱獄から約3週間後の事だった。

『碧刃、奴の現在地がわかったぞ』

というつばめからの連絡があった。

「場所は何処だ?」

『第88太陽系の地球、日本の東京だ。詳しい事は会って話そう』

「わかった、今行く」

私はつばめからの通信を切ると綾波達を呼び出す。

「皆、天之河の行方が判明した」

「で、あの糞野郎は何処に?」

嵐の疑問に私はこう答えた。

「第88太陽系の地球だ」

「無関係だった他の地球に迷惑をかけているのですか…あの馬鹿は」

とコンボバットは呆れた様子でそう言う。

「私は一度つばめの元に寄ってから奴の捕縛に向かう。出来るだけ皆と奴を関わらせたくないし万が一の事態に備えてこの地球で待機して欲しい」

私はそう言ったのだが

「私も行くです。あの時と同じ様に捕らえてやるです」

と綾波は同行を求めた。駄目だと言っても無理矢理着いて来るだろう。

「…わかった。着いて来い」

私の言葉に綾波は頷き、私はスペースブリッジキーの座標をつばめがいる場所に合わせてグランドブリッジを開く。

「碧刃、綾波。気を付けて」

ハジメの言葉に私と綾波は頷き

「あぁ、行って来る」

と皆に見送られながらグランドブリッジの中へ入ったのだった。

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

 

 


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