―side:Magna Convoy―
ネスト日本支部にある一室に私と綾波は第88太陽系の地球に行く前に尋ねた。
「2人とも、待っていたぞ」
「それで状況は?」
「数分前に
「トレセン学園?」
「あの地球では馬が既に絶滅している代わりにウマ娘っていう馬の耳と尻尾を生やした獣人が人間と共存していてな、
モディアックの報告によると別の世界線から漂流してきたあかりがそのトレセン学園で勤務しながらジーオスと戦っている。現在、奴と戦っているのもあかりらしい」
「別の世界線のあかりさんですか…」
と綾波は興味津々な様子で呟く。
「しかしその地球にもネストの様な組織があるとはな」
「あの地球は西暦の時代から怪獣による事件が起きてきたからな」
つばめが端末を操作した後、モニターには見たことない怪獣達の姿が映し出された。
街中を疾走し、ビルへ登る巨大なゴリラ、巨大な二足歩行の亀型怪獣とジーオスに似た
「あっちの地球での西暦1933年に映画撮影で髑髏島という島へ上陸した映画監督達がコングを捕獲、帰国後に見せ物にしてたところ脱走して米国ニューヨークで暴れ回った末に米空軍によって駆除された事件とその後の髑髏島が地震で海に沈むまでの複数回に渡って行われたプロジェクト・レガシーという島の環境・生態系調査を皮切りに西暦1953年のニューヨークでのリドサウルス事件、西暦1961年の英国ロンドンでのゴルゴ事件、西暦1973年のギャオスの大群とガメラとの戦い、西暦1998年のニューヨークでのゴジラ事件、西暦2006年には志摩や名古屋でのガメラ二代目個体とジーダスとの戦いに韓国・漢江でのグエムル事件、オーストラリア・シドニーでのゴジラ二代目個体とクイーン・ビッチの戦い…挙げるとキリがない上に今現在ではこの地球の様にジーオスが猛威を奮っている」
「だから対策機関が作られたですね…それにしてもギャオスってジーオスに似てるです」
「いや、ジーオスがギャオスに似ているって言うべきだろうな。後の遺跡などの調査でギャオスはあっちの地球どころかこっちの地球でのジーオス出現より遥か昔から存在してたのがわかったし、ギャオスとジーオス双方の遺伝子を照合してみたら―」
「共通部分が出た、か?」
「その通りだ。ジーオスはギャオスの遺伝子と金属細胞を掛け合わした事で生まれた怪獣…それが俺やあっちの科学者が出した結論だ。誰かが人為的にやったのかそれともギャオスが金属細胞を取り込んだのかはわからないけどな。話が逸れたが今は奴の捕獲だ。現地に向かった後、モディアックからの遣いが待機しているらしいからまずは合流だ。後は任せる」
「了解した」
私はつばめから座標を教えられた後、スペースブリッジキーを横の空間に"差し込む"とそれを回してスペースブリッジを開く。行き先は当然奴がいる第88太陽系の地球の日本・都内のトレセン学園周辺の結界外だ。
「つばめ、行ってくる」
「行ってくるです」
「あぁ、気を付けてな」
私達はつばめに見送られながらスペースブリッジの先へ足を踏み入れた。
通り抜けた先は当然ながら外だ。街並みは道路にウマ娘専用レーンがある以外は私達が住む地球と殆ど変わらなかった。
「ネストからの使者だな」
私達を呼びかけてきた声に対し私達は声の主の方を振り向いた。
宮古と変わらない背丈で茶髪をポニーテールで束ねたその人物は気配からしてアデプトテレイターに間違いないだろう。それにしてもうっすらとあかりに似た気配を感じるのは何故なのだろうか…
「あぁ、そうだ。ネストのチームオーダーヴァンガードの隊長兼部隊司令官の頼尽碧刃だ」
「同じくオーダーヴァンガードの隊長補佐…副官の頼尽綾波です」
「貴殿らも頼尽なのか…俺は頼尽
「あぁ、こちらこそ」
私達は依織と握手を交わし、早速結界を破壊しようとしたその時だった。
「ワーギャ、ワーギャ、キシャァァァァァァァァァァ!」
複数のジーオス達が私達の前に現れた。数匹というレベルではない…2桁代の数だ。
「向こうには行かせないって事か」
と依織はそう呟く。
「仕方ない…今はこいつらを倒す方が先決だ!」
私の言葉に二人は頷き
「「「アデプタイズ!」」」
私達はトランステクターを顕現させ
「マグナコンボイ、トランスフォーム!」
「ダイナヴェイン、
「レーザーコンボイ、トランスフォーム!」
それぞれトランステクターと一体化し、ジーオスの群れとの交戦を開始する。
相手は
ハイパーサージモードを使う事も考えたが、あの形態はエネルギーの消耗が激しく維持出来るのは数分程度…それも使用後はエネルギーが回復するまでは使用時間に応じて通常時よりも能力が低下する。出来れば万が一に備えてとっておきたい切り札だ。今回は出来れば結界の破壊とベリアジーオスFBとの交戦にハイパーサージを使いたい。
「これじゃ埒があかないです!」
「俺の部隊の連れも交戦中だからこっちには来れない!」
と
「俺なら大丈夫だ!捕縛に向かうんだ」
レーザーコンボイの言葉に私は頷き、私とダイナヴェインは天之河に向かった。
「まだだ…俺はまだ戦える…!」
現場に近づくと天之河の姿が見えた。どうやらコアから引き摺り出されたようだが、奴は再びベリアジーオスFBになろうとした。私はダイナヴェインにトランステクターとの一体化を解除した後、
「そこまでだ、天之河」
私はイオンブラスターの銃口を天之河に向けてそう告げる。
「クソ野郎、観念しろです」
更に天之河の背後から綾波が刀の先を奴に向ける。
「頼尽碧刃…!インドミナスレックス…!お前達から来るとはな…俺はお前達を倒して皆を―」
天之河が言い切る前に綾波はキャプチャープリズンを起動、キャプチャープリズンは天之河を覆うと楕円形のカプセルとなった。
「お前を捕縛する為にハジメや鈴、ユエと共に作ったアーティファクト…"キャプチャープリズン"だ」
『おのれ頼尽碧刃!インドミナスレックス!』
私は叫ぶもキャプチャープリズンから出る事が出来ない天之河を放っておいてこの地球のあかり達の元に視線を向ける。
あかりは数名のウマ娘に囲まれていた。おそらくあかりの教え子達なのだろう。その内の一人が依織に似ていると思っていたらその依織からメッセージが来た。そう言えばこの地球に来る前にあちらの遣いに私の連絡先を教えておくってつばめが言ってたな。
内容を要約すると『自分に似た外見の親族の娘がトレセン学園に通っていてあかりの教え子だが自分がモディアック所属のアデプトマスターである事は黙っていて欲しい』という事だ。
そのメッセージを受けた私は綾波にその事を伝え、私達はこの地球のあかり達の元へ向かい、声をかける。
「協力に感謝する。それと我々の地球の脱獄者が迷惑をかけて申し訳ない」
「申し訳なかったです」
私達は頭を下げる。
「気にしないで。私は気に入らない奴をぶっ飛ばしただけだからね」
とこの地球のあかりは明るくそう返した。
そのすぐ後にモディアックの関係者達も合流した。
その中の一人がモディアック日本支部の総監たる頼尽アズサ…あかりの実の姉だ。あかりが物心付く前にソルジャー級の襲撃で命を落としたが別の惑星でアデプトテレイターとして転生、この第88太陽系の地球に辿り着いたそうだ。隣にいる男はモディアックの科学者であるデルク・ファントン。実は宇宙人らしく人間の姿に擬態している。ウマ娘の姿をしたアデプトテレイターはジャズという名で私と同じく別の
もう一人は事前に貰った資料に情報がなかったが、アズサ総監と一緒にいるという事は敵ではないだろう。綾波とそのアデプトテレイターは互いにじっと見ていたが、先にあちらが沈黙を破った。
「お前、インドミナスレックスだな」
「お久し振りです、それとその節はお世話になりました、女王様」
と綾波は頭を下げる。
『綾波、彼女は―』
『ジュラシックワールド…イスラ・ヌブラル島の女王として君臨していたティラノサウルスです。まさか彼女も転生していたとは…』
『なるほどな』
私は綾波に念話で尋ね、綾波はそれに答えた。元々が恐竜だった者同士だったからわかったのか…
「レクシィ、今この娘がインドミナスレックスって…」
「気配で分かる。こいつはインドミナスレックスだ。随分と大人しくなったようだがな」
「えぇ、私も気配で分かったです、女王様だと」
「女王、か…それも嘗ての話だ。今では一介のアデプトマスターだ」
あかりにとってインドミナスレックスは色々と思うところがある存在―それはこの地球のあかりも同じだったようだ。
「あかりさん、泣いてるの?」
「えっ!?あぁ、うん、大丈夫だよテイオー。ちょっと色々思う所があってね」
「積もる話もあるだろうが場所を変えないか?人だかりが出来てるぞ」
私はこの地球のあかりにそう提案する。
「そうね…正体がバレた以上、今後について考えないといけないわね」
トレセン学園の敷地内にあるこの地球のあかりの秘密基地の応接室にてテーブルを挟んであかりとアズサ総監とイスラ・ヌブラル島の女王だったティラノサウルスことレクシィ、私と綾波が向き合う形でソファーに座わり、もう1組のソファーにはあかりの教え子達とデルク博士、ジャズが座っている。
因みに応接室から離れた場所…トランス4テクターには
「改めて自己紹介をしよう。私はマグナコンボイ…この姿では頼尽碧刃という名で活動している。第46太陽系の地球の特殊災害対策機関ネストのチームオーダーヴァンガードの部隊長リーダーだ」
「同じくチームオーダーヴァンガードの部隊補佐の頼尽綾波…です」
私達はそう自己紹介を行う。
「第46太陽系の地球って…ネストは解体されたってマヤはあかりちゃんに聞いたよ」
「それに頼尽って名字…もしかしてあかりさんの関係者…?」
あかりの教え子達がひそひそと話をする中
「貴方達はこの世界線のネストに所属するアデプトマスターなんだね」
あかりは私達にそう尋ね、
「そうだ。察しが良いな」
と私は返し、私と綾波も転生者である事やトータス事変とこの
「あのクソ野郎はどの世界でもクソ野郎だったか…私が元いた地球じゃ反アデプトテレイター派の一人で同胞達を死に追いやってたよ」
とこの地球のあかりは天之河を呆れた表情を浮かべた。
「それは酷いな」
「私の転生前の世界線では暗殺されたです」
「そう言えばそんな事を言ってたな」
「そう言えば貴女の前世ってどんな世界だったの?」
「私が元いた世界はあかりさんはジーオスXとの戦いで自らの命を犠牲にして自爆して倒したです」
「100年くらい前の戦いね」
「はいです。その戦いから50年後に発生した鮮血のクリスマスというテロが原因で人類は反アデプトテレイター派と擁護派に別れての戦争に突入したです」
「それってあかりさんが元いた地球と同じじゃん…」
「もしかしたら…そもそも鮮血のクリスマスは私とヴェル…どちらかが欠けたら阻止する事は出来なかった…私のいた世界線で私は出現したジーオスの対処をせざる負えなってヴェルと合流した時、彼女はもう―」
「そして綾波がいた世界線ではそもそもあかりがいなかったからその二つの世界線では阻止出来なかった、か…」
私の言葉に対しこの地球のあかりは肯定するかの様に頷く。
「私は祖母が高坂穂乃果と園田海未だったので物心付いた頃から擁護派でしたが…最後は連中に捕まって処刑され、気付いたらこの世界にいてスペースブリッジの暴走によって惑星トータスに漂着したです」
「インドミナス時代の記憶って最初から覚えてたの?」
「いえ、人間への転生した時やアデプトテレイターに転生した直後は覚えていなかったです。せいぜい当時の出来事を夢で見た程度で…
そんな時、トータスのある場所でエヒトの配下の一人と戦ったのですが、その相手は魔法で相手の記憶を読み取る事ができて…そいつの記憶の奥底まで読み取られて暴露された事で自分がインドミナスレックスだった事をはっきり思い出したです」
「そしてあの野郎はまた殺戮をやるだろうから今の内に始末する殺すべきだとインドミナスレックスが作り出された背景など考えもせずふざけた事を抜かしてな、一発殴った」
「まぁ、それはわかる。私も同じ立場だったら同じ様な行動を取っていたかも」
「そしてすべての元凶は私と綾波にあると奴は自己解釈し、先程話した通りになったという訳だ」
この地球のあかりはなるほどね、と呟いた。その後はあかりの教え子達の疑問に答えたりしたが、流石に長居する訳にもいかないのでそろそろ帰る事にした。
「えぇ~!もう帰っちゃうの?」
と残念がるあかりの教え子の一人に
「ゆっくり観光したい所だが、今回はあくまでも
「宮古や鈴は確実にズルいって文句言って連れていけと駄々をこねそうですからね」
「だが、今度は私の仲間達も連れて来よう」
と私は仲間を連れて再び訪れる事を約束し、私達は捕縛した天之河を連れてスペースブリッジを通って第46太陽系の地球へと帰還した。
帰還してすぐに天之河の身柄はつばめを通してパシフィクス刑務所に引き渡し、私はハジメ達を訪ねて改めて礼を言うと共に第88太陽系の地球の事…あっちの地球のあかりやウマ娘の事を話し、皆が連休を取れた際には第88太陽系の地球へ観光に行こうと誘った。ハジメ達も喜んでくれたのだが、特にあかりとヴェルはあっちのあかりと直接会って話がしたいと語っていた。
あっちの地球のあかりもあかりとヴェルとの対談とμ'sの面々の墓参りをしたいと語っていた事も伝えておいた。
天之河の再逮捕が出来て一安心と言いたいが、まだ終わってはいない…奴を脱獄させたのが誰なのかなどを尋問しなければならない…そう思っていたのだが、残念ながらそれは叶わなかった。
『碧刃、残念な知らせだ』
「残念な知らせ?」
『あぁ、天之河の事だ。お前が尋問を行う前に俺の方からも
「何だと!?今からそっちへ行く」
私が僅かな望みに賭けてユエとティオを連れてパシフィクス刑務所にいるつばめの元に行くと奴は金属が混じった肉塊へと変わり果てていた。つばめによると誰が脱獄させベリアジーオスFBにしようと訊いた直後、奴は突然痙攣し、肉塊になったらしい。ユエとティオの魂魄魔法で何かしらの形で蘇生を試みたが、それは叶わなかった。
私の推測に過ぎないが奴を脱獄させベリアジーオスFBにした黒幕は自分の事を話される前に用済みだからと奴を処分したのだろう。もしかしたらこうなる事も想定して予め仕込んでいた事も考えられる。どっちにしてもこの事件の真相が闇の中になった事に変わりはない。
そしてこの時の私達はまだ知る余地もなかった…その黒幕こそ転生前にオルタニティが言っていた将来的にこの世界を破滅へと導く存在である事、そして第88太陽系の地球でその存在とこの