青き銃士と戦女神(ヴァルキリー)   作:衛置竜人

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第7話『最奥の試練』

 

 

碧刃達がいる惑星トータスの外ではネストが所有する次元航行船"アクサロンMk-2"が待機していた。

碧刃からの通信もあってネストは惑星トータスの座標を特定する事に成功にはした。

「状況は?」

「これほどまでに強力な結界が惑星全体を覆っている為、降りるには隙間を開けるしかありません。

しかし計算上ではその隙間が保つのは5秒、それも人が通れる程のものでは…」

「内部から結界を弱らせるか破壊しない限りは修復されるか」

「はい、しかも開けられたとしても一度開けたら結界が強固になって再度開ける事は困難になるかと」

「例の物と補給物資を送る準備はどうだ?」

「素粒子コントロール装置で小さくして何時でも送れます」

「よし、ならば送るぞ!結界に穴を開けてやれ!」

「了解!」

アクサロンMk-2から放たれた砲撃によって結界に穴が開けられ、閉じるまでの5秒の間にあるトランステクターが補給物資を搭載した状態で惑星トータスに向けて投下、トランステクターと補給物資が結界内に入った後に穴は閉じるのだった。

 

 

―side:Magna Convoy―

 

 

吸血姫…ユエが封印されていた部屋に他に何かないかと探していたらある物を見つけた。

「碧刃、これって…」

「魔力を流し込めば使えるかもな」

ハジメに対しそう答えた私は魔力を込める。すると立体映像が再生され始めた。

「…叔父様…!?」

写し出されたのは初老位の金髪に紅眼の男性だ。

『アレーティアよ、この映像が再生されているという事はオルクス大迷宮…それも真の大迷宮に挑める実力があり、私の用意したガーディアンから君を見捨てず救い出した者がいるのだろう』

アレーティア、それがユエの本当の名前か…

『アレーティア、私の言葉など聞きたくない程に君はきっと私を恨んでいるだろうが、まずは謝罪させて欲しい…済まなかった!

謝って済む問題でないのは分かっている…だが、私にはこうするしかなかった。

アレーティア、君は他の追随を許さないほど魔法の分野において天才だった。

しかし、その強さは目立ち過ぎ、エヒトを崇拝する者達に目を付けられた。

当時、既にアヴァタールの上層部はエヒト神を信仰する勢力に染められつつあり、君の両親もそうだった。その片鱗を端々に感じていたはずだ』

「…覚えてる。叔父様と父上はよく私の教育方針で口論してた。…私の教師役には叔父様が付いていた。だから、私は信仰とはほとんど関わらずに育った」

『幼い君に無条件に信仰させるのは危険だと考え、君を守りたかった私は君を信仰から遠ざけたが、それが徒となった。奴等にとって思った通りに動かない駒は邪魔な存在だ。

君の不死性とて絶対ではない故に暗殺しようという企みも本格的になった。

神の意思から君を守り切る自信はなかった私は、いつか反逆の狼煙を上げることができる…もしくはそれを成せる者が現れるその時まで君を隠す事にした。暗殺が成される前に死んだことにして。話すかどうか悩んだが、私を憎めば、それが生きる活力にもなるのではと思ったのと奴等を確実に欺く為にも話すべきではないと判断した。

しかし、どんな理由があろうと私がした事は到底許される事ではない。

こんな事を言うのもおこがましいかもしれないが、言わせて欲しい。ただの一度とて、煩わしく思ったことなどない、本当の娘のように思っている…君を心から愛してる』

その言葉にユエは泣き崩れ、優花は彼女を支える。

『愛しきアレーティアを救いだした者…もしくは者達よ、アレーティアの事を頼む。彼女を幸せにしてやって欲しい。アレーティアよ、君にありったけの幸運と幸せが訪れん事を…』

映像はそこで終了し、ユエは暫くの間泣き続けた。

 

 

私達は封印部屋から出てハジメが錬成で作った空間の中にいた。

封印部屋を使わなかったのは理由はどうあれ300年もあの部屋にいたユエへの配慮によるものだ。

因みにユエはそのままだと裸だったので優花と綾波が服を着せた。因みに服は綾波の着替え分だ。

「…そう、もうそんなに経ってた…」

私はユエに吸血鬼族が三百年も前に滅んだ事を話した。

「吸血鬼って、皆そんなに長生きするの?」

「…私が特別。"再生"で歳もとらない…12歳の時、魔力の直接操作や"自動再生"の固有魔法に目覚めてから歳をとっていない。

…普通の吸血鬼族も血を吸うことで他の種族より長く生きるけど、それでも二百年くらいが限度。

…因みに人間族の平均寿命は七十歳、魔人族は百二十歳、亜人族は種族による。…エルフの中には何百年も生きている者がいる」

優花の疑問にユエはそう答えた。

「なるほど…"テレイター"に含まれる存在か」

「テレイター…?」

「寿命が不明もしくはないに等しいレベルで長命な存在の総称だ。種族的にそうな存在もいれば後天的にそうなった者もいる。私が知る中には400万年以上も生き続けている種族もいる」

その種族というのがトランスフォーマーだ。流石にユエも驚きを隠せないようだ。

「それで、魔法適性はどうなの?」

ハジメの言葉にユエはこう答えた。

「…全属性に適性がある…接近戦は苦手…一人だと身体強化で逃げ回りながら魔法を連射するくらい」

「ただ、その魔法が強力、という事…ですね」

綾波の言葉にユエは頷くと補足を述べた。

「…魔法自体は無詠唱で放てる…でも癖で魔法名だけは呟いちゃう。

…"自動再生"は魔力が残存している間は一瞬で塵にでもされない限り死なない…けど、魔力が枯渇した状態で受けた傷は治らない。

…そう言えば、皆はどうして此処に?」

ユエの言葉に私はこれまでの経緯を話した。

「…みんなつらい…私もつらい…それに優花、凄い…生きてるって分かってたとはいえ、ハジメの為にこんな危険な所に来るなんて…普通は出来ない…」

「私が此処に来られたのは碧刃のお陰だから私は―」

「いや、私はなかなか根性のある奴だと思ったぞ、優花。あの行動があったから私はハジメ以外のクラスメートの連中を信用していない中でお前の事は信用しようと思ったし、今は信頼している」

「ありがとう、碧刃、ユエ」

優花はユエの頭を優しく撫でる。

「…そう言えば、終わったらどうするの?…全てが片付いたら…」

「私達は自分の意思と無関係に強制的にこの惑星トータスに召喚されたから家族や同胞の元へ帰りたい…それだけだ」

「皆が羨ましい…私には帰る場所…ない…」

「だったらユエも一緒に来ない?戸籍なら碧刃が何とかするだろうし大丈夫なんじゃないかな」

ハジメの言葉にユエはその紅い瞳を大きく見開いた。

「まぁ、何とかなるだろう。そもそも私だって元々は戸籍がなかったからな」

話も一段落し、優花は魔物肉の調理を始めた。

「ユエは魔物の肉を食べても大丈夫なのかな?」

「…食事はなくても大丈夫」

ハジメの言葉にユエはそう答えた。

「まぁ、三百年も封印されて生きてるテレイターだから食わなくても大丈夫だろうが…飢餓感とか感じたりしないのか?」

「…んっ、血を吸えば…。さっきもハジメの血を吸ったから回復して魔法放てた。…熟成の味わい…何種類もの野菜や肉をじっくりコトコト煮込んだスープのような濃厚で深い味わい」

「あぁ、さっきのサソリ戦で、か…」

「そう言えば、私達みたいなアデプトテレイターの血ってユエさんが吸っても大丈夫ですかね?」

「そうだな…私が知る中でアデプトテレイターに使われている金属細胞であるトランスフォーマーやジーオスの金属細胞は適合しなかったら肉片に変えてしまう代物で下手したら死に至るからな…現に適合出来ずに金属が混じった肉塊になった遺体を見たことがある」

そんな話をしていたらユエが私の首筋に牙を立てようとしていた。

「さっきの話を聞いていなかったのか?アデプトテレイターの血には金属細胞という"毒"が含まれていて下手したら死ぬぞ」

「…好奇心。それに即効性じゃなかったら何とかなると思う…いざとなれば神水もある」

「確かにそうだが…」

ユエは私の首筋に牙を入れる。アデプトテレイターの肌は人間の様に柔軟であるがその強度や自己修復能力は人間より遥かに上である。

「ん…これはこれで美味…ん!?」

ユエの様子が血を吸いはじめて数秒で変わった。

ユエは激しい痛みに襲われるかの様に苦しんだ後、飲んだ血を出来るだけ吐き出し、その血を見つめた。

「なるほど…体が耐えきれず細胞が変異を起こそうとしたが、自動再生が本来の姿に戻そうとして激しい痛みに襲われた、といった所だな」

「じゃあ、私の血でも同じ事が…」

「起きるだろうな」

ユエはこの出来事を教訓としてハジメか優花の血を吸うという事にしたらしい。優花の血もユエとしては美味しかったらしく曰く"上質な酒の様な旨さ"との事だ。

「そう言えばユエさんはこのオルクス大迷宮の事で何か知っている事はない…ですか?」

「この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

「反逆者?」

優花の言葉にユエは頷く。

「…神代に、神に反逆し世界を滅ぼそうと画策した7人の眷属。…しかし、その目論見は破られ、彼等は世界の果てに逃走した。…その果てが今の七大迷宮で、オルクス大迷宮もその一つ。…そして奈落の底の最深部には反逆者の住まう場所があると言われている」

「なるほど…ユエの叔父の話とも照らし合わせてエヒトは胡散臭くて信用できないどころか録でもない存在と分かったが、反逆者達は何を知って反逆を起こしたのかを知りたい」

 

 

翌日、引き続きオルクス大迷宮の攻略を進めていた私達はとある階層にて鼻の先に花を咲かせたラプトルの様な魔物がいて、花を撃ったら何故か地面に落ちている残骸に怒りをぶつけるかの様に何回も踏み潰して去っていった。しかも、それはこの階層にいた他の魔物も同じだった。

「ユエ…これをどう思う?」

私はこの中でこの世界に一番詳しいユエに問う。

「…ん、おそらく寄生して操ってる」

「だったらこの花を付けた張本人が何処かにいるはずね」

「優花の言う通りだな…総員、手分けして探すぞ」

私達はそれぞれハジメと優花、綾波とユエ、私単独に別れてこの階層の探索を始め、私が暫く進むと何者かが何処からか私に向かって緑色のピンポン玉みたいな物を投げてきた。

私は激しく撃ち込まれる緑の球をハンドガンで撃ち落としていき、私に向かって来なかった緑の球の一つが偶々近くにいたラプトル型の魔物に当たり、魔物の鼻先には花が現れる。ラプトル型は私に襲いかかろうとするが、私は花を撃ち落とし、花を失ったその魔物は逃げていった。

「この緑の球に当たると操られるという事か…」

私がそう考察しつつ"気配感知"でその犯人の魔物を探していると発砲音が近くから響いてきた。

「反応を察するに綾波とユエが交戦状態にあるようだな」

私は綾波とユエの気配を辿って向かう。

 

現場に到着すると既に戦闘が終わっており、人間の女と植物が融合したような魔物が綾波とユエの前に倒れていた。

「二人共、無事みたいだな」

「えぇ…何とか。あの緑の球を放っていたのはこの魔物です」

なるほどな…一方、ユエは驚いた表情を浮かべて魔物の亡骸を眺めていた。

「どうしたんだ、ユエ?」

「…緑の球、当たるとこの魔物に操られる筈なのに私に当たっても何ともなかった…花も直ぐに枯れて落ちていった」

とユエは答えた。

「アデプトテレイターである私達や"毒耐性"を持つハジメや優花にはあの緑の球は効かない…しかしユエは"毒耐性"を持っていないはず。

…だが、思い当たるとしたら、ユエが私の血を吸って直ぐに吐き出した事だ。あの時だって出来るだけ吐き出したと本人は言ってたが、仮に少量でも摂取した結果として変質し、私と綾波が持つ毒無効の技能を獲得した、と考えられるな」

 

 

 

あれから休憩を挟みつつも順調に攻略を進めていき、いよいよオルクス大迷宮の第200階層目…奈落の底の100階層目へと到達した。

私は扉を開けようとしたが、私達の足元に魔方陣が出現。

『金属細胞保有者を2名確認。金属細胞保有者用試練会場へ召喚します』

というアナウンスが流れ、私と綾波は召喚魔法に飲み込まれた。

「無事か?綾波」

「はい、大丈夫です」

私達が飛ばされたのは無数にある直径5メートルの柱によって支えられている天井まで30メートルはあろう空間の中だった。

「あの先がその反逆者の住処ですか…?」

「少なくとも住処に繋がっているのは確かだろう。綾波、何が起きるか分からないから警戒を怠るな」

私の言葉に綾波は頷き、私達は扉の前に行こうと警戒しながら進む。そして最後の柱の間を越えた瞬間だった。

『金属細胞保有者用試練を開始します』

と無機質な音声が響いた後、私達の前に現れたのはゴリラの様な腕を生やしたトカゲの様な怪物達だった。

「成る程、こいつらを倒せという訳か」

私はそう呟くとトランステクターを顕現させ

「アデプタイズ!マグナコンボイ、トランスフォーム!」

本来の姿(マグナコンボイ)となって怪物との交戦を始めたのだが、この怪物は厄介な事にいくら斬っても撃ち抜いても怪物達はいくら倒しても亡骸が地面に消えた後、また直ぐに現れて襲い掛かってくる。

更にはファンタジー作品によくある獣人の姿へ変形し、尻尾が変形した斧と背中の一部が変化したキャノン砲で攻撃してくる。

「きりがない…です!」

「全くその通りだな…いや、もしかして核となる存在がいるのかもしれない。そいつを倒せば…問題はそれらしき存在が見当たらない事だが…」

 

 

―side out―

 

 

 

碧刃と綾波が金属細胞保有者用試練を開始した頃、ハジメ、優花、ユエは扉を開け、ある部屋に到着した。部屋の広さは碧刃と綾波が飛ばされた部屋と同じくらいの広さがあった。

「2人がいないから何が来ても僕達でやるしかない」

ハジメの言葉に二人は頷き、3人が部屋の中へ足を踏み入れると、全ての柱が淡く輝き始めていった。

ハジメ達は感知系の技能をフル活用しながら歩みを進める。200メートルも進んだ頃、前方に全長10メートルはある巨大な両開きの扉を発見した。

「これまた凄いね。もしかして…」

「…反逆者の住処?」

「だったらようやくゴールにたどり着いたってことかな」

そして、3人揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた瞬間、扉とハジメ達の間に30メートル程の空間に赤黒い光を放つ巨大な魔法陣が現れた。

 

ハジメと優花にとっては忘れようもない、あの日、ハジメが檜山に殺されかけた日に見たベヒモスが出現した魔方陣と同じものだ。

違うのはベヒモスの魔法陣が直径10メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は3倍の大きさはあり、構築された式もより複雑かつ精密なものとなっている。

「まさしくラスボスって雰囲気だね」

「…大丈夫…私達、負けない…」

「そうね…私達ならやれる!」

ユエと優花の言葉にハジメは「そうだね」と頷き、苦笑いを浮かべながら魔法陣を睨みつける。

 

魔法陣から出てくる化物を倒さないと先へは進む事が出来ない…光が収まった後、魔方陣から現れたのは体長30メートルで6つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の神話の怪物ヒュドラに似た魔物だった。

 

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

谷口鈴の今後について最終投票(1の場合テレイター化で大幅強化&碧刃ハーレム入りで出番増加、2の場合出番は原作と同じ位か減少)

  • 1.オーダーヴァンガードへ正式加入
  • 2. 坂上とくっつく(坂上改心・和解)
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