授業が終わり、マリエールが机の片づけをしていると、そっと近づいてきたロゼが机の影から飛び出してきた。何故かばあ!と両手を挙げている。
「こんにちは!」
「ごきげんよう、ロゼさん」
悪戯げな顔でロゼが笑う。どうやら次の授業でこの教室を使うらしい。
「ハロウィンのイタズラですよ!驚きました?」
この国の人たちはイベント事が好きで、季節ごとのお祭りがある。ハロウィンもその一つであり、学園内でもあちらこちらでカボチャのランタンが宙に浮き、仮装する生徒が見受けられた。基本的には親しい人同士で悪戯かお菓子かを贈りあう平和なお祭りである。
ロゼもまたイベントが好きなことをマリエールは知っていたので、何かしら仕掛けてくることは予想済みなのであった。
「あら、ではここでお菓子を差し上げたらどうなるのかしら?」
マリエールは綺麗にラッピングされたお菓子をちょんと机の上に置いて見せた。
まさかお菓子が用意してあるとは思わずロゼは目をぱちくりさせている。
「えっ……じゃあマリエールさんもイタズラしてもいいですよ!」
「そうねえ……」
マリエールとしてはお菓子を取り出して反応を見るところまでが目的だったので、悪戯を仕掛けていいと言われるのは予想外だった。
とりあえずロゼを見る。腕には早速、マリエールが出したお菓子を抱え込んでいる。特に仮装はしていないようでいつもどおりの制服姿にハーフアップにされた髪型、赤いリボン。じっと見られてロゼがなにやらもじもじとしだした。
「えっと……あの……」
机をはさんだ位置に立ったロゼは大事にお菓子を抱え込んだまま器用に両手の指先を組み合わせたり、ちらちらと上目でマリエールの方を見たりと忙しない。
そんなロゼの様子には頓着せずしばらく考えた後、失礼しますわ、とマリエールはロゼの方に手を伸ばした。
何をされるか分からずロゼはきゅ、と目を閉じる。
マリエールはロゼの髪をハーフアップにしていたリボンを抜き取り、前髪に結びなおした。
きょとんと目を開いたロゼに笑いをこぼすマリエールは楽しそうだ。
「今日は一日そのままでいること。ではあとでね」
ちょんまげ状態にされてさらけ出されたロゼの額を指先でちょん、とつついてマリエールは去っていった。
つつかれた額を手で隠したロゼはしばらくした後愕然とした様子で呟いたのだった。
「やられました……」
翌年からのハロウィンはイタズラと称してお互いのヘアアレンジをする日になりましたとさ。
書いたはいいけど髪型変更は運動会回後と決めていたので後出しになったハロウィン