ストパン世界に転生したけどモブとしてクルロスを見守ろうと思ってただけなのに…   作:まったりばーん

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オリキャラとオリ設定強めです
またそれに伴い原作のワールドウィッチーズの設定に大幅に干渉する結果となってしまいました
申し訳ありません


結局、損な役回り

「久し振りだな!」

 

ハンガー内に反響する声。

その声にクルピンスキーは肩を震わせた。

久方ぶりに聞いた勝ち気で、真面目で、よく通る声。

彼女はその声の主が苦手であった。

 

「ヴァルトルート・クルピンスキー中尉!JG52以来ではないか!?」

 

というのも、その声の持ち主は伯爵の天敵であるからだ。

いつも彼女の頭を悶えさせるエディータ・ロスマンとはまた違ったベクトルで。

 

「どうした…?ヴァルトルート・クルピンスキー中尉?何故黙る?」

 

思わず口を噤むクルピンスキーに声の主は怪訝な表情。

再度、戦友をフルネームの階級付きで呼び続けた。

彼女の頭の中には敬称略はないらしい。

知らぬ仲ではないだろうに。

 

「久し振りだね?トゥルーデ?」

 

だからこそ、普段の人たらしのクルピンスキーからは考えられない微妙な笑みでその旧友を迎え入れる。

この新大陸のコロニー、ノイエ・カールスラントにて。

 

───

 

繰り返すが、クルピンスキーはバルクホルンの事が少し苦手だ。

向こうはどう思っているのかは知らないけれど。

楽天家という言葉を具現化したウィッチがクルピンスキーなら、真面目という言葉を具現化したのはゲルトルート・バルクホルン。

まさにアリとキリギリス。

共通の知り合いの一部からこう評される程、二人の性格は真逆である。

まぁ、馬は合わないだろう。

 

「まさか、貴官も召集されているとはなぁ…?ラルやパウラは元気か?」

 

「うん、元気してるよ。」

 

でも、そんな二人ではあるがその間には確かな友情は存在する。

二人にお互いの事をどう思っているのかと問い掛ければ声を合わせて

 

───戦友だ(よ)。

 

と即答する事は違いなかった。

同じ部隊であの年を生き延びたのだから当たり前と言えば当たり前だ。

只、それを差し引いてたとしてもやっぱりソリが合わないのだ。

 

「でも最近、先生とラル隊長仲悪いんだよね。目も合わせなくなっちゃった。」

 

「あの二人が?どうして?」

 

「いや…ちょっとね?」

 

答えに臆するクルピンスキーにバルクホルンは黒く細長い睫を尖らせる。

 

「お前~また何かしたんじゃないのか?だいたい、貴様はよく人間関係でトラブルを起こす!いつだったか前もオストマルクのウィッチにちょっかいをかけて彼女とパウラの関係性をギクシャクさせたではないか?部隊内で…しかも他人同士の交遊関係に傷を付ける様なマネはよせとあれほどっ…」

 

「ちょっとストップ!ストーップ!…いやいや、ボクは何もしてないよ!」

 

数年振りの再会だというのにすぐバルクホルンのお説教が始まってしまう。

JG52の時は怠惰な伯爵をしかりつけるバルクホルンは部隊内の名物的扱いを受けていた。

 

「本当か?」

 

半眼になりながら褐色の魔女を睨む世界第二位の撃墜王。

 

「…多分?」

 

「ハァ、何かしたんだな?」

 

ため息を吐くバルクホルン。

だから、伯爵はこのエースの事が苦手であった。

 

「二人の間、なんとか取り直すんだぞ?特にパウラは退官が近いんだ。喧嘩別れはさせるんじゃない。」

 

「解ってるよ…でも先生も意固地になっててね。」

 

「ホントに何をしでかしたんだ?」

 

「ボクは何もやってないよ…ボクはね。」

 

「んんぅ…?」

 

「失礼します。」

 

そんな数年振りの会話…かつてのJG52の面々が目撃したのなら懐かしさに微笑してしまう様なやり取りに、第三者の声が侵入した。

侵入者に視線を向けるバルクホルン。

伯爵も後を追うように眼球を移動させる。

四つの眼は小柄な金髪の少女の姿を補足した。

 

「ウルスラか…」

 

そこにいたのは軍服の上から白衣を纏った魔女、ウルスラ・ハルトマン。

偉大な英雄エーリカ・ハルトマンを姉に持つカールスラント空軍の技術士官である。

二人とも既知の仲であった。

 

「ウルスラちゃん。久し振りだね。」

 

「お久し振りです。クルピンスキー中尉、バルクホルン少佐…はお久し振りでもないですが。」

 

「あぁ、最近よく会うな。」

 

「へぇーそうなんだ。」

 

ウルスラとバルクホルンはベルリンへと至る道のりで近頃、頻繁に顔を合わせている。

それに、双子のエーリカと常に行動を共にするバルクホルンにとってみれば相棒と同じ顔なので時を隔てたという感覚もないだろう。

 

「で、何で今日はボク達を新大陸なんかに?」

 

クルピンスキーは小柄な博士に疑問を投げ掛けた。

彼女に任意の召集通知が来たのは一週間程前。

しかし、詳細は軍機にて到着時に説明するとしか伝えられていなかったのだ。

 

「まぁ、私達を呼び出したのがウルスラなら想像は付くが…」

 

「はい、今回お二人をお呼び立てしたのは他でもありません。新ユニットのテスト飛行にお付き合い頂きたいのです。」

 

「やはりそうか、今度もジェットか?」

 

「えぇ、お察しの通りです。本当は姉さんにも来て欲しかったのですが手紙を出したら断られてしまって。」

 

「アイツ…!どおりで連絡船の二人部屋に私一人はおかしいと思ったんだ!」

 

「ハハッ、エーリカちゃんらしいや。」

 

「あのなぁ…元をただせばハルトマンをあんなにしたのはお前だろうっ!?入隊時は!あんなに!真面目だったのに!貴様が遊びに、サボりに、色々と教え込んでっ!」

 

「…ボクは肩の力の抜き方を教えて上げただけだけど?」

 

「お前なぁぁーっ?」

 

「…あの、続けてよろしいですか?」

 

白熱する模範的カールスラント軍人の態度に押されながらウルスラは抑揚の乏しい喉を震わせる。

 

「コホンッ…すまない続けてくれ。」

 

バツが悪そうに咳払いするお下げの美人。

 

「フフッ…」

 

それを見て笑いを堪えるクルピンスキー。

バルクホルンは若干、伯爵に殺意を覚えた。

 

「話を元に戻します。今回、お二人に履いて頂く新型のジェットストライカーユニットですが、少々クセがありまして…飛行練度の高いベテランウィッチが扱って物にできるかどうかの代物なのです。ですから、お二人や姉さんの様なエースウィッチに遠路遥々、来て頂く必要があったのですが…。」

 

「クセ…とは?」

 

「はい、実物を見て頂くのが一番早いですね。それに伴ってお二人に紹介したい人達がいます。」

 

「紹介したい人達?」

 

「えぇ、もうすぐそこにいるんですけどね。どうぞ、入ってきてください。」

 

「「失礼します!」」

 

ウルスラがそう言うと、二つの声が先程ウルスラが通った扉越しに反響した。

入口のドアノブがガチャリと回転する。

 

「へぇ…これはまた…。」

 

そしてクルピンスキーは侵入した二人の人物を見て感嘆した。

それは彼女達二人の容姿が整っていたからだけではない。

歴戦のエース二人の眼前に躍り出た二名の技術士官。

その二人の姿形がまるで鏡に合わせたように瓜二つだったからだ。

ウルスラと同様の軍服と白衣の組み合わせは勿論、その肩まで伸ばした癖っ毛のブルネットヘアーから、少し攻撃的な雰囲気を覚えるスリムな顔、胡椒をまぶしたみたいなそばかす、女性にしては高い背丈、茶色い瞳の色彩まで…

 

その全てが規格化されているといってよい程、同一であった。

 

「ご紹介します。今度の新型ユニットのプロジェクトリーダーであるホルテン姉妹です。」

 

「初めまして、姉のヴァーレリー・ホルテンと」

 

「妹のラーヘル・ホルテンです。」

 

コンマ数秒の差を置いて発せられる自己紹介。

鼓膜を刺激する高い声まで区別がつかない。

 

「双子とは驚いた…カールスラントの技術士官は双子じゃなければいけない決まりでもあるのか?」

 

あまりの類似性にバルクホルンは目を丸くする。

 

「ふふっバルクホルン少佐。技術士官になったのは私達だけでホルテン姉妹は四姉妹の四つ子なんですよ?尤も今は三人で、末っ子は男の子ですけれど。」

 

姉のヴァーレリーはカタカタと笑いながらそう言った。

 

「今は三人って…?」

 

三人という言葉にクルピンスキーは眉を潜める。

 

「…クルピンスキー中尉、長女のヴァルブルガさんは爆撃ウィッチで40年の作戦中に…」

 

その疑問に答える様にウルスラが控えめに補足した。

直接的ではないがその内容を察する事ができる説明で。

 

「ごめん、無遠慮だった。」

 

「いえ、お気になさらないでください。私達の説明不足です。それにヴァルブルガ姉さんとは"いつでも"会えますから。」

 

「…申し訳ない。」

 

「本当に大丈夫ですよ。では、自己紹介はこれ位にして本題に移りましょうか?」

 

少し暗くなった雰囲気を押し流す様に妹のラーヘルが声を発する。

 

「お二人に見て頂きたいのはこれです。」

 

ラーヘルはおもむろに握っていたリモコンのスイッチを押した。

ガコンッ!と薄暗いハンガー内にあった鈍色のシェルターが動き出し、秘匿されていた物が露になる。

ライトに照らし出されたのはまるで半月を真っ二つに切り分けた様な特異な形状をしたストライカーユニット。

逆さにした分度器と言い換えてもいいかもしれないが、少なくとも既存のユニットでは考えられないシルエットである。

エース二人には灰色の塗装にカールスラントの国籍マークである鉄十字が描かれているので、辛うじてそれがユニットであると理解できた。

 

「「これが、私達ホルテン姉妹の開発したジェットストライカーユニットHo229です。」」

 

双子の姉妹は声を揃えて眼前に出現した機械の箒を指差した。

 

「これがストライカーユニット?翼が無いじゃないか?」

 

Ho229を見たバルクホルンの第一声はこれだった。

エイの如きHo229にはストライカーユニットには必須である翼が取り付けられている風には見えない。

只、ブーメランの様に湾曲したフレームに魔導ジェットエンジンをポン付けしただけの様な印象を受けた。

 

ネェイン!(いいえ)バルクホルン少佐。これでいいのです。このHo229は全翼機。謂わばエンジンを除くフレーム全体そのものが翼でありボディなのです。」

 

バルクホルンの指摘にラーヘルは即座にそう返答した。

 

「全翼機?」

 

聞きなれない言葉が飛び出し更に眉を歪めるバルクホルン。

 

「はい、全翼機です。独立した翼を廃し機体全体を一枚の主翼として設計する事によりユニットの重量と負荷を低減させ高速と高い航続性を可能とする概念です。構想としては30年前からあり、私達四姉妹は戦前から研究を進めていました。そして、ジェット魔導エンジンの登場と1000×3計画の発動によって我々姉妹の研究は陽の目を見る事になったのです。」

 

「すまない先程から聞き慣れない言葉が多いのだが?」

 

1000×3計画。

それもまた、エースには聞き慣れない単語であった。

 

「1000×3計画。カールスラント空軍上層部が43年に提唱した新型ストライカーユニット開発計画です。時速1000kmで飛翔し、1000kmの航行能力を持ち、1000キロの武器弾薬を搭載できるユニットを開発せよ…そんな子供じみた計画の事です。」

 

ラーヘルの横からヴァレーリーが補足する。

 

「それは何とも壮大だねぇ。できればお酒の席かベッドの上で聞かせて欲しいかな?」

 

現役のユニットユーザーであるクルピンスキーは苦笑した。

魔女の履く現在のユニットの性能を勘案すれば1000×3計画など宇宙旅行と同じ類いの夢物語に感じるのだろう。

それ位、馬鹿げた要求だった。

 

「えぇ、実際この229もその全てを可能とできた訳ではありません。最高速度以外は与えられた目標の9割程度しか実現できませんでした。」

 

「…嘘でしょ?」

 

真顔でそう返すヴァレーリーの返答にクルピンスキーは真顔になった。

それは裏を返せば目標の9割は達成できてしまったという事になってしまう。

 

「このho229のカタログ上のスペックは最高速977km/h、航続距離910km、最大武装積載重量860kgです。」

 

ラーヘルの口から淡々と語られる229の性能にクルピンスキーは何も返す言葉がない。

 

「無論、ジェット魔導エンジンの完成がなければ不可能でした。そして、ジェット魔導エンジンの実用化だけでも不可能でした。しかし、我々が戦前から蓄積してきた全翼機の研究があったので1000×3計画は可能となったのです。ですが…」

 

「ですが?」

 

「全翼機はまだ発展途上の技術です。その為操作性が独特で操縦に難があるのです。」

 

「あぁ、それでウルスラの言っていたクセに繋がるのだな?」

 

ヤヴォイ(はい)!残念ながらこの229、万人受けする国民大衆車(ヴォルクスワーゲン)ではありません。しかし、うまく使いこなせる事ができれば高速タイプのネウロイに追随しその撃破をする事が可能となります。501の報告にあった変形翼を持つネウロイやキールを襲った自爆型にも対処可能となるでしょう。」

 

「だからこそ全カールスラントウィッチの中でも指折りである少佐と中尉に試して頂きたいのです。そして今度の作戦までに物にして欲しい。少佐には数々のジェットでの活動経験がありますし、中尉はご自身の固有魔法で高速移動下での戦闘に熟達していると耳にしました。だからこそ…」

 

録音音声の様に矢継ぎ早に発せられる、姉ヴァーレリーと妹ラーヘルの声。

 

「「よろしくお願いします!」」

 

そして、最後に二人の声が一致した。

 

 

───

 

「うっへぇこんなの着なきゃいけないの?お洒落じゃないなぁ…」

 

「テスト飛行なんだからしょうがないだろう?」

 

Ho229の試験飛行の任を与えられた二人は早速、新型ユニットを装着すべく更衣室へと脚を運んでいた。

そこには万が一の事を考えてパラシュート等が内蔵された試験飛行用の飛行服が用意されている。

しかし、その飛行服は異常があった時にすぐに第三者から解るように色付け無しの白一色となっており、各部がプロテクターの様な物で保護されているのでごわごわしていて、クルピンスキーの好みには合わなかった様だ。

 

「ふぅーやっと着替えられた。先行ってるねトゥルーデ。」

 

だが、案外クルピンスキーの方が速く着替え終わり、未だに着替えに苦戦するバルクホルンを尻目にとっとと更衣室から退出してしまう。

 

(…アイツ、いつもこういうのは速いんだが)

 

心の中でそう呟くバルクホルン。

ロッカールームには彼女一人が取り残された。

 

「…これは?」

 

ふと、コンクリート打ちの床に銀色に光る金属片がバルクホルンの目に留まる。

入った時は目に付かなかった。

バルクホルンはその筋肉質の腕を伸ばして摘まみ上げる。

 

「…ロケットか?」

 

バルクホルンが広い上げた物。

その正体は開閉式のロケットペンダントであった。

落ちていた場所の位置的にクルピンスキーの物であろう。

あの怠惰な伯爵がうっかり落としてしまったに違いない。

 

…ということは、中に入っている写真は彼女の想い人エディータ・ロスマンその人であろう。

 

「フッ…こんなものを付けるとは、二人の仲が進展した証拠か。」

 

JG52の時はくっついたりつかなかったりと微妙な距離感であった。

でも、このように相手の写真をロケットに入れて肌身離さず持ち歩くとはいよいよあの二人の関係も落ち着いたという事に違いない。

 

カチャリ…

 

そう考えロケットの扉を開けたバルクホルン。

 

「誰だ?この男?」

 

しかし、開かれたロケットの中に納められていたのは見たこともない男の写真であった。

服装からしてどこかの軍人らしいが、カールスラント軍の物ではない。

 

「クルピンスキーの物じゃないのか?」

 

無機質なロッカールームの中で一人、首を捻りながらそのロケットをとりあえず自分のロッカーへと収納する。

後で落とし物として届ける為に。

 

 

 

 




全国のホルター姉妹推しの皆さんお許し下さい
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