ストパン世界に転生したけどモブとしてクルロスを見守ろうと思ってただけなのに… 作:まったりばーん
「さてとこんな所かな?」
「お料理ですか?クルピンスキー中尉?」
「うん、ちょっとね。」
日の沈んだ南リベリオン大陸基地の厨房の一角。
業務用の大きな銅鍋を掻き回すクルピンスキーにウルスラは声をかけた。
「この基地、ウルスラちゃんとトゥルーデにボク、そして双子博士と片手で数える位の要員しかいない小さい基地だし、ボクが夕飯つくっちゃおうかなって。」
そう言って、軍服の上からエプロンを掛けたクルピンスキーはお玉に一救いしたスープを喉へと通し味見する。
「うん、良い塩梅!」
どうやら上手くいったらしい。
彼女は満足そうにコンロの火を止めた。
興味を惹かれ、ウルスラは良い匂いのする鍋の中身を覗き込む。
途端に眼鏡は蒸気で白く曇ってしまう。
だが、視界が遮られようともその匂いで、どんな食材を扱っているのかは理解できた。
「トマト…?」
蒸気にのせられたその特徴的な匂いから、ウルスラは食材を見事言い当てる。
「うん、そうだよ。知人から教わったボクの数少ない料理のレパートリーの一つでね。エンドウ豆のベーコン添えをアレンジしたトマトスープなんだ。トマトは南リベリオン原産の野菜だし、丁度いいかなって、南リベリオンらしくホットペッパーも入れてみたんだ。味見してみる?」
「よろしいんですか?」
「勿論。」
クルピンスキーはそう返答すると、馴れた手付きで赤色のスープを小皿へと注いだ。
「…美味しい。」
差し出されたスープを一口飲むと、ウルスラの舌は赤いスープをそう評した。
爽やかなトマトのすっきりとした味わいに、咀嚼を促す半分煮崩れたエンドウ豆。
そして、ピリッと感じる唐辛子が全体を引き締めるアクセントになっている。
勿論、レストランで出される物には劣っているが素朴ながら胃の温まる安心できる味…所謂家庭の味と呼ばれる類いの物だった。
「中尉ってお上手なんですね。料理?」
「いゃあ~先生や502の下原ちゃんに比べたら大人と子供だよ…。本格的に料理する様になったのも最近だしね。」
ウルスラからの評価にクルピンスキーは目を細めて何とも言えない笑みを浮かべる。
むず痒い様だった。
「どうしてまた?」
白衣の袖で眼鏡の曇りを拭き取りながらウルスラは尋ねる。
元々やっていた者は別として、彼女の知る限りでは忙しいこの戦中に新しく料理を始めた魔女など皆無に等しかったからだ。
「うーん、食べて欲しい相手がいるからかなぁ?この料理もその人に教わったしね。」
下唇に指を当ててクルピンスキーはそう言った。
様子はどこか上機嫌に見える。
「あぁ…そういう。」
───ロスマン曹長の事ですか。
ウルスラの脳はそう結論づける。
この伯爵と細身の先生の間柄は姉を通してなんとなく知っている。
追聴するだけむだだろう。
ウルスラは人のそういう話を聞くのが少し苦手である。
元来コミュにケーションは苦手だし、人のそういう話を聞くとこっちが恥ずかしくなってしまう。
そういう体質だった。
(話が膨らまない内に退散しますか。)
だから、ウルスラがそう考えるのに数瞬の時間もいらず脚は自然と出口へと向かう。
「…では、お料理の邪魔になるので私はこれで。」
「うん、そこそこ食べられる料理は持ってくから待っててね。」
ウルスラの心積もりを少しも知らない長身の魔女は優しい笑みを浮かべると、包丁を手に取り次の料理へと取り掛かり始める。
そして、冷蔵室からどこから持ってきたのかブロック肉を取り出し、一人前の分を切り取り出し始めた。
本日の主菜に違いない。
「失礼します。」
そんな主婦みたいな包丁裁きを見せるクルピンスキーを尻目にウルスラはタイル張りの調理室を後にする。
その時である。
「おい!クルピンスキーの奴を厨房に入れたのは本当か!?」
まるでネウロイ相手にスクランブルをかけるかの様に顔を険しくしたバルクホルンが、ウルスラの前に飛び出たのだ。
「なっ…何事ですか?バルクホルン少佐?」
その剣幕に思わずウルスラは後退る。
「いいから!…入れたのか?入れてないのか?」
「はいっ!いらっしゃいます!」
喉を振り絞りウルスラは厨房の方を指差した。
バルクホルンの網膜には鼻歌混じりに包丁を振るうクルピンスキーが映り混む。
「ちぃっ…!」
それを確認するや否やおさげの魔女は塹壕に飛び込む
世界二位の撃墜王と早退するエプロン姿の伯爵。
「ト、トゥルーデ?…どうしたの?」
鬼気迫るバルクホルンの気迫に褐色の魔女は目を丸くする。
「おい貴様!料理してるとは本当か!?」
丁度、フライパンにバターを溶かしている所だった様で、キッチンには芳ばしい匂いが充満していた。
「クソッ!遅かったか!」
本人からの回答を前にその匂いでバルクホルンは全てを悟った。
遅かったと。
「確かに…作ってるけど…。」
バルクホルンの圧に押されてかクルピンスキーは控え目に手に持つフライパンの中身を提示する。
そこには豚肉だろうか?
パン粉で薄く衣付けされた肉がバターでこんがりと狐色に焼き上がっていたのだ。
「なっ…」
眼前に広がる信じられない光景。
バルクホルンは息を呑む。
あのクルピンスキーが?
そして一言、こう叫んだ。
「普通の料理じゃないか!?」
「普通じゃあダメなの!?」
小さな実験航空基地に二人の魔女の声が反響した。
───
「三分遅れだぞ感心しないな、アナタ。」
昼休みの昼食から職場の商店へと戻ると、思いも寄らない人物が俺の事を出迎えた。
「あ…アウロラさん?」
バスケット片手に丈の長い純白のワンピースに身を包んだアウロラ。
そんな上品な装いの同居人が商品棚を背に佇んでいたのだ。
頭には彼女のプラチナ色の頭髪を隠す様に、鍔の大きなストローハットを被っている。
タイミング的に俺の帰りを待ち構えていたのだろう。
「レストランで知り合いと少し話し込んでしまって。」
そう言って視線を掛け時計の方へと移す。
三分も遅れただろうか?
見ると確かにその長い針は休憩時間を三分程越えている。
「毎日外で食べているのか?」
「ここしばらくはそうかな。」
「昼食を外で取っているのなら教えてくれても良かったじゃないか…」
俺の返答にアウロラは不服そうに唇を曲げた。
彼女の持つバスケット。
きっとその中には俺の為に用意したサンドイッチか何かが入ってるに違いない。
昼食時に俺を訪ねたのは.そういう事だ。
買い物時に客としてやって来る事は多々あったが、こうして一緒に食事を取る為に職場に訪れた事は今までない。
完全に油断していた。
「ごめん、まさかアウロラさんが今日来るなんて思ってもなかったから。事前に言ってくれれば…。」
「私がアナタを訪ねるのにわざわざ事前に断りをいれていないとダメなのか…?」
少し震えて、心配そうな声を発する。
「いや、そういう訳じゃないけど。」
なぜ今日なのか?
そう思ってしまう。
けれども、彼女の行動原理は容易に理解できた。
過ごしやすい気候になったから。
今朝、俺がそういう風にアウロラに話したから。
きっと、彼女も気を効かせて近場の草むらかなにシートを引いて、日光でも浴びながら二人で食事をしようと思いついたのだろう。
その証拠に彼女の身に纏う装いは、いつだったか二人でピクニックをした時の物と同じだった。
その格好を改めて認識すると、俺は何も言えなくなってしまう。
「…」
それは眼前の彼女も同じな様だ。
何かを思案し喋らない。
気まずい空気が俺とアウロラの二人を覆う。
先に折れたのはアウロラの方だった。
「いや、そうだな…事前に"お前"に連絡をするべきだった。すまない、勝手に一人で浮かれて舞い上がり、勝手に一人で不機嫌になってしまった。また日を改めよう。次は前もって連絡する。」
「違うんだ…悪いのは俺の方だよアウロラさん。」
「そんな事はない。ただ…少しでもそう思うのなら、この埋め合わせを…」
俺の弁明に彼女が何かを言い掛けた時。
──チャリン
商店の扉が買い物客によって開かれた。
「ごめんなさい、さっきの食事の事なんだけど…。」
聞きなれたその人物のカールスラント語。
心臓がビクリと鼓動する。
…あぁ、どうしてこのタイミングなのだろうか。
───
「ではその後の詳細はご存知ないのですね?グンドュラ・ラル少佐?」
「折角、ご足労いただいにもかかわらず、期待に応えられなくて本当に申し訳ない。穴吹智子中尉。その歩兵の負傷除隊後の足取りは、このペテルブルグ基地司令である私の管轄ではないのでな、風の便りでスオムスに住んでいるというのは耳にしたが、それ以上はなんとも。」
扶桑陸軍からプロパガンダの旅を命じられた智子は、今、502基地の司令グンドュラ・ラルと相対している。
しかし、わざわざ司令室にて言葉を交える事ができたものの目当ての行方不明者の情報は得られそうもなかった。
それは良い。
だが、智子には一つ引っかかる所があった。
「…しかし少佐、この基地に在籍していた期間の記録が一つも残っていないのは何故でしょう?」
智子は率直にその疑問を投げつける。
黒髪の元魔女がこの基地について一番に請求したある歩兵の記録が得られる事はなかった。
事務員曰く、紛失したとの事。
理由など問いかけてみたが何一つ要領の得られる解答は得られなかった。
該当する行方不明者の書類上の記録が、このペテルブルグ基地に一つも残っていなかったのだ。
しかし、国の面子もあり智子も引き下がれない。
食い下がった結果、こうしてラルと直接の面会が叶ったのだが…。
「ふむ、ここも一応は前線基地だ。ネウロイの空襲で焼失してしまったのかもしれないな。」
ここまでしても何一つ成果は得られない様である。
「当該の人物についての交遊関係などは何かご存知ですか?」
「すまないが名前以外記憶にある事はないな…。私もその職務の性質上、一兵卒の顔など一々記憶に止めてはいない。」
「風の便りは耳にしたのに?」
「ウィッチを救助しての名誉ある負傷除隊だ。私だって少しは気にする。」
「顔など一々覚えていないのでは?」
「…何か詮索しているのかね?中尉?」
「少佐の発言が些か気になった物で。」
「…重ね重ねになってしまうが、本当に件の歩兵について私が知っている事はないんだ。手ぶらで返してしまって申し訳ないがここには貴官と同郷のウィッチもいる。長旅の疲れを癒すと良い。では…また。」
二人の短い対面はラルの一方的な終了宣言で幕を閉じた。
───
「あの…穴吹智子中尉ですよね!」
面会の後、智子がペテルブルグの古風な基地を散策していると後ろから母国の言葉で声をかけられた。
振り返るとセーラー服に身を包んだ少女。
扶桑海軍のウィッチだろう。
感じはどこか智子のかつて部下に少し似ている。
「貴女は?」
「扶桑海軍軍曹!雁淵ひかりです!中尉の事、本国の映画館で見ました!サイン頂けませんか!」
勇気を振り絞って智子に声をかけたらしい。
少し微笑ましくも感じてしまう。
智子が昔、プロパガンダ映画に出演してからというもの銀幕のスター的な扱いを受けている。
こういう事は珍しくはなかった。
「いいけれど…何にサインするのかしら?」
智子は手荷物の中にあった筆箱を取り出しながら問いかける。
軍曹ひかりの手にはサイン色紙の類いなどは握られていなかったのだ。
「えっ!あっ…」
海軍軍曹ひかりは指摘されて初めてその事に気づいたらしい。
「そっかぁ…じゃあっ、これにお願いします!」
そして、少し考えた後、自身の着ていたセーラー服を脱ぎすて正面の部分を智子に差し出した。
「私は構わないけど…ソレ官給品よね?」
「いいんです!替えはいっぱいあるので!」
水練着一枚となった少女は自信満々にそう言うが、そういう問題ではない気がした。
だが、そういうのは智子には関係がないし、今はこの少女の望みを叶えるのが先決。
「ふふっ昔はあんまりファンサービスはしなかったんだけど、貴女、昔私に懐いてた娘に似てるから特別よ。まぁ…ああいう風にはなって欲しくはないけれど。」
「…はぁ?」
そう言って、扶桑海の巴御前は馴れた手付きで紺色のセーラー服に自信の名前を書き連ねる。
「ありがとうございます!この服一生洗いません!」
ひかりはサインを見て満足気に目を輝かせると、モゴモゴと身体をくねらせて穴吹智子サイン付きセーラー服に袖を通した。
そして、一息つくと言葉を続け始める。
「…所で中尉、なぜ退役した中尉がこんな寒村に?」
どうやらひかりは何故智子がこの地に来たのか聞き及んでないらしい。
「あら?知らないのかしら?今、陸軍に呼び出されて第一次欧州派兵団行方不明者の実態把握を行ってるの。ペテルブルグ基地にも去年まで歩兵が一人いたって聞いたから来たのだけど…。」
「それってもしかして、回収班の負傷除隊した人の事ですか?」
「あれっ?知っているの?」
「はい!私、何回か墜落してしまった事があったんですけどその度にお世話になりました。言葉が通じる人だったので安心できましたよ。私スオムスの言葉はまだちょっと…。」
「成る程、同じ母国の人だから知っていたのね?」
「はい、でもこの基地でその人を知らない人はいないと思います!有名人でしたから!」
「え?」
どういう事だろう?
先程のラルの話と食い違う所がある様に感じる。
「どういう事かしら?」
「うーんっ何て言ったらいいんでしょうね?有名人になったのは除隊した後の話で、その有名な理由も噂レベルの憶測なんですけど…。負傷の原因になったウィッチとその親友のウィッチが除隊した歩兵が原因でちょっと不祥事をみたいな?」
「その噂、少し詳しく教えてくれないかしら?」
「え?」
それが、穴吹智子の頭の中でファンの少女が一人の情報源へと転じた瞬間であった。
えっ…イラスト経験がないのにオリキャラのイラストを?
やってみせろよ!
何とでもなる筈だ!
ガン○ムだとぉ!
という、訳でオリキャラホルテン姉妹のイメージを頑張ってかきました
https://i.imgur.com/ZJ2Bomb.jpg
こんなのが二人いるイメージです
本当はストパン原作にもホルテン兄弟イメージ元のキャラいるんですけどね
殆んど空気だしいいかなって…(怒られそう)
二次創作だしいいよね
タグに原作改変追加したし許して
下手だけど許して
身体のパーツとかバランス感おかしいけど許してね
画力ある人ってやっぱ羨ましいと思いました